日本たばこ産業株式会社 様 導入事例

複雑化するITライフサイクルの課題を解決し、
管理業務・コストの削減とワークスタイル変革に対応した環境整備を実現

日本たばこ産業株式会社 医薬事業部様は、複雑化するITシステムのライフサイクルと医薬研究開発の業務システムのライフサイクルの差異を吸収するため、多くの労力・コストを必要としていました。医薬品業界の厳しい規制に対応するには、一般のITシステムとは異なる品質・管理が求められるためです。そこで、仮想化環境専用に開発されたSSD/HDDのハイブリッドストレージ「ETERNUS TRシリーズ」を活用した富士通の仮想デスクトップ基盤(以下、VDI:注1)ソリューションを選択・導入。運用管理業務の負荷・コストを低減するとともに、多様なワークスタイルへの対応も実現しました。

業種 たばこ・加工食品・医薬品の製造及び販売
導入システム 仮想デスクトップ基盤(VDI)ソリューション
導入の目的 医薬事業部におけるITライフサイクルの最適化と、PC運用負荷の削減、新しいワークスタイルへの対応
採用のポイント 性能面と使い勝手を損なうことなく、最適なコストでの実現
課題
効果
課題ITライフサイクルから生じる、運用管理業務負荷とコストの増大
効果ITライフサイクルの最適化により、業務負荷とコストを削減
課題多様化するワークスタイルへの対応
効果どこでも社内と同等の業務ができる環境の整備
課題端末の紛失・盗難、複雑なネットワークによるセキュリティの不安
効果VDIによるデータの一元管理とシンプルなネットワーク構成による強固なセキュリティの確立

導入の背景

複雑化するITライフサイクルと医薬事業部ITのライフサイクルの違いによる業務負荷増大に加え、多様化するワークスタイルへの対応

日本たばこ産業株式会社(以下、JT) 医薬事業部は、JTグループの医薬事業を担う部門です。複雑化する一般のITライフサイクルと、医薬事業部ITのライフサイクルの違いについて、牧氏は、次のように説明します。

「JTの全社ITの枠組みの中で、医薬事業部に特化したシステムを我々が運用・管理しています。ただ、医薬品は他の工業製品とは異なって生命に直接関係するため、利用するコンピュータシステムには当局より厳しい品質管理が求められます。このため、たとえばOSやブラウザのバージョンアップが発表されると、医薬事業部では当局が求める品質に沿えるようシステムを検証し、場合によっては大規模な改修による対応を行う必要があるため、より多くの手間・コストが発生してしまうのです」(牧氏)

また、ワークスタイルの観点でも、より柔軟なITが必要とされていました。臨床開発部 課長 松本 直樹 氏は次のように語ります。

「医薬事業部では、治験への対応等で全国の病院を飛び回る社員も少なくありません。また、業務の多様化にともない、従来の"会社の机に座って9~17時の定時勤務"というスタイルを前提としたシステム環境では、対応が難しくなってきたのです」(松本氏)

日本たばこ産業株式会社 医薬事業部 事業管理部 次長 牧 英樹 氏の写真 牧 英樹 氏
日本たばこ産業株式会社
医薬事業部 事業管理部 次長
日本たばこ産業株式会社 医薬事業部 臨床開発部 課長 松本 直樹 氏の写真 松本 直樹 氏
日本たばこ産業株式会社
医薬事業部 臨床開発部 課長

導入の経緯

ユーザビリティを落とさないことを大前提に、コストとパフォーマンスを両立させた富士通の提案を選択

一般のITシステムと医薬事業部ITのライフサイクルの差異、多様化するワークスタイルへの対応の2つの課題を解決するため、医薬事業部ではさまざまなソリューションを検討。そこで有力な候補となったのがVDIでした。ただし、ソリューション選定においてはレスポンスや操作性などの「ユーザビリティは落とさない」ことが絶対条件でした。

「現行クライアント端末のユーザビリティを下回るのであれば、VDIを導入する意味はないと考えていました。技術的な課題は十分理解していましたが、全国を飛び回る社員を支える立場としては、そこは譲れない一線でした」(松本氏)

ソリューションの検討は2012年からスタート。途中、VDI環境の評価検証による試行錯誤も行われましたが、なかなか思うような結果は得られませんでした。それが大きく動くきっかけとなったのは、富士通のストレージ製品「ETERNUS TRシリーズ」のHyper-Vへの対応でした。

「評価検証結果から、VDIのボトルネックがディスクアクセス速度にあることがわかりました。廉価なハードディスクではとても実用には耐えません。一方、フルSSDだと性能は魅力的でしたが非常に高価です。そうしたとき、富士通から提案された ETERNUS TRシリーズが、我々が望むコストと性能にうまくマッチしたのです」(牧氏)

ETERNUS TRシリーズは、仮想化環境専用に開発されたSSDとHDDのハイブリッドストレージです。I/Oリソースを仮想マシンごとに自動割り当てする機能も備え、VDIを実現するには最適な製品でした。
こうして、2015年2月、富士通の提案が正式に選択され、導入プロジェクトがスタート。ユーザビリティを落とさないことを絶対条件に、ストレージ以外でもさまざまな工夫・調整が行われました。たとえば、ネットワーク環境が十分でなくても動作するように通信プロトコルを変更したり、利用シーンに合わせて画質を調整したりと、さまざまなチューニングが繰り返されました。約6か月にわたるこうした検証・導入をへて、2015年9月、新しいVDIシステムが、無事、本稼働を迎えました。

導入の効果

運用管理業務負荷とコストの削減、ワークスタイル変革の環境整備を実現

導入されたVDIシステムは、Windows ServerをベースにハイパーバイザにはHyper-Vを採用し、その上でシトリックスのXenDesktopが稼働する仕組みとなっています。実質、3名の運用管理者で約200名のユーザーを支えるため、仮想環境の運用管理ツールには、ServerView Resource Orchestratorが導入されました。
取材時点では、稼働してまだ半年ということで「具体的な効果が現れるのはこれから」と言いつつ、牧氏は新しいVDIシステムに次のように期待を込めます。

「クライアント端末と業務サーバの間にVDIという中間レイヤーができた意味は大きいと思います。たとえば、明日、Windows 10のクライアント端末導入が決まっても慌てる必要はありません。VDI上では従来どおりWindows 7の環境で業務できるからです。」(牧氏)

また、今回のVDIシステムは、業務システムと高速なネットワークで接続されています。このため、従来よりもファイルアクセスが高速になり、操作面でのメリットも確認されています。

運用管理面でも、VDIシステムは大きい効果をもたらしつつあります。医薬事業部 事業管理部 主任 二宮 智由 氏は次のように説明します。

「多様な業務で物理PCと同じユーザビリティを提供するため、業務ごとに数パターンのモデルを作成しました。さらに、高・中・低の3段階の画質レベルを準備し、モデルと画質の組合せパターンを用意しました。パターンが多くなって展開が大変に思えますが、自動化の仕組みを構築したことにより、展開パターンを選択するだけで自動的に仮想デスクトップを作成でき、運用負荷は従来の8分の1にまで低減できました。さらに、VDI環境のユーザビリティを向上させるため、VDIに不要なOSコンポーネントを削除するなど、極限まで無駄を排除し、その結果、すべての利用者に満足いただける環境を提供できました。
すでに運用開始から数か月が経過しましたが、パフォーマンスはとても安定しています。また、当社のポリシー上、セキュリティパッチ適用やウイルススキャンが同時期に実行されるため、高負荷状態となり性能劣化が心配されましたが、SSDと自動QoS機能により、まったく問題ありませんでした。なお、SSDヒット率は99%以上と、フルSSDと遜色ない状態でVDIを利用できています」(二宮氏)

実際に、これまでクライアント端末の作成と展開には1台あたり約4時間程度の拘束時間が発生していましたが、ServerView Resource Orchestratorを活用することで、拘束時間を約30分に短縮。管理者の負担は大幅に低減されました。

また、二宮氏は、複雑なネットワークをシンプルにできたのも、予想外の効果だったと振り返ります。

「医薬事業部は、昨年末に新しいオフィスに移転しました。以前のオフィスでは、さまざまな事情からネットワーク構成が非常に複雑でしたが、VDIの場合、VDIにだけ接続できればすべての業務ができますので、シンプルなネットワーク構成を実現できました。これは、管理面、セキュリティ面での大きいメリットです」(二宮氏)

新しいVDIシステムが予想外の効果を発揮した例は、もう1つありました。それは、JT本社ビルが実施したテレワーク(注2)の試験導入でした。

日本たばこ産業株式会社 医薬事業部 事業管理部 主任 二宮 智由 氏の写真 二宮 智由 氏
日本たばこ産業株式会社
医薬事業部 事業管理部 主任

今後の展開

テレワークやVDI導入の社内事例として情報発信し、VDIのBCP(注3)も検討中

「医薬事業部がVDIを導入したあと、JTではテレワークの試行が実施されました。本来であればテレワークの対象とする業務の選定や、実施時のセキュリティの確保策の検討等が必要でしたが、医薬事業部ではすでにVDIが整備されていたため、その必要がなく、スムーズにテレワークの試行に参加することができました」(牧氏)
医薬事業部におけるVDI導入の効果は明らかです。たとえば、従来は、VPNサービスを経由して社外から業務システムやファイルサーバにアクセスしていたため、どうしてもレスポンスが遅くなるという課題がありました。しかし、VDI導入後は、大きなファイルのやりとりや業務システムのレスポンスが大幅に向上。その結果、社外でもオフィスと変わらず、セキュアな環境で作業できるようになりました。
今後、テレワークを導入することになった場合も部門によって業務の内容、スタイルが異なるため、医薬事業部と全く同じVDIシステムが他部門に展開されるとはかぎりません。牧氏は、「あくまで、VDI導入やテレワークの社内事例として参考になればと思っています」と語ります。

また、「利便性が向上したからこそ、注意しなければならないことがある」と、松本氏は次のように語ります。

「VDIによって、オフィスでできることは、ほとんど自宅でも出先でも可能になりました。ただ、それが超過勤務や無理な働き方につながるのは避けなければなりません。したがって、今後はJT全社の人事・勤怠・労務管理などの制度を踏まえ、医薬事業部としての仕組みをしっかりと整備することも重要だと感じています」(松本氏)

ITライフサイクルの課題を解決し、多様なワークスタイルへの対応も可能にしたVDIシステムは、今後、医薬事業部にとってますます重要なインフラになることが予想されます。そのため、現在、VDIシステムのBCP対策も検討されています。

「現在のVDIシステムに万が一のことがあっても、前日の状態に復帰できることを目標としています。ぜひ、富士通さんには、よいご提案をいただければと期待しています」(牧氏)

富士通では、今回のプロジェクトで培われたJT医薬事業部様とのパートナーシップを大切にし、VDIシステムをさらに使いやすいものへとブラッシュアップすることで、JT医薬事業部様のビジネスを全力で支援していきます。

日本たばこ産業株式会社 松本 直樹 氏、二宮 智由 氏、牧 英樹 氏の写真 写真左から日本たばこ産業株式会社 松本 直樹 氏、二宮 智由 氏、牧 英樹 氏

担当営業・SEからの一言

ネットワーク遅延が懸念される地域などに医薬事業部の皆様が出張された際、VDIのパフォーマンス検証やチューニングにご協力いただき、たいへん助かりました。

富士通株式会社 産業ビジネス本部 ライフサイエンス統括営業部 内記 真木の写真 富士通株式会社
産業ビジネス本部 ライフサイエンス統括営業部
内記 真木

医薬事業部の皆様には、VDIの動作検証にご協力いただきました。我々としても、限界までチューニングにこだわってユーザビリティを追求できたことは、エンジニアとして貴重な経験でした。また、富士通としても、今後に活かせる重要なノウハウを蓄積することができて、たいへん感謝しております。

株式会社富士通システムズ・イースト 第一産業ソリューション本部 ライフサイエンス事業部 宮原 寛、吉田 岳広の写真 株式会社富士通システムズ・イースト
第一産業ソリューション本部 ライフサイエンス事業部
宮原 寛、吉田 岳広

日本たばこ産業株式会社 様 概要

所在地 〒105-8422 東京都港区虎ノ門2-2-1
代表者 代表取締役社長 小泉 光臣
設立年 1985年
従業員数 連結44,485人 単体7,549人(2015年12月31日現在)
事業内容 たばこ・加工食品・医薬品の製造及び販売
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日本たばこ産業株式会社様のロゴマーク

[2016年3月30日掲載]

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