ハイブリッド環境で最適なデータベース活用を実現
~ Enterprise Postgresのコンテナ型データベースとマネージドサービス ~
クラウドネイティブNow

デジタルトランスメーション(DX)の実現に向け、メインフレームなどのレガシーシステムをクラウドやエッジといったハイブリッドな環境に移行し、新たなビジネス価値を生み出そうとする企業が増えています。これに伴い、システムで利用されるデータベースもそれぞれの要件にあわせて使い分ける必要があります。
本ページでは、ハイブリッド環境に対応するデータベース「FUJITSU Software Enterprise Postgres(以降、Enterprise PostgresまたはFEP)を紹介すると共に、その活用方法を解説します。

システムのモダナイゼーションで必要とされるデータベースとは?

2018年に経済産業省より、レガシーシステムの刷新が行われない場合、2025年以降には年間で最大12兆円の経済損失を生じさせる可能性がある「2025年の崖」の報告が発表されて以来、既存システムのモダナイゼーションが加速しています。
モダナイゼーションは既存システムのデジタル化を意味しますが、これには「移行に時間がかかる」「新しい環境に変更するのが難しい」などいくつかの課題があり、すべてのシステムがすぐにデジタル化されたシステムに移行できるわけではありません。この解決としては、既存システムを以下のように選定し、できるところからモダナイズしていくことが重要です。

  1. 新規システムに刷新するものはコンテナやクラウドに移行
  2. 既存システムを変更しやすいアプリケーションや、アーキテクチャーに対応させて段階的に新規システムに変えていくものは、コンテナやクラウドに移行するかオンプレミスのまま
  3. 既存システムのまま変更しないものはオンプレミス

既存システムのモダナイゼーション後は、オンプレミスのまま残した既存システムとクラウド上の新規システムとの共存が必要となることがあります。言い換えると、オンプレミス、クラウド、エッジなどで構成されたハイブリッドな環境となり、この環境でシステムを稼働させる必要があるため、運用が複雑化してしまいます。これはシステムで利用するデータベースについても同様であり、運用の複雑化により管理者の作業負荷が大きくなります。これを改善するには、オンプレミスでは既存システムを維持するための運用管理を行い、クラウド、エッジでは「コンテナ化する」「マネージドサービスを利用する」など、クラウドシフトでの構築や運用を効率化しながら管理者に対する運用作業の負荷を軽減させていく必要があります。下記は、コンテナやマネージドサービスを利用したクラウドシフトの例です。

コンテナやマネージドサービスを利用したクラウドシフトの例

富士通のEnterprise Postgresは、オンプレミスだけではなく多様な環境に対応できるデーターベースとして以下を提供しています。ハイブリッドな環境での複雑な運用に対応するため、その要件にあわせて活用形態を選択できます。

  • ハイブリッドクラウドに最適なコンテナ型データベース
    Enterprise Postgres for Kubernetes
  • クラウド環境でのマネージドサービス
    当社クラウドサービス「FUJITSU Hybrid IT Service Digital Application Platform(注1)」のデータベースサービス
  • 注1
    お客様がアプリケーションのモダン化、開発、エンハンスに専念できるモダンアプリケーション向けのプラットフォームです。詳細は「FUJITSU Hybrid IT Service Digital Application Platform」のページをご覧ください。

以降で、それぞれについて解説します。

クラウド上での運用コスト削減を実現するEnterprise Postgres for Kubernetes

「Enterprise Postgres for Kubernetes」は、デジタルビジネスを支えるデータベース「Enterprise Postgres」をコンテナ対応させたデータベースです。Enterprise Postgresが提供する高可用、高性能、セキュリティなどの機能をRed Hat社のOpenShift上で利用することができます。
PostgreSQLインサイド」に掲載している「コンテナ型データベースで運用コストを削減 ~ Enterprise Postgresの高可用オペレーター機能 ~」では、データベースの運用管理を支援 / 自動化するツールである「FEPオペレーター機能」がOperator成熟度モデルの「レベル3」に対応していることを紹介しました。FEPオペレーター機能は、Red Hat Marketplaceでも公開されており、Red Hat社から商用で利用可能なオペレーターとして認定されています。この「FEPオペレーター機能」ですが、新たに、Operator成熟度モデル「レベル4」に相当する性能監視や「レベル5」に相当するオートスケールについて機能エンハンスが行われ、データベース運用の自律性がより強化されました。

FEPオペレーター機能の概要

性能監視

OSSの監視ツール「Grafana / Prometheus」を利用し、POD(注2)やPostgreSQLを監視します。また、異常発生時には、OSSの監視ツール「Alertmanager」により異常が通知されるため、管理者は、異常の特定と対応を迅速に行うことができます。

  • 注2
    Kubernetesで1つ以上のコンテナをまとめて管理するためのユニットです。

オートスケール

冗長化構成において、CPU使用率のしきい値を事前に定義しておくことで、運用中にしきい値を超えた場合に、動的にデータベースクラスタが拡張されます。業務拡大に伴う急激なトランザクション増加など性能劣化の要因となる事象が発生した場合も安定した参照性能を自動的に維持します。

データベースのセットアップ、運用を容易に実現するデータベースサービス

FUJITSU Hybrid IT Service Digital Application Platformのデータベースサービスは、Enterprise Postgresをエンジンとしたマネージドサービスとして提供しています。このためデータベースのインストールやセットアップが不要です。また、パッチ適用などの保守作業やバックアップなどの運用も、富士通が提供するサービスに任せることができるため簡単にデータベースを導入・運用することができます。

Enterprise Postgresのマネージドサービス

Enterprise Postgresのマネージドサービスでは、Enterprise Postgresの特長である高可用、高性能の各機能をサービスとして提供しています。利用者は、データベースの運用をサービスに任せることで、運用作業の負荷を軽減でき、手軽に高信頼なデータベースシステムを利用できます。
下記は、クラウド上でIaaSを利用しEnterprise Postgresを構築した場合と、データベースサービスを利用した場合の比較です。

クラウド上でIaaSを利用しEnterprise Postgresを構築した場合と、データベースサービスを利用した場合の比較

IaaS上でEnterprise Postgresを構築する場合と比較すると、利用者が行う作業が少なく、データベースの導入 / 運用コストが削減できることがわかります。利用者は、削減されたコストをアプリケーション開発などデータベース運用以外の作業に集中することができます。

データベースサービスの提供機能

データベースサービスで提供されている主な機能を下表に示します。

分類 機能名 機能概要
高性能 参照レプリケーション 冗長化構成において参照用のレプリカを作成します。
高信頼 オートフェイルオーバー 冗長化構成において、プライマリーデータベースに障害が発生した場合、スタンバイデータベースに自動的に切り替えます。
運用性 パッチ適用 データベースエンジンのパッチやセキュリティアップデートを任意のタイミングで適用できます。
モニタリング OSやデータベースのリソースや性能情報を監視し、問題発生時に通知します。
自動バックアップとポイントインタイムリカバリー データベースのデータ、設定ファイルのフルバックアップを自動で取得します。

以下では、データベースとして重要な機能の1つである性能向上を実現する「参照レプリケーション」を紹介します。

参照レプリケーションの概要

冗長化構成で、データベースへの参照時の負荷が高い場合に参照レプリカを作成できます。スタンバイサーバー上のデータベースにあるデータを参照用に非同期で複製します。これによりデータベース参照時の負荷分散が可能となり、データベースの処理性能が向上します。

まとめ

富士通が提供する、コンテナ型データベース「Enterprise Postgres for Kubernetes」とFUJITSU Hybrid IT Service Digital Application Platformの「データベースサービス」を解説してきました。両者はデータベース利用において導入や運用の負荷を軽減することができますが、コンテナ型データベースは運用のカスタマイズやチューニングが可能であり、データベースサービスと比較するとより柔軟な運用を行うことができます。またコンテナという性質上ベンダー依存がなく、いろいろなベンダーやプラットフォームのクラウド上に持ち運んで活用できます。一方でデータベースサービスは、セットアップや運用がサービスとして提供されているため、データベースを即導入できるという手軽さがあります。このような点を考慮し、要件に応じた使い分けが重要です。以下で簡単な例をあげて、使い分けを説明します。
ワクチン接種予約システムのような期間限定のシステムや、試験的に始めたいサービス(イベント実施後のアンケート集計など)を構築する場合、時間やコストをかけずに簡単に構築したいという要件があります。このような新規に構築するシステムの場合は、まずクラウドファーストでデータベースサービスを活用します。データベースサービスで蓄積されたデータが継続的に今後のサービス展開に役に立ちそうと判断したら、クラウドシフトでコンテナ化したデータベース(Enterprise Postgres for Kubernetes)に変えていきます。また、オンプレミスで運用している既存システムがある場合は、並行して既存システムのコンテナ化を進めておきます。このようにEnterprise Postgresを利用しながらシステムを改善・成長させていくことで、データベース管理者、アプリケーション開発者、経営層に以下のメリットをもたらします。

  • インフラごとに異なる運用をコンテナが吸収しインフラ基盤が標準化されるため、環境構築や運用が効率化され、データベース管理者の負荷が軽減する
  • アプリケーション開発に集中できることで、短期間で構築や改修が可能になる
  • 利用者へのサービス提供が早くなる

このようにEnterprise Postgresは、オンプレミスからクラウド上でのマネージドサービス、コンテナなど、要件に応じてさまざまな環境に適応できるデータベースです。DXの実現に向け、Enterprise Postgresの利用をご検討ください。

関連情報

当社が提供する「Enterprise Postgres」および「データベースサービス」の詳細は下記ページをご覧ください。

2021年12月17日公開

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