自分が手掛けたシステムを将来子どもが使う。そんな夢が叶う職場がここにある(前編)

自分が手掛けたシステムを将来子どもが使う。
そんな夢が叶う職場がここにある(前編)



掲載日 2021年4月5日

富士通株式会社(以下、富士通)が経営方針として掲げるDX企業への変革。その変革において不可欠なデザイン思考は、固定概念や従来の商習慣に捉われず、イノベーションを起こすためのマインドセットであり、また、社員一人一人の想像力を引き出す手法となるものです。デザインセンターには、デザイン思考を実践することが求められ、さらに、富士通全社員に浸透させる役割も期待されています。

デザインセンターに所属するデザイナーの加藤沙織氏は、2006年に富士通に入社、以来、ユーザーインターフェイス(UI)/ユーザーエクスペリエンス(UX)の設計に携わっています。今回、具体的な仕事内容やデザイナーが果たす役割、さらには社員から見た富士通で働くことの魅力について伺いました。

前編のポイント

  • デザイナーとして、病院や自治体などで使われるシステムのUI/UXデザインを担当。
  • デザイナーの業務にはユーザー視点が重要である。
  • デザイナーが製品開発の早い段階から携わることで、提案できる選択肢が広がる。

デザイナーに不可欠なユーザー目線

——— まずは、現在のお仕事について教えてください。

加藤: デザイナーとして2006年に新卒で入社し、サーバー、ストレージ、ネットワークといったITインフラ環境を管理する様々なシステムのデザインを10年程担当した後、2016年にヘルスケア、文教、行政に関わるデザインチームに異動になりました。現在も当該分野のソフトウェアやシステム、サービスのUI/UXを担当しています。

プロジェクトにおいてまず取り組むのは、製品の市場状況やユーザーのニーズを理解することです。電子カルテのバージョンアップを例にお話しすると、ユーザーである医師や看護師の方々へ電子カルテの使用状況や気になる点などを自社製品、他社製品問わずヒアリングを行ったり、最新の技術について調査したり、SEや営業担当から従来バージョンの製品課題を探ったりといったプロセスを経て、新しいUI/UXをデザインし事業部へ提案、関係各所と議論しながら製品開発を進めていきます。

また、開発の初期段階で、ワイヤーフレーム(画面レイアウトの設計図)やビジュアルイメージ、動作を確認するためのモックアップなどで画面イメージを具体化し、関係者の共通認識を構築することも大切な役割です。

——— UI/UXのデザインとは、具体的にどのような作業になるのでしょう。

加藤: UIは、画面のレイアウトやボタンの操作性など、目に見えているものや操作するもの、つまりユーザーとの接点になる部分をどうするか決める作業です。それに対し、UXは、ユーザーが製品を通して得られる体験全体をさします。

たとえば、医師や看護師の方々が患者さんと向き合う時間を長くとれるように、画面操作を極力減らすにはどうしたらいいかを画面の中だけに捕らわれず考えるなど、ユーザーの業務効率や働きやすさを考慮する作業になります。

2つを完全に切り離して考えることは難しいのですが、UIはユーザーとの接点となる画面を使いやすく・わかりやすく設計(デザイン)する、UXはユーザーの立場になって、製品からどのような体験を得られるのかをデザインすると言えると思います。

電子カルテ

——— 製品を作る際のチームはどのような編成になりますか。また、デザイナーとしては、どの段階から加わるのでしょうか。

加藤: 開発元となる事業部の担当者、SE、営業担当、そしてデザイナーという編成が基本です。デザイナーの仕事は、事業部からデザインセンターへの依頼でスタートすることが多いのですが、必ずどの段階から関わる(スタートする)といったルールはなく、ケースバイケースで対応しています。ただ、最近は以前に比べると、企画(上流)から携わることが増えてきました。

病院や自治体向けのソフトウェア製品は、5年、10年といった長期に渡って運用されるケースが多く、デザイナーにも業種についての専門知識が要求されます。そのため、一度携わった製品の次期版を開発するプロジェクトの際は、企画段階から同じデザイナーに声が掛かることが多いですね。

さらに、一緒に仕事をすれば、デザイナーに何ができるかを理解してもらえるので、開発担当との付き合いが長くなればなるほど、プロジェクトの上流からデザイナーが関わることが増えていきます。今は、個々の製品企画だけでなく、製品のラインナップを考える際にも関わっている案件があります。デザインセンターの設置を機に、こうしたケースが今後増えていくといいなと思います。



デザイナーが関わることでソリューションの幅が広がる

——— デザイナーがプロジェクトの上流から関わることで、どのようなメリットが生まれるのでしょうか。加藤さんが考えるデザイン思考やデザイナーの役割と合わせて、お考えをお聞かせください。

加藤: 製品が世に出るまでには、たくさんの人が関わります。開発担当やSEは、新しい技術を取り込みながら従来以上の価値を持つ製品を作り出していかなくてはならず、大変な仕事です。その過程で、ユーザーがどのような環境で製品を使い、使ったときにどう感じるのかという視点については、大切だとわかっていながら後回しになったり、忘れがちになってしまったりすることもあるでしょう。デザイナーが早い段階で関わることができれば、「こうしたほうが使いやすそう」「こうあってほしいだろうな」とユーザー視点の客観的な意見を、本格的に開発が始まる前に、商品コンセプトや画面イメージとして具体化して見せることができます。そうすれば、考えるべき課題やゴールの認識を関係者間でより共有しやすくなるのです。

たとえば、画面のここに置くアイコンをデザインしてくださいという依頼の場合、その段階でデザイナーとしてできることは「形や色を模索する」範囲に限られてしまいます。一方で、もう少し早い段階で関わることができた場合、「そこにアイコンを置くより、全体的なメニューの在り方や見せ方を見直した方が、操作の導線としてわかりやすくなるのでは」といったところまで踏み込んで提案できるかもしれません。もちろんデザイナーだけでは、技術的・専門的な観点は足りませんので、チーム全員が補完し合いユーザー視点に寄せていく、そのバランスを取ることもデザイナーの役割だと思っています。

そのように、「ユーザーに喜んでもらえる製品」「世の中のためになるもの」を作るプロセスを、ユーザー視点・チーム視点といった視座を持って一緒に進めていくことが、私の仕事におけるデザイン思考の実践であり、そのプロセスによってソリューションの幅が広がれば嬉しいですね。これから先も、新しい製品やサービスに関わることにわくわくしながら、常に楽しい気持ちでデザインに取り組んでいきたいと思っています。

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