機能詳細5 ケモインフォマティクス

操作性に優れた分子データベース機能を利用して、大規模な分子ライブラリーを取り扱うことが可能です。さらに、ケモインフォマティクスの様々な手法が組み込まれており、ライブラリーの設計からリード化合物探索、リード最適化に至るまでの創薬研究において利用される多くの機能を提供しています。

MOEsaic

MOEsaicは、化合物と活性値のデータを用いて、SAR解析、物性モデルによる評価、新規化合物の設計を直感的な操作で行えるMOE/webアプリケーションです。物性値、活性値、部分構造、置換基などの様々なデータをフィルターとして使用できます。解析で使用したセッションは、ユーザー間で共有できます。また、解析中のセッションに新たなデータを追加して、継続して解析を行えます。

Matched Molecular Pair (MMP) 解析

一部の部分構造が異なる化合物ペアを検索できます。変換ルールを指定した検索や、原子数や活性値の差からの網羅的な検索もでき、活性クリフや生物学的等価体への発見につながります。

R-group解析

母核を定義することで、化合物群を連続的に母核と置換基に分割できます。母核/置換基の組み合わせと活性値/物性値との関係を表やプロットで可視化できます。

R-group解析

R-group解析に基づく、母核と置換基の組み合わせのグリッド表示。

物性モデルによる評価

薬物の物性モデルとしてOral Drug 、Sweet Spot、Golden Triangle を用いて、既存化合物とバーチャル化合物を評価できます。ユーザー独自の物性モデルも追加できます。

Protein Ligand lnteraction Fingerprints (PLIF)

Oral Drugによる評価。背景はChEMBLデータベースにおける経口薬の特性のボックスプロット。

2Dプロット

分子量、水素結合受容体/供与体の数、極性表面積などの分子記述子や活性値、置換基の物性の寄与などで平面プロットを描画します。プロットの形、大きさ、色、透明度を変えられ、最大6次元のデータを表せます。

構造検索/アラインメント

スケッチャーで描画した構造に基づいて、部分/類似構造検索や構造アラインメントができます。

定量的構造活性相関(QSAR)/定量的構造物性相関(QSPR)

分子構造と生物活性物性との相関関係を統計的に解析し、活性/物性予測モデルを構築します 。予測モデルには、線形回帰分析(PCR法、PLS法)による線形モデル、ベイズ推定による確率モデル、記述子の値の閾値により分類する決定木モデルがあります。合成高分子においては、Bicerano法によるモデルが搭載されており、ガラス転移点、 屈折率などの物性を単量体の構造から推算できます。

分子記述子の算出

データベースに保存された分子構造の物理化学的な特性やインデックスを算出します。分子量、logP 、水素結合受容体/供与体などの一般的な記述子に加え、CCG社開発のVSA記述子※1、拡張Hückel法に基づく記述子、合成可能性スコア、タンパク質記述子など600種類以上あります。カスタマイズや新規記述子の追加が可能です。

2次元記述子3次元記述子
原子数、結合数体積、表面積、形状記述子
官能基特性双極子モーメント
Kier & HallのConnectivity Index、Kappa Shape Index回転半径、球形度
BCUT / GCUT 記述子ポテンシャルエネルギー
体積・表面積推算値(体積、表面積、TPSA、VSA)ひずみエネルギー
物理化学的特性(分子量、logP、logS、モル屈折、電荷等)相互作用エネルギー
Drug-like、Lead-like、反応性、変異原性、合成可能性VolSurf記述子
拡張Hückel法に基づく記述子(logP、logS、pKa、pKb、logD等)MOPAC記述子※2
  • ※1
    Labute, P. A Widely Applicable Set of Descriptors. J. Mol. Graph. Model. 2000, 18, 464-477.
  • ※2
    標準搭載されているMOPAC7を利用し、量子化学計算に基づく物理化学的特性を計算します。

ライブラリー設計

分子の前処理

分子データベースに対して以下のような分子構造の標準化が行えます。

  • pH を指定した水素原子の付加または削除
  • SMILESからの分子構築
  • 脱塩・溶媒処理
  • 互変異性体の生成
  • 分子構造の2次元と3次元相互変換

逆合成解析(RECAP※3解析)

化合物群を、逆合成解析により得られたRECAPルールに基づき、結合を切断してフラグメント化します。また、フラグメントを相補的な組み合わせの反応点で結合させることで、合成経路の設計が容易な新規化合物を構築します。市販HTS化合物などから独自に収集した約12万件のフラグメントを登録したRECAPフラグメントデータベースも提供しています。

  • ※3
    Lewell, X. Q. ; Judd, D. B. ; Watson, S. P. ; Hann, M. M. RECAP-Retrosynthetic Combinatorial Analysis Procedure: A Powertul New Technique for Identifying Privileged Molecular Fragments with Useful Applications in Combinatorial Chemistry. J.Chem. Inf. Comput. Sci. 1998, 38, 511-522.

コンビナトリアルライブラリー設計

化学反応ルールに基づくバーチャルライブラリー構築とスクリーニングの機能が搭載されています。この機能に併せて、60以上の反応式と試薬ライブラリーも提供しています。

コンビナトリアルライブラリー設計

コンビナトリアルライブラリー構築のフロー。

ライブラリー解析

フィンガープリントによる類似構造検索

フィンガープリントは、分子を部分構造の有無や、立体構造的な特徴から算出されるハッシュ値です。利用可能なフィンガープリントは、部分構造、ファーマコフォア、分子形状の3タイプ11種類あります.
フィンガープリントの類似度を算出し、類似分子をデータベースから検索します。

クラスター解析

記述子に基づくクラスタリングには、高速に計算が可能なセルベース法を、フィンガープリントにはJarvis-Patrick法を使用して化合物群をグループ化します。

クラスター解析

分子記述子を用いた化合物空間でのクラスタリング。

分散抽出

記述子やフィンガープリントに基づき化合物の多様性を評価し、ライブラリー全体を覆う分散した部分集合を抽出します。

Structure-Activity Report(SAReport)

化合物群の分子構造を自動的に母核と置換基に分け、母核・置換基の組み合わせと活性との関係を解析します。以下のような解析結果をグラフィカルに表示します。

  • 母核と置換基の組み合わせと活性値との関係を色分け
  • 母核や置換基の構造的類似度と活性値との散布図
  • 化合物群を母核に基づいて分類し木構造でグラフ化
  • 活性が向上すると予測される新規化合物の提案

Structure-Activity Report(SAReport)

母核・置換基の組み合わせの表(左)と散布図(右)。

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