「現場で手を動かしたかった」デザインセンターに異動した理由

「現場で手を動かしたかった」
デザインセンターに異動した理由



掲載日 2022年9月5日

富士通株式会社(以下、富士通)のデザインセンターは、富士通が提供する多様なサービスやプロダクトのデザインを担い、また富士通全社に向けてデザイン思考を浸透させる活動を行う、富士通のデザイン部門です。そこではどのような人が働いているのでしょうか。

新卒で富士通に入社後、地方自治体や公立図書館など公共領域のビジネスプロデューサー(課題解決のためのビジネスモデル構築等を提案する営業職)として活動した田中 友美乃は、入社5年目、自ら希望してデザインセンターに異動しました。現在はデザインセンター フロントデザイン部に所属し、社内やお客様の想いや課題を明らかにし、施策や事業創出やサービスデザインを行っています。デザインセンターに異動した理由や現在の仕事のやりがいについて、田中に話を聞きました。

記事のポイント

  • 顧客の課題に寄り添い、一緒になって手を動かす仕事をするためにデザインセンターに異動
  • デザインセンターでは、顧客の課題の可視化やサービスデザインの他、グラフィックレコーディングの仕事も行う
  • 社内外を問わず様々な人たちと共に、価値づくりを考えられる環境にやりがいを感じている

異動の理由は「より現場に寄り添って手を動かしたかったから」

田中 友美乃
デザインセンター フロントデザイン部所属(2022年8月時点)

——— 入社後、デザインセンターへ異動されるまでの経緯を教えてください。

田中: 2017年に富士通新卒で入社してからは、地方自治体や公立図書館といった公共領域のお客様を担当し、職員の業務効率化や住民サービスの向上等を目的としたシステム導入を提案するビジネスプロデューサーとして活動しました。その後、入社5年目を迎えるタイミングでデザインセンターへの配属を希望。2021年4月、正式に異動しました。

——— 異動を希望された理由はどんなものでしたか?

田中: もっとも大きな理由としては、現場のデザイナーとして手を動かしたいという思いが強くなっていったからです。それまでの職種だったビジネスプロデューサーは、お客様の課題解決のためのシステムやサービスを提案する営業職で、主にエンジニアのメンバーと連携し、プロジェクトを動かすような仕事でした。

やりがいを持って働いていましたが、次第に感じるようになったことがあったんです。当時の主流なビジネス手法は、パッケージ化された富士通の製品をお客様の課題に合わせて提案することでした。しかし、行政においてもDXの重要性が増し、お客様が抱える課題の抽象度が高まるにつれて、これまでのパッケージを売るやり方では課題解決につながらないのでは……という感覚が強くなっていきました。より本質的な解決をもたらすためには、お客様が実現したいことは何なのか、一緒にテーブルを囲んでじっくりお話を聞き、ニーズや課題を明らかにした上でサービスを設計する必要があるのではないか…と。

同じころ、組織も働き方やお客様や地域との向き合い方を再考する変革期でした。そうした、私自身も組織も何か動こうとしている時期に、「私はこの社会と組織の変革期にどんな立場でどう向き合いたいか?」を考え始めていました。

そんな思いを抱いているとき、担当案件でデザインセンターの方と協働する機会がありました。デザインセンターの方は、ユーザーのニーズを理解するためにデザイン思考を活用した場づくりや伴走を行い、本当に解きたい課題に顧客と向き合う仕事を行っていて、まさに私がやりたい仕事だと思ったんです。

プロジェクトを自ら動かしていくビジネスプロデューサーもやりがいの大きな仕事です。ただ、私はお客様と並走して、手と頭を使いながら課題を明らかにしていく仕事により大きな興味を持ったため、デザインセンターへの異動を希望しました。

——— デザインセンターへの異動の際に役立ったスキルや経験はありましたか?

田中: デザインセンターを志望する以前から青山学院大学のワークショップデザイナー育成プログラムに参加していて、いま振り返るとその経験が生きたと思っています。ビジネスプロデューサー時代、お客様と一緒に考える場をつくるにはどうすればいいかという問題意識から、このプログラムに参加していました。ここではワークショップデザインの考え方や共創の場づくりを座学と実践で学びました。そして今の自分の得意とするビジュアルコミュニケーションとの出会いも、プログラムの中で実施されていたグラフィックレコーディングがきっかけでした。このプログラムの参加以外にも、興味を持った社外の活動に積極的に参加したことが今につながっていますね。



「未来の語り場」「ふヘンなみらい」……デザインセンターでの多様な仕事

——— 田中さんが所属されているフロントデザイン部とはどんな部門ですか。

田中: フロントデザイン部の仕事は主にサービスデザインと呼ばれるものです。商品やサービスの開発案件において、富士通の「フロント」にたってお客様の想いを可視化しながら、課題発見を行い、具体的な解決に向けてのアイデアを育てていく仕事をしています。

私自身、これまで社内外の様々なプロジェクトに携わる機会がありました。富士通にはリテール領域を担当するビジネスプロデューサーがいますが、彼らのセールス活動のなかで新しい顧客接点を増やすため、ビジョン策定や施策立案を行うプロジェクトにサービスデザイナーとして参加しました。他にも顧客の新規事業創出のプロジェクトや、地域課題を解決するという文脈で、富士通Japan株式会社の徳島支社が徳島県で展開する地域プロジェクト「BIZAN PROJECT」に参画するなど、多様な案件に取り組む環境です。

——— 田中さんはグラフィックレコーダーとしても活動していますよね。グラフィックレコーダーとはどんな活動ですか。

田中: 通常、会議での記録は議事録にまとめられますが、グラフィックレコーディングとはそれらの対話記録をグラフィックと文字を用いて可視化します。そして描いたグラフィックは記録や事後発信に活用するだけなく、場の入り方によって場づくりや対話促進を行える手法だと思っています。リアルタイムでグラフィックによる対話の内容が整理・共有されるため、参加者の対話をより促進する効果が生まれます。

具体的な活動としては例えば、中高生との対話を通して社会課題やSDGsそして私たちの未来について考える富士通グループのプロジェクト「未来の語り場」にグラフィックレコーダーとして参加しています。iPadや模造紙を使いながら、その場で行き交った言葉のニュアンスも含めて可視化。未来を自分ごととして捉えること、そして未来への答えを大人だけで決めないという活動の考え方に個人的にも深く共感しているので、グラフィックレコーダーとして参加できたことにやりがいを感じましたね。

模造紙を使ってグラフィックレコーディングを行う場合も多いと田中は語る

田中が参加する「未来の語り場」で作成したグラフィックレコーディング

——— デザインセンターで担当した中で特に印象に残っている仕事は何ですか?

田中: 配属されて最初に担当した案件が非常に印象に残っています。これは、ある流通系企業のお客様が中長期事業目標を策定するため、お客様と共に「未来のロジスティクス」を考えるプロジェクトです。ワークショップでは、ショートショート(超短編小説)創作から未来を考える「ふヘンなみらい」という、デザインセンターが開発したユニークなフレームワークを使いました。

この「ふヘンなみらい」というフレームワークでは、たとえば自然界や人の喜怒哀楽といった気持ちなど、時を経ても変わらない「ふヘン」(不変、普遍)なものに着目します。その上で、例えばテクノロジーや社会など「変わっていくもの」が、など「変わらないもの=ふヘン」と将来どのように作用し合うかを考え、ショートショートで自由に描いてもらいます。

ワークショップの肝となるのは、対話する時間を持つことです。対話を通して、参加者は自分の中にある「ふヘン」をまず主体で考え、他のメンバーの「不変」や「普遍」に触れます。こうした対話を行うことで、未来を考えるうえでの気づきを発見していきます。

配属後初めての案件だったので、私は先輩につきながらワークショップ運営に携わったのですが、その中で気づいたことがありました。ワークショップでは最終的に意見がひとつにまとまっていくのですが、対話において強引に意見をひとつにまとめようとしないことや、参加者の発言のニュアンスを大事にしながら合意形成するのが重要だ、ということです。ワークショップを進めていく上で非常に大事なことを教えてもらったプロジェクトで、とても印象に残っています。



様々な人と「アンサンブル」するように働くやりがいとは

——— デザインセンターの仕事のどんなところにやりがいを感じていますか。

田中: デザインセンターの仕事が、富士通の他部署の仲間やお客様との共創から価値を生み出すものであるという点です。私は単独で仕事を行うよりも、多様なバックグラウンドの人と一緒に仕事をすることが好きなので、とても面白いです。

デザインセンターでの仕事は、私のパーパスと共鳴するところが多いと感じています。富士通では自分が大切にしている価値観や自分自身のパーパスを彫りだし言語化する「パーパス・カービング」という取り組みを行っており、私もパーパスを定めています。それは「つながりから生まれるアンサンブル 分かち合うから届けるまで」というもの。アンサンブルとは指揮者なしで行う、少人数の演奏形態のことです。私は、社内外を問わず多様な人との関係性を大切にしながら、共に解決したい問いを見つけ、世の中を一歩ずつよりよい場所にしていきたいと思っています。デザインセンターの仕事を通じてこの目標の実現に少しずつ近づいている実感があり、大きなやりがいを感じています。

また、富士通ではユーザーを中心に置いたデザインの考え方「Fujitsu Human Centric Experience Design(HXD)」を掲げています。Human Centric を実践しつつ、そこに「私らしさ」が「アンサンブル」されたようなデザインができたとき、大きなやりがいを感じます。学生時代に学んだ人文社会系のバックグラウンドや、ビジネスプロデューサーとしての経験を大切に持ちながら、これからは、デザイナーとしての自分の専門性と「らしさ」を探求していきたいと思っていますね。

——— 最後に、デザインセンターで働くことに興味を持っている方に向けたメッセージをお願いします。

田中: デザインセンターの人は一人ひとりがプロフェッショナルな専門領域を持っていています。一方で、デザインセンターの仕事はデザイナーだけで完結しない場合が多く、社内の多様な職種の人やいろいろな業界の方などとプロジェクトを進めるのが基本です。専門領域を持ちながら、多様な人と働けるというのがデザインセンターの魅力だと思っていて、この環境を面白く感じる人はとてもデザインセンターに向いていると思いますね。

2019年に「IT企業からデジタル変革(DX)企業へ」という方針を打ち出して以降、富士通ではデザインセンター以外でも、一人ひとりが自身のキャリアを主体的に考える試みが始まっています。とはいえ私個人の肌感覚だと、もともと富士通には会社や組織の方針をそのまま受け止めるのではなく、自律的に考えようとするカルチャーがありました。私も4年間で築いてきたキャリアを変更することに多少の不安はありましたが、現在の富士通はキャリア形成の面でさまざまなチャレンジの機会があります。

デザインセンターにはこれまで知らなかった自分を発見できるチャンスに溢れています。もし少しでも興味があれば、デザインセンターをひとつの選択肢として考えていただければ嬉しいですね。

■データ

  • 所 属
    デザインセンター フロントデザイン部 (2022年6月時点)
  • 入 社
    2017年新卒入社 21年4月異動
  • 出身大学
    津田塾大学国際関係学科 多文化国際協力コース 社会学を専攻
  • 趣 味
    お茶、香り
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