
2025年の崖を見据えたシステム刷新の必要性とは?
レガシーシステムのリスクとDX推進の取り組み
近年、DX(デジタルトランスフォーメーション)という言葉が頻繁に使用されるようになりました。DX推進の効果はシステムのIT化にとどまらず、ビジネスモデルの変革や創出にまで及びます。
企業は既存のシステム刷新を行わない場合、2025年には年間12兆円の損失が生じる「2025年の崖」と称される問題点も浮かび上がっています。今回はDXの概要や既存システムが抱える問題点、DX戦略における効果的なアプローチに関して紹介します。
企業に注目されるDXの定義と目的
DXの定義は文脈によって内容が異なり正確に把握することが難しいとされますが、企業の情報システム部門の責任者であれば、ビジネス観点におけるDXの定義を理解する必要があるでしょう。
DXの定義をまとめると、「企業がITを駆使し組織やビジネスモデルの変革に挑み続けることで、新たな価値の創出と競争優位性の確立を図ること」です。
同時に、企業が生き残るためのポイントとしてハイブリッドクラウドやAI、IoTといったITの活用が挙げられており、DXは企業の存続にも関わる重要な経営戦略といえるでしょう。
■ ビジネス観点におけるDXの定義
「企業が外部エコシステム(顧客・市場)の破壊的な変化に対応しつつ、内部エコシステム(組織・文化・従業員)の変革を牽引しながら、第3のプラットフォーム(クラウド・モビリティ・ビッグデータ/アナリティクス・ソーシャル技術)を利用して、新しい製品やサービス、新しいビジネスモデルを通して、ネットとリアルの両面での顧客エクスペリエンスの変革を図ることで価値を創出し、競争上の優位性を確立すること」
2025年の崖とは?既存ITシステムの現状とリスク
DXを推進するうえで、多くの企業にとって老朽化・複雑化した既存のITシステムが障害になるとされます。これらはレガシーシステムと呼ばれ、度重なる拡張や最適なメンテナンス不足といった不十分なマネジメントによって、自社システムの全体像と機能の意義が不明確になる「ブラックボックス化」と、最新のクラウド技術を適用し改修したシステムも「再レガシー化」する可能性がある点が問題の本質です。
一般社団法人日本情報システム・ユーザー協会(JUAS)によるとレガシーシステムを抱える企業は約80%にのぼるとされます。また、国内企業においてはIT関連費用の約80%が現行ビジネスの維持や運営(ラン・ザ・ビジネス)に割り当てられている調査結果もあり、レガシーシステムによる高コスト構造がDXによる経営戦略の足かせになっている状況です。

レガシー化した既存システムを放置した場合、長期的な保守運用費用の高騰(技術的負債)が企業に大きな損失を与えるといわれています。「2025年の崖」と呼ばれるこの課題を克服できないことで2025年以降、企業はIT関連予算の90%を既存システムの維持管理に費やさざるを得なくなり、海外とのデジタル競争における敗北や担い手不足によるセキュリティ事故といった問題が生じる恐れがあるのです。
DX実現に向けて企業が推進すべき「DX戦略」
DXの推進には障害となる問題点も存在するため、「新たなデジタル技術を活用し既存システムを刷新する」という判断をするには経営層の強い関与が必要です。企業はDX実現に向けた効果的なシナリオを把握し、経営戦略に取り入れることで最新のIT活用による新ビジネス創出やグローバル展開を実現できるでしょう。
経営面の望まれる変化として、以下の3点が挙げられます。
1 | 既存システムのブラックボックス解消 |
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2 | バリューアップ分野への資金シフト |
3 | 迅速なシステム開発 |
既存システムのブラックボックス解消においては、まず見える化による仕分けと刷新計画の策定を実施。その後、経営の最優先課題として不要なシステムの廃棄、マイクロサービスや共通プラットフォーム活用などによる計画的なシステム刷新を図ります。
資金シフトでは技術的な負債を解消しつつ、クラウドや共通プラットフォームの活用によりIT投資を効率化。ラン・ザ・ビジネスとバリューアップの比率を現在の8:2から欧米並みの6:4 にするなど、ビジネス上の投資効果の高い分野に資金をシフトすることが必要です。
また迅速なシステム開発の面では、マイクロサービス導入やテスト環境の自動化などによる開発効率の向上により、市場の変化に応じてビジネスモデルを柔軟・迅速に変更することが可能になります。
DX戦略によるレガシーシステムの刷新
経営層と情報システム部門にとって、レガシーシステムの刷新は企業のDX実現における重要なポイントです。しかし、これまで使用してきた既存システムをすべて刷新することは現実的ではありません。企業は情報資産の現状を分析・評価し、仕分けを行うことでコストを抑えつつ戦略的なシステム刷新が可能です。
具体例として既存システムを機能に応じて以下の4象限で評価し、システム再構築をプランニングする方法が挙げられます。

既存システムをクラウド上で再構築する手法は「リフト」と呼ばれる一方で、クラウド上のシステムをクラウドのアーキテクチャーに最適化しつつ機能を追加する手法は「シフト」と呼ばれます。一般的にクラウド移行によるレガシーシステムの刷新は、リフトとシフトを2段階に分けて実施する「リフト&シフト」が効果的です。システム構成を大きく変更しないため移行難易度が低く、社内のリソースやコストに課題を抱えている企業も実践しやすい手法といえるでしょう。
DX推進において既存システムのクラウド移行は有効な施策ですが、リフトもしくはリフト&シフトによるクラウド移行を実施する場合、いずれも運用上の課題を洗い出す必要が生じます。また、顧客や市場などのあらゆる変化に対応するため、即応しやすいアーキテクチャーへ変更を行う方法も存在します。

最新技術の導入とリフト&シフトによってDXを推進
今後企業が存続・発展していくうえで、DX推進が重要なテーマとなることは間違いないでしょう。企業の情報システム部門は最新のITを取り入れつつ、保守運用におけるマネジメント体制の見直しによってレガシーシステムの刷新とブラックボックス化の解消ができます。
次回は具体的に、クラウドに移行するシステムの選択方法や課題について紹介します。
技術的負債により企業の損失が増大する「2025年の崖」に直面しないためにも、先行して経営面と技術面からシステム刷新を図り、自社に適した本格的なDX実現に向けた取り組みを実施しましょう。
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