手のひら静脈認証とは 期待される活用分野
手のひらの静脈は、身体の内側にある情報です。そのため、カードや指紋のように紛失や喪失の恐れがありません。また非接触型は、接触型に比べ複数のメリットが、他のバイオメトリクス方式とは異なる特徴を備えています。これらの特性を利用したさまざまな活用方法と可能性が期待されていますので、その一つひとつについてご紹介します。
銀行
金融機関における導入はすでに開始されています。自動支払機での活用、つまり非接触型静脈認証による本人確認の機能を搭載したATMの導入と、希望するお客さまを対象に、新しい口座サービスとして提供する方法の2種類が実現しています。
後者は、窓口において新しい口座を開設する際に、専用装置を使ってその人の静脈パターンを登録しておくことによって、現金を引き出す時も印鑑やキャッシュカードなどモノによる認証手続きを省くことができます。さらにモノを管理する手間も要らず、紛失・盗難によって発生する犯罪の防止にも効果的です。この方式はスルガ銀行様に導入されているほか、前者のATMは東京三菱UFJ銀行様を皮切りに、各金融機関での稼動がはじまっております。
なお、銀行を訪れた一般のお客さま約1,000人を対象に、デモ機を使って実地調査を行った結果、「指紋と静脈のどちらが、認証方式として相応しいと思われるか?」という質問に対し、静脈認証を選んだ人は57%、指紋は37%という結果でした。
オフィス
オフィスの出入り口だけでなく、研究室のように特定の社員だけが出入りできるドアや、大勢の社員が交代で勤務するような工場の入退管理など、広範囲の入退室管理と防犯対策に活用することができます。
導入方法としては、静脈パターンを記録したICカードを社員一人ひとりが携帯する、あるいは全社員の静脈パターン情報を社内にあるシステム上で管理する方法の2つがあります。
マンション・住宅
現行のさまざまな住宅・マンション向け防犯システムに組み込んだり、玄関ドアの開錠装置として取り付ける方法です。
一般住宅などの防犯システムは、建物の持ち主が任意に取り付けることができるため、すでにさまざまなバイオメトリクス技術の活用が検討されています。手をかざすだけの非接触型静脈認証は、利用者に無理なストレスを与えないという点で、こうした開錠用の仕組みとしては大変適しています。オフィス用と平行し、今後最も普及が期待される分野の一つです。
この分野における目下の課題は、さらなる認識スピードの向上と小型化が求められる点です。手のひらをスキャンする静脈認証は、指などにくらべ装置自体がやや大きめ。現在製品化されている装置は、男性の手の中にすっぽり収まる程度で、認証スピードは1秒弱ですが、一般住宅などの開錠用としては、これでもまだ不足ということのようです。そのため、製品化に向けさらなる技術開発が進められています。
政府機関
米国のテロ事件以降、世界的規模で政府の重要な施設・建物の警備強化が進められています。国内でも、かのサリン事件を機に厳戒態勢が敷かれるようになった施設が目立っています。出入り口での入退確認は、勤怠管理以外にも重要な意味を持つようになってきたわけです。
政府機関の建物に限らず、公共の施設・建物において、とくに業務スペースへの関係者以外の立ち入りや危険人物の立ち入りを防ぐため、現在、ICカードを使用したバイオメトリクスを導入しようという動きが活発化しています。この場合、一般建物よりも厳重なチェックを必要とするため、例えば指紋と虹彩、静脈と声紋いうように、2つ以上の認証方式を組み合わせることが検討されています。欧米では、すでに証券取引所、テーマパークなどの業務用として導入されようとしています。
空港
建物などの入館チェックと同様に、急激に様変わりしつつあるのが空港内の警備体制です。海外との出入り口でもある空港の場合、使い方は複数あります。
まずパスポートですが、EU(欧州連合)では急務であるテロ対策の一貫として、RFIDと呼ばれる技術にバイオメトリクスを組み合わせることによって、危険人物の入国やパスポート偽造などを抑止しようという試みがはじまっています。
RFID(Radio Frequency Identification)とは、IDコードを発信する無線機能付きのチップを埋め込むことによって、ネットワークでの追跡を可能にするシステムです。この技術に個人認証を連携させると、正式に登録を行った人以外は一切使うとこのできない、且つ万一の場合は追跡も可能なパスポートが誕生します。
このパスポートと連動するのが入国カウンターです。すでにドイツの空港で虹彩による入国認証の試験運用が開始されました。こちらはシステム側に危険人物や犯罪歴を持つ人の認証データを登録しておき、一般客のチェックと同時にそうした人の入国をリアルタイムで把握できるようにするというものです。このほか、業務関係者向けの社員証や通行証はもちろん、日本でも国内便向けの防犯措置として搭乗券への利用が検討されています。
現在実験段階にあるこれらのシステムは、指紋、虹彩、顔認証など古くからある技術を利用したものがほとんどです。しかし、整形手術などの改変ができないことと、人にとってよりやさしいという点で、非接触型の静脈認証は最も期待できる技術といえるでしょう。
車輌
国内においても、組織的で大掛かりな犯罪が急増し、一般車両ばかりか大型の建設重機や現金輸送車などの盗難、またそれによる二次的犯罪が大問題となっています。
現在、特殊車両の分野では、どちらかといえば防犯以外の目的でGPSによる位置追跡機能や、ロボット技術の自立制御機能などが注目を集めています。しかしこれらは、盗難の防止という側面では根本的解決策とはいえません。そこで、エンジンキーに静脈認証を活用すれば、遥かにシンプルで信頼性の高い防犯が可能になります。
もちろん、一般車両のドアキーとして利用する方法もあります。さらなる小型化だけでなく、プライバシー保護などいくつか解決すべき課題も残っていますが、ITSと静脈認証などのバイオメトリクスが連携し、今以上に交通ネットワークと無線で通信を行うようになれば、盗難された場合はエンジンがかからない、また仮に走ってもすぐに追跡できる車両が登場してくるに違いありません。
静脈認証は、湿気や汚れ、外傷といった外的な影響を受けにくいため、こうした車両向けの個人認証システムとしても大変適しています。
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