いまさら聞けないサステナビリティ。世界の企業における取組み、CSRとの違い

社会課題

最近ニュースなどでよく耳にする注目キーワードの一つ、サステナビリティ。様々な企業がその実現に取り組んでいますが、これまで企業が行ってきたCSR活動との違いは何でしょうか。世界をよくするという点が共通する2つのキーワードを読み解くことで、新しい世の中の動きが見えてきます。

「サステナビリティ」の意味と企業における捉え方

最近、様々なシーンでサステナビリティへの取り組みが話題になっています。商品を提供する企業も、それを購入する消費者も、サステナビリティを無視することはできません。そんなサステナビリティの「今」を追ってみましょう。

サステナビリティの意味

サステナビリティ(sustainability)とは、日本語に訳すと持続可能性です。理念として語られるサステナビリティは、開発と環境を両立させ、未来の世代にも豊かな地球環境と社会環境を残すことを目的としています。

サステナビリティが注目を集めたのは、いまから30年以上前の1980年代です。「持続可能な開発(sustainable development)」という言葉は、国際自然保護連合 (IUCN)や国連環境計画 (UNEP) などがとりまとめた「世界保全戦略」に登場していましたが、1987年に国連の「環境と開発に関する世界委員会」でまとめられた最終報告書に理念として明記されました。

その後、1992年にリオデジャネイロで開かれた地球サミットで広く認知され、人類の行動指針を4つの分野で明記した「アジェンダ21」が採択されて、国際社会は持続可能性に大きく舵をきりました。

企業におけるサステナビリティとは

意味がわかったところで、次は企業におけるサステナビリティについて考えてみましょう。サステナビリティの根幹は、環境・経済・社会のバランスをとることにあります。企業活動においては、経済的利益のために環境や社会を破壊することなく、環境・経済・社会の3つが持続していく取り組みが求められます。

高度経済成長時代は、大量生産・大量消費がよしとされていました。しかし行き過ぎた経済活動は、環境を破壊します。必要なものを必要なだけ生産し、消費する。そして使い終わった資源を循環させる。こうした観点が企業に求められるようになりました。

企業の社会的責任「CSR」とは

サステナビリティと共に語られることが多いのが、CSRです。企業のトップが自社のCSRについて述べることが一般的になった今、CSRについて振り返ってみましょう。

CSRとは

CSRは「Corporate Social Responsibility」の頭文字をとった言葉で、企業の社会的責任を示します。企業の経済活動は社会に影響を与え、そこには消費者、投資家、社会全体というさまざまなステークホルダーが関係します。ステークホルダーと適切なコミュニケーションをとり、彼らの要望に応えて適切に情報を開示し、組織としての社会的責任を果たしながら企業活動を続けていくことを目指す、根幹となる考え方がCSRです。

CSRが注目されるようになったのは、1990年代以降です。米国(エンロン、ワールドコム)や日本(雪印、三菱自動車)で大企業の違法行為や不正行為が発生し、大きな社会的批判を浴びるようになります。それと時を同じくして、グローバル化で生じた環境破壊、人権、貧困、紛争、差別といった問題が注目されるようになっていきました。このふたつが契機となり、企業は利潤を追求すると同時に環境や社会に責任を持つ存在とされ、様々な問題を解決する対応を求める動きが国際社会で盛んになったのです。

サステナビリティとCSRの違い

続けてサステナビリティとCSRの違いに触れてみましょう。より良い社会を目指すという点は共通していますが、対象や活動範囲が異なります。

サステナビリティとCSRの違い

サステナビリティ:企業活動のみならず、世界全体が対象となった理念
CSR:サステナビリティを含む、企業の社会的責任を果たすための考え方

わかりやすくいえば、サステナビリティは世界全体、CSRは企業が主語となります。サステナビリティは持続可能な開発を目標としていますが、CSRは企業の存続を目標としています。企業が利潤を上げながら様々な環境・社会問題の解決に取り組み、よりよい社会を目指すのがCSRです。

サステナビリティとSDGs

サステナビリティを強く後押しするもののひとつに、SDGsがあります。SDGsの登場によって、サステナビリティを意識する活動が社会に広く浸透し始めました。SDGsについても、詳しくみていきましょう。

SDGsとは

サステナビリティを私たち1人ひとりが取り組むことができる、わかりやすい目標にまとめたものがSDGs(sustainable development Goals)です。2015年9月、持続可能な開発目標を社会・経済・環境の面からわかりやすくまとめた17の項目が、SDGsとして国連サミットで採択されました。

SDGsは2030年までに達成すべき、世界各国の共通の目標です。日本政府もSDGsを実現するため、様々な取り組みを推進しています。SDGsは気候変動などの環境問題の代名詞として語られることが多いですが、17の目標を見るとわかるように、その範囲は多岐に渡っています。

持続可能な開発には、経済・社会・環境の3つの分野が複雑に関連しています。SDGsは環境を守るだけでなく、貧困や不平等といった社会問題を解消し、経済や産業の成長も諦めずに真に豊かな世界を目指します。8年後の2030年までに、私たち1人ひとりができることはなにか。それを考え続ける姿勢が重要です。

世界で進む、サステナブルな取り組み

SDGsの採択で目標が具体的になったことで、世界でもサステナブルな取り組みが進んでいます。その動向をいくつかご紹介します。

食品廃棄物の削減を目指す、世界的なイニシアティブがスタート

世界食品小売業大手10社が手を組み、200社のサプライヤーと共に2030年までに食品ロスと廃棄物の半減に取り組んでいます。「10×20×30食品廃棄物削減イニシアティブ」と呼ばれるこの取り組みには、日本からイオングループが参加しています。

各社が様々な活動を初める中、米国大手スーパーのクローガーは、PBブランド食品の消費期限表示をシンプル化し、包装材のリサイクルに取り組んでいます。またAIを活用したレシピツールの展開で、家庭にある食品ロス削減もサポートしています。

サステナビリティに貢献する金融商品も

金融の世界では、サステナビリティに貢献する商品も登場しています。調達資金が環境や社会に貢献する事業に充当される債券を「SDGs債権」とよびます。SDGs債権にはグリーンボンド(環境債)、ソーシャルボンド(社会貢献債)、サステナビリティボンド(環境及び社会貢献債)などがあります。

英国で金融、電気通信、ガソリンスタンド、通信販売を手掛けるテスコは、2020年に初のサステナビリティ・リンク・ローンを調達しました。温室効果ガスの排出量削減と連動させたこの債権は大きな注目を集め、総額25億ポンドもの資金を得ることができました。

サステナブルな活動と企業の未来

サステナビリティがSDGsというわかりやすい目標として設定された今、経済成長と豊かな環境・社会の両立を世界中が目指しています。

かつては経済が生み出した利益を環境や社会に還元するとした、CSRを中心としてきたサステナビリティは歴史と共に変遷しており、経済はその土台となる環境と社会の維持・増強が基盤にあってこそ持続的に成長できるという考え方(サステナビリティ経営)へと変わりつつあります。

事業基盤となる経営戦略を根幹から、また長期的に考え直すことが求められる、企業でのサステナビリティ。これからの社会で企業が存続するための基本条件であり、無視できない理念になりつつあるといえるでしょう。

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