Fujitsu Enterprise Postgres 17 SP1 リリース
PostgreSQLインサイド

富士通のデータベース「Fujitsu Enterprise Postgres 17(以降、Enterprise Postgres 17)」は、初版が2024年12月にリリースされました。さらに、AIアプリケーション開発を支援する機能を強化したSP1が2025年4月にリリースされました。ここでは、Enterprise Postgres 17の製品概要をご紹介します。(注)
注)本記事では、初版とSP1を合わせてEnterprise Postgres 17と定義します。
Enterprise Postgres 17 ご紹介
Enterprise Postgresは、PostgreSQLを拡張し、セキュリティ、性能、信頼性を強化したデータベースです。開発当初より、堅牢な運用性が求められるミッションクリティカルに対応するため、さまざまな機能を提供してきました。また、DX(デジタルトランスフォーメーション)においては、オンプレミス、クラウド、エッジなどさまざまなプラットフォームを併用するハイブリッドな環境や、マルチクラウドでシステムを稼働させたいといった要件が増加しており、そのような環境が抱えるセキュリティや運用性の課題にも取り組んでいます。
さらにEnterprise Postgres 17では、急速に発展する生成AIへの対応として「知識データ管理機能」を提供します。
Enterprise Postgresの生成AIへの取り組み
近年、企業の自社データ活用により業種や分野に特化した生成AIの利用が増えています。これを可能にする技術として、RAG(Retrieval-Augmented Generation:検索拡張生成)が注目されています。RAGは、外部データソースから質問の関連情報を検索し、LLM(Large Language Models:大規模言語モデル)に質問と関連情報を渡すことで回答精度を向上させます。Enterprise Postgresは、RAGの外部データソースとして求められる機能強化に取り組み、RAG対応のデータベースとして安心・簡単に使えるデータ基盤を提供します。
知識データ管理機能
RAGにおける知識データはテキストやグラフ形式で表現され、高速な検索を実現するためにベクトルデータも活用されます。知識データ管理機能は、ベクトルとグラフを利用する意味的関係性に基づいた検索、知識データの管理、およびRAGアプリケーション開発や運用を効率化することで知識データ活用を支援する機能です。知識データ管理機能は、以下を実現します。
- データの運用・管理を一元化
ベクトルデータやグラフデータは従来の構造化データとは異なる形式であるため、専用のデータベースで管理することが一般的です。Enterprise Postgresはベクトル形式やグラフ形式の知識データを管理できるため、それぞれの形式に対応する専用データベースを用意する必要がありません。また、Enterprise Postgresのデータベースの多重化や、アクセス制御・データ暗号化などの既存のセキュリティ機能を使用して、知識データを安全に管理できます。
既存のセキュリティ機能との連携については、以下の記事に詳しく解説していますので、併せてご覧ください。
- 意味検索にテキストをそのまま使用
一般的に、意味検索をする場合には、あらかじめ検索対象となるデータをベクトル変換して格納し、検索時にはクエリとして与えるテキストをRAGアプリケーション側でベクトル変換してベクトルデータベースに問い合わせます。また、検索対象の元となるテキストデータが更新された場合には、併せてベクトルデータも更新する必要があります。
Enterprise Postgresでは、知識データ管理機能によってクエリ(テキスト)を内部でベクトル変換し、クエリとの類似度を計算することで関連性の高い情報を効率的に検索します。さらに、データのベクトル変換を自動的に行い、最新の状態を保ちます。これによりテキストをクエリとして入力するだけで意味検索を行うことが可能となります。また、RAGアプリケーション側でのベクトル変換やデータ更新時のベクトルデータの最新化を行う必要がなくなり、RAGアプリケーション開発コストやベクトルデータ最新化の運用コストを削減できます。
- RAGアプリケーション開発支援
AIアプリケーション開発フレームワークのLangChainを使用して、Enterprise Postgresの知識データにアクセスすることができます。LangChainを利用するPythonアプリケーションからのアクセスについては、以下の記事に詳しく解説していますので、併せてご覧ください。
その他の追加機能
- Amazon CloudWatchを利用したデータベースの運用監視
Amazon Web Servicesが提供する監視ツール「Amazon CloudWatch」を利用して、データベースに関するメトリクスやログを収集し、収集した情報を利用してデータベースの運用監視を行うことができます。これにより、Amazon Web Services上での運用性を向上し、業務停止リスクを軽減します。
- 積極的なタプル凍結(VACUUM FREEZE)のスケジュール
自動バキュームの遅延による業務停止リスクを回避するため、タプル凍結を効率化するスクリプトを提供するとともに、積極的なタプル凍結スケジュールの最適化を支援する統計情報を追加し、より安定したデータベース運用を実現します。
- CyberArk Privileged Access Managerを利用した特権ユーザー管理
CyberArk社の「Privileged Access Manager」と連携して特権ユーザーのパスワード管理やアクセス制御/監視の実現(下記リンク参照)により、セキュリティを強化します。
- SQLのジョブスケジューラ
周辺OSSとして新たにpg_cronを同梱しています。pg_cronを使用することで、データベース内でSQLジョブのスケジュールを設定し、アプリケーション開発者はデータベース上で定期的なタスクを実行できます。
Enterprise Postgres 17の機能
以下の図は、Enterprise Postgres 17が提供する機能の一部です。Enterprise Postgres 17では、新たにAIアプリケーション開発を支援する周辺OSSを提供しています。
PostgreSQL 17の機能の詳細については、当社社員でPostgreSQLメジャーコントリビューターのAmit Kapilaが技術者Blogで解説していますので、併せてご覧ください。
おわりに
Enterprise Postgresは、PostgreSQLコミュニティーに参画しながら、今後もミッションクリティカルに向けた機能強化を続けていきます。生成AIの活用は、DXの実現を加速させる重要な要素となっており、その実現のために適切なデータベースの利用を検討することが不可欠です。DXの実現に向け、Enterprise Postgresの利用をご検討ください。
2025年4月1日更新
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