データやヒトの地理的位置を高信頼に検証可能とする
「Robust Localization」のイノベーションチャレンジに関するホワイトペーパーを公開

2023年3月20日

English

富士通とBen-Gurion University of the Negev(注1)(以下、ベングリオン大学)は、インターネット上に展開するデータやヒトの地理的位置を、位置情報の詐称や位置推定への攻撃などに対して高信頼に検証可能とする「Robust Localization」の技術課題に関するホワイトペーパーを公開しました。

「Robust Localization」は、富士通が策定した「Trust-Enhanced Networking」(注2)のコンセプトを実現するための有望な手段の一つです。サイバー上の取引相手やデータに対するトラストは、リアルにおけるフィジカル情報の裏付け、とりわけデバイスやデータの地理的位置を確認することで強化することができます。そのために、ターゲットとなるデバイスやデータを扱うノードの位置を、ネットワークから得られる情報を活用して推定することが考えられます。しかし、現在普及している技術では、取得されたターゲットの地理的位置が誤っているケースもあります。単純な推定精度の問題として捉えるのみではなく、推定結果あるいは推定プロセスにおいても悪意のあるユーザや攻撃者の介在によって情報が偽装され得るリスクを考慮し、高精度かつ高信頼な位置推定技術がサイバー上のトラストを実現する上で不可欠です。

富士通とベングリオン大学はそのような観点にいち早く着目し、共同研究を進めております。今回のホワイトペーパーでは、位置推定に関する既存技術を整理し、今後取り組むべき課題を明確にすることで、私たちの研究の方向性を示します。今後は、関連する標準化団体への参加、パートナーとの実証実験などの連携を進め、「Robust Localization」技術の確立および社会実装を目指していきます。

背景

インターネットは世界中のヒトやモノを繋いでいます。サイバー上で様々な活動やサービス提供が行われている昨今ですが、取引相手やユーザ、データの地理的位置を知りたい場合があります。身近な例では、地理的位置はターゲティング広告や位置情報ベースのアプリケーションなどのサービスに活用されています。また、取引相手がリアルで存在する国・地域を確認することができれば、サイバーでの取引に対する信頼性は高まるでしょう。従来では、GPS情報の取得や、デバイスのIPアドレスにもとづいて所在地域の推定がなされていますが、位置情報の詐称や推定エラーなどによってサービスの不正利用が引き起こされ、しばしば問題となっています。また、ネットワークを利用して、ターゲットへのプロービング(注3)を行い通信遅延を計測することで距離を推定する遅延ベースの位置推定手法も多く研究されていますが、攻撃者の想定などトラストの観点を考慮した検討は不十分でした。そこで、富士通は現在、ベングリオン大学と信頼性の高い位置推定に関する「Robust Localization」技術の共同研究を進めております。今回公開するホワイトペーパーでは、既存技術の調査を踏まえて技術チャレンジを明確にします。

Robust Localizationについて

遅延ベースの位置推定技術にはパッシブ方式とアクティブ方式があります。パッシブ方式は、定期的なプロービングによりIPアドレスと地理的位置情報を紐づけたデータベースを用意する方式ですが、位置情報の鮮度や推定の精度が課題です。一方、富士通とベングリオン大学がベースとするアクティブ方式は、動的なプロービング実施によってリアルタイムに高精度に位置を推定する方式であり、多くの手法が提案されています。しかし、アクティブな計測結果の正確性や信用性、攻撃者の想定をしなければなりません。「Robust Localization」では、ターゲットのIPアドレス詐称や、VPNやProxyサーバーの背後に隠れたターゲット、あるいはプロービングに対する意図的な遅延挿入などの攻撃などを想定し、ターゲットの真の位置を検証します。また、クラウド・データセンタ上のデータ移転などに対しても、データの所在地の確認および証明を試みる技術です。

今後の取り組み

現在、研究課題の解決に向けてベングリオン大学と「Robust Localization」の技術開発を進めております。今後は更に、通信系コミュニティや標準化団体、インターネット測定プラットフォーム、クラウドサービスプロバイダーなど様々なステークホルダーとも共に、「Trust-Enhanced Networking」のコンセプト実現に向けて、技術開発・実証実験を進めていきます。

注釈

  • (注1)
    Ben-Gurion University of the Negev:
    本部 イスラエルベエルシェバ市、総長 ダニエル・チャモヴィッツ。
  • (注2)
    Trust-Enhanced Networking:
    ネットワークが新たに担うべき役割として、リアルにおけるフィジカル情報の裏付けによってサイバーにトラストをもたらすコンセプト。
  • (注3)
    プロービング:
    ターゲットホストへの接続性の確認や通信遅延を計測することを目的としてパケットを送信すること。

本件に関するお問い合わせ

研究本部 データ&セキュリティ研究所
contact-nwt@cs.jp.fujitsu.com

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