イーグル工業株式会社 様

SAP S/4HANAへの移行に向けて
富士通のPoCサービスを活用して
業務/技術検証を実施し
工数や妥当性を判断

自動車、船舶、飛行機などの輸送用機器や各種プラント向けのポンプなどに使われるメカニカルシールのトップメーカーとしてグローバルに事業を展開するイーグル工業株式会社。2013年にSAP ERPを国内導入した同社は、2020年までの計画で海外拠点への展開も進めている。一方、経営情報のリアルタイム化に向けてSAP S/4HANAへのコンバージョンを検討するため、富士通の「SAP S/4HANA PoC支援サービス」を採用し、既存資産への影響を確認。コストやスケジュールを把握したうえで経営層への上申を行い、移行への準備を進めている。

導入事例概要
会社名イーグル工業株式会社(Eagle Industry Co.,Ltd.)
業種製造業
導入製品名富士通のSAPソリューション
SAP S/4HANA PoC支援サービス

イーグル工業株式会社 様 課題と効果

課題
効果
課題新しい技術の評価について自社だけで行うよりも専門的なアドバイスを受けたい
効果実データや業務シナリオをもとに技術的検証/業務検証を実施
課題SAP S/4HANA移行を上申するための工数・スケジュール・費用が知りたい
効果移行プロジェクトにかかる工数・スケジュール・費用を精緻化
課題PoCに関わるライセンス購入やインフラコストを抑制したい
効果富士通のIaaS環境を活用し、ライセンス購入も不要で検証可能

PoC実施の背景

SAP ERPのグローバル統合と並行しSAP S/4HANAへの移行を検討

シール製品大手のNOK株式会社のメカニカルシール部門が独立して1964年に設立されたイーグル工業は、各種プロセス用メカニカルシールを中心に幅広い事業を展開してきた。さらに、自動車用メカニカルシール、舶用製品などに製造領域を拡大。2005年には航空宇宙事業部を設立し、現在は「自動車/建設機械」「一般産業機械」「舶用」「航空宇宙」の4つのセグメントで事業を展開する。海外へは1979年の台湾を皮切りに、アジア、欧州、北米と世界各地にグループ会社を設立。現在は37カ国でビジネスを展開し、売上高の海外比率は50%を超えている。現在は、2019年度を最終年度とする3カ年の中期経営計画のもと、高度な技術に基づいて世界中の顧客のニーズに応えている。

ビジネスを支援するITについては、2013年に国内の事業部門にSAP ERPを導入。2015年には富士通の支援を受けて国内の別事業部にも展開し、会計から生産、販売、在庫、購買までの業務を一気通貫で行ってきた。海外拠点は、グループ会社がそれぞれ独自のシステムで管理していたが、中期経営計画のもと2017年度~2019年度の計画でSAP ERPのグローバル統合に着手し、アジア、欧州、アメリカの14カ国24社への展開を進めている。その目的について経営企画室 副室長の徳田晋一氏は次のように話す。 「グローバル化が進み、海外の売上比率が高まる中、グローバル経営情報の伝達/収集が重要になっています。そこで情報共有の迅速化、人材の流動化に向けた業務の標準化、会計業務の法対応、製造品質の向上に向けて基幹システムをSAP ERPで統合することにしました」

国内のSAP ERPは順調に稼動を続けていたが、2025年にECC 6.0の保守サポートが切れるにあたり、次期システムとしてSAP S/4HANAへの移行を検討する必要に迫られた。海外展開を進めているグループ会社ですでにSAP ERPを利用している欧州の拠点からは、「1インスタンスによるグループ統合のメリットを示して欲しい」という要望もあり、機能強化により業務効率が向上することのメリットを打ち出したこともSAP S/4HANAを評価するきっかけになった。

「更新系と情報系のデータベースがSAP HANAで統合されて開発性が高まり、リアルタイム処理が実現すること、ユーザー操作画面が改善されること、当社のイノベーショントピックに掲げるAIの活用において財務の入金消込処理におけるSAPのデジタル化ソリューション(SAP Cash Application)との連携などへの期待も含めて、SAP S/4HANAへのコンバージョンに向けたPoCの実施を決めました」(徳田氏)

イーグル工業株式会社
経営企画室 副室長
徳田 晋一 氏

実施の経緯

ライセンスを購入することなく富士通の環境で検証できることを評価

SAP S/4HANAの評価にあたり、同社は2011年より情報基盤のインフラネットワークの構築運用に関わり、2015年のSAP ERPの導入支援後もAMO/ITOサービスでアプリケーションとBASISの運用を委託している富士通に相談。リリースされたばかりの「SAP S/4HANA PoC支援サービス」を採用してSAP S/4HANAの操作性や既存資産への影響などを確認することにした。

「以前からSAPジャパンのセミナーなどでSAP S/4HANAの情報収集はしていたものの、自社で評価することには不安がありました。自社の要員がSAP ERPの海外展開プロジェクトに注力している現在は、十分なリソースの確保も難しい状況です。そこで当社の業務に基づくSAP S/4HANAの評価を要員含めて任せられること、富士通から月額サービスとして提供される、クラウド環境とSAP S/4HANAライセンスを使用することで、自社でライセンスを購入することなく実施できることを評価して、PoC支援サービスを採用しました」(徳田氏)

PoCのプロジェクトは、2017年12月から2018年3月までの4カ月間で実施した。具体的には富士通のIaaS環境にPoC環境を構築し、イーグル工業で稼動しているSAP ERPのシステムデータをインポート。次にPoC環境をSAP S/4HANAにコンバージョンして検証作業を実施する流れだ。経営企画室 IT一部 EBIS三課 課長の荒井俊成氏は次のように説明する。

「シナリオは当社の代表的な事業部のものをロジスティクス関連(SD/MM/PP)で10個、会計関連(FI/CO)で14個をピックアップして試しました。データはトランザクションも含めてすべてコピーしています。検証では、標準機能の互換チェック、簡易的な業務検証、SAP社提供のBest Practiceと当社で作り込んだ帳票・SAPクエリを中心としたアドオン(国内500本/海外130本)の検証、ダウンタイムの計測、パフォーマンスチェックを実施しました」

イーグル工業株式会社
経営企画室
IT一部 EBIS三課 課長
荒井 俊成 氏

検証の成果

ダウンタイムの把握により移行スケジュールが具体化

PoCサービスを利用した結果、イーグル工業では実データに基づくSAP S/4HANAへの移行に伴う影響を確認し、概算対応工数も算出することができた。荒井氏は「改めてアドオンの修正が大変そうなことは実感できました。とはいえ、更新系、内部のAPI系、レポート系までひととおり確認ができ、富士通からはギャップを解消する解決策もいただけたことは参考になりました。パフォーマンスについてもSAP S/4HANA用チューニング前のレベルで確認ができて感触をつかむことができました」と語る。

今後の移行に向けては、ダウンタイムが把握できたことが特に大きいという。「工場の生産を止めないためにも、検証では移行時のダウンタイムがどのくらいになるかを注目していました。今回の検証環境上では4日間必要とわかったことで、今後の移行に向けてベストな解決策を検討していくことになります」(徳田氏)

SAP S/4HANAへの移行にかかる工数・スケジュール・費用が把握できたことで、経営層への上申も実現し、SAP S/4HANAへの移行に向けて本格的な検討が始まった。移行スケジュールについても、グローバル展開中のSAP ERPのスケジュールを考慮した計画が固まったという。

「欧州拠点への展開が始まる2019年からSAP S/4HANAへ移行を実施することも検討しましたが、当初の予定通りのグローバル統合を優先して、SAP S/4HANAへの本格的な移行は2020年以降で実施を予定しています」(徳田氏)

今後の展開

コンバージョンに向けてインフラのクラウド化を検討

今後は、現在富士通データセンターで運用しているインフラ環境のクラウド化を検討している。その場合、SAP S/4HANAへのコンバージョンはクラウド環境で行う見込みとなる。「富士通のAMO/ITOチームにはSAP ERPの導入から4年間、困ったことに対して何でもフランクに相談に乗っていただき助かっています。当社の業務への理解を深めた上で適切なアドバイスをいただけていますので、SAP S/4HANAへのコンバージョンも含めて、さまざまな支援に期待しています」(荒井氏)

SAP ERPのグローバル統合により、世界規模でデータの共有、リアルタイム活用を進めるイーグル工業では、さらなる情報活用に向けたチャレンジを今後も続けていく。

イーグル工業株式会社 様

本社所在地〒105-8587 東京都港区芝公園2-4-1 芝パークビル14F
代表者代表取締役社長 鶴鉄二氏
設立1964年10月
資本金104億9,098万円
従業員数6,400名(2018年6月26日現在)
事業内容各種メカニカルシール、特殊バルブ、プラント機器、舶用製品、金属ベローズ応用品等の製造/販売 並びに機械器具設置工事等上記に付帯する業務
ホームページhttps://www.ekkeagle.com/

[2019年1月掲載]

  • SAP及びSAPロゴ、SAP S/4HANA、SAP Businness Suite、その他のSAP製品は、ドイツ及びその他の国における登録商標です。
    SAP AGの商標または その他各種製品名は、各社の製品名称、商標または登録商標です。
  • 本資料に記載されているシステム名、製品名等には、必ずしも商標表示((R)、TM)を付記していません。

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