Hana Financial Investment Co., Ltd. 様
異常取引調査のための過去履歴照会時間を短縮
取引元帳記録システムにPostgreSQLを採用し、TCOも削減
韓国の投資証券大手ハナ金融投資は、顧客の株式取引履歴を蓄積・参照する「取引元帳記録システム」のデータベース基盤に「FUJITSU Software Enterprise Postgres」を採用した。韓国富士通の充実したサポート体制により、既存データベースからの移行を短期間かつ安全に実現できた。すぐに参照できる取引履歴の期間が過去3カ月分だったが、過去2年分に大幅に拡大しつつ、レスポンスも高速。KRX(韓国証券取引所)からの調査・レポート要求にも即座に対応できる。
- 課題3カ月以前のデータがテープ装置に格納され、その照会に時間がかかる
- 効果過去の取引履歴を全てデータベースに持ち、照会時間を短縮
- 課題既存データベースの拡張利用に伴う費用が増大
- 効果Enterprise Postgresにより、ライセンスコストと保守コストを削減
- 課題オープンソースデータベースで既存の機能が実現可能か不安
- 効果オープンソースベースのデータベースにおいても、高性能・高信頼を実現
背景
デジタル戦略の一環としてオープンソースの活用を推進
取引元帳システムにもオープンソースベースのデータベースの適用を目指す
韓国を代表するHANA(ハナ)金融グループの一員として、韓国金融市場の発展に貢献する投資証券会社大手のハナ金融投資。革新を柱に、サービスの利便性と信頼の向上に継続的に取り組む企業姿勢は市場で高く評価されており、2016年上半期から4回連続で韓国ベスト証券会社に選ばれた。韓国の投資証券市場を牽引するリーディングカンパニーの1社である。
新たなチャレンジにも積極的に取り組んでいる。金融サービスのデジタル化を加速するため、グループを挙げて取り組む「デジタルトランスフォーメーション」はその象徴だ。ビッグデータ分析やAIによる業務の自動化、市場予測などの研究開発を進めるほか、ハナ金融投資をはじめとするグループ各社では業務を支えるシステムにオープンソースを積極的に活用している。
オープンソースの活用は、ベンダーロックインを回避し、システムの柔軟性を向上させるためだ。低コストで利用可能なオープンソースを導入することで、システムの構築・運用コストを圧縮し、収益の拡大を図る狙いもある。
この一環として同社が改革に取り組んだのが、顧客の株式取引履歴を蓄積・参照する「取引元帳記録システム」である。同システムは、社内で取引履歴をモニタリングし、不正取引などのチェックに活用。取引の透明性確保、ガバナンスおよびコンプライアンス対策として重要な役割を担っている。
例えば、KRXが異常取引の疑いを検知した場合は、証券会社にその取引についての調査・レポートを要求する。これに基づき、証券会社は社内の取引監視担当者が過去履歴の照会・異常取引の調査を実施する。
しかし、従来システムは過去3カ月までの取引履歴をデータベースに残し、それより古いものはテープバックアップしていたため、3カ月以前の履歴の照会やレポート作成に時間がかかり、当局の要請にタイムリーに対応できなかった。
データベースの環境を拡張し、取引履歴の参照期間を拡大したいが、既存データベースはライセンス費用が高額だ。そこで既存データベースをオープンソースベースのデータベースに移行することを目指した。ただし、保持する取引履歴データの拡大に伴うレスポンスの低下は許されない。証券会社としての信頼性に影響を及ぼす恐れがあるからだ。
ポイント
既存データベースと同等の機能、性能、信頼性を評価
充実したサポート体制も決め手に
オープンソースデータベースの活用と、従来の性能と信頼性を維持するミドルウェアとして同社が選定したのが「FUJITSU Software Enterprise Postgres」(以下、Enterprise Postgres)である。
Enterprise PostgresはオープンソースデータベースのPostgreSQLをベースに、富士通の技術で導入・運用性の向上とセキュリティ、性能、信頼性を強化したデータベース。大量データをリアルタイムに集計するインメモリ機能や、CPU負荷に応じて並列数を判断し、最適な並列検索を実現する機能により、大量の検索件数も高速に処理できる点を評価された。既存データベースとの互換性もEnterprise Postgresは強化しており、履歴照会アプリケーションの改修も最小限に抑えることが可能だ。
また、Enterprise Postgresを導入することで、オープンソースベースのデータベースにおいても、性能低下なしに取引履歴情報をリアルタイムで検索できると判断した。オープンソース推進のICT戦略に合致し、ベンダーロックインを回避できる点も評価した。
加えて、強力な暗号化機能も決め手になった。Enterprise PostgresはPCI DSSに対応した強力な暗号化機能を実装し、格納データやバックアップデータを、アプリケーションを修正することなく透過的に暗号化する。取引履歴情報を暗号化して保存することで、第三者への情報漏えいを防止できる。
データベースアクセスに関する詳細な監査ログも取得可能なので、不正アクセスの早期検出につながる。これが抑止効果となり、ガバナンスおよびコンプライアンス対策も強化できる。
同社はこれまで、取引元帳記録システム以外にも富士通製品を導入しており、サポート対応力は高く評価していた。韓国富士通はオープンソースのR&Dセンターを運用しており、技術力も高い。韓国富士通をパートナーとすることで、既存データベースの移行支援が期待でき、社内人材へのスキルトランスファーも進むと判断した。
実際、韓国富士通のサポートは非常に手厚いものだったという。PoC開始の約6カ月前からオープンソースに関するセミナーを実施し、教育やスキル習得を支援。さらに既存データベースとEnterprise Postgresのデータ連携方法を検証し、容易かつリスクの少ない手順で移行できるように準備を整え、その後3カ月で構築して短期導入を実現した。
システムの特長
業界標準のベンチマークで性能を実証
前日から過去2年間の取引履歴データをEnterprise Postgresに蓄積
正式導入に向けたPoCでは、既存データベースの機能を使用し実現していた業務がEnterprise Postgresを適用しても全く同じ動作をするか確認。また性能面においても、韓国富士通のサポートのもと、テストやチューニングなどを行い、業界標準のベンチマークである「TPC-C」および「TPC-H」シナリオによる性能比較で、従来環境とほぼ差がないことを実証した。
こうした“確証”を得たことから、同社は正式導入に踏み切った。
Enterprise Postgresを採用した新たな取引元帳記録システムは、オンプレミスの仮想化基盤上で運用している。蓄積するのは、前日から過去2年間の取引履歴データだ。当日分の取引履歴データは既存データベースに蓄積し、現在は新旧データベースを既存システムとの互換性を維持しながら並行稼働している。将来的には当日分の取引履歴データもEnterprise Postgresに蓄積し、全てのデータをオープンソースベースのデータベースで運用する計画である。
効果と今後の展望
KRXからの問い合わせに即座に対応
蓄積データが増大しても、必要な情報を瞬時に検索・参照可能
Enterprise Postgresの導入により、同社は様々なメリットを享受している。まず挙げられるのが、取引履歴情報が即時参照可能となったことだ。以前は3カ月前より古いデータはバックアップテープからリストアしなければならなかったが、今はそれが不要。KRXからの異常取引についての調査・レポート提出にレスポンスよく対応できるため、証券会社としての信頼の向上につながっている。
韓国富士通のサポートときめ細かなPoCにより、移行リスクを回避し、短期間かつ安全に移行できたことも大きなメリットだ。
レスポンスなどの性能も申し分ないという。Enterprise Postgresは並列検索処理など大量データを高速処理する機構を実装し、最適値があらかじめ設定されている。パフォーマンスを出すための煩雑なチューニングが必要ない。取引履歴データの過去2年分が常時データベースに格納されているにもかかわらず、必要な情報を瞬時に参照できるのだ。
コスト削減効果も大きい。既存データベースを拡張利用する場合に比べ、ライセンス費用、保守費用および運用コストを含めたTCOを削減できる見込みだ。
今回のプロジェクトでオープンソースの有用性を強く実感したハナ金融投資。今後は取引元帳記録システム以外でも、オープンソースの利用を最優先に考えていく。オープンソースベースのシステム構築・運用管理の内製化も目指す。その人材育成を含め、引き続き、韓国富士通のサポートに大きな期待を寄せている。
ハナ金融投資株式会社(Hana Financial Investment Co., Ltd.) 様
所在地 | 大韓民国ソウル市永登浦区議事堂大路82 |
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設立 | 1977年1月18日 |
代表取締役会長 | キム・ジョンテ(金 正泰) |
従業員数 | 1,479名(2018年9月現在) |
ホームページ | https://www.hanaw.com/ |
業務概要 | 韓国のHANA(ハナ)金融グループの一員である投資証券会社大手のハナ金融投資。「お客様の喜び!それだけのために」をモットーに金融業を展開し、韓国だけでなく、グローバルに事業を推進している。 |
[2019年5月掲載]
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