富士通に転職したのは感性とロジックの両面からユーザー体験を作れるデザイナーになるため

富士通に転職したのは感性とロジックの両面からユーザー体験を作れるデザイナーになるため



掲載日 2021年10月25日

富士通株式会社(以下、富士通)のデザインセンターは、富士通が提供する多様なサービスやプロダクトのデザインを担い、また富士通全社に向けてデザイン思考を浸透させる活動を行う、富士通のデザイン部門です。そこではどのようなデザイナーが働いているのでしょうか。

佐藤壮一郎氏は2020年に中途採用で富士通に入社。以来、デザインセンターのエクスペリエンスデザイン部に所属し、富士通のPC・スマートフォンのプリインストールアプリのUI/UX設計や、シニア向けの新規サービス企画など、アプリ・サービスデザインの領域に携わっています。佐藤氏が富士通に転職を決めた理由や、現在の仕事内容について、どのようなスキルが得られるのか、などの点についてお話を聞きました。

記事のポイント

  • 前職では水まわり製品のデザインを、現在はアプリやサービスのデザインを行う
  • 富士通で培えるのは「ユーザー視点をロジカルに考え抜く力」
  • 自分の興味分野を発信することでさまざまな仕事につながっていく環境が富士通にある

メーカーの製品デザインで培われた機能美への追求心

佐藤 壮一郎氏
デザインセンター エクスペリエンスデザイン部所属(2021年10月時点)

——— 前職での仕事内容や、経験してきたことを教えてください。

佐藤: 前職では大手住宅設備メーカーでプロダクトデザイナーとして働いていました。トイレ空間の水まわり製品のデザインを担当しており、手洗い器や水栓金具、公共施設向けの洗面台、小便器などのデザインにも携わりました。

住宅設備はお客様がショールームなどで一目惚れして買う場合も多いため、デザインは人々が心惹かれるような美しいものを追求していました。一方で、水栓金具などは一度購入すると10年使われることもある商材です。ちょっとした使い勝手の違和感を長い間、継続的にユーザーに感じさせてしまうこともあるため、手洗いの導線や掃除のしやすさといった利用シーンごとの使い勝手も想定しつつ、慎重にデザインを行っていました。

この仕事は非常にやりがいがあったのですが、一方で、住宅設備機器の分野では今までにない新しいデザインを生み出しづらいとも感じていました。人が日々使い続けている製品にはある程度すでに正解があるためです。それと比べて、ソフトウェアやアプリのサービスは技術の発展とともに日々アップデートされます。使いづらい点やユーザーがまだまだ満足していない部分もあるはずで、そうした課題の解決にチャレンジしてみたいと考え富士通に転職しました。



住宅設備メーカーのプロダクトデザイナーを経て富士通デザインセンターへ

——— デザインセンターでは具体的にどのような仕事に携わっているのですか。

佐藤: デザインセンターのエクスペリエンスデザイン部に所属し、富士通のPCにプリインストールされている、ユーザーに便利な機能を提供するユーティリティアプリのUI/UXデザインを入社当初は行っていました。最近では、富士通のスマートフォンで提供されるシニア向け新規サービスの企画立案にも携わっています。現在はまだ設計段階なので厳密にサービスの詳細は決まっていませんが、たとえば専用のアプリを使ってユーザーが新しいスマートフォンの使い方や便利な機能を知ることができる、などの案を考えたりしています。

シニア向け新規サービスのプロジェクトでは、主として想定ユーザーのシナリオ設計に携わっています。サービス設計において、コンセプトは素敵なものがたくさん出てきます。しかし、実際のユーザーシナリオをイラストやマンガを描いて可視化してみると、「ユーザーってこんな行動する?」という議論にしばしば行き着き、コンセプトを途中で見直すことができます。

新規サービスの検討となると関係者もかなり増えますが、様々な意見が出てくることで議論が発散してしまい、思わぬ方向に舵が切られてしまうケースも少なくありません。そのような局面では、デザイナーは「ユーザーの一番の理解者」として振る舞うべきだと思います。インタビューなどで得た情報からユーザーインサイトを解き明かし、お客様の悩みや喜ぶポイントをメンバーに伝え、チームで同じ方向を向けるように促すことがデザイナーの大切な役割です。

——— デザインセンターのデザインワークにはどのような特徴がありますか?

佐藤: サービス設計の企画段階からデザインの検討に入り込むこともできるため、新しいサービスを生み出すことにチャレンジしたい人には魅力的な職場だと思います。

また、自分がプライベートで面白そうだと思って勉強していたことが、新しい仕事につながっていく機会もあります。たとえば、富士通PCの音声アシスタントキャラクター「ふくまろ」のイラストが、富士通グループのパソコンメーカーである富士通クライアントコンピューティング株式会社(FCCL)のオフィスビル最上階の壁一面に描かれているのですが、その制作過程を広報用に撮影し、動画を編集する仕事を依頼されたことがあります。これは、デザインセンターの他のメンバーに「プライベートで動画編集をして遊んだりしている」と話したことがきっかけで始まった仕事です。

先ほどのシニア向け新規サービスの案件も、デザインセンター内のつながりからシニアユーザー理解のためのワークショップに呼んでいただいて始まったものです。このように、自分が興味のあることを発信していると、それが自然と他の仕事につながっていく環境だと思いますね。

一方で、任される業務範囲が広く、自分で進め方を決めて周りを巻き込まなければいけない場面も多いので、責任が大きいとも常々感じています。デザイナーは仕事の取り組み方や能力次第で、「困ったらあの人に依頼しよう」と思われる「駆け込み寺」のような存在にもなります。しかし、結局言っていることが具体性に欠けていたり、的を射ていなかったりすれば、「当たらない占い師」のような存在になってしまうでしょう。日々、たくさんの勉強をしなくてはいけない職業だとも思っています。



感性とロジック、双方を大事に「楽しむ」デザイナーであり続ける

——— 仕事においてこだわっている点を教えてください。

佐藤: 常に仕事を「楽しむ」気持ちは忘れないようにしています。好きなことや楽しいことは頑張らなくても自然にやれてしまうものです。「頑張る」よりも「楽しむ」を大事にして、仕事や新しい知識の勉強においても、趣味の一環であるように捉えるようにしています。

私は好きでこの職業を選びましたが、気が付けば淡々と作業をこなしているだけになってしまうときもあります。だから、時々は初心に帰って、「楽しむ」気持ちを思い出すようにしています。加えて、楽しんで作業ができている良い状態になると、「何かプラスアルファでやってみようかな」というポジティブな気持ちも生まれ、結果として、それが誰かのためになったり、新しい仕事に繋がったりすることも多いのです。

——— デザインセンターではどのようなスキルやキャリアを得られると思いますか。

佐藤: 論理的にモノを考え、整理するというスキルはかなり磨くことができます。私の担当領域では特に、案件をリードするために自分の考えを周囲にわかりやすく伝え、お互いの合意を取って進めていく能力が非常に重要です。

前職のプロダクトデザインでは、実際に目に見える製品の造形の美しさを考える、感性的な議論が中心でした。一方、現職ではインターフェースの使い勝手やサービスの利用しやすさといった、目に見えづらい体験に対するデザインを、関係者間での合意を取りつつ具体化していく能力が要求されます。

そのため、ユーザー視点での気づきからサービスコンセプトの立案までを、ロジカルに考え抜き、最後にアウトプットへ落とし込むスキルはとても身に着きますね。その上、企画段階からデザイナーとして入っていくので、メンバーが不安に思うなかでサービスのイメージを可視化し、プロジェクト進行の道を切り拓くリーダーシップも必然的についてくると思います。

——— 佐藤さんがこれから挑戦したいことを教えてください。

佐藤: 以前とはキャリアが変わったこともあり、今はまだ業務の中で自分の力不足を実感することがあります。しかし、いずれはサービスデザインの領域について「あの人に任せておけば大丈夫だろう」と、社内外から認知されるような存在になりたいと思っています。そのために様々なジャンルの知識を身に着けていきたいです。

個人的に、ハードとソフトの両面を考えて設計する視点が、より良いユーザー体験を提供するために必要だと思っています。自分は前職ではハード面のデザインを、現職ではアプリのUIやサービス設計を仕事にしてきて、扱う対象の抽象度がどんどん上がっています。この過程で培った両者の視点を活かし、ハードとソフトの双方を横断して方向性を導けるデザイナーになれればと思っています。

■データ

  • 所 属 :デザインセンター エクスペリエンスデザイン部(2021年10月時点)
  • 入 社 :2020年
  • 出身大学:京都工芸繊維大学大学院 デザイン経営工学専攻
    UXデザイン、プロダクトデザイン、ブランディング、事業企画について学ぶ
  • 趣 味 :カラオケ、カフェ巡り、資格取得、個人ゲーム開発
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