島根県健康福祉部子ども・子育て支援課 様
自治体クラウド上の子育て応援サービスの安定稼働をOSSベースのデータベースで実現
国内各地で少子高齢化による人口減少が進む中、行政サービスのデジタル化で結婚・出産・子育てを支援しようとの動きが広がっている。島根県様では、地域全体で子育て世帯を支える「しまね子育て応援パスポート」を、従来のプラスチックカードに加えてスマートフォン(以下スマホ)上のアプリとして提供することを計画。その実現に向けてクラウド上に24時間365日安定稼働のシステムを構築すべく、OSS(オープン・ソース・ソフトウェア)を軸に富士通の技術・ノウハウを加えたデータベースを導入した。開発の背景や経緯について、子ども・子育て支援課の担当者お二人に話を伺った。
- 課題住民の利便性を向上させるため、行政サービスのデジタル化をスムーズに実施したい
- 効果富士通の知見が反映されたデータベースと技術サポートにより、短期間でのリリースと安定稼働を実現
- 課題今後の自治体DX推進も見据えて、発展性、持続性のあるシステムにしたい
- 効果OSSの豊富な周辺ツールとの連携性が高く、情報がオープンであることからシステム拡張などの検討が容易に
- 課題システムの導入・運用コストを抑えたい
- 効果実績あるOSSベースのデータベースにより、設計・開発・運用のコストを適正化できた
導入の背景
子育て世帯を地域ぐるみで支える「子育て応援パスポート」をデジタルで提供
少子化が進行する島根県様では、地域が一体となって子育てしやすい環境づくりに向けて、2006年から「しまね子育て応援パスポート(通称:こっころパスポート)」を発行している。子育て世帯は、このパスポートの趣旨に賛同いただいた協賛店舗で提示することで、店舗がそれぞれ設定した子育て支援サービスを受けることができる仕組みだ。「同様の制度は全国の都道府県にもあり、2016年には子育て応援パスポート事業として全国共通展開がスタートしました」と説明するのは、子ども・子育て支援課の松田英治氏。「こっころは経済的な“支援”にとどまらず、地域の一人ひとりが子育て世帯を心から“応援”する風土づくりを重視しています。このため、補助金を出して協賛店舗を募るのではなく、賛同いただける店舗が自分たちにできるサービスを自己負担で提供するという、いわば“無償の愛”で成り立つ制度と言えます」(松田氏)。
こうした趣旨を込めて命名された「こっころ(COCCOLO)」とは、イタリア語で「かわいい子ども」を意味する言葉。こっころパスポートは、同県の将来を担う子どもを地域ぐるみで育んでいく象徴として浸透しており、2021年には、さらなるサービス強化に向けてデジタル対応が進められた。「従来はプラスチックカードのみを発行していましたが、利用者の利便性向上や、協賛店舗の登録促進などを図るため、スマホを活用したデジタルサービスとしての提供を計画しました」と同課の梅田絵里奈氏は語る。「カード1枚だけだと、主に母親だけの利用にとどまるケースや、財布に入れ忘れて利用できないというケースが少なくありませんでした。デジタルサービスではスマホ2台まで登録できるため父親や祖父母も利用しやすくなり、スマホ上に表示するだけで利用可能。さらに、お近くの協賛店舗を検索したり、子育てに関する情報をお届けしたりすることも可能になります」と梅田氏はそのメリットを語る。
デジタルサービスとして提供するためには、登録者や協賛店舗のデータベースを含めたシステム開発が必須となる。そこで導入されたのが、富士通のデータベース「Fujitsu Enterprise Postgres(以下Enterprise Postgres)」である。
導入経緯
OSSの懸念点を払拭しながら、そのメリットを最大化するEnterprise Postgresを評価
こっころパスポートのデジタルサービスでの提供に当たって課題となったのが、利用者がいつでも利用できるよう、24時間365日安定稼働を実現すること。そのうえで、将来的なサービス内容の拡充に向けて、他の公共・産業システムとの連携を担保できる柔軟性・拡張性も重視された。さらに、当然のことながら、システムの導入・運用に関わるコストはできる限り抑制することが求められた。
システム開発事業者の選定は、「官民一体となったサービス提供」という同県の方針のもと、民間企業からの提案を募り、優れた提案を行った事業者を採用するプロポーザル方式で行われた。その結果、選ばれたのがEnterprise Postgresを用いたデータベースサーバー構築だ。
Enterprise Postgres はOSSデータベースとして世界的な実績のあるPostgreSQLをベースに、富士通がセキュリティや性能、信頼性、さらにはサポートなどの付加価値を加えて提供する製品だ。PostgreSQLはオープンな技術のため、他システムと連携するためのインターフェースや関連OSSが豊富にあり、将来のシステム拡張が容易であり、クラウド上で稼働させる際のライセンスコストも適正化できるといったメリットがある。OSSには多くのメリットがある一方で、導入時や緊急時のサポート体制などへの不安感から導入に消極的な自治体もある中、島根県から提示された当該システムの提案仕様書では、「可能な限りOSSを使用すること」とされていたことを受け、富士通のEnterprise Postgresを用いた提案が行われた。「プロポーザルにおいて、OSSに関する提案も含め総合的に判断した結果、Enterprise Postgresの利用を含む提案内容が最も優れており、採用しました」と松田氏は語る。
「PostgreSQLはOSSの中でも実績のあるデータベース技術ですので、大量のデータ処理や高トランザクション処理にも停止しない安定稼働が期待できました。加えて、公共分野で豊富な実績を持つ富士通ならではの、高度なセキュリティ対策やシステムライフサイクル全般を通じた長期的なサポート体制に安心感が得られ、県内での導入実績が決め手となりました」(松田氏)。新たに導入するシステムは、同県の行政インフラ「しまねセキュリティクラウド」上での運用が求められたが、オンプレミスで導入された他システムでEnterprise Postgres が安定稼働を続けているという信頼感が導入を後押ししたという。
効果と今後の展望
安定稼働と利便性向上で、子育て世帯と協賛店舗の双方にメリットを提供
こうして導入が決まったデータベースサーバーは、約半年の構築期間を経て、システムの導入・運用に関わるコストをできる限り抑制しながら、無事に稼働を開始した。「半年後のリリースというのは年度末を目標に設定したものですが、あらためて振り返ってみれば厳しいスケジュールだったと思います。導入実績のあるOSSとはいえ、富士通の迅速な対応があったからできたこと。導入経験の少ない技術であれば、接続検証などで数カ月を要するため、予定通りとはいかなかったのではないでしょうか」と松田氏は振り返る。
稼働後はシステム停止もなく、安定稼働しているという。「デジタルサービスの提供により、1世帯での複数利用も着実に増えています。協賛店舗のWeb検索数も、アプリ化以前の約93,000件/年から約206,000件/年に増加しており、来店を促す効果につながっています。 “無償の愛”で成り立っている制度だけに、賛同いただける店舗にもメリットを提供できたことが非常に嬉しく思っています」と梅田氏は成果を語る。
同県では、こうしたデジタルによる成果を、子育て支援施策のさらなる強化・拡充につなげていく考えだ。「まずは制度自体の拡充に向けて、現在約2,000(2023年3月末時点)を数える協賛店舗のさらなる増加とともに、アプリ利用者の増加に向けて認知向上を図っていき ます。また、プラスチックカード発行時の1回きりだった利用者との接点を、スマホを通じて恒常的なものにすることで、子育て世帯への継続的な公共サービス/情報提供のプラットフォームに発展させたいと考えています」と松田氏は構想を語る。「将来的には、県が推進する自治体DXと連動させて、子育て世帯はもちろん、若者世代の結婚・出産を後押しして、島根創生計画に掲げる『人口減少に打ち勝ち、笑顔で暮らせる島根をつくる』を実現していきたいですね」(松田氏)。
島根県健康福祉部子ども・子育て支援課 様
県庁所在地 | 島根県松江市殿町1番地 |
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代表者 | 島根県知事 丸山達也 |
ホームページ | https://www.pref.shimane.lg.jp/ |
業務概要 | 美しい自然や歴史的な文化、温泉など、多彩な魅力がある島根県。2020年3月には、人口減少対策の5カ年計画「県版総合戦略」の内容も含む県政運営の指針「島根創生計画」を策定し、様々な取組を進めている。 |
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[2023年9月掲載]