富士通株式会社(社内実践事例)

業務システムへの監視サービス適用迅速化や環境変化への対応を可能にしたシステム統合監視を実現
標準化と現場ノウハウの定期的な反映をテンプレートで実現し監視の多様な要求に対応

国内外の富士通グループ各社の基幹情報システムの運用・保守を一手に担う富山富士通。同社のデータセンター統括部では、ITシステムを共通サービス基盤として提供する中で、監視サービスも提供している。もともとは業務システムごとに個別対応していた監視設計を、FUJITSU Software Systemwalker製品群のテンプレート機能を活用して共通化。これにより、監視の設計から運用までの迅速化や効率化を図るとともに、変化する環境に対応する監視サービスのブラッシュアップの実現を容易にしている。

課題
効果
課題各システムの監視ノウハウが個別で横展開が難しい
効果Systemwalkerテンプレートに各システムの監視業務のノウハウを反映させ、監視定義を標準化
課題業務システムの稼働直後からのサービス安定化や効率化が不十分
効果標準化された監視定義を活用したシステム稼働直後から精度の高い監視の実現
課題リソース不足などへの対応が後手に回り安定運用を維持できない
効果検知された監視メッセージを活用したオートスケール時の監視設定の自動化

背景

グループ全体のITシステムのインフラ運用を集約
システム監視業務の集中化に伴い、効率化が不可欠に

富士通グループ全体でITインフラを共通化し、システム運用の効率化を目指す――。こうした目標を掲げる富士通株式会社のIT戦略本部は、ITインフラの共通サービス基盤化を推進している。共通基盤化することで、コスト削減はもちろん、システムの開発、運用の効率化の実現を図る。具体的には、仮想デスクトップサービス、事業所のネットワーク、グローバルコミュニケーション基盤など多岐にわたるITインフラをサービスとして提供し、富士通グループのビジネスを下支えしている。

共通基盤化した富士通グループのITインフラの実際の企画・運用は、IT戦略本部とグループ会社の富山富士通が担っている。実務に当たるのは富山富士通のデータセンター統括部で、共通サービス基盤を効率的かつ迅速に運用することで、グループ各社や各部門からITインフラ運用の手間やコストを切り離し、本業に注力できる体制を支えている。

データセンター統括部は、富士通グループのITインフラとしてのデータセンターの運用管理を一手に引き受ける縁の下の力持ちとも言える存在である。このデータセンターのインフラ構成は、ハウジングの形態で物理的なサーバーを預かる形から、ホスティング、そして社内クラウドサービスへと変化しているが、一貫して共通サービス基盤としてのITインフラの監視サービスを提供している。

業務システムは、もともと各社、各部門のサーバー上で稼働しており、システムの監視も個別に行っていた。各社、各部門で持つサーバーをデータセンターに集約したことにより、共通サービス基盤としてのシステム監視サービスの提供を推進することになった。当時から監視ソフトとしてはFUJITSU Software Systemwalker製品群が多く使われていた。こうした業務システムの監視機能を共通サービス基盤に移管していく中で、集約される側の富山富士通としては効率化が求められるようになった。データセンター統括部 ファシリティ運用部 部長の太田 智は「それぞれの業務システムで監視定義は異なります。データセンターに集約する際に、個別システムの監視定義に一から対応していたら人的リソースがいくらあっても足りません。監視定義を共通化して工数を削減する必要に迫られました」と振り返る。

こうした監視定義の共通化には、もう1つの課題への対応の意味合いもあった。業務部門が新しい業務システムを開発した場合、監視業務は富山富士通が請け負う。その際に監視定義の設計が完了しないと業務部門が的確な監視を同時にスタートできない。業務システム稼働までのリードタイムを短縮するためにも、監視定義の共通化が求められた。

一方、運用ではリソースの不足などによるトラブルも対応が後手に回り、スピーディーな対応が求められていた。さらに、ハウジングからホスティング、社内クラウドへとインフラ基盤が移行する中で、クラウドと共存した監視および監視メッセージをトリガーにした対処が必要になってきた。社内クラウドではリソースのオートスケールに対応した監視設定の自動化も求められた。

株式会社富山富士通
データセンター統括部 ファシリティ運用部
部長 太田 智

ポイント

Systemwalker製品群をリファレンスとしてテンプレートを活用した監視定義の共通化が決め手

富士通IT戦略本部と富山富士通では、監視サービス共通化にそれまでグループ内で多く使われていたFUJITSU Software Systemwalker製品群をリファレンスモデルとして選定した。社内製品を活用し、より良いソリューションへと成長させることで、社内利用だけでなく社外に提供する製品としてのブラッシュアップも目指した。

Systemwalker製品群を継続して利用するが、業務システムごとに必要なメッセージを定義する従来の形態から、監視ソフト「FUJITSU Software Systemwalker Centric Manager」(以下、Systemwalker Centric Manager)のテンプレートを活用して監視定義を共通化する点が導入のポイントとなった。データセンター統括部 ファシリティ運用部の千田 晴弘は、「Systemwalker Centric Managerには定義のひな型(以下、Systemwalkerテンプレート)が用意されていたため、Systemwalkerテンプレートを使った共通化という効率化に道筋が見えました。業務システムの監視を始めるとき、個別に監視定義を作るのではなく、データセンター側で準備した監視定義から選択する方法が基本になれば、業務効率化やリードタイム短縮に貢献できます」と導入の狙いを語る。

監視定義のテンプレート化には、個々の監視業務のノウハウを反映させた。これも柔軟に記述できるSystemwalkerテンプレート機能が用意されていたからこその効用である。各ノードで発生するメッセージは多種多様だが、富山富士通に蓄積されていた監視業務のノウハウを基に監視に必要なイベントを整理し、複数のテンプレートを作成することが可能だ。さらに、テンプレート化されていることから、業務システムごとにテンプレートにない監視依頼があった場合にもその部分のみの監視設計をするだけで迅速に監視定義を整えることもできる。さらにこうした監視定義のテンプレート化を確立したことで、急激なサーバーの増加にも迅速な対応が実現できる。そのほかにも、継続される運用において、蓄積された監視ノウハウを定期的にテンプレートに反映することで、監視サービスのブラッシュアップも実現している。

また、Systemwalker製品群でICTリソース配分の最適化を支援する「FUJITSU Software Systemwalker Service Quality Coordinator」(以下、Systemwalker Service Quality Coordinator)も併用した。サーバーのリソースやミドルウェアの性能などの情報を可視化して容易に参照できるようにするもので、リソースの傾向分析、未来予測が可能になる。後手に回りがちだったリソース不足などへの対応に先手を打つこともできる。さらに、仮想環境のリソースの監視にも対応しているため、社内クラウドの柔軟な監視体制の確立にも寄与が期待された。

株式会社富山富士通
データセンター統括部 ファシリティ運用部
千田 晴弘

システムの特長

Systemwalker Centric Managerによる監視基盤で大規模システムを一元的に管理

富士通グループの共通サービス基盤として、大規模なシステムを単一の監視ツールであるSystemwalker製品群による監視基盤を用いて統合監視するシステムを構築した。監視ソフトとしてはSystemwalker Centric Managerを利用し、製品が提供するテンプレートをカスタマイズし、共通化した独自のテンプレートを作成。リソースの状況を可視化できるSystemwalker Service Quality Coordinatorも並行して利用した。

導入時点では苦労もあった。データセンター統括部 ファシリティ運用部 マネージャーの小川 淳也は「当時のSystemwalkerは管理サーバーの配下のシステム数、ノード数に制限があり、富士通グループ全体の共通サービス機能としての監視基盤を構築すると当時としては考えられないほど膨大な台数の管理サーバーが必要でした。富士通のミドルウェアの事業部と大規模運用における課題について継続的に共有・議論し、機能改善をしてもらって統合監視を実現したという経緯もあります」と、富士通と富山富士通の密接なやり取りで課題を乗り越えた裏話を明かす。このように現場の悩みを解決しながら製品を進化させ続けたことが、現在までSystemwalker製品群によって大規模システムや重要システムでも少人数で安定的な運用管理を実現できていることの基礎になっている。

株式会社富山富士通
データセンター統括部 ファシリティ運用部
マネージャー 小川 淳也

2020年1月時点、富山富士通が管理するシステムは、約1,100の監視対象システム、約1万2000のノード数という膨大な規模に上る。これらを50台程度の監視基盤サーバーを用いたSystemwalker Centric Managerにより一元的に監視できる管理体制を整備した。


導入効果

効果と今後の展望

大規模システムを少人数で運用監視できる体制を確立
監視のサービス化を推進する基盤として用途拡大を目指す

Systemwalker Centric Managerによるテンプレート化した集中監視体制を採用することで、富士通グループの約1,100という膨大な業務システム(開発・検証環境を含む)を、十数人のメンバで監視設定や監視基盤の運用保守をできるようになった。太田は「これだけの規模のシステムを監視するには、大人数の要員が必要です。Systemwalker Centric Managerを使わずにセンターで統合監視することは現実的ではなく、効率化、省人化の効果が大きく表れていると考えています」と評価する。

新規の業務システムのサーバーの稼働に対してもリードタイムの短縮の効果を存分に発揮している。従来ならば、サーバーのテスト稼働が始まってからイベント情報を収集し監視の定義構築をゼロベースで始める必要があったが、Systemwalker Centric Manager体制ではテンプレートを基にすることで監視定義の構築までの時間短縮を実現している。業務システム部門との窓口にあたるデータセンター統括部センターサービス運用部 酒井 さおりは「現在の方法では、監視依頼から監視設定完了までの時間や労力をかける必要がありません。業務部門は、インフラの監視設定などを意識する必要がなくなり、業務システムのスペシャリストとして本来の業務に集中してもらえます」と効果を語る。こうした監視機能のサービス化は、クラウド型のサービスでは一般的であるが、ハウジングやホスティングによるオンプレミス環境でも、Systemwalker Centric Managerによる監視基盤によって同様の機能提供を実現でき、業務の効率化に貢献している。

株式会社富山富士通
データセンター統括部 センターサービス運用部
酒井 さおり

さらにSystemwalker Service Quality Coordinatorの導入により、リソースの状況を可視化することで、リソース不足やトラブルへの事前対応を可能にした。仮想マシンなどのリソースを必要に応じて自動的に増減させるオートスケールが実行された際にも、自動的に監視設定が追従する機能を実装することができた。

太田は、「個別投資から投資最適化への流れの中で、監視も一極集中によりコスト削減、効率向上が求められ続けています。そうした中で、Systemwalker製品群を使うことで、監視業務の集約効果を出すことができ、現時点でも効果は継続して表れています。今後は、様々なシステムの集中監視が可能なこの監視基盤を活用して、マルチクラウドへの対応や、現在はオペレーターが対応している電話通報の自動化など、監視基盤の集約/統合、省人化の推進を目指していきます」と、さらに効率化したシステム監視のインフラづくりを見据えている。

株式会社富山富士通と開発部門担当者

株式会社富山富士通

所在地 富山県富山市八尾町保内2-2-1
設立 1988年4月20日
代表取締役社長 柳原 昌和
従業員数 475名(2019年2月20日現在)
ホームページ https://www.fujitsu.com/jp/group/tfl/
事業概要 富士通グループ内基幹システムのICTインフラの企画~構築~運用・維持、情報システムの企画~開発~運用・維持及び富士通グループ向けソフトウェア出荷・SE支援サービス

株式会社富山富士通 本社社屋

[2020年4月掲載]

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