システムのクラウド移行をコンテナで実現 企業が知るべきメリット
コンテナ化によるクラウド移行のポイント
システムやアプリケーションのクラウド移行はDXを推進する企業に不可欠な要素となりつつあります。開発の効率化や運用負荷の軽減を実現するクラウドネイティブに向けて注目を集める技術が「コンテナ」です。
今回は既存システムをクラウドアーキテクチャーに適応させてクラウド化する際のポイントや、コンテナ活用のメリットと課題を解説します。
クラウドネイティブを実現する「コンテナ」とは?
クラウドコンピューティングモデルを活用してハードウェアの利用効率の向上と柔軟性を実現する、クラウドネイティブのシステムはアプリケーションが単機能のモジュールに分割され、それぞれがネットワーク経由でAPIを通じて動作します。
単機能のモジュールごとに独立して開発から運用までできるため、システム全体を作り直さず部分的なアップデートや障害対応が容易になるでしょう。
クラウドネイティブのシステムに採用されるコンテナは、コンテナエンジンというプロセスを通してホストOSのカーネルを共有し、CPUやメモリなどのリソースを隔離したうえで仮想的な空間を作り出す技術です。少ないリソースで動作できるため仮想化の主流となりつつあります。
以下で従来のVM型との特徴を比較します。
■ VM型とコンテナ型の特徴の比較

VM型:各仮想マシンにそれぞれ別のゲストOSが実装
・各仮想マシンのゲストOSを自由に選択可能 |
・カスタマイズ性が比較的高い |
・オペレータがシステム環境を管理することがより容易 |
コンテナ型:全ユーザー共通の基礎となるOSが1つ存在
・サーバの起動や再起動が高速 |
・ゲストOSを含まないため少ないリソースで動作し、VM型より集約性を高めることができる |
・アプリケーションの動作に必要なライブラリ等を全てイメージに含めるため、環境変動によるエラーを心配する必要がない |
コンテナによるリフト&シフトでクラウド移行を実現
一般的にシステムのクラウド移行はリフトとシフトによって行われ、コンテナを活用したリフト&シフトの際は、「コンテナライズ」と「リアーキテクチャー」の2つの方法があります。

コンテナライズ
既存アプリケーションを改修なしでコンテナにパッケージングし、継続的インテグレーションの仕組みを組み合わせてクラウド上で運用する方法です。コンテナ技術を使って仮想化することで、リソースの使用効率を大幅に抑えて集約率を高めることができます。
リアーキテクチャー
アーキテクチャーを刷新したシステムをコンテナにパッケージングし、継続的インテグレーションの仕組みを組み込んでクラウド上で運用する方法です。システムをクラウドネイティブに作り替えるため、クラウド活用のメリットを最大限に発揮することができます。
コンテナはマイクロサービスアーキテクチャーとの相性が良く、システムの分離・導入・拡張を迅速に行うことができます。
システム運用にコンテナを導入するメリットと課題
システム運用にコンテナを導入する際はメリットと課題を把握し検討することが重要です。
■ コンテナ活用のメリット
・ 変更の影響を局所化できる |
・ 保守コストを削減可能 |
・ 柔軟な移行性 |
機能を分割して移行し再構築したコンテナ上のシステムは、更新やバージョンアップといった変更時の影響範囲が限定されます。
さらに、ハードウェアとミドルウェアが疎結合になることで、それぞれのタイミングでバージョンアップが可能です。基盤更新のタイミングですべてのアプリケーションを再テストする必要もなくなるため、保守コスト削減が見込めます。
加えてカーネルに互換性があれば、他社クラウドサービスや検証環境、本番環境などへの移行を必要な時に簡単に行えるでしょう。
■ コンテナ活用の課題
・ コンテナ化が可能か精査する必要がある |
・ セキュリティ要件の再検討が必要 |
・ 冗長性の確保・負荷分散の自動化を行う必要がある |
物理環境と仮想環境にはネットワークをはじめ様々な違いがあり、導入時にはコンテナ化の可否を確認しなければなりません。
またゲストOSを持たないため、従来OS上で行っていたセキュリティ対策を別の方法で行う必要があります。改めてシステムのセキュリティ要件を検討する必要があるでしょう。
マイクロサービスアーキテクチャーなど採用するシステムによっては、冗長性の確保や負荷分散の自動化が必要になるなど一定の課題も存在します。
システムの評価と運用設計がポイント
企業はコンテナ化するシステムの評価やクラウド移行後の運用設計によって上記の課題を解決することができます。まず、既存システムに関してコンテナ化の可否やインフラコスト削減、性能の維持向上といった項目を評価しましょう。
クラウド移行やコスト、開発効率、運用負荷など、多くの観点からシステムを評価するサービスも提供されており、積極的に活用することをおすすめします。
コンテナ化による移行が有効と判断された場合、クラウドを活用したコンテナ型システムの構成を行います。Amazon EKSやAKSといったコンテナ基盤は各クラウドベンダーから提供されているため、自社で用意する必要はありません。
負荷分散やセキュリティなど周辺機能もPaaSとして提供されている一方、アプリケーションの更新や監視、トラブルの対応など運用設計は自社のリソースや運用環境を考慮して丁寧に行いましょう。
コンテナの活用で効果的なクラウド移行を実現
クラウド移行によってクラウドネイティブを実現するにはコンテナ技術の導入が欠かせないでしょう。既存システムのクラウド移行を検討している企業の情報システム部門であれば、コンテナ技術を理解することは必須になりつつあります。
開発効率の向上や保守コストの削減にもつながるコンテナ技術を活用し、クラウドネイティブのメリットを最大限享受しましょう。
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