CMF design

掲載日 2018年10月5日



CMFデザインは、お客様と製品のかけ橋

色は第一印象に大きく貢献する

あなたはモノを見たり触ったりして「あ、いい色だな」「良いさわり心地だな」「○○に合いそうだな」と、無意識のうちにイメージを膨らませて良し悪しを判断した経験はありませんか?私たちはそんなヒトとモノが出会う瞬間の第一印象の好感度や、使い込んでいくうちに愛着がわいて長く使いたいと思えるような商品の外観をデザインしています。それが色(color)・素材(material)・仕上げ(finish)、略して“CMF”であり、プロダクトデザインの専門分野の一つとなっています。

富士通とCMFデザイン

私たちがこのような専門的な活動を開始したのは1990年代初め。携帯電話やパソコンの使用シーンがビジネスからパーソナルへと広がりを見せていく頃です。デザインを通じ、富士通の製品をお客様により身近でフレンドリーな存在にしていきたい、という想いから徐々に活動を広めていきました。現在では、CMFデザインが競合他社との差別化や優位性をもたらし、製品の価値と個人の価値観をつなぐ大切な役割を担っています。

90年代初めのビジネスライクなCMF(左)。近年はカラフルで個性豊かなCMF(右)が主流になってきています

活動のポイント 1: 知る

私たちは十数年に渡り、お客様、市場、各種のトレンド情報を収集し、データベース化しています。そこから読み取れるのは、現代の生活者は過去に比べると自分らしい生活の仕方に対するこだわりが強くなってきている、ということです。そんな個性化・多様化のニーズに応えるため、私たちは常に社会の動きや人々の心の動きを捉え続けています。

毎年春には国際見本市ミラノサローネ(SALONE DEL MOBILE)を視察しています

活動のポイント 2: 分析する、先を読む

こうして得られた心理的要因・技術的要因・時代の気分や雰囲気(トレンド)などを材料に、アルゴリズム化した独自の分析手法を使い、キッズからシニアまで、それぞれのお客様にフィットしたCMFデザインを製品へと提案・反映させています。

CMFデザイナーはたくさんの資料を参照しながら、未来に向けた検討をします

製品の例 1: シニア層の嗜好性を反映したカラーアソート提案

ここからは具体的な事例を交えてお話したいと思います。

シニアにとってスマートフォンはハードルが高い存在と思われがちです。そこで、そのハードルを低くするために、デザイナーはあらゆる面からのアプローチを試みました。例えばこの世代ならではのカラーや質感に関する嗜好性を量る調査や持ち物の分析、彼らの価値観を形成した時代背景の検証など、お客様のことを理解するための活動を重ねました。

最新の製品では、“日常の中に溶け込みながらも、ハッとする特別な色彩”をテーマに、普段使いに最適な4色のアソートを提案しています。お客様に選んでいただきやすい色味であることに加え、その魅力をより引き立てるための質感作りにこだわることで、それぞれを選ぶ方のマインドに響く仕立てを実現しています。

丸みを帯びたやさしいフォルムに良く合うカラーリング。らくらくスマートフォンme F-03K
写真左から、
・みずみずしい印象を粒子のきらめきで表したブルー
・華やかさと上質さを感じられるつややかなピンク
・さらりとした手触りで柔らかい輝きの映えるゴールド
・わずかに帯びたブルーの色味が上質を物語るブラック

製品の例 2: オトナのインテリアタブレット提案

タブレットはスマートフォンよりもサイズ的な存在感があるため、人の目に留まりやすいものです。そこでデザイナーはどんなシーンにもマッチするCMFデザインであることにこだわりました。

例えば外出先では、手に持った時のたたずまいがスマートに見えるような効果を考えました。色は心理的な重さを感じさせないカラードブラックを採用し軽快な持ち運びを演出。また、表面に施したリズミカルなパターンは、万が一ぶつけてしまって傷が付いたとしても、後々その部分が気にならなくなるようにするための工夫です。

室内で使うシーンでは、暮らしのインテリアに溶け込むように、普段から身に着けて馴染んでいるモノから着想した要素を用いるなど、様々な角度からのアプローチでアイデアを展開しました。

お客様の普段使いをイメージし、感性に訴求するデザイン・洗練された柄や触感・ニュアンスの効いた様々なカラーを検討しました
arrows Tab F-02Kはドイツのデザインアワード iFデザイン賞、RED DOT賞、国内のグッドデザイン賞を受賞しました。製品は落ち着いた大人の世界観が演出され、所有感を満足させる仕上がりのアソートとなっています
写真左から、
・着る服を選ばなく誰でも気軽に手に取れるベースカラーのブラック
・持っていて落ち着きがあり少し温かみも感じるオフホワイト

エンジニアリングとの連携・製品クオリティの向上

CMFデザイナーのアイデアを具現化するためには、技術開発が欠かせません。新しい価値を作り出すために私たちのチームにはデザイナーと設計・技術者を結ぶ“デザインエンジニア”という素材とその華燭・加工技術に精通した専門職が存在します。彼らは「つくり」や「素材」はもちろん、コストも考慮した上でより高いクオリティの製品開発を目指し、国内外のメーカーコントロールを行います。そうして、デザイナーのイメージを現実のものに置き換えていくのです。

では、ここでデザインエンジニアの量産支援の一例を紹介しましょう。「arrows NX F-02H」の開発では、リアカバーにガラス繊維を採用するという大きなチャレンジをしました。最初はCMFデザイナーが韓国のガラス素材メーカーへ出向き、多くのサンプルを試作・検討し、カラーや織り柄のデザインを決定しました。次に、量産でこのデザインを実現するために、中国のベンダーでガラス繊維をハイブリッド成型し、リアカバーとして外観を左右する華燭(塗装)工程へと進みます。このプロセスをデザインエンジニアが担当しました。現場では、ガラス繊維上に発生するゆず肌やグラデーション塗装がうまく再現されないなど、様々な問題が発生しました。そこで問題解決のために彼らは二度、中国へ赴きました。設計者や塗料メーカー・塗装ベンダーと緊密に連携し、現地塗料メーカーでのラボ調色、工程見直し、塗膜構成の入れ替え等々、思い切った施策を重ねた結果、問題をクリアし、製品レベルのクオリティに到達させることができました。

arrows NX F-02Hはドイツのデザインアワード RED DOT賞と、国内のグッドデザイン賞を受賞しました
アイデアやリサーチ結果はエンジニアリングによって様々なデザインサンプルへと具現化されます

最後に

出会った瞬間のときめきを。愛着のわく製品づくりを目指して・・・
私たちはこれからも技術部門・研究所・メーカーなど様々な方々と幅広く協業体制を築きながら、人に寄り添うCMFデザイン開発に取り組んでまいります。

サービス&プラットフォーム・デザイングループ益山 宜治
 深谷 正子
 出川 さやか
 土居 慶祐

(注)部署名・肩書は取材当時のものになります。

(左から)土居 慶祐、出川 さやか、益山 宜治、深谷 正子
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