「eスポーツを盛んに!」
デザイナーの思いが生んだ
観戦システム「CLIP-LIVE」

掲載日 2020年11月04日

ゲームの対戦をスポーツ競技として捉えるeスポーツを、多くの人に楽しんでもらおうと開発されたeスポーツ観戦システム「CLIP-LIVE」。2020年1月の「東京eスポーツフェスタ」で注目されたこのシステムは、富士通デザインセンターのデザイナーの提案をきっかけに開発された。年齢や障がいの壁を越えて楽しめるeスポーツ文化を日本でも盛り上げたいと意気込むデザイナーの思いを聞いた。

CLIP-LIVE東京eスポーツフェスタPV


あらゆる参加者が楽しめる観戦システム

eスポーツ観戦システム「CLIP-LIVE」は、eスポーツのプロのプレーヤーをはじめコアなファンから初心者まですべての参加者が楽しめるように開発された。

観客は中央のゲームのプレイ画面と、その左右に広がる二つの画面を観戦する。左右の画面には、プレーヤーのハイライトシーンをAIが自動的に解析して抽出した映像が、クリップ(丸状のサムネイル動画)で表示される。



ゲーム好きのデザイナーの自主研究から新ビジネスに

「CLIP-LIVE」を最初に提案したのは、城愛美ら富士通デザインセンターのデザイナーたち。もともとゲーム好きという城は、デザイン部門オリジナルの制度、C10活動(業務時間の10%をビジネスの種となる自主研究や自己鍛錬に使用できる制度)でeスポーツを研究。デザイナー仲間にもゲーム好きが多いことから、「ICTを使って面白いことができないか」と考えたと話す。2018年末に、「CLIP-LIVE」のベースとなる観戦システムのデモ映像を試作したところ、開発部門などから一緒に取り組もうと声がかかり、本格的なシステム開発が動き出した。

城は「eスポーツ市場は海外では大きいが、日本では大会の賞金も少なく、まだクローズドされている印象があります。少しでも好きになってくれる人が増えて日本でも盛り上げたいと思いました」と動機を語る。

直感的に楽しめるインターフェイスに

「CLIP-LIVE」では、ゲーム開発メーカー「セガ」の承諾を受けて「ぷよぷよeスポーツ©SEGA」が採用された。画面上で次々と落ちてくる「ぷよ」を効果的に消していく技などを競う対戦型パズルゲームだ。

城らがデザインにあたって特に意識したのが、初心者でもゲームを理解して楽しめるインターフェイスだ。左右の画面にハイライトシーンの動画を流すクリップは、ハイレベルな技ほど円を大きくしてレインボーに光らせ、「今すごいことが起きている」と直感的に理解できるデザインとした。さらにクリップをタッチすると動画が再生されるなど、触って楽しめる機能も加えた。

ゲームファンが触って楽しめる機能も

一方で、観戦者の中心となるコアのファンためのデザインにもこだわった。「ぷよ」の状況を可視化することで、プレーヤーごとの積み方や消し方の特長、それに試合の展開もわかるように工夫を重ねた。

「もっと広めて」好意的な声相次ぐ

「東京eスポーツフェスタ」では、プロのゲーマーによる対戦に実況の解説も加わり、ひときわ来場者の注目を集めた。プレーヤーや観戦者へのアンケートでは、「CLIP-LIVE」について、回答者の80%以上から「プレーや観戦の体験が盛り上がった」「試合内容がわかりやすくなった」と好意的な意見が寄せられた。また、自由記述でも、「とてもいいサービス。もっと広めてほしい」「他のゲームでも使えるようになることを期待します」と今後の展開を期待する声が相次いだ。

「障がいなどの壁を越えて広がる可能性

「CLIP-LIVE」の可能性は、通常のゲームの枠にとどまらない。2020年1月、「NTTe-Sports」社の設立会見では、会見場と北海道の病院を結んで選手と障がい者が対戦するデモが披露された。eスポーツは障がいの壁を越えて楽しめる競技であるとともにコロナウイルス対策でオンライン需要が高まる中、多くの人が安心して楽しめることが改めて認識された。
「CLIP-LIVE」は現在、「NTTe-Sports」社が2020年8月に東京・秋葉原にオープンさせたeスポーツ交流施設「eXeField Akiba」に展示され、訪れた人はプレーなどを楽しむこともできる。

城らは「CLIP-LIVE」は、野球などリアルスポーツの観戦や選手のコーチングなどビジネス化に向けて様々な展開が考えられると強調し、「現在、オンラインの大会を企画中ですが、将来的には遠隔地をつないで地域活性化や人口増につなげるような展開も考えたいと思います」と話している。
エンターテイメントの新たな文化の創造に向けて「CLIP-LIVE」の可能性がどこまで広がるか、期待が高まっている。

デザインセンター 城 愛美
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