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Fujitsu

Japan

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注:このページはアーカイブ化さたコンテンツです。各論文の記載内容は、掲載開始時の最新情報です。

ネットワーク


雑誌FUJITSU 2015-11

2015-11月号 (Vol.66, No.6)

本特集号では,富士通が長年培ってきた通信のインフラ技術開発を軸に,多彩なサービス提供を実現するネットワークシステムプラットフォームとソリューション,ネットワークサービスを支える高度化技術,および社会基盤を支える通信技術についてご紹介いたします。



巻頭言

ネットワーク特集に寄せて (523 KB)
執行役員常務 ネットワークビジネスグループ長 大槻 次郎, p.1

ビジョン

IoT時代に向けた富士通の次世代ネットワークビジョン (983 KB)
竹田 聡, p.2-7
IoT(Internet of Things)は,これまでの人々のライフスタイル,および企業や社会における様々なプロセスを大きく変革する可能性を秘めている。こうした変革に向けて,従来のモノとモノの接続から,リアルワールドに存在するあらゆるモノとデジタルワールドのICTシステムを結びつけ,新たな知を創出するネットワークが必要となる。このように様々なモノをつなげるネットワークの課題として,接続されるモノの増加に伴うICTシステムの大規模化,地域や時間によって変動するネットワーク需要への適応,および次々と出現する新たなサービスやアプリケーションの多様な要件への対応が挙げられる。富士通はこれらの課題を踏まえ,次世代ネットワークのビジョンとして,ネットワークとコンピューティングがダイナミックに連携したネットワークワイドな分散コンピューティングを提唱している。
本稿では,富士通の次世代ネットワークビジョンと,その実現によってもたらされる新たな価値について述べる。

多彩なサービス提供を実現するネットワークシステムプラットフォームとソリューション

ネットワークDevOpsソリューションによる新たなネットワークサービス創出 (696 KB)
瀧本 稔, 小峰 浩昭, 田村 清子, p.8-12
富士通は,これまでクラウド領域で実践してきたDevOps(DevelopmentとOperationsを組み合わせた混成語)の経験・ノウハウとSDN(Software-Defined Networking)/NFV(Network Functions Virtualisation)技術を統合した製品・サービス群を,通信キャリア向けのネットワーク開発,および運用管理システムの領域に対して「ネットワークDevOpsソリューション」として体系化した。この体系に基づき,富士通のネットワーク基盤・管理の製品群と協業パートナーの製品群を組み合わせることで,お客様自身でシステム改善や柔軟な運用管理を可能とし,通信キャリアは市場ニーズの変化にスピーディーに対応できるとともに,継続的なサービス改善によりサービス品質を向上でき,IoT(Internet of Things)時代に向けたネットワーク利用者の多種多様なニーズへの対応や新たなネットワークサービスの創出が可能となる。
本稿では,ネットワークDevOpsソリューションの概要と適用事例,および今後の取組みについて述べる。
NFVを活用したキャリアネットワーク変革に向けた取組み (807 KB)
奥田 將人, 山田 徹哉, p.13-19
クラウド技術の急速な進展に伴い,従来専用ハードウェアとして提供されていた各種ネットワーク機能を,汎用サーバの仮想化されたOS上で動作するソフトウェアによって実現するNFV(Network Functions Virtualisation)の実用化に向けた動きが活発になっている。NFV運用管理ソフトウェアであるFUJITSU Network Virtuora OMおよびVirtuora RVは,仮想化技術の適用により,新しいサービスの迅速な導入やトラフィック変動に対する柔軟なリソース割当て,運用管理の簡素化・効率化などを通信事業者に提供する。更に,既存ネットワークと同等以上の信頼性や運用性をはじめ,運用ノウハウのシステム化をサポートするための仮想環境の検査ソリューション,オンデマンドなアプリケーション提供を実現するサービスチェーニング機能,IoT(Internet of Things)基盤のコア技術となる分散サービス基盤などをNFV環境に取り込んでいく。
本稿では,NFVの概要と実用化に向けた課題,および富士通の取組みについて述べる。
ネットワーク仮想化(NFV)ソリューションを支えるプラットフォーム技術 (947 KB)
天満 尚二, 田中 宏明, 坂田 雅岳, p.20-27
2012年10月にドイツで開催されたSDN & OpenFlow World Congressにおいて,NFV White Paperとして発表されたNFV(Network Functions Virtualisation)という考え方が,ネットワーク環境を大きく変えようとしている。NFVは,汎用サーバ上で様々なネットワーク機能を仮想化することで,より柔軟に,より高信頼なネットワークを安価に構築しようとする考え方である。これに対し,富士通は2013年に発表したFINCA(Fujitsu Intelligent Networking and Computing Architecture)によりNFVに対応している。
本稿では,ネットワークの新たな考え方であるNFVを解説するとともに,NFVを支えるプラットフォーム技術に対する富士通の取組み,およびNFVの活用によるネットワークの将来像を紹介する。
広域ネットワークにおけるSDNソリューションへの取組み (872 KB)
宮下 卓也, 鈴木 智博, 宗宮 利夫, 山田 亜紀子, p.28-35
クラウド化の進展に伴い,広域ネットワークにおけるトラフィックの増大が続いている。この増大に効率良く対応し,新サービスを提供する技術として期待されているのがSDN(Software-Defined Networking)である。ネットワークに柔軟性をもたらすことで,即時的かつ効率的な運用ができる。また,サービス導入を機敏にすることで,ネットワークに更なる付加価値を提供できると期待されている。SDNは,データセンター内のネットワークから適用が始まっているが,広域ネットワークへのSDN適用はまだ本格化していない。これは,社会基盤である広域ネットワークには,品質,性能などの厳しい要件が存在するためである。また,広域ネットワークでのSDN適用に当たっては,オープンソースのプラットフォームが注目されており,ベンダーロックインの回避とオープンイノベーションによる市場拡大が期待されている。
本稿では,まず広域ネットワークへのSDN適用の課題について述べる。次に,広域ネットワーク向けのSDNソリューションについて述べ,最後に広域ネットワークにおける制御技術とオープンソースへの富士通の取組みについて紹介する。
最適なネットワークセキュリティ環境を実現する仮想化ソリューション (871 KB)
小平 荘治, 三橋 健治, 八尋 秀治, 池田 信一, p.36-42
インターネットに関する技術標準であるRFC(Request For Comments)においてIP(Internet Protocol)が定義されたことで,インターネットは広く普及したが,セキュリティ対策の議論は不十分なままであった。そのため,正常な通信を装った攻撃によって比較的容易にインターネットサービスが妨害されてしまう。また,攻撃手法は日々進化するため,現状のセキュリティ対策が今後も有効であることは保証されない。そのような状況下において,セキュリティ対策は一過性のものではなく,All-IPネットワークに必須な技術要素へと変化し,費用に対する考え方にもネガティブなイメージのある支出から事業継続に不可欠な投資へとパラダイムシフトが生じている。富士通は,この変化に応えるためにネットワークセキュリティ技術の開発,およびソリューション提供に取り組んでいる。
本稿では,まずネットワークにおけるセキュリティ対策の課題について整理し,それらの課題解決に向けた技術要素を紹介する。そして,通信サービスの仮想化で注目されているSDN/NFV(Software Defined Networking/Network Functions Virtualisation)の技術を取り入れた富士通製品の特長を紹介する。
多様化する市場のニーズを具現化するMVNOソリューション (935 KB)
佐藤 寛亨, 高瀬 正明, 今野 洋平, 新井 卓也, p.43-51
近年,雑誌やテレビなどで格安スマートフォン・格安SIM(Subscriber Identification Module)カードを活用した通信費の節約術が盛んに取り上げられている。こうしたMVNO(Mobile Virtual Network Operator:仮想移動体サービス事業者)サービスの認知度は,日本では約7割に迫る勢いである。これらの盛り上がりを受け,MVNOサービスを提供する事業者は,従来の通信事業者やISP(Internet Service Provider)に限らず,大手流通業者やコンテンツプロバイダーなどの異業種へと広がりを見せている。富士通では,MVNOサービスを検討している事業者に対して総合ソリューションを提供している。その中でも特に力を入れているのが,日本特有の携帯電話サービス事情を背景としたソリューションの開発とそのコンサルティング,およびインテグレーションサービスである。
本稿では,まずMVNOサービスの概要と技術要素を説明し,次にこれらを日本型MVNOサービスに適用させる富士通のソリューションを説明する。最後に,MVNOサービスの進化の仮説を述べるとともに,富士通の目指すソリューションの方向性を示す。
多様なサービスを実現するスモールセルソリューション (1.42 MB )
橋本 正則, 岩本 秀男, p.52-59
「モノのインターネット(IoT:Internet of Things)」と呼ばれる,あらゆるものがネットワークにつながる時代の到来により,モバイルネットワークのトラフィックの急増や場所により均一でないトラフィックが発生している。このため,モバイルネットワークはこれまで以上に重要度を増す一方で,現行のネットワーク構成では対応しきれない状況になってきている。このような状況に対応するため,従来のマクロセルに加え,ホットスポットと呼ばれる狭いエリアに集中したトラフィックをスモールセルによってカバーすることが,今後のモバイルネットワークにとって重要な考え方である。
本稿では,上記課題を解決するために開発した,特定のエリアをスモールセルでカバーするスモールセルソリューションの構成を紹介し,それに搭載される様々な機能や技術について解説する。また,本ソリューションが提供するサービスを紹介し,その適用分野の多様性と拡張性,および将来の技術への対応について述べる。

ネットワークサービスを支える高度化技術

分散サービス基盤技術によるユーザーの体感品質(QoE)向上 (984 KB)
阿比留 健一, 上野 仁, 雨宮 宏一郎, p.60-68
近年,モバイルネットワークの高速化とクラウドサービスの利用増大に伴い,モバイル端末やデバイスによる大量のトラフィックがネットワークのレスポンス低下を招きつつある。この問題に対応するため,分散コンピューティングの技術をネットワークに応用する考え方が注目されている。富士通研究所で開発した分散サービス基盤もその技術の一つであり,データセンター内に閉じていた処理実行・データ蓄積を実世界(現場)の端末・機器の近くまで拡張することで,今後拡大するモバイル端末やデバイスを活用するアプリケーションを容易に開発・構築・運用できるIoT(Internet of Things)対応クラウド技術である。この技術を使うことで,ユーザーの移動に追従して,ユーザーが所有する端末やその近傍にあるデバイスにあらかじめデータを配備することが可能となり,ユーザーが使いたいときに即座にデータにアクセスできるようになる。
本稿では,ICTを取り巻く環境の変化の中で広がっていく分散コンピューティング環境において,ネットワークの役割を捉え直すとともに,現在富士通研究所が取り組んでいる分散サービス基盤技術について紹介する。
拠点間のデータ通信性能を改善するWAN高速化技術 (874 KB)
小口 直樹, 亀山 裕亮, 佐沢 真一, 内藤 雅弥, p.69-75
昨今のビジネスのグローバル化,システムのデータセンターへの集約や仮想化,クラウド利用の普及,およびモバイル端末利用の拡大に伴い,広域ネットワーク(WAN)を介したデータ通信を高速化したいというニーズが高まっている。しかし,これまで多くのアプリケーションが利用しているTCP(Transmission Control Protocol)は,WANにおいては輻輳(ふくそう)制御の制約により最大通信速度を使い切れず,通信性能が上がらないという課題があった。富士通研究所では,TCPに代わる二つのプロトコル技術と,これらのプロトコルをWANやアプリケーションの特性に応じて自動選択する技術を開発した。更に,転送データサイズの削減や,転送シーケンスの効率化によって,ソフトウェアのみで最大通信速度以上にデータ通信を高速化する技術を開発し,WAN経由のデータ通信の高速化を実現した。
本稿では,富士通研究所が開発した業界最高レベルのWAN高速化技術と,その技術を適用した富士通のミドルウェア製品(FUJITSU Software Interstage Information Integrator)について紹介する。
IoT時代のビジネスとネットワークをつなげるフルキャプチャーシステムとビッグデータ解析技術 (748 KB)
千葉 英行, 加室 真吾, 野村 祐士, p.76-80
IoT(Internet of Things)やM2M(Machine to Machine)などの普及により,ネットワークに接続される対象機器は爆発的に増加し,それに伴いネットワーク上を流れるトラフィックもまた莫大な量となっている。ネットワークへの接続やネットワーク品質は既に保証されていることが前提であって,接続性やネットワーク品質自体が利益を生むものではないとも言える。このような状況下においては,従来から進められている上位レイヤーからの要請で形づくられるサービスオリエンテッドなビジネスモデルが更に加速されることが考えられる。富士通は,このようなビジネスモデルを保障する取組みとして,培ってきたネットワーク技術やビッグデータ解析技術を活用して仮想化基盤を利用する大量かつ高速なデータをキャプチャーし,リアルタイムに解析する「200 Gbps帯域対応リアルタイムフルキャプチャーシステム」を開発した。
本稿では,仮想化基盤を利用したサービスとして求められるニーズとサービス化に当たっての課題をまとめ,開発したシステムの特長を紹介する。

社会基盤を支える通信技術

信頼性と柔軟性を兼ね備えた「知覚する光ネットワーク」 (918 KB)
野津 靖子, 青木 泰彦, 小牧 浩輔, 岡野 悟, p.81-88
従来,通信キャリアネットワークでは,高速・大容量・長距離・高信頼が光ネットワークに対する最も重要と考えられる要求事項であった。近年は,コンテンツプロバイダーなどの様々なサービスプロバイダーが登場し,アプリケーションの多様化に伴って,運用の容易さ・柔軟性・効率化の重要度が急速に増している。このような要求の変化に対応するため,富士通は光ネットワークの状態を従来よりも高い精度でモニタリングし,状態に応じて最適な制御を行う「知覚する光ネットワーク」の実現に取り組んでいる。これは,簡易かつ迅速なサービスの立上げ,電力や信号品質の最適化制御,障害予兆検出・予防保守などを実現することで,光ネットワーク管理の煩雑さからの脱却とグリーン化を目指すものである。
本稿では,「知覚する光ネットワーク」の実現に向けた富士通独自の光DSP(Digital Signal Processing)独自技術であるライトプローブ技術とその効果について紹介する。
柔軟な光幹線系ネットワークを実現するCDCG-ROADM (1.25 MB )
菅谷 靖, 前田 卓二, 鈴木 裕一, 坂本 剛, 伊藤 洋之, 大井 寛己, 木村 岳, p.89-95
近年のデータセンターやモバイルネットワークの急激なトラフィック増加により,これらを支える光幹線系ネットワークでは高速・大容量・長距離・信頼性がますます必須となってきている。更に,光幹線系ネットワークを柔軟に再構築する様々なアプリケーションも議論されてきており,光レベルでの柔軟性・高可用性が求められている。富士通は,光の方路スイッチの役割を担う再構成可能な光分岐挿入装置(ROADM:Re-configurable Optical Add/Drop Multiplexer)の開発において,柔軟性・遠隔操作性・大容量化など通信キャリアのお客様のニーズに対応するCDCG(Colorless/Directionless/Contentionless/Gridless)機能の実用化に注力している。
本稿では,CDCG-ROADMを実現する各種キーデバイスや要素技術,およびCDCG-ROADMの機能について述べる。更に,CDCG-ROADMによる将来の光幹線系ネットワークについても紹介する。
光アクセスの可能性を大きく広げる10G-EPONシステム (913 KB)
新井 正博, 当摩 栄作, 川上 貴士, 坂井 典生, p.96-103
近年,高速なブロードバンド環境を支えるFTTH(Fiber To The Home)サービスは広く普及し,国内の加入件数が2600万を突破した。また,高精細映像配信サービスや高速化が進むモバイルサービスのバックホールやオフロードとしての用途や,スマートグリッドに代表されるM2M(Machine-to-Machine)通信など社会を支えるインフラとして,より広範囲に光アクセス網の適用が開始されている。富士通では,このFTTHを支えるGE-PON(Gigabit Ethernet-Passive Optical Network)製品を提供しており,更に10Gシステムへの容易なマイグレーションを可能とする10G-EPONシステムの開発を行っている。10G-EPONシステムは機器設置・保守作業スペースを削減するとともに,障害発生時の影響範囲の極小化や障害時間の短縮により,FTTHサービスの品質向上に寄与する。
本稿では,10G-EPONシステムの概要,特長,および今後の展望について紹介する。
LTE-Advancedから5Gへ向かうモバイルアクセスシステム (1.27 MB )
伊達木 隆, 関 宏之, 箕輪 守彦, p.104-109
モバイル通信のトラフィックは,スマートフォンやタブレット端末の普及,写真や動画を利用した多種・多様なアプリケーションの利用拡大により急速に増加している。更に,IoT(Internet of Things)時代に向け,爆発的な通信デバイス数の増加や,動画データの高精細化などにより,モバイルトラフィックの増加は今後も続くと予想される。現在は,第4世代(4G)と言われるLTE-Advancedが既に普及し,更に第5世代(5G)のモバイルアクセスシステムに向けた技術開発が世界中で活発化している。5Gでは,LTEに比べて通信容量を1000倍にするなど,非常に高い要求条件を達成する必要があり,セルの高密度化をはじめとして様々な技術開発が必要となる。
本稿では,まずモバイルアクセスシステムにおけるトラフィックの増加に対応するための技術について解説し,次に,富士通で開発したLTE-Advanced対応高密度無線基地局装置と屋内向けフェムト基地局について紹介する。更に,5Gモバイルアクセスシステムの技術動向と,その実現に向けた取組みについて述べる。