SmartHR宮原CDOが富士通にやってきた!第二回CDO JAM開催

SmartHR宮原CDOが富士通にやってきた!
第二回CDO JAM開催



掲載日 2023年5月29日

富士通と親交のある企業の組織長と富士通のデザインセンター長(CDO)の座を交換し、CDOとデザインセンターメンバーが刺激し合う約2時間のトークイベント「CDO JAM」の第二回が開催されました。

今回、富士通デザインセンターのCDOを務めていただいたのは株式会社SmartHR(以下、SmartHR)の執行役員VP of Product Design宮原功治さんです。ここでは、当日のイベントの様子と、終了後に行われた宮原さんと宇田デザインセンター長のインタビューをお届けします。



スタートアップのスピードを感じる

第一回CDO JAMでは富士フイルムの堀切デザインセンター長をお迎えして、改めてデザインについて考えディスカッションを行いました。今回行われた第二回の一日CDOは、国内シェアNo.1※のクラウド人事労務ソフトを提供するSmartHRで2021年1月からプロダクトデザイン領域の責任者を務めている宮原さん。SmartHRは2013年に創業、その後急成長を遂げ2021年にはユニコーン企業の仲間入りを果たしています。

今回のCDO JAMでは、宮原さんと「スピード」をテーマに、デザインセンターのメンバーが質問したり一緒にディスカッションしたりしながら、富士通が必要なスピードを手に入れるためのたくさんのヒントを得ることができました。

本イベントは、富士通デザインセンター内での限定イベントとして行われ、リアルな会場とオンライン(Teamsのオンライン会議を活用)とのハイブリット開催で約120名が参加しました。

イベントの最初は前回同様、本来の富士通デザインセンターCDO宇田さんから、宮原さんにNFTで「CDOバッジ」を送るところから始まりました。このCDOバッジはブロックチェーン上で所有者の履歴が残るので、いつ誰がCDOを務めたのかが記録され、その履歴が蓄積されていくことで、CDOバッジに知見の蓄積の象徴としての価値が生まれていきます。

プログラムの前半「CDO TALK」では、宮原さんによる「DC(デザインセンター)の知らないSmartHRが実践しているスピードの世界」と題したプレゼンテーションが行われました。

イベントオーガナイザーをしていた宮原さんが、音楽スタートアップを共同創業してデザイン責任者を務めたところから、複数のベンチャー企業と上場企業での経験を経て、どのように現在のSmartHRの職に就いたのか。また宮原さんがSmartHRに入社してからどのようにデザイン組織を創って率い、デザインシステムの立ち上げを行ってきたのか。「7つの大罪期」などオリジナルの名前が付けられた成長のフェーズごとにリアルな体験を踏まえつつ、ご自身のバックグラウンドであるアンダーグラウンドの世界観を交えながら語っていただきました。

イベントは、参加メンバーが宮原さんと双方向でのコミュニケーションを取りながら進められました。前回開催時にオンラインと会場での参加者が分断されてしまったという反省を生かし、今回は両者が同じように意見を出せて宮原さんとつながれるハイブリッドなイベントにしようとMiro(オンラインのホワイトボードアプリ)を活用しました。進行に合わせて、Miro上に設けられた広場や道路、山などの会場を移動しながら、みんなで付箋にコメントや質問を書き込んだり、ステッカーでリアクションをしたりして、リアルタイムで同じ体験を共有しながら一体感を持って盛り上がることができました。

  • Miro上に作られた会場の様子
  • 当日寄せられたコメントや質問

質問コーナーでは、「求める人材やチームの在り方について」「開発時の意思決定の仕組みについて」など、参加者が聞きたいことをMiro上に書き込み、その場で司会者がピックアップしながら宮原さんにお答えいただきました。


実際の業務の悩みを宮原CDOにぶつけてみた

さらにプログラム後半の「DC TALK」では、デザインセンターの4部門から代表で1名ずつメンバーが登壇し、日頃から悩んでいることやこの機会に聞いてみたいことなどを宮原さんに投げかけました。

あまりにリアルな内容に、富士通デザインセンターのCDOとなった宮原さんが「これは答えるのが難しい…」と思わず唸るほど業務内容に踏み込んでじっくり話をすることができました。組織づくりでの課題や業務が思うようなスピードで進まないときの悩みなどについて話す中で、登壇者から出た「意思決定者を巻き込むためにデザイナーができることは?」という質問には「業務のスピードを上げるために2つできることがある。ひとつは、関わる人を絞ること、もうひとつは情報のバトンパス(伝達)を減らすために自ら一次情報を取りにいくこと」と回答していただきました。またメンバーとの対話の中でデザインやスピードに関しても宮原さんの考えや視点を伺うことができました。

全体を通して、今回のテーマであるデザイン組織が「スピード」を保つために大事なこととしては、「デザイン=開発者であり、エンジニアリングとデザインを分けない」「チーム全員で仕様を考えロスタイムをなくす」「プロジェクト責任者も定期的にフィードバックを行うが、採択するかは担当者の判断に委ねられている」など、SmartHRで実行していることを教えていただきました。

SmartHRでも会社の成長とともにプロダクトデザインチームのメンバーが増えてきたことで、だんだんと一人ひとりの物事の捉え方に差分が出てきたり、これまでのやり方が人数規模に適さなくなったりと、いろんな変化が起きているそうです。そんなときには組織が今陥っている状況を見極め、表出してきた問題に対してモグラ叩きのようにその都度改善を行うことを繰り返してなんとかスピードを維持しているということでした。

また単にスピードだけを求めるのではなく、その先にあるお客様の喜ぶこと・ためになることといった「顧客の価値」を大事にするという一番の目的を見失わないことも重要だとお話しいただきました。実際にSmartHRでは、開発部門がお客様の声という一次情報を得るためのヒアリングやユーザーテストを行い、営業側でも顧客のニーズを取りまとめるチームがいるなど、顧客の価値を大事にするための取り組みや仕組みがあるということでした。

また印象に残ったのは、宮原さんの「デザインは滅ぼすべきもの」という言葉。一見奇をてらったようにも思えますが、デザインが広く一般に開放され誰もがデザインをできるようになるのが理想という考えは、富士通がデザイン思考をグループ全体に広げていこうと活動しているところと通じるものがあるのではないかと感じられました。

イベントの締めくくりには、AD(アシスタントディレクター)として会場を走り回っていた宇田センター長にCDOバッジが返還され、二人が本来の役割に戻ったところで記念撮影とインタビューを行いました。


イベント終了後インタビュー

——— 今日の感想をお聞かせください。

宮原さん: 実はかなり緊張していました!みなさんのお役に立つ話ができるのか不安だったんですが、自分のやってきたことをすべて愚直に紹介しようと思って臨みました。

宇田: 緊張していたのは伝わっていました(笑)。宮原さんは、一見するとチャラい黒魔術の人のような感じもするんですけど、実はきちんと準備をしていて、緻密に計算された答えを用意して臨んでくれました。

——— 富士通デザインセンターに対する印象の変化などはありましたか?

宮原さん: はい。今日実感したことで一番よかったと思えたこと、みなさんに伝えたいことがあります。自分のようにスタートアップ企業に長くいる立場から見ると、自分たちは富士通のような大企業と同じテクノロジーを使って事業活動をしていても、組織としてはまったく別物で同じ延長線上にはないと思っていました。しかし今回の交流を通して、皆さんが実は組織に対して、スタートアップ企業と似たような悩みを持っていたり、当事者意識をもってきちんと向き合っているとわかり、自分たちと地続きに富士通のような大企業があるんだということを実感しました。

——— 宮原さんのCDOはいかがでしたか?

宇田: 今日はみなさんいい空気が吸えたんじゃないかなと思います。オンラインで参加された方を含めて、いつもの匂いと違うものが得られたと思います。

——— 富士通デザインセンターのメンバーにメッセージを贈るとしたら、どんなことを伝えますか?

宮原さん: 先ほど話したように、スタートアップ企業と地続きに富士通のような大企業があるということを実感できました。なので、富士通にいるみなさんにも僕らを同じように捉えてほしいし、関わりをどんどん増やしていってもらえたらなと思います。

——— 第二回CDO JAMを終えての手応えとこれからについて教えてください。

宇田: 宮原さんのように、ものごとを前に進める推進力が常に心の中に備わっている方から得られるものは大きかったと思います。
この3年間デザインセンターは、常に変化・変革を求められてきました。それはある意味、今の自分を否定されるようにも感じられ、しんどいことでもあるかもしれません。ただデザインセンターが手掛けている空間やプロダクト、サービス、表現など、幅の広いデザインのアウトプットやプロセスはプライドを持って誇れるようなものであると思っています。この一年は、その自信を一人ひとりが取り戻していけるように取り組んでいきたいと考えています。

今後も富士通デザインセンターでは、CDO JAMなどの活動を通して、ほかの企業のデザイン組織とつながり、意見やアイデアを交換しながら、オープンなエコシステムを創っていくことを推進していきます。



CDO JAM #2 SmartHR編 ダイジェスト動画
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