クラウド移行の課題を解消する 企業が導入・運用ですべきこととは?
クラウド運用のポイントとサービス活用の事例
運用負荷の軽減やコスト削減など、多くのメリットがあるクラウド移行ですが、サービス選定やメンテナンスといった面で課題が顕在化しています。これらの課題はクラウド導入時や運用のポイントを押さえることで解決可能です。
今回は企業の情報システム部門担当者向けに、クラウド導入・運用における課題や注意点、実例をもとにした解決方法を紹介します。
クラウドの落とし穴。導入から運用までの課題とは?
企業がクラウド検討時にすべきことは、導入から運用にいたるまでの課題を洗い出すことです。以下で導入時の課題と移行対象の選定ポイントを紹介します。
クラウド導入の課題
オンプレミスの既存システムのクラウド移行においては「リフト」や「リフト&シフト」の方法を用いるのが一般的です。

その際、企業には以下の課題が生じやすいといわれています。
1 | クラウドの選定方法が分からない |
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2 | クラウドに対応したシステムの最適設計が分からない |
3 | 移行や構築の不安 |
近年は多種多様なクラウドサービスが提供されており、選択肢が多岐にわたる反面、サービスの選定が難しくなりました。数多くのサービスから、既存システムと親和性の高いサービスを選定するには、調査や比較に多くの時間を要するでしょう。
また、オンプレミスとプラットフォームが異なるクラウドでは、プログラムの書き換えやアーキテクチャーの見直しが必要になる場合があります。クラウドサービス独自の運用要件があり、それを踏まえた運用設計が求められます。
加えて、アップデート情報やセキュリティ、障害状況など押さえておくべきクラウドサービスの仕様は多数あり、従来とは異なるシステムを使用することに対して不安になる担当者も多いのではないでしょうか。
クラウド移行対象の選定
クラウド移行対象システムを選定する際は、以下2種の要素を総合的に比較し、優先順位を決めることで最適なシステム選定が可能です。
また、小規模システムから移行作業を行うことで、担当者が移行時の注意点や運用経験を学ぶことができます。
■ システム選定時に比較する要素
1 | 既存システムの課題 ハードウェア・ソフトウェアのサポート期間、ハードウェアのキャパシティ、レンタル・リース期間、保守運用の負荷、ブラックボックス化の度合い、移行の技術的難易度など |
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2 | 自社ビジネスへの影響 問題発生時のビジネスインパクト、サービス提供先への影響度合い、利用者数、アクセス負荷、ステークホルダー数、移行によるビジネスへの貢献度など |
【再レガシー化を防ぐ】クラウド運用における企業の注意点
クラウド運用においては移行後の再レガシー化(注2)を防ぐことも重要です。想定されるクラウド運用の課題を事前に把握することで、運用プロセスの設計の見直し、再レガシー化を防ぐことができるでしょう。
(注2)クラウドに移行したシステムが度重なる拡張や最適なメンテナンス不足によって、システムの全体像と機能の意義が不明確になること
クラウド運用中の課題
クラウド導入後も運用面で以下の課題が生じる可能性があります。
1 | 複数クラウドの乱立により運用工数が増加した |
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2 | アップデートやメンテナンスに業務が追いつかない |
3 | コスト削減と利活用が進まない |
現場主導でクラウドを個別に採用すると、部門ごとに複数のクラウドが乱立することが起こりえます。シャドーIT (注1)によるセキュリティリスクの増大や無駄なコストの発生につながるため、情報システム部門の関与も必要でしょう。
クラウド移行後には、提供サービスのアップデートやメンテナンス・障害などへの対応も必要ですが、中小企業はリソースを割けない場合もあります。
また、社内ネットワークとインターネット通信経路の監視など、ネットワークインフラの運用は企業が行う例が多いとされ、監視コストが増加する一因にもなっています。
(注1)社内で使用が許可されていないサービスやデバイスを社員が業務で使用すること
運用時のポイント
最適な運用を行うためには、運用プロセスの設計がポイントです。
まずは現状の運用状況を可視化し、運用要件を整理します。これにより、自社のサービスに必要な要件を網羅することができます。
クラウド移行後は、ハード・ミドルウェアを自社で運用する必要がないため、移行前と運用プロセスが異なります。
クラウドツールの活用やネットワークインフラの監視工数増加に備えた自動化環境の設定・導入による、人的リソースの削減と作業ミス削減を図ることをおすすめします。
加えて、クラウド移行が完了し運用の課題もある程度解消した段階では、運用改善といった中長期視点での運用体制構築が求められます。これにより、システム管理者のさらなる負荷軽減やシステムの安定稼働が実現可能です。
移行と運用の課題を解決。マルチクラウドLCMサービスの導入事例
富士通エフサスが提供する「マルチクラウドLCMサービス」は企業のクラウド移行から運用までを幅広くサポートしています。インフラベンダーとしてITILに基づいた保守まで対応できる点に強みがあり、運用アセスメントとして下記3点の改善提案も実施しているため、これまで挙げたクラウドの課題解決に効果的です。
■ マルチクラウドLCMサービスの改善提案
・ クラウド活用における課題の抽出 |
・ 改善ポイント明確化のもと、改善策の立案 |
・ 改善ポイントの共有、最適な改善策の提案 |
以下で3社の導入事例を紹介します。
IoTプラットフォームの運用基盤をクラウドで実現
A社では現場の各種装置(ロボット、センサーなど)やシステムとアプリケーションをつなぐIoTプラットフォーム導入に伴う運用基盤の構築が必要でした。
そこでディスカッションによる課題の見える化や、10種類の運用パターンに分類し運用フローを策定するなど、IoTプラットフォームで提供する様々なサービスに対し、各特性にあわせた運用最適化を行いました。
その結果、情報システム部門だけでは対応できない24時間365日のトラブル対応運用を実現しました。
インフラ運用の効率化
B社ではOSとミドルウェアのバージョンアップに伴う運用負荷や、構築作業と動作確認の工数に課題がありました。
そこでMicrosoft Azureを活用し、システムのクラウドシフトを実施。マネージドサービス利用による保守運用の工数削減と、Infrastructure as Codeに基づく構築作業の効率化を図りました。
その結果、年間約30人日分のバージョンアップ対応工数の削減や、環境間の一致性確保とメンテナンス範囲の最小化を実現しました。
クラウドネイティブなシステムに対応した運用監視
C社の既存システムは高いレベルの監視が求められ、クラウド移行による新たな監視体制の構築にコストがかかり、信頼性の保証も難しい点が課題でした。
クラウド化の際はFUJITSU Software Systemwalker Centric ManagerとAWSの各種サービスを連携することで、クラウド上のマイクロサービスを一元監視可能にしました。
その結果、既存の運用手順を変えずに高品質な監視品質を実現しました。
クラウド検討時は中長期的な運用まで想定を
既存システムのクラウド移行には多くのメリットがある反面、移行・運用における課題の把握や対策などは欠かせません。クラウドサービスの選定や再レガシー化を防ぐ運用など企業1社では対応しきれないケースも存在します。その場合は「マルチクラウドLCMサービス」など、クラウドシステムの構築・運用サービスを利用することも選択肢の1つです。既存システムと同等の品質を保ちつつ、運用工数・コストの削減を実現した事例もあり、企業は中長期的な運用も想定しつつクラウド移行を検討することをおすすめします。
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