マツダ株式会社 様

販売店でのお客様対応のスピードアップとサービス品質向上を実現
DXで運用保守の仕事のやり方を変革し、関係部署とのコミュニケーションも活性化

ブランド価値経営を推進するマツダは、すべての活動をお客様視点でとらえて体験価値を向上するという理念のもと、販売店向けの運用保守サービスの改善を富士通と一緒に取り組んだ。ベテランのノウハウに大きく依存していた問い合わせ対応・トラブル対応に「FUJITSU Software Systemwalker Cloud Business Service Management」のAI技術とデータ分析を活用。AI技術の導入で属人化を解消、ビギナーでも同等の対応を可能にし、回答リードタイムやトラブル対応時間の短縮につなげた。また、マツダの業務・IT部門との間で対応状況のリアルタイム共有を実現し、データに基づいた業務改善・改革の取り組みをスピードアップさせている。そして、その技術をシステムのレベルアップに広げ、見積~開発~本稼働の開発・改修プロセスに組み込み、サービスレベル向上のための仕事の進め方変革を行っている。

課題
効果
課題販売店のお客様への対応スピードを上げてサービス品質を向上したい
効果ヘルプデスクのビギナーの即戦力化により、回答リードタイムを短縮
課題運用保守業務が既存の問題にマンパワーを割かれ、ノウハウも属人化している
効果AIが仕事の進め方をナビゲーションし、誰でも進められる
課題1日1回のExcelレポートでの状況報告では、状況がすぐに分からない
効果リアルタイムの状況共有で、業務部門とIT部門、運用保守のデータに基づいた議論・提案が活性化

背景

販売店向けヘルプデスク・システムの改善がブランド価値経営の実現につながる

今、世界の自動車業界は「コネクテッド化」「自動運転」「シェアリング」「電動化」の4つの波が同時に押し寄せる100年に1度の大変革の時代を迎えている。そうした中でマツダがグループを挙げて推進しているのが、「いかにしてお客様に選ばれる自動車会社であり続けるか」を課題とするブランド価値経営である。すべての活動を顧客視点でとらえることが基本理念で、例えば販売店での顧客体験価値向上も重要な施策となる。

そうした中でマツダが注力しているのが、販売店向けのヘルプデスクの改善である。マツダの芝 泰洋氏は、「販売店から問い合わせを受けたとき、電話の向こう側ではお客様をお待たせしているかもしれません。ヘルプデスクが正確な情報をより迅速に返すことが、お客様の満足度を向上させ、ブランド価値経営への貢献にもつながっていきます」と語る。

もっとも、この改善は容易に実現できることではない。ベテランは過去の経験から迅速な対応ができるが、ビギナーはノウハウの蓄積がなく解決に時間がかかってしまう。マツダの西村 年男氏は、「ビギナーもベテランと同等の品質で仕事ができる環境を作っておかないと、システムが信頼されなくなる恐れがあります」と危機感を募らせていた。

加えて、マツダの業務部門やIT部門と富士通の運用保守間の情報共有の強化も急務だ。「ヘルプデスクからは1日1回のExcelレポートで対応状況の報告を受けていますが、すぐに状況が“わかる”体制を作り、PDCAをより速く回していく必要がありました」と芝氏は語る。

マツダ株式会社
国内営業本部 営業開発部
主幹 芝 泰洋 氏
マツダ株式会社
MDI&IT本部 カスタマー・品質システム部
主幹 西村 年男 氏

ポイント

ベテランがAIを継続的に育成してビギナーを即戦力化
データを分析し、改善サイクルを回してサービス品質を向上

マツダの販売店向け運用保守を運用しているのは富士通で、2015年からその業務をアウトソーシングで請け負ってきた。

そうした中、「ビギナーもベテランと同等の品質で仕事ができる環境づくり」を実現するために着目したのがAIである。富士通のAI「FUJITSU Human Centric AI Zinrai」を活用した「FUJITSU Software Systemwalker Cloud Business Service Management(以下、Systemwalker Cloud Business Service Management)」を導入した。問い合わせを受けた内容をオペレーターがそのまま自然言語で入力すれば、回答候補が検索されて画面に表示される。これならばノウハウの属人化を解消し、ビギナーを即戦力化することができる。

もっともAIは単に導入するだけではなく、継続的な育成(学習)が欠かせない。その育成のために重要なのは、サービス品質のKPIである回答リードタイム順守率の弱い領域を特定し、ナレッジを継続して整備することだ。そしてそのために、ナレッジ活用状況を把握する回答リードタイムの順守率を、ダッシュボードを使って一目で“わかる”ようにしたりするなど、現場で様々な工夫を行いフィードバックしてきた。富士通の室 隆之は、「まさにそのプロセスを一貫して行えることが、自社製品であるSystemwalker Cloud Business Service Managementを活用する強みです」と語る。

富士通株式会社
Mobilityシステム事業本部 第二システム事業部
シニアマネージャー 室 隆之

システムの特長

AIが仕事の進め方をナビゲーションしビギナーの作業時間短縮
リアルタイムの状況共有でコミュニケーションが活性化

2017年10月に始まったSystemwalker Cloud Business Service Managementの導入プロジェクトでは、まず既存のFAQ(よくある質問と回答)を学習可能な形に整理することから取り掛かった。長い文章を箇条書きに変える、2つの質問が混ざっているものを仕分けるなど、体系化のルールを作ってそれに基づいて行う。こうして整理されたFAQをSystemwalker Cloud Business Service Managementに投入して学習させていくのだ。ビギナーが問い合わせを受けた場合、経験が浅く業務知識が身についていないためキーワードが思いつかず検索してもなかなか有効な回答が探し出せなかったが、先述したように自然文でナレッジを検索すると、AIがキーワードを補完し回答候補が画面に表示されるわけだ。「その内容を引用して回答すればよいのです。結果としてヘルプデスク内の属人化を解消し、ビギナーの回答リードタイムを短縮します」と室は強調する。

さらなる仕事のやり方のレベルアップを目指し運用保守の変革にも取り組んでいる。ビギナーは「何々やってくれ」と言われても、何をすればいいのかそのプロセスが分からない。また、運用保守にはドキュメントが13万ファイルあるが、どこのフォルダに何が格納されているかだけでなく、タイトルだけ表示されてもその内容がよく分からず、作業が進められない。そこで、ベテランの作業のプロセスを登録しておけば、そのプロセスをナビゲーションしてくれる仕組み(タスクナビゲーション)で作業を支援できるだけでなく、作業内容に応じてAIが過去の事例から考察して必要なドキュメントを探してくれるのだ。「AIが膨大なドキュメントや過去の事例から、どういう事象が起きたらどういう作業が必要か想像できるように支援してくれるので、新しく参画したメンバーがスムーズに作業を行えます」と室は説明する。

一方、マツダの業務部門やIT部門に対してもSystemwalker Cloud Business Service Managementのダッシュボード機能を利用し、ヘルプデスクの対応状況をリアルタイムに共有する。これにより従来のような一方通行の報告をなくし、改善・革新のための議論・提案を活性化させていく。



導入効果

効果と今後の展望

ビギナーの活躍で回答リードタイムが目標値を超え18分に短縮
改善のための打ち手が次々に生み出されて議論が活性化

2018年2月に実運用を開始したSystemwalker Cloud Business Service Managementは、下記の効果をもたらした。

まず回答リードタイムについて、従来30分だったのを目標値の20分を上回る18分への短縮を実現した。また、問い合わせに対してナレッジで回答できる割合(カバー率)は、継続してナレッジを整備していき、目標値の95%を達成し現在も維持している。さらにビギナーの育成期間も3カ月から2カ月へと短縮。「属人化の解消に伴い、ベテランはビギナーやAIを育てていく役割にシフトしています」と室は語る。

また、運用保守の仕事の進め方も変え、ビギナーのトラブル調査における作業時間を最大65%短縮した。「業務知識やドキュメントのありかが分からなくても、トラブル内容を入力すれば作業が進められます。また、調査を進めた上で分からないところのみをベテランに聞くことができてベテランの負荷も軽減されています」と室は語る。

ダッシュボードを用いてヘルプデスクの対応状況をリアルタイムに把握できるようになったため、マツダの業務部門やIT部門からも好評を得ている。「販売店の状況を見ながらより適切な対応の在り方を検討したり、システムの状況を見て解決策をフィードバックしたり、分析がやりやすくなったことで、改善のための打ち手が次々に生み出されて議論が活性化しています」と芝氏と西村氏も高く評価する。なお、この一連の取り組みをマツダ初のAI活用事例として社内で発表したとのことだ。

こうしてSystemwalker Cloud Business Service Managementは広い部門から注目される状況となっており、今後に向けて回答の自動化によるさらなる効率化と、それによる無人でのヘルプデスクの夜間対応など、次のステップを検討していく。そして今後は、AIをより広範な分野で高度に活用した業務の抜本的な改革や新しい顧客体験を提供するサービスの創出など、デジタルトランスフォーメーション(DX)の実現をその先に見据えている。

マツダ様と富士通営業およびSE、開発部門担当者

マツダ株式会社 様

所在地 広島県安芸郡府中町新地3-1
創立 1920年1月30日
代表取締役社長兼CEO(最高経営責任者) 丸本 明
従業員数(連結) 49,998人(2019年3月31日時点)
ホームページ https://www.mazda.co.jp/
事業概要 「飽くなき挑戦」をモットーに「走る歓び」を提供するクルマづくりを行ってきたマツダ。人々に人生の輝きを提供し、地球・社会との共存に挑戦し続けている。

マツダ株式会社様本社社屋

[2020年3月掲載]

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