在家: 実際にプロジェクトを回すとなると、自分だけが「人間中心設計」の視点を持つだけでは不十分で、チーム全員がその視点を持たないと、ユーザー中心の製品やサービスはできません。そういう意味でも、デザイナー以外の方みんなに必要なスキルだし役立つ資格だと思っています。
コンピタンスの一覧ですが、初心者ならA11~13(上の図版より、A11.プロトタイピング能力、A12.ユーザーによる評価実施能力、A13.専門知識に基づく評価実施能力)が取り掛かりやすいと思います。まずは自分が作ったものをユーザーが想定通り使えるかテストする、そこでユーザーが使えない、わからない、というのを目の当たりにするのは、勉強のきっかけとしては大きいと思います。
揖: これは、コンピタンスで言うとC1(HCD適用・導入設計能力)の話になりますが、ユーザーテストは開発プロセスの改善のきっかけとしても、とても有効です。デザイナーが改善提案するよりも、ユーザーが目の前で“使えない”のを見るほうがずっと説得力がある(笑)。
どのユーザーも同じところで躓くところを見てもらうと、もう直すしかないですよね。じゃあ、ユーザーに使ってもらえるのを作りましょう、となって、開発プロセスから改善していくケースも多いです。
——— ショック療法ですね(笑)
在家: 実際に目の前でユーザーが使えなくて困っていたら、作った側はすごく焦りますし、「ユーザーテストを繰り返しながらユーザーが使いやすいものを作る」重要性も深く理解できます。
揖: デザイナーにとっても、ユーザーと直接向かい合う時間を持つことは重要です。専門家のバイアスが強くなりますし、定期的にユーザーテストをしないと、勘が鈍るということもあると思います。
在家: 話を戻すと、逆にA8(製品・システム・サービスの要求仕様作成能力)A9(情報構造の設計能力)あたりは、SEの方々にはとっかかりにしやすいと思います 。ここを入口にして、新しいスキルを身に付けるのがいいのではないでしょうか。
——— なるほど。HCDのスキルを伸ばすルートはいろいろあるんですね。
富士: 例えば、A9(情報構造の設計能力)はSEのお仕事そのものですよね。実際、デザイナーよりも得意な方は多いです。
SEはシステム全体をみるための情報設計は長けているけれど、ユーザー視点で考えるのに慣れていないかもしれません。従来はそこをデザイナーが補っていたけれど、そこで役割分担して満足するのではなくて、プロジェクト全体に人間中心設計の思想を取り入れてもらえると、より良いものづくりが実現できるように思います。
デザイナーが得意な分野は確かにありますが、それ以外はプロジェクトに関わる人みんながやれる/できるようになるといいですよね。
善方: 実際、最近はデザイナー以外の方が入会することも増えてきたように思います。例えば、ウェブサービス開発をやられているような方が、積極的に資格を取って実践で活用しているのだと思います。
揖: HCDの資格の知名度も上がりましたね。
前は名刺に書いていても特に反応がないことが多かったのですが、最近はそこから会話が広がることがあって、知られてきたなと実感します。ここ2~3年のことです。
富士: 応募者も、ここ3年くらいで増えてきました。「スペシャリスト」を取得した2015年と「専門家」を取得した2019年では、認知度がすごく高まったなと周りの変化を感じます。