CELSIUS M770 Series

掲載日 2018年3月14日



グローバルプロジェクトによって作り上げた
プロフェッショナルの道具

CELSIUS M770は、3D CADやCGを駆使するエンジニアやデジタルクリエイターなど、マシンパワーを使いこなすプロフェッショナルのために開発された、ハイエンドワークステーションです。

「黒い箱」のUXデザイン

ワークステーションデザインは外観だけでなく、保守やカスタマイズを素早く行えるように、装置内部のユーザビリティをいかに向上するかがポイントです。従来もユーザビリティには配慮していましたが、今回はプロフェッショナルの道具として、メンテナンスやアップグレードの作業時間が1秒でも短くなるようにすることや常に高いパフォーマンスを発揮できるようにすることが重要と考え、レイアウトから根本的に見直しました。ここでは、その開発プロセスにおける3つのコミュニケーションポイントをご紹介します。

ポイント1:お客様を知る

レイアウトの見直しに先立ち、改めてお客様の現場観察に取り組みました。プロフェッショナルの仕事場を訪ね、働き方を観察し、生の声を直接聞く。その中で、仕事の道具としてのワークステーションには改善すべき点が多くあることに気づきました。例えば、忙しい時に限って処理が遅くなったり、騒音が大きくなったりします。内部に埃が溜まることで起こるトラブルです。このような時、現場では一度作業の手を止め、掃除機で装置内部の埃を取り除いて対処しています。もちろん埃が内部に入らない構造が理想ですが、ワークステーションはパワフルな処理能力上、多くの熱を発生するため、どうしても通気口が必要であり、密閉構造とするのは難しいのです。そこで、内部が掃除しやすいことを一つのテーマとしました。上の写真でわかる通り、CELSIUS M770には、内部のケーブルがありません。これは保守やカスタマイズの時の操作が簡単になるだけでなく、掃除がしやすくなることも意図した結果です。

ポイント2:グローバルを知る

富士通は欧州にも多くのお客様がいらっしゃり、ドイツには拠点もあります。そこで、海外のお客様の使用実態を把握する取り組みを行いました。最近は日本のオフィス環境も変化していますが、欧州にも様々なオフィス環境があります。体格の違いによりエルゴノミクスファクターも異なります。欧州の使用実態の特徴として、本体を机上ではなく、デスク下に設置している点が挙げられます。この気づきから、CELSIUS M770には正面の上部に大きなハンドルを付けました。これにより、デスク下から簡単に引き出すことができるため、メンテナンス等の作業が容易になります。

ポイント3:UX視点の社内ワークショップ

開発の初期段階には、部門横通しでワークショップを実施しました。当たり前では?と思われるかもしれませんが、これまでのワークステーションの開発は製品特性上、技術系の検討会が中心でした。今回はUX視点のワークショップをマーケッターやエンジニアを交えて実施。実際に自社製品や他社機に触れつつ、それぞれの視点から意見を交わしました。この場面においてのデザイナーの役割はお客様視点で製品の価値をアップするアイデアをメンバーから引き出すこと。メンバーの意見やアイデアを、簡単なポンチ絵を描いて「それは、こういうことですね」とさっと視覚化する。これにより、コストや技術課題を超える「お客様価値」をメンバーで共感できたと感じました。

海外拠点との連携

デザインセンターの拠点は日本とドイツにあります。本プロジェクトはドイツにいるデザイナーと作業を進めました。以前と比べてIT環境が充実しましたが、それでも時差や言葉によるコミュニケーションの難しさは多く存在します。また、日本とドイツではライフワークバランスの価値観が異なるため、今回の様なグローバルプロジェクトは、お互いの価値観や視点を理解し、限られた時間の中で質の高いコミュニケーションを取ることが重要です。

最後に

活動の成果が実り、今回ご紹介したCELSIUS M770は、GOOD DESIGN AWARD 2017を受賞し、さらにドイツのiF DESIGN AWARD 2018では最優秀賞であるゴールドアワードを獲得することができました。
一見すると「黒い箱」ですが、内部にはUX視点の様々なアイデアが詰まっています。ユーザーや使用環境にあわせてアイデアを検討し、取り入れていく余地もまだまだありそうです。また、MR(複合現実)の普及や、デジタルテクノロジーの拡大によって、ワークステーションに求められる可能性も広がっています。
今後は、コミュニケーションの活動範囲を広げ、更なるグローバルな現場観察や、社内外の共創活動を活性化したいと思います。

サービス&プラットフォーム・デザイングループ諸岡 寿夫
 Mark Friesen

(注)部署名・肩書は取材当時のものになります。

(左から)諸岡 寿夫、Mark Friesen
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