個と企業の新たな関係性を~「FACE」の挑戦

掲載日 2020年11月12日



「新しい文化を創り出す」「わたしたちの世界は、わたしたちで良くする」。富士通デザインセンターのデザイナーたちが、それぞれの個性や思いを直接発信する「FACE」プロジェクトを進め、その一環としてWEBサイト「FACESITE」を立ち上げている。新たな活動の中心となったデザイナーに話を聞いた。

「FACESITE」のページから

デザインへの個々の思いを直接発信

「急速な科学の進歩で生まれた格差。少しでもデザインの力でその格差を解消したい」「点と線と面を人と結びつけるのがデザイナーの役割であり宿命」「地図のない世界を探るコンパスとなり、お客さまと一緒に未来を切り拓いていきたい」


「FACESITE」では、個々のデザイナーが自らのページを作成し、それぞれがデザインの世界に飛び込んだきっかけや大切にしていること、それにデザイナーとしての実績や経歴をつづっている。
2019年11月の開設から1年。現在、22人のデザイナーが参加している。

「FACE」を運営するメンバーたち

「個の時代」にデザイナー自らの言葉で

「FACE」プロジェクトを立ち上げたメンバーの1人、宮武志保。「個の時代」が叫ばれる中、インハウスデザイナーは企業の影に隠れがちで、仕事へのモチベーションを保つことが難しいと感じることがあった。そこで「社外活動を含め、デザイナーとして個の活動をアピールする場を作ろう」との思いから、2018年4月に仲間を募り、5人で「FACE」プロジェクトに取りかかった。

「私たちは『富士通のデザイナー』ですが、そこにも個性がある。その個性や思い(フィロソフィー)に惹かれて直接仕事の相談があったり、デザイナーが社会との接点を持つことでビジネスに繋がったりする形式があっても良いのではないかと思ったのがFACE立ち上げのきっかけです。」

「FACE」運営について議論するメンバーたち

メンバーの熱い思いが経営層を動かす

「FACE」立ち上げにあたって最も時間をかけたのが経営層への説得だった。当時の「富士通デザイン会社」社長を始めとする役員に直談判し、2、3か月に1回、顔を突き合わせてデザイナーたちの思いをぶつけ、激しいやり取りも繰り広げられた。

「サイトを作るなら富士通を前面に出すべきではないか(社長)」「それは逆。まず個人を出し、このデザイナーが富士通にいると理解されるロジックでないと意味がない」(参加したデザイナー)
さらに経営層からは「なぜ、富士通のサイトでやる必要があるのか?個人でそれぞれやればよいじゃないか」「ヘッドハンティングされたら会社としては困る」などの声もあった。

そこで運営メンバーは、HEARTチーム(全体運営)やBRAINチーム(分析、解析)、フットチーム(資金管理、ルール作り)など体の部位のネーミングによる5チームにわけて体制を整えたほか、リスク管理対策として必ず複数でチェックするなど対応策を考えたうえで、「企業の成長につながる循環も生み出せる」と「FACE」がもたらす会社のメリットも強調し、「ぜひFACEプロジェクトを立ち上げたい」との思いを訴え続けた。

「社長の指摘も理解できました。それを説得させるための議論をメンバーで繰り返し、社会動向や他社事例などをリサーチし提示するなど、作戦を立てました。結果として、社長対策がFACEの企画を強くすることに繋がり、今の姿になったと思っています」と振り返る。最終的に熱意は受け止められ、「FACE」にゴーサインが出された。

「デザインへの思い」勉強会など重ねて執筆

「FACE」立ち上げにこぎつけたメンバーたちは、サイトの中で各デザイナーがデザインへの思いや哲学を語る「PHILOSOPHY」の欄に最もこだわった。

「デザイナーは熱い思いを持って仕事に取り組んでいる人がとても多い。それを改めて言葉にすることで、『共感』が生まれ、それが次へと繋がると思っています。」

ふだん記事を書くことに慣れていないデザイナーのために、同僚や先輩をサポート役につけて本人が気づかない魅力や個性をアドバイスしてもらったほか、メンバーによっては自主勉強会を開くなど、それぞれが苦心を重ねてページを作り上げた。2019年11月11日、「FACESITE」は公開された。


未来の「個と企業の関係性づくり」の第一歩に

運営メンバーらは公開後、「FACE」を、さまざまな業界のデザイナーやデザイナー志望の学生らも訪れるイベント「Designship」で紹介するなど対外的にアピール。「FACE」は、富士通デザイン部門の顔となった。「『FACESITE』を見て面接に来たというインターン生がいた」「海外のデザイナーからいい試みだと言われた」などと評価されるようにもなった。

イベント「Designship」(2019年11月)で「FACE」をアピール

 

2020年10月22日には、コロナウイルスの影響で会社説明会の開催が難しい中、デザイナー志望の学生などを対象にしたオンラインイベント「MEETUP」を実施。予想を大きく上回る50人以上が参加した。デザイナーだけでなくマーケティング専門の志望者もおり、宮武は「デザインセンターの役割が増えて求める人材も多様化する中、新しいアプローチができたことは一つの成果でした」と手応えを感じている。

これまで一般の目に触れる機会が少なかったインハウスデザイナーの個性を表に出す新しい試み。「未来の『個と企業の新たな関係性』を作り出す第一歩にしたい」宮武たちはそう考えて「FACE」での挑戦を続ける。

デザインセンター 宮武 志保
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