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研究者インタビュー

AIの社会実装を加速する
Fujitsu Kozuchi (code name) - Fujitsu AI Platform

開発に携わる富士通の研究員の想い
【不審行動検知編】

English

多くの公共の場では、利用者の安心・安全のため、犯罪やテロ、自殺といった行動を抑止すべく防犯カメラを設置しています。しかし、多数のカメラ映像を人が常時監視することはコスト的にも難しいため、事故・犯罪発生時に迅速に対応し、被害の拡大を防ぐという観点では、十分に役立てられない状況です。今回、この問題を解決するFujitsu Kozuchi (code name) - Fujitsu AI Platform(*1)に搭載された不審行動検知(*2)コンポーネントを担当する研究員にインタビューしました。コンポーネントとは、課題解決に必要なAI技術をパッケージ化したものです。不審行動検知コンポーネントは、どのように事故・犯罪発生時の迅速な対応を実現するのか、その取り組みへの思いについて話を聞きました。

2023年11月22日 掲載

RESEARCHER

  • 伊海 佳昭

    伊海 佳昭

    Ikai Yoshiaki

    富士通株式会社
    富士通研究所
    人工知能研究所
    AIイノベーションCPJ
    シニアリサーチマネージャー

安心・安全な社会の実現に向けた取り組み

不審行動検知コンポーネントの開発のきっかけを教えてください。

伊海:富士通が開発した行動分析技術Actlyzer(*3)をプレス発表した後に、多くのお客様からご相談を頂いたのがきっかけでした。例えば、深刻な社会問題となっている鉄道の人身事故を少しでも減らすために、事故が起きた後にカメラ映像の履歴を確認するのではなく、事故が発生しそうな予兆を検知したらすぐに駅員に知らせることができないかといった相談です。既に設置されている防犯カメラ映像を用いて、現実的なコストと人員で、犯罪や自殺の予防に役立てられれば、多くの人に安心・安全を提供できるようになると考えました。それがコンポーネントの開発のきっかけでした。

不審行動検知コンポーネントはどのような課題を解決しますか。

伊海:不審行動検知コンポーネントは、Actlyzerを活用することで、映像から人やモノを検知・分析し、不審な行動を発見することができます。多数の防犯カメラ映像を少人数で監視する場合には見落としがよく発生しますが、不審行動検知コンポーネントは、AIが不審行動を自動で検知して画面表示で警備員に注意を促すことができるため、事件や事故が発生したときに迅速な対応を可能とします。

不審行動検知コンポーネントは、画面を赤く光らせて不審行動を通知

不審行動検知コンポーネントはどのように活用されていますか。

伊海:現在、複数社のお客様と積極的に実証実験と導入検討を進めています。公共の場における具体的なユースケースとして、多くの人が出入りする空港や駅などでの不審行動、例えば、立ち入り禁止区域への侵入の検知、不審物の放置の検知を検討しています。また、小売店での集団窃盗をリアルタイムで検知して被害を防ぐユースケースや、公園の遊具で幼児が危険な遊び方をしていないか確認するユースケースなども検討しています。このように、小売業界や生活に密着した場所でも不審行動検知コンポーネントを導入することで、多くの方に安心・安全を提供していきたいと考えています。

従来型AIの開発課題を解決し開発期間の短縮を実現

従来、映像認識用のAIに人の行動を学習させるためには、人の行動を映した大量の動画を用意し、一つひとつの行動に正解ラベルをつける作業が必要だったため、数か月にわたる開発期間と多大なコストがかかりました。不審行動検知コンポーネントでは、富士通が開発した行動分析技術Actlyzerを搭載しており、「歩く」、「手を挙げる」など、約100種類の基本動作の学習済みモデルをあらかじめ用意しています。その基本動作の組合せで様々な行動を認識できるため、大量の学習データの準備や事前検証に時間をかけず、AIの開発を短期間で行うことが可能です。

不審行動検知コンポーネントの研究開発で直面した技術的な課題は何ですか。

伊海:人が特定の場所に入ったり、棚に手を伸ばしたりする行動は、Actlyzerの基本動作の組み合わせで認識できるのですが、はっきりしない微妙な動きは認識することが困難です。不審な行動は、明確ではっきりとした動きではなく、周囲をキョロキョロ見渡したり、ちょっと覗き込んだりするといった、通常の行動と比べて目立たない行動が多く、そのため、基本動作の組み合わせでは不審な行動と通常の行動をなかなか見分けられませんでした。その微妙な動きを認識するため、通常の開発ではあらたに大量のデータを取集し、AIに動作を学習させるのですが、データ収集に時間やコストかかるという課題がありました。

その課題をどのようにして克服しましたか。

伊海:我々は、Actlyzerの基本動作で認識が難しかった行動に対して、Few-shot学習(*4)を組み込むことで、Actlyzerで認識できる新たな動作として追加する技術を開発しました。少量の動画データをもとに、認識したい不審な行動を効率的に学習することができ、特殊な事例でも対応することができます。コンポーネントの利点である導入の容易さを損なわず、かつ、微妙な行動も捉えられるようにしたことで、より多くのユースケースに対応できるようになりました。

研究課題に対してどのようにアプローチしていますか。

伊海:お客様の声を聞いて、開発技術に反映させることを大事にしています。それを達成するために、4つの手順で作業を進めています。まず、富士通のビジネス状況と開発チームの技術力をもとに、「こういう新技術を作ればビジネスになる」という仮説を作ります。次に、実証を行うためのプロトタイプを開発します。そして、営業や事業部門とともに、お客様への技術の紹介や実証実験を進め、お客様からフィードバックをいただきます。さらに、そのフィードバックをもとにプロトタイプを改良します。お客様のフィードバックに基づき、プロトタイプを改良するプロセスの繰り返しによって、はじめてお客様先で適用できる新技術を生み出すことができます。また、その過程で開発した新技術は、自作データやオープンデータを用いた客観的な評価を行い、学会や論文でも発表していきます。

伊海はお客様のフィードバックを開発技術に反映させることが必要だと語る

お客様のAIイノベーションを支援する研究員が描く未来

現場の課題解決と研究開発のバランスをどのように考えていますか。

伊海:普段は、実証実験やソフトウェアの改良など、お客様との約束を最優先で行うことが多いです。現場の課題を解決する活動が重要だと思います。一方で研究開発も、お客様からのフィードバックをもとにポイントを絞ってスピーディに進めています。我々人工知能研究所の開発チームでは、ベンチャー企業のように、最先端の技術をお客様にどんどん試してもらっています。大変さはありますが、お客様のフィードバックを反映して技術を高めていくことにやりがいを感じます。

安心・安全な社会の実現に向けた今後の展望について教えてください。

伊海:残念ながら、公共の場での暴力事件、鉄道での自殺、店舗での窃盗は日常的に発生しています。事件が起きた後に調査することもとても大事ですが、事件が起きる前に防止することが、すべての人にとって最も幸福な方法だと思います。不審行動検知コンポーネントは、事故・事件発生時の迅速な対処を実現すると同時に、未然の防止にも活用できる技術です。さらなるコスト削減や、認識精度の向上など、まだまだ改良の余地がありますが、プロファイリングや、プライバシーなど法的・倫理的観点にも配慮しながら、少しずつ技術の改良を進めて、より多くの場所に高度な防犯システムを導入し、安心・安全な世の中を実現していきたいと思っています。

当社のSDGsへの貢献について

2015年に国連で採択された持続可能な開発目標(Sustainable Development Goals:SDGs)は、世界全体が2030年までに達成すべき共通の目標です。当社のパーパス(存在意義)である「イノベーションによって社会に信頼をもたらし、世界をより持続可能にしていくこと」は、SDGsへの貢献を約束するものです。

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