医薬品情報の収集は電子カルテで完結
-医療現場の“時短&安全性”に貢献-

withコロナ時代において、医薬品情報の収集・活用は多くの医療現場で工夫されているのではないでしょうか。 富士通では、医療機関の皆さまを無償でご支援する「Fujitsu薬剤情報提供サービス」を提供しています。 まだリリース間もないサービスですが、2022年9月度の電子カルテユーザー会「利用の達人」では「素早く的確に薬品情報へアクセス 新たなソリューション」と題して、事例報告をいただきました。 172名の方にご参加いただいた当日は多くのFAQが飛び交い、アンケートでは「とても参考になった・参考になった」という結果が8割にのぼりました。 本記事では、発表いただいた春日井市民病院様に、導入の経緯も含めてインタビューを行いましたので紹介いたします。


インタビュイープロフィール

春日井市民病院 医療情報技術センター
  • 馬場 勇人(診療放射線技師、医療情報技師、診療情報管理士)
    山北 喜久(理学療法士、医療情報技師、診療情報管理士)
    林 優花

部署名は取材当時のものになります。

医薬品情報を収集する上での医療現場の課題

日ごろから最新の医薬品情報を集め、正しい判断を行ったうえで患者さんに処方や説明を実施するには効率的な情報収集が欠かせません。しかし現場に目を向けてみると、病院情報システムは個人情報保護の観点から専用環境に構築されることが多く、特に電子カルテを扱う端末はインターネットにアクセスできないことが一般的です。そのため、医療従事者がインターネット上の薬剤情報を収集するには、タブレットやスマートフォンを利用するか、診療時間外に医局のパソコンを利用する必要がありました。加えて、他の業務が忙しく、勤務外の時間を使って情報収集をするなど、医療現場の多くの苦労が見えてきました。

春日井市民病院は人口約31万人都市の基幹病院として、病床数は一般病床552床、感染症病床6床を有し、救命救急センター、地域医療支援病院、愛知県がん診療拠点病院などの指定を受けています。また、第二種感染症指定病院として、新型コロナウイルス感染症の患者さんも多数受け入れています。今回お話を伺った医療情報技術センターには医療資格者も多数在席されており、専門的な知見を病院情報システムに反映されています。
馬場勇人さんは、「医療機関における情報収集の効率の良さはとても大切です。現場からも、患者の電子カルテを参照しながら、その場でタイムリーかつ正しい薬品情報を入手したいという要望が以前より上がっておりました。特にコロナの影響もあり、外部との接点が減少している中、製薬企業等から情報を得る機会も減っており、医薬品情報の最新性を担保することは大きな課題の一つです」と説明します。

馬場勇人さん

Fujitsu薬剤情報提供サービスは、電子カルテ上で最新の医薬品情報を閲覧できる新しい情報収集の手段です。 独立行政法人医薬品医療機器総合機構(PMDA)から提供されている電子化された添付文書の他、審査報告書などの関連文書を閲覧することが可能です。 また、各製薬企業のホームページなどに掲載されている情報も連携しています。
馬場さんは、「電子カルテという一つの端末から、最新の医薬品情報をリアルタイムで収集できることは、医療現場で重要な『安全性と最新性』に直結します。 このサービスの活用により先ほどの課題を解決し、医療現場の安全性を保つとともに、忙しい医療従事者が効率的に働くことができるというメリットがあると考え、導入に至りました」と話します。


サービス導入による医療現場の働き方への貢献

サービス導入後の医療現場の変化として、林優花さんは「元々、当院では医薬品の情報を調べる際、医薬品情報検索システムを使用し、添付文書相当の情報を参照していました。 ただし、より詳細な医薬品情報を知ろうとするときは、電子カルテ端末とは別のインターネット接続されている端末で検索をする必要があり、職員の負荷になっていました。 このサービスを導入したことで、目的に応じた情報が素早く収集できるようになり、医療従事者の効率的な働き方にも繋がっています」と説明します。

林優花さん

電子カルテユーザー会「利用の達人」の事例報告では、本サービスを使用している春日井市民病院の様々な職種の方のユースケースと効果をご紹介いただきました。 「医療従事者にインタビューを行い、導入後に得られた効果や有用性を確認しました。 医師だけでなく、患者さんと携わることが多い看護師、医師からの問い合わせを受ける薬剤師に加え、その他の職種として、管理栄養士や理学療法士などからも利用されています」(林さん)

医師からは、「処方検討等の際に、インターネット端末まで移動して薬品の詳細情報検索することが不要になった」 看護師からは、「退院調整業務で他院医師との会話を行う際に用いている。 投薬の基本である『正しい薬剤の目的、正しい用法』などをしっかり理解して投薬してもらえるよう、新人教育にも使用している」といった声が寄せられています。

また、薬剤師からは、「いままでインターネットで閲覧していたインタビューフォームがあるだけでも全然違う。 また、頻度は多くないが、審査報告書を用いて詳細に調べることがある」 管理栄養士からは、「栄養指導を行う患者で使用する」、 理学療法士からは、「投薬により検査値が変動したのかなどを確認する」といった声が寄せられています。

馬場さんは「当院は2021年の実証実験に参画しており、当時からサービスを利用しています。 医師のみならず看護師や薬剤師など様々な職種の継続的な利用があり、有用性を確認しています。 他院においても同様の効果が見込めるのではないでしょうか」と補足します。



素早く的確に薬品情報へアクセス

多忙な医療従事者の業務を支えるためにはシンプルな操作が求められます。 本サービスは、使い慣れた電子カルテから最短2クリックでこれらの最新情報を参照できるよう、実証実験の意見交換を踏まえてブラッシュアップしています。
林さんは「電子カルテの薬品の上で右クリック、『薬品情報』を選択すると、さまざまなコンテンツが参照できます。 概要を把握するブラウザ画面、処方や注射をオーダーする画面など16の画面で使用できます。 職種により使うシーンが異なるため、さまざまな画面から薬品情報が参照されています」と説明します。

患者さんに対する説明に加え、新人さんの教育にも使用されています。
「いままで、よく使用されていた添付文書とは異なり、薬剤の外観、平易な言葉で薬効や注意事項が記載された『くすりのしおり』などの資料もよく閲覧されています。 患者さんに対して説明する際や新人教育、他科の薬を使用する前の確認にも使用しています」(林さん)


新たな医薬品情報の利活用への期待

ユーザー会では、実際の使用数についても報告がありました。
山北喜久さんは、「集計してみると、医師は診察時間中によく使用し、看護師は入院患者のケアに利用することが多くあるため一日を通してまんべんなく使用しているのがわかります。 医師へのインタビューからは、電子カルテから患者さんの情報と紐づけて医薬品情報を収集し、診察の前や後にも治療や処方の検討が行われているとわかりました。 サービスの認知度が上がるとこういった使い方が増えてくるのではないのでしょうか」と説明します。

山北喜久さん

PMDAおよびくすりのしおり適正使用協議会より、全ての製薬企業の医薬品関連情報として、17種類の文書を連携しています。 また、製薬企業からのコンテンツは任意登録としています。
「必要な薬剤情報は公的機関や各製薬企業のホームページや紙資料などに散在しています。 これも情報収集に負担がかかる原因でした。 また、閲覧状況をもとに製薬企業から連携される情報が更新されると伺っており、多くの製薬企業から情報提供いただけることを期待しています」(山北さん)



医療現場の声に寄り添ったサービスを目指して

まとめとともに、皆さんから一言ずつ所感をいただきました。
「医療従事者も薬剤情報を確認することで、目的に応じた情報が素早く取得できるようになりました。 患者さんも自分の薬のことを知ることができ、安心して薬を使用いただけます。 電子カルテからも薬剤情報を簡易に閲覧できることをより多くのスタッフが知り、活用してもらうことで医療安全につなげていきたいです」(林さん)

「私たちの今後の取り組みとしては、当院での薬剤情報提供サービスの使用を後押しできるよう再度院内に周知していきます。 他院でのユースケースも参考にしていきたいと考えています」(山北さん)

「医療従事者として、我々の目線で要望をあげていきたいと考えています。 例えば、薬剤情報の検索や印刷機能の開発検討はお願いしたいです。 また、当院は地域の基幹病院として、地域医療連携にも力を入れているため、地域連携ネットワーク対応についても早期に実現いただけるとありがたいです」(馬場さん)

本サービスは医療機関には無償で提供をしており、現場の皆さんの声が重要なサービスとなっております。 これまでに導入いただいた病院様や「利用の達人」からいただいたご意見をもとにバージョンアップを実施しており、現在も次の機能の開発が進行しています。 富士通は本サービスを通じて、医療安全および患者さんのQOL向上に貢献してまいります。

  • 本サービスは医療従事者が無料で使えば使うほど製薬企業へのフィードバックが増え、結果として提供情報がブラッシュアップされるサービスです。医療機関の方は、ぜひお気軽にお問合せください。

医薬品の適正使用を促進 薬剤情報提供サービス紹介動画

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