デザイン思考は目的ではなく手段だ。4名のデザイナーが語る富士通のカルチャーとは

デザイン思考は目的ではなく手段だ。
4名のデザイナーが語る富士通のカルチャーとは



掲載日 2021年6月23日

DX企業への変革を経営方針として掲げる富士通株式会社(以下、富士通)。新しいイノベーションを起こすためのマインドセットであり、社員の想像力を引き出す手法となるデザイン思考の実践、さらにそのデザイン思考を富士通全社員に浸透させる役割も期待されているデザインセンターでは、キャリア採用も積極的に行っています。そこで、デザインセンターに所属する入社年度も所属チームも異なる中途入社の4名に、入社して感じたデザインセンターの特徴やカルチャー、組織風土について伺いました。

記事のポイント

  • 富士通のデザイナーはそれぞれ固有のスキルを持つ専門集団。各々が「秘伝のたれ」を持っている
  • 「富士通らしさ」とは何かについて、4名とも共通して「人が良く、風通しも良い」ことを挙げた
  • 「デザイン思考」とは、ユーザーの視点を持ち本質を捉える思考だが、あくまで手段に過ぎないことを頭に留めておくべき

多種多様なキャリアを積んだ、層の厚いデザイナー集団

——— 転職で富士通を選んだきっかけや理由は?

(左)佐藤壮一郎さん(エクスペリエンスデザイン部所属・2020年入社)
(右)棈木(あべき)緑さん(ビジネスデザイン部所属・2018年入社)
※所属は2021年5月時点のものです。

佐藤:  前職では住宅設備メーカーでプロダクトデザインの仕事に携わっていました。転職活動をするうえで、デザインとひと言で言ってもいろんな方向性があるからこそ、自分がデザイナーとしてキャリアを重ねていく上での理想の会社はどこなのか、と悩んでいました。富士通とは大学生時代に産学連携で一緒にプロジェクトを担当したこともあって、社員の雰囲気や働き方を知っていたり、いろいろアドバイスをもらってすごく自分のためになった経験があったので、私の場合はそれが大きな決め手になりました。

棈木:  私は前職では自動車内装部品メーカーで新製品の企画やデザインの仕事をしていたんですが、車以外の幅広い分野の仕事を手掛けていきたいなと思って転職活動をしていました。なかなか希望の会社が見つからなくて悩んでいた時に、出身大学の助教授が富士通デザインセンターを紹介してくれたんです。当時はデザインセンターの組織を紹介する上下2冊の冊子があって、それを読んでデザイナーの層が厚く幅広い領域の仕事ができそうなこと、デザイナー自らが発信するような雰囲気がある会社だと感じたことが理由ですね。

寺西:  その冊子は社内の知識や技術をまとめたもので、リクルーティングや社内のデザインの啓発に使われていましたよね。

岩井:  私の場合は、デザインセンターで勤めている大学の先輩がいて、会社を紹介してもらったのがまずきっかけですね。前職では新卒入社したIT系の制作会社で、UIデザインをメインにグラフィックやムービーの制作などをやっていたんですが、転職をしたいと思って悩んでいたときに、うちを受けてみない?とお声がけいただいて。でも、一番の大きなきっかけは「FACE」の活動を知ったことです。

  • 「FACE」とは富士通で働くインハウスデザイナーの想いやストーリー、個性を社内に限らない幅広い活動を発信する活動。
(左)岩井宗一郎さん(フロントデザイン部所属・2020年入社)
(右)寺西広太郎さん(経営デザイン部所属・2004年入社)
※所属は2021年5月時点のものです。

岩井:  大企業というと初動に時間がかかったり、大きいが故に自分のやりたいことができるのかどうかと、少しネガティブなイメージがあったんです。でもデザイナーひとりひとりについて掘り下げて紹介し、富士通の社内のデザインの仕事だけじゃなく、社外の仕事にもつなげる活動をしている「FACE」サイトを見て、もちろんデザイナー自身が魅力的でいいなと感じましたし、そもそも「FACE」の活動があること自体が素晴らしいって思ったんです。また、社会人経験が少ないこともあって、これが絶対にやりたいというよりは、自分の可能性を広げられるような会社で働きたいと思っていました。「FACE」を通じて、富士通では幅広い分野の仕事ができること、デザイナーが思い思いに仕事をされていることを理解できたのが大きな後押しになりました。

寺西:  産学連携や大学の先輩や教授など、みなさん人とのつながりからご縁ができて入社されたんですね。私は前職ではデザイン事務所でグラフィックデザインをやっていて、富士通が3社目です。私の場合は転職したのは17年前なので参考にならないかもしれませんが…。「世界の車窓から」っていう番組知っていますか?

棈木:  知ってます!

寺西:  その「世界の車窓から」のスポンサーが富士通なんです。そろそろ転職しようかなと考えていた時期にその番組を見ていて、前後に流れるCMがジェリー・ロペスというサーファーがただサーフィンしているという映像なんですけど、そのCMにセンスを感じてこの会社で働きたいって思ったんです(笑)。

——— みなさん違う職種や業種出身ですが、中途入社の方の前職の分野は広い?

寺西:  比較的広いと思います。富士通の事業規模や分野自体が広いので、デザイナーに対するニーズの変遷もありいろいろな経歴の人がいるんだと思います。みなさん前職の経験に近い仕事をしていますよね?

棈木:  そうですね。私は現在UI/UXデザインに携わっていますが、最近は自動車メーカーへのソリューション提案を行う富士通社内のMobilityソリューション事業本部とも一緒に仕事をさせてもらっているので、業界という意味では前職の自動車業界とつながっています。



やりたいことがあればチャレンジできる度量の深さや風通しのよさがある

——— 前職と比較して、富士通に入社して感じる「らしさ」とは?

寺西:  優しい人が多くて働きやすい環境というのは特徴だと思います。困ったときでも非常に相談しやすいし、いろんな人の目が行き届いている。

佐藤:  人に相談したり聞いたりしやすい文化があるので、いろいろな人のスキルを吸収しやすいですよね。

棈木:  当たり前のことかもしれませんが、社会人としての素地がきちんとできている方が多いという印象です。仕事がしやすいですし、スケジュール通りに進行できるのもその環境があるからだと思います。あとは、風通しのよさはすごく感じています。「FACE」ももともとはひとりの社員の考えから生まれていますし、本人が希望すればやりたいことを仕事につなげることもできます。自分の思いややりたいことを仕事や形にできる環境はなかなかほかではないかもしれないですよね。

佐藤:  前職では、ブランドを維持するための美しいデザインってなんだろう、とデザイナーみんなが1つの目標に突き進み、「ひとつの秘伝のたれ」を作っているような感じがありました。一方富士通では、デザイナー各々が秘伝のたれを持っているイメージです。スキルをそれぞれが熟成させていて、自分の方向性を持って働いていますね。

——— 実際に働き始めて驚いたことや発見はありますか?

佐藤:  先ほどの内容にも通じますが、富士通では200人ほどのデザイナーがみんな、それぞれの個性を持っていることが驚きでしたね。自分の強みを発揮したり、何か新しいことにチャレンジできる環境だと入社して感じました。

棈木:  前社ではクライアントにひとつの提案をする際にも承認を得なければならない上司が多くて、仕事に多くの時間がかかっていました。富士通に入社してびっくりしたのは、問題が起こっていなければ、リーダーの承認のみで仕事を進められ、あとはほぼ担当者に任せてくれるという点です。多くの承認を通過していると仕事に間に合わないというのもあると思いますが、裁量権が大きいのでとても仕事を進めやすいです。みなさんはどうですか?

寺西:  やりたいことにチャレンジできる風土があるので、それは個人の裁量権にもつながりますよね。あと、自分のやりたいことを企画化して提案し、通れば研究費というかたちで予算が降りる制度があります。それを使えば自らプロジェクトを始められる環境があり、驚きました。

岩井:  私は新型コロナウイルスの影響下で入社したんですが、転職活動の全てがほぼフルリモートでできたという点に驚きました。入社して今日までで4回くらいしか出社していないです。メンターの方のプロジェクトに入らせてもらうことが多くて、サポートもしっかりしていただけるので実現できていることだと感じています。



本質を見極め、本当に価値のあるものとは何かを追及し続ける

——— デザインセンターが取り組んでいる「デザイン思考」の浸透。みなさんにとっての「デザイン思考」とは?

寺西:  個人的には、手段と目的を混同しないようにするのが大事だと思います。富士通はデジタルトランスフォーメーション(DX)企業への変革を目的としていて、その手段としてデザイン思考の全社への浸透を考えています。それによって、全社の提案力やサービスが向上したり、クライアントとの関係性が変わったりする。重要なのは「デザイン思考」という手法ではなく、あるべき姿への変革を起こしていくカルチャーを作ることかなと思いますね。

岩井:  「デザイン思考」とは、ただ依頼された内容に沿ってアウトプットするのではなく、本当にユーザーにとって価値があるものは何なのかをとことん考えることだと思います。ユーザーの価値を多角的に捉えて、アウトプットを出し、そこからまた修正して、作ってというのを繰り返していくこと。かつ、どうやって人を幸せに豊かにしていくかを考えることでもあると私は思います。

佐藤:  ユーザーのことを考えて作るという点は、どのデザイナーにも共通している根幹部分なのではないかという思いがあります。また、クライアントワークの場合は、ユーザーのニーズを突き詰めて考えたとき、「クライアントに言われたことは果たして正解なのか?」とデザイナーは一度考えると思うんです。それを見極めるためにも物の本質を考えるのが大事だと感じています。

棈木:  デザイナーって、デザインを考えるときに「デザイン思考をしよう」と思っているわけではないですよね。アウトプットを出すときに踏む過程を言語化したとき、それがデザイン思考と呼ばれている。

佐藤:  確かに、デザイナーはただ「いいものを作りたい」と考えています。

棈木:  「デザイン思考とは何か」と考えるより、「デザインをするときにデザイナーが考えていること」に着目すると良いかもしれません。それが、先ほどみなさんが言っていた「ユーザーにとっての価値を考える」だったり、「物の本質を見抜く」といったことなのかなと思いますね。



自分の選択肢を増やし、新たな領域を広げることで社会に役立つデザインの形に

——— 最後にみなさんの今後のキャリアの目標を教えてください!

岩井:  ブランディングとユーザビリティをきちんと両立できるUI/UXを作れるようになりたいですね。少し前に作ったUIなんですが、ブランディングを高めるために入れた要素が、ユーザビリティを疎外するという検証結果が出てしまって…。うまく両立していくようなUI作りができるようなデザイナーになりたいなというのが直近の目標です。

棈木:  今まで関わってきた仕事は、既に固まった企画の範囲内でUI/UXを検討したり、決められたルールを守って画面を量産するなどといった業務内容で、立ち上げから考えて進めるというのはできていませんでした。新しいソリューションを戦略から一緒に考えて、一緒に立ち上げて、最後まで完遂するということができたらと考えています。

佐藤:  ひとつの体験を作るときに、それをモノとして形にするのかソフトウェアで形にするのか、いろいろ選択できるようになりたいと考えています。何が一番いいのかを自分で判断して、その選択肢としてソフトとハードの両方をもったうえで、解決や理想像に対する提案をしていけるようになりたいです。

寺西:  デザインセンターの強みは、大きな仕事に関われることだと思っています。つまり、大きく社会を助けるとか人を幸せにするなど社会的なインパクトを出せる仕事に携われるということかなと。そんな大きな仕事を成し遂げたメンバーの一員になることが今後の目標です。

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