「DXの主役はアプリ開発者」
企業のアジャイル開発を支える
富士通のHybrid IT
~DXの3つのステップと
立ちはだかる壁とは~

富士通の「Hybrid IT」は、クラウドファーストでありながらも、クラウドだけにこだわらないハイブリッド構成の新たなIT基盤だ。DXを進める上で、Hybrid ITを利用するメリットは何なのか、そもそもなぜシステムをクラウドに移行する必要があるのか。富士通の出口雅一 戦略・企画プロモーション室Hybrid ITデザインセンター シニアディレクターに、日経BP 総合研究所 イノベーションICTラボ 上席研究員の大和田尚孝が聞いた。
[(注)2022年3月に日経クロステックSpecialに掲載されたものです。肩書などは掲載時のものになります。]
――新型コロナウイルスの影響で働き方が変わり、DXをはじめとしたデジタル投資が活性化しています。現況をどう見ていますか。
出口 コロナ禍で分かったのは、デジタル化が進んでいるところとそうでないところが二極化していることです。例えば、デジタル化が進んでいる金融業であれば、ATMに行かなくてもスマホから様々なサービスを受けられるようになっています。一方でデジタル化が進んでいない企業では、遅れを急ピッチでリカバリーする必要があります。以前から、既存システムの老朽化やブラックボックス化が大きな問題になるとして「2025年の崖」と言われてきましたが、デジタル化が遅れた企業ではそれが現実の問題として見えてきました。
――確かに、気がついたら「崖」と言われる2025年まで残り3年しかない状況です。問題に直面する企業に対して、富士通はどのような支援をしていますか。
出口 ここ数年で技術が大きく進歩したので、インフラやアプリケーションの基盤、クラウド、マネージドサービスなどの様々な領域で新しいサービスを提供できるようになり、体系化して提供しています。Hybrid ITは様々なお客様の課題にスピード感を持って対応でき、既存の業務だけでなく新規事業もサポート可能です。
これを、インテル社をはじめとするHybrid ITを支えるパートナーとの協業により、広くお客様に使っていただけるように提供していきます。
Hybrid ITデザインセンター
シニアディレクター
出口 雅一
DXの3ステップと、そこに立ちはだかる壁
――Hybrid ITの前提として、システムをクラウドベースに変えていくべき、という考えがあると思いますが、どのような手順で進めるのでしょうか。
出口 クラウド化を進める手順を「クラウドジャーニー」と呼びます。クラウドジャーニーを考える上で、DXは1つのキーになるので、まずはDXから考えていくのがよいかと思います。
DXには大きく3つのステップがあります。最初は「デジタライゼーション」です。ITを使って一部の業務を効率化します。例えばチャットボットをシステムの入力に使う、といったものです。業務のIT化は進みますが、ビジネス自体は何も変わりません。
株式会社日経BP
総合研究所
イノベーションICTラボ 上席研究員
大和田 尚孝 氏
次が「トランスフォーメーション」です。これは先ほど挙げた金融業のデジタル化のようなケースが該当します。ATMで提供していたサービスを、オンラインからも提供することで、エンドユーザーの利便性が大きく向上します。ITがビジネスに新たな価値をもたらしているケースです。
最後のステップが「エコシステム」です。それまで自社のビジネスのためだけに使っていたシステムを、パートナーにも提供します。分かりやすいのが、決済業務を非金融の企業にサービスの一部として組み込むような形ですね。
この3つのステップを進める上で、2つのつまずきやすい点があります。まずは既存業務を続けながらデジタライゼーションに取り組む際のアジャイルやDevOps、データ活用における技術者育成、組織/体制づくり、PoCを始める環境をどう進めればよいかわからないという点です。クラウドアプリケーションを開発する上で、クラウドサービスを活用する技術習得やアジャイル開発、つまり開発部隊と運用部隊が協力してアプリ開発に取り組むDevOpsを実践することが欠かせません。しかしこうした切り替えが上手くできないと悩まれているお客様が多くいらっしゃいます。
もう1つのつまずきやすい点が、既存業務と既存ビジネスの変革に取り組む担当者間でのコンフリクト(摩擦)です。既存業務やそのITを変える際、従来の方法に慣れている方と変革に取り組む方の双方で意見が衝突し、協力して行動できない状況になります。
――確かにIT業界はオープン化やクラウド化など、いくつかの大きな変革に直面し、ビジネスの構造改革を経験していますね。2つのつまずきポイントについても、まさにその通りだと感じます。DXを進める上の問題があると思いますが、テクノロジーが進化している所もあるかと思います。本日はテクノロジーを中心にお聞きします。クラウド化に向けてアプリ開発のやり方を変える際、「アジャイルやDevOpsのやり方が分からない」といった課題に直面する企業は少なくありません。
出口 「アジャイルやDevOpsのやり方」で困っているお客様の多くは、目的がぶれてしまうケースが多いと考えます。これらは、ビジネスの変化に応じて迅速にITを整備するのが目的であって、「やり方」を確立するのが目的ではありません。その為、「ビジネス上のゴール」とその目的を実現する「ロードマップ」が見えていないケースが多くあります。また、「ロードマップ」を策定する上で、考慮する必要があるのは、「必ずしも全てのアプリケーションを開発、改修するだけではない」ということです。従来は巨大なシステムを手分けして内製化していましたが、現在のクラウドやデジタルの環境では、全てのアプリケーションを自社で作る訳ではありません。①新たに自社で作る必要があるもの、②自社の強みとして築き上げた既存のIT資産をモダナイゼーションすべきもの、③業務SaaSや分析ツールなど汎用的なサービスを利用すべきもの、これらをしっかりと切り分ける必要があります。そして、これらをAPIで連携して利用できるようにする。このように、目指すべきゴールに向けて全体の設計や取り組む手順を決めることを、我々は「ロードマップ」と呼んでいます。
――ゴールを決め、ロードマップを描くことが大切なのですね。
出口 はい。しかし、富士通は技術者不足でDX実現へお困りのお客様に向け、クラウドサービスでITをサポートするだけでなく、お客様を技術でナビゲートするコンサル、技術サポートを提供することで、お客様課題の解決へサポートしております。例えば、お客様だけでロードマップを描くのはハードルが高い場合もあります。既存のアプリケーションをモダナイゼーションするのか?新規に作り直した方がいいのか?など技術的な内容を把握してないと、実際に開発出来ないロードマップで作られてしまいます。そのような問題に陥らないように、富士通はお客様向けに、ロードマップ作りをお手伝いするコンサルティングもご提供しています。
――ロードマップを最初に描けば、あるアプリで利用するために作った分析のデータ基盤を、他のアプリでも利用する、といったことが可能ですよね。
出口 そうなんです。従来のアジャイルへの取り組みの一番の失敗は、ロードマップを描いていなかったり、システム部門全体で共有していなかったりすることでした。新規チームでアジャイル開発にて新しい分析・データ基盤を開発したが、従来のシステムにつながらない、といったお客様事例がありました。
――確かに4~5年前は「第2システム部門」のような新組織を作る動きがはやりましたね。ロードマップ作りも難しいと思いますが、作ったロードマップ通りに進めていくことも難しいと思います。そういった部分でのサポートについても富士通は注力していますか。
出口 もちろんサポートしますし、頻繁に起こるロードマップの見直しもお手伝いします。ロードマップを作ることは大切ですが、一方で現在のビジネス環境では利用部門のニーズが短期間で変わり、最初に描いたロードマップを細かく修正する必要が出てきます。そういったニーズに先回りして対応し、ロードマップを書き換えていけるよう、我々がサポートさせていただきます。
――ロードマップを書き換える必要がある、というのは理解できますが、とても難しそうですね。
出口 ロードマップを書き換える難しさの要因として、アーキテクチャの変更があります。実際の事例で、「半年前に考えていたアプリケーションに機能追加できるのか?」「開発体制を大きくするために、アジャイル開発基盤の変更ができるのか?」「アプリケーション増加に伴い可用性向上する為に運用基盤で何を考慮する必要があるのか?」などアプリケーション以外で技術的な悩みが多く出てきます。その多くは、「アジャイルでアプリケーションの変更や拡張が前提」というところから発生している悩みです。その対応に向けて、富士通では、「Digital Application Platform」を提供します。本サービスでは、プラットフォーム機能の提供だけでなく、お客様がDX実現に向けて変化、進化するITに柔軟に対応できるプラットフォームを提供する、必要なサポートを提供するというサービスとなります。例えば、アジャイル開発をスタートしたい場合、複数の基盤サービスを組み合わせて環境を構築するのですが、富士通では、すぐにアプリ開発ができるよう、クラウドインフラをあらかじめ組み合わせて、DevOpsの環境をセットで提供します。基盤のアップグレードも半年ごとに行います。実際このサービスによって、従来は90日ほどかかっていた開発環境の構築が最短2日にすることが可能です。このような開発環境構築が既存のアプリをクラウドネイティブに変える際の進め方です。クラウドを動かすコンテナ環境を用意したとしても、基盤技術者やアプリケーションを実行するソフトウェア技術者がいないとアプリの変更が出来ません。「Digital Application Platform」のコンテナ基盤は、自社で構築・運用する国産クラウドサービス「FJcloud」に構築されます。「FJcloud」はインテル Xeon スケーラブル・プロセッサー搭載したFUJITSU Server PRIMERGYを採用し、高信頼・安心安全な環境と最適な移行手段を提供します。(注1)
従来とは全く異なるクラウドネイティブアプリ運用
出口 もう1つ課題になるのが、クラウドネイティブアプリケーションは作った後の運用が、それまでのアプリとは全く違う、という点です。
――どのような点が異なるのでしょうか。
出口 従来のアプリは作ったものを守っていくのが当たり前でした。一方クラウドネイティブのアプリは環境が変わるのが当たり前です。新しいものを作ったら置き換えますし、違う環境に持っていくことも多くあります。こういったことがあると、従来のアプリ開発に慣れている方は、追従できなくなってしまいがちです。富士通は、そういったクラウドネイティブアプリ運用やセキュリティ対策など難しい部分をサポートします。
またクラウド環境でよく実践されるDevOpsについても、様々な難しさがあるので、将来的には困ったらすぐに相談できるサポート内容をメニュー化してご提供したいと考えています。
――先ほどモダナイゼーションのお話もありましたが、既存アプリ資産の流用もポイントになりますよね。
出口 モダナイゼーションという言葉も10年前とは意味が変わっています。我々が言っているモダナイゼーションは、既存の業務のどこを残すか、変える部分はどこか、を決めることです。顧客企業にとってのお客様に見えるフロント部分は変える必要がありますが、そうでないバックエンドなどの部分はゆっくり取り組めばいい、という考えです。
モダナイゼーションについても、Digital Application Platformを使うことで、既存のJavaアプリとベンダー提供のミドルウェアソフトの既存アプリ資産を全面改修せず、構築済のコンテナ実行環境上に移行し、利用可能かどうかの検証時間を短縮できます。これまで半年ほどかかっていましたが、これも最短2週間に短縮された事例もあります。
――新規にアプリを作る場合は、どのようなところがポイントになりますか。
出口 クラウド環境に移行する場合、オープンソースソフトウエア(OSS)の活用も欠かせません。ベンダーが提供するアプリケーションをそのまま利用するだけでは、ベンダーが想定する用途の範囲内でビジネスを展開することにとどまってしまいます。DXと言えるような、新規ビジネスを実現するのであれば、OSSの活用は必須になります。
富士通は、OSSのコミュニティ活動にも積極的に参加しているので、OSS活用についてもお手伝いすることが可能です。また、OSSベースの高信頼なクラウドサービスFJcloud-Oも提供していますので、OSSを利用して、ビジネス変化に応じて柔軟に業務変更可能な業務システムを構築し、競争力強化を図ることができます。
――DXの時代において、企業システムを進化させていくにはOSSの活用が欠かせないということですね。
出口 はい。今日お話ししたことから我々がお伝えしたい大きなメッセージは、「これからのクラウド活用の主役はビジネスを考える人に近いアプリ開発者だ」ということです。2025年までにクラウドネイティブアプリを急速に増やしていく必要があると言われていますが、現状では開発者の方がインフラ環境や運用に悩まれていて、上手に進んでいません。そういったお悩みを解消するのが我々の役割だと思っています。
従来は、クラウドと言えばインフラを指していました。アプリはオンプレミスのものをそのまま移植することが多かったので、主役はインフラ部門だったんです。これからはアプリ開発者が描いたロードマップに向けて、皆が一体となってクラウドネイティブアプリ開発に取り組んでいくことが大切になっています。こういった新しい取り組みを試験的に始めやすいよう、我々もトライアルの環境を提供します(キャンペーンはこちらから)。
- (注1)PRIMERGYや、HCI(FUJITSU Integrated System PRIMEFLEX for VMware vSAN)に採用されている第3世代 インテル® Xeon® スケーラブル・プロセッサーはクラウド・コンピューティング、リアルタイム分析、ミッション・クリティカルな業務の処理、ビッグデータのインサイトを提供します。データセンターの効率性および信頼性が向上し、あらゆるワークロードの処理に対応します。
- 関連する製品・サービス・ソリューション
[2022年7月掲載]
FUJITSU Hybrid IT Service に関するお問い合わせ・ご相談
-
富士通コンタクトライン(総合窓口)
0120-933-200(通話無料)受付時間:平日9時~17時30分 (土曜・日曜・祝日・当社指定の休業日を除く)
- Webでのお問い合わせ
当社はセキュリティ保護の観点からSSL技術を使用しております。