株式会社ジェーシービー 様

デジタル決済時代に、個人データを安心して活用できる社会をつくる

株式会社ジェーシービー(以下、JCB)と富士通は、デジタルアイデンティティ領域における共同研究を開始した。JCBが培ってきた決済や認証における知見と、富士通のブロックチェーン技術を活用したID流通技術で、オンライン上で企業や個人が信用性の高いID情報活用ができるシステムの構築を目指す。

このシステムが実現されれば、さまざまな事業者に登録されている利用者のID情報を利用者自身で公開する内容や範囲管理することができ、信用度の高い情報の連携で、より効率的かつ安全・安心なオンライン取引が可能となる。

ビジョン

安全・安心なデジタル決済環境を提供したい

決済市場は現在、大きな変革期にある。スマートフォンの普及が進み、リアルとバーチャルの垣根がなくなってきている。そしてグローバルなデジタル化は急速に進み、日本でもモバイル端末によるキャッシュレス決済やリアルタイム決済が普及し始めた。

株式会社ジェーシービー 代表取締役 兼 専務執行役員 三宮 維光 氏

「これからのデジタル決済で大切になるのは、本人確認に必要な情報を瞬時に相手方に連携できること、そしてその情報自身が非常に高いトラスト(信用性)を持っていなければいけないこと、この2点だと考えています」と、日本発で唯一の国際カードブランドであるJCBの代表取締役兼専務執行役員の三宮維光氏は語る。

JCBはこれまで国際ブランドとして培ってきた技術を活用し、社会のニーズに応えるサービスで、より安全・安心な決済の提供に取り組んでいる。その中で、従来は集中して管理してきた顧客情報などのデータを、汎用性があるスキームでどう活用し、どう社会的な価値を得るかを考えた時、従来の方法では受け入れられないと気付いたという。

高まる「アイデンティティ」の重要性。求められるID情報のセキュアな流通

その理由は、モバイルやリアルタイムの決済において浮かび上がってきた「アイデンティティ」というキーワード。シェアリングエコノミーやサブスクリプションモデルが拡大する中で、サービスの提供者と利用者の契約において、氏名や住所、年齢、経歴といった「アイデンティティ」の重要性が高まっているのだ。

デジタル社会において利用者が安心して決済サービスを使えるようにするには、信用度の高い本人確認の情報、いわゆるID情報をセキュアに連携させ、活用できる仕組みが必要になってくるのだという。

「ID情報をセキュアに連携させる仕組みがあれば、決済だけではなく本人確認や属性変更手続きが、業種や業界を越えて一括してできるようになり、安心感の高い快適な生活が送りやすくなるのです」(三宮氏)

バリュー

業界を越えたスピーディな個人認証の相互連携へ

現在、「アイデンティティ」に紐づくID情報は、すべてのデータを中央で一括管理し、そのデータを参照することで個人が認証されている。しかし、スマートフォンが普及し、社会のIoT化や5Gの展開などさらにデジタル化が進んでいくと、端末間でも大容量のデータが瞬時に送受信できるようになり、従来の個人認証のモデルでは問題が生じる可能性が高まっている。

「現時点では本人確認に使うID情報は、サービスごとに登録が必要となり、利用する場合の活用ルールも一定ではありません。またひとつのシステムで大量の情報を管理すると、万が一にも漏洩が起きたときの影響も非常に大きくなってしまいます」(三宮氏)

デジタル社会においてID情報の活用を進めていくためには、この課題を解決し、業界を越えた事業者間の相互連携・運用を実現する必要があるのだという。

ひとつの行為に複数の手続きが必要な現状

例えば引っ越しの際、まず役所に転居の届け出を行い、カード会社や銀行にも「住所が変わりました」という変更届けを出す必要がある。電気やガスなどの公共サービスなども含め、同様の複数の手続きが必要となってくる。

引っ越しというひとつの行為に対して、日頃利用している多くのサービスに、それぞれ手続きをしなければならないのは非常に手間がかかる。しかしID情報の連携が行われれば、それが解消できると期待されている。

三宮氏は、「業界を越えたID情報連携に大事なのは、そのID情報自体の信頼性です。そしてどのID情報を、どこに利用させるかを、利用者自身でコントロールできるということが重要なのです」と言い、「それをまさに可能にしてくれるのがアイデンティティ流通技術のIDYX(IDentitY eXchange)だったのです」と語る。

チャレンジ

ブロックチェーン技術で個人のID情報をセキュアに活用

「IDYXとは、我々の強みであるブロックチェーンをベースとした、デジタルアイデンティティの流通を実現する技術です」と説明するのは、富士通研究所 セキュリティ研究所の津田宏所長。

株式会社富士通研究所 セキュリティ研究所 所長 津田 宏

「IDYXの特徴は、さまざまな所に分散した自分のID情報を改ざんされることなく、なおかつ自分でどの情報を出すかをコントロールできるのです」と津田は続ける。

自分でどのサービスに対してどういう情報を出すのかを自らコントロールすることで、自身のプライバシーを守りつつ、異なる事業者間の信頼性の高い連携に自らのID情報を提供できるのだという。

運転免許証などを提示することで自分の情報を証明することと同様の行為が、デジタルで一気に、さらに提供する情報を選んで出すことができ、例えば、自分の学歴や職歴もデジタルデータ化されても安心してサービスに提供できるのだ。

ID情報を自分で提供先や項目を選び、かつセキュアに活用することができれば、スマートフォンなどを利用してID情報を利活用するサービスの幅が一気に広がる。

デジタルアイデンティティの流通イメージ

個人情報を自己管理し、許可した範囲で流通させる新しい考え方

JCBは、ポスト国際ブランドビジネスを見据えた決済領域や自己主権、連携をキーワードにしたアイデンティティ領域において、社会に必要とされるモデルづくりを進める「デジタルアイデンティティ構想」を進めている。

この構想を進める中で、自己主権型/分散型アイデンティティの研究開発が海外で活発化しているということを知り、国内でも共に取り組める相手がいるのではと探していたところ、同技術を研究している富士通に出会った。

そしてID認証基盤を活用したアイデンティティのセキュアな利活用を実現できるのは、IDYXのビジョンと技術だとし、2019年10月に両社はデジタルアイデンティティ領域における共同研究開始を発表した。

今後、連携・自己主権型のアイデンティティに関するPoC(概念実証)や、ブロックチェーン同士を安全につなげる富士通のコネクションチェーン技術を活用した、分散台帳間の連携・価値移転に関するPoCも実施していく計画だ。

これにより、決済領域にとどまらず、ID情報をセキュアに流通させるID認証基盤という社会インフラのプラットフォーマーとして、トラスティなスキームを提供していきたいと考えている。

今後の展望

信頼性の高いアイデンティティ流通を目指して

JCBは、利用者自身がID情報の流通をコントロールできるプラットフォームを提供し、業種や業界を越えた本人確認や、連絡先変更などの属性変更手続きも一括して行える利便性の高いサービスの実現を目指しているのだという。

さまざまな事業者に登録された利用者自身のID情報を自身で一元管理し、また、それらを連携させた安全・安心なオンライン取引が実現される。

実店舗における小売業者にとって必要な相手の信用情報の確認、例えばこの相手に販売して問題はないのか、支払いが確実に行われるか、といういままでの決済における信用情報に加え、送り先はどこなのかなどの煩雑な確認までデジタルで瞬時に行えるようにもなるだろう。

「個人認証や、広義の与信、それに伴う資金移動といった決済をつかさどるインフラには、これからもさまざまな新しい技術が出現してくると思います。その結果、より暮らしやすい世の中になっていくと、私は確信しています。技術を支えるのはトラスト(信用性)であることは、今後も変わりません。」(三宮氏)

JCBと富士通は、IDYXを活用したID認証基盤を、信頼できるプラットフォームとして世の中にサービスを提供し、デジタル決済時代の安心・安全な社会を支えていきたい。

株式会社ジェーシービー 様

所在地 東京都港区南青山5-1-22 青山ライズスクエア
設立 1961年1月25日
代表者 代表取締役会長 兼 執行役員社長 浜川一郎
ホームページ https://www.global.jcb/ja/新しいウィンドウで表示
概要 日本発唯一の国際ペイメントブランド。クレジットカード業務、クレジットカード業務に関する各種受託業務、融資業務、信用保証業務、集金代行業務、前払式支払手段の発行ならびに販売業およびその代行業に携わる。「お客様志向」と「日本的」を反映させたブランドメッセージ「世界にひとつ。あなたにひとつ。」を掲げる。

[2020年4月掲載]

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