伊藤忠商事株式会社 様
SAP S/4HANA®化を支えるデータ連携基盤
システム間連携を疎結合にすることでSAP S/4HANAへのアップデートを実現
総合商社である伊藤忠商事は、1970年代からパッチワーク的に拡大してきた基幹システムの再構築プロジェクトを開始した。現有資産を有効活用しつつ、将来の長期利用に対応していくため、SAP S/4HANAをベースとしたシステムへ移行するプロジェクトだ。そこで重要な役割を果たすデータ連携基盤として「FUJITSU Software Interstage Information Integrator」と「FUJITSU Software Systemwalker Operation Manager」を導入。約60のカンパニーシステムからのデータ収集を実現するとともにリアルタイムの損益把握を予定しており、デジタルトランスフォーメーションに向けた取り組みを支えていく。
- 課題タイムリーな損益把握に向けたデータ連携基盤構築が急務
- 効果リアルタイム化に向けたデータ連携基盤を整備
- 課題60システムのデータを集約するには、高精度なコード変換と柔軟なデータ収集が必要
- 効果各システムに手を加えず、SAP S/4HANAとの疎結合によるデータ連携を実現
- 課題システムのブラックボックス化を改善し、内製化を進めたい
- 効果データ連携の定義を内製化し、ビジネスの変化に柔軟に対応できる人材育成を推進
背景
総合商社の新たな形へと進化・変貌を遂げるため基幹システムをSAP S/4HANA移行により刷新
伊藤忠商事は創業以降の歴史の中で、いま「第二の創業」ともいうべき局面を迎えている。中期経営計画「Brand-new Deal 2020」の下、「次世代商人」というビジョンを掲げ、次々と起こる技術革新、人々の価値観と生活環境の変化を捉えつつ、総合商社の新たな形へと進化・変貌を遂げることを目指している。
その一環として2016年6月に始動したのが、1970年代からパッチワーク的に拡大してきた基幹システムの再構築プロジェクトだ。
同社 IT 企画部 全社システム室長の浦上 善一郎氏は、「現行システムを取り巻く『リアルタイムでの損益把握が困難』『営業からの新要件実装が困難・費用増』『システム仕様を理解している人材の高齢化』『製品保守期限(EOSL)の到来』といった課題を経営リスクと認識し、次世代に向けて刷新することを決定しました。現有資産を有効に活用することを前提としつつ、将来の長期利用に対応していくため、SAP S/4HANAをベースとしたシステムへ移行します」と、その方針を示す。
具体的には、伊藤忠商事の商売の基本である「か(稼ぐ)・け(削る)・ふ(防ぐ)」の徹底、働き方改革のさらなる推進、連結経営のさらなる深化を見据えた機能の拡充を、この新基幹システムを通じて実現していく。
なお、新基幹システムを運用するプラットフォームとしては、伊藤忠テクノソリューションズ(以下、CTC)が運営しているパブリッククラウド「CUVICmc2」を活用することとなった。
ポイント
複雑なコード変換に対応するとともに運用ルールが異なるシステムとの柔軟な連携を実現
新基幹システムで重要な役割を担う機能の1つが、カンパニーごとに運用されている60近い周辺システムとの連携を支えるデータ連携基盤だ。
同社 IT 企画部 全社システム室の前原 基芳氏は、「新基幹システムの立ち上げ当初は、日次の夜間バッチでデータ連携(ファイルベースで約5000件)を行いますが、2020年5月からはリアルタイムにデータ連携を行えるようにする計画です」と語る。
この要件を満たすためには、高速かつ高信頼のデータ連携基盤が必須となる。主要な7~8製品を比較検討した結果、実績とコスト、サポート体制を重視してFUJITSU Software Interstage Information Integrator(以下、Interstage Information Integrator) およびFUJITSU Software Systemwalker Operation Manager(以下、Systemwalker Operation Manager)を採用した。
選定の決め手となったポイントとして、新基幹システムの構築・運用を担当するCTCの青木 崇氏は、「各カンパニーシステムからデータを収集する上で必須となるShift_JISからUnicodeへの複雑なコード変換に対応していたことです。加えて高く評価したのが、Interstage Information Integratorのデータ管理機能です」と語る。複数の収集データを一時的に保存・管理するもので、処理するデータの単位や時間帯、エラー時のリカバリ方法など運用ルールが異なるシステムとの間でも、業務に影響を与えることなく連携することが可能となり、より柔軟な運用を実現する。
さらに富士通は万全なSE体制を組み、CTCと一体となってデータ連携における2000近いコード変換や伝送のパターンの定義作成やテストを支援した。CTCの為川 真悟氏は、「富士通の技術的なスキル・ノウハウの継承支援により、CTCでの開発保守内製化をスムーズに進めることができました」と語る。
システムの特長
各カンパニーの60近いシステムを疎結合でSAP S/4HANAと連携
新基幹システムは、Interstage Information Integratorをデータ連携基盤とすることで、各カンパニーの60近いシステムとSAP S/4HANAは疎結合のシンプルな形となる。基幹システムに必要なデータの連携をノンコードで実現できるようになり、連携する相手側のシステムについても改修は不要となる。
一方のSystemwalker Operation Managerは、非同期に発生する大量のデータ連携ジョブをリアルタイムに処理し、安定稼働を実現する。
そしてCTCのCUVICmc2は、パブリッククラウドの中でも、基幹システム運用で大前提となる安定性や堅牢性といった要件を十分に満たしたIT基盤である。このパブリッククラウド上でInterstage Information IntegratorとSystemwalker Operation Managerも稼働する。CTCの佐藤 勇治氏は、「CUVICmc2は業界標準のIaaSです。Interstage Information IntegratorとSystemwalker Operation Managerもシステム仕様上の特異な制約はなく、パブリッククラウド上での運用にも懸念はなかったです」と語る。
なお、CTCではデータ連携ジョブのステータス管理を行う独自のツールを富士通のミドルウェアを利用して開発し、すでに運用を開始している。
効果と今後の展望
データ連携のシステムに起因するトラブルはゼロ
全社的な連携基盤として成長させていく
2018年5月にSAP S/4HANA化を完了して稼働を開始した新基幹システムは、現在に至るまでInterstage Information IntegratorとSystemwalker Operation Managerによるデータ連携のシステムに起因するトラブルはゼロだ。これにより余裕のできた障害対応の工数を、より創造的な業務に振り向けることが可能となった。「そうした経営の多角的な観点から、Interstage Information Integrator とSystemwalker Operation Managerは、データ連携基盤の『要』となっています」と浦上氏は語る。
また、CTCの孔 祥耘氏も、「富士通のサポートにより、データ連携パターンの定義を担うリーダーを育成できたことは大きな前進です。固定長からXML形式でのデータ連携が可能となったこととあわせ、今後のビジネスの変化にも柔軟に対応できます」と評価する。
実際、伊藤忠商事では「単に基幹システムとの連携基盤だけではなく、他システム間同士の連携にも活用拡大し、全社的な連携基盤として成長させたい」(前原氏)という構想を描いている。そうした中でSAP S/4HANA以外のデータも含めた幅広い分析に対応していく必要があり、ますます大規模化していくジョブ運用をSystemwalker Operation Managerが高度な安定性で支えていくことが期待されている。
そして2020年5月にリアルタイムのデータ連携を実現することで、ビジネスのさらなるスピードアップが実現する。
伊藤忠商事は、この高度なデータ連携基盤を武器として、新設されたCDO(Chief Digital Officer)やCIO、社員のデータ活用・分析を支援するIT部門内のBICC(Business Intelligence Competency Center)との協働を加速。浦上氏は、「次世代商人のビジョンに向けて特に『か(稼ぐ)』を強化していきます」と語り、さらにデジタルトランスフォーメーションを推進していく意向だ。
伊藤忠商事株式会社 様
所在地 | 東京都港区北青山2-5-1 |
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設立 | 1949年 |
代表取締役社長COO | 鈴木 善久 |
従業員数 | 4352人(2019年4月1日現在) |
ホームページ | https://www.itochu.co.jp/ |
事業概要 | 大手総合商社として、繊維、機械、金属、エネルギー、化学品などの各分野で国内、輸出入および3国間取引を行うほか、国内外での事業投資など、幅広いビジネスを展開している。 |
[2020年1月掲載]
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