SPARC/Solaris 探検隊
第17回:SPARCサーバのパワーアップ ~ビルディングブロック構成~
2018年4月24日
第16回では、SPARCサーバの「信頼性」を支える仕組みのお話をしました。
今回は、SPARCサーバ導入後の性能向上や機能追加に対応する「拡張性」についてお話します。
拡張性とは?
サーバを使い始めたあとに、「もっと高性能なサーバが欲しい!」と考えることは実際によくあることです。
サーバ上で動作するシステムの利用者が増えたり、システムの利用頻度が高くなったりしてくると、処理が追いつかなくなってしまうことがあります。
さらに高性能なサーバに交換することもありますが、サーバの交換はそう簡単なことではありません。
そんなときは、サーバは交換せずにCPUやメモリを増設することで性能を高めていく方法があります。
- 高性能なサーバに交換
- サーバを交換せずに性能アップ
サーバを交換せずに、あとから性能を高められることを、サーバの「拡張性」といいます。「性能向上の余地が大きい、性能向上が容易」=「拡張性が高い」ということになります。
CPU・メモリの増設や交換は、サーバを交換することに比べると手軽な方法といえます。とは言うものの、搭載できるCPUとメモリの数には限りがあります。
SPARCサーバには、1台のサーバでのCPU・メモリの増設や交換の枠を超えて、もっと性能を高められる機能があります。
SPARCサーバの拡張性 ~ビルディングブロック構成~
SPARCサーバでは、使用中の筐体に新しい筐体を接続し、ハードウェアパーティションを構成することで、1台の大きなサーバのように扱うことができます。
接続した複数の筐体間でハードウェアリソースを共有できるため、サーバをパワーアップできるのです。
このように、複数の筐体を接続した構成を「ビルディングブロック構成(BB構成)」といい、必要な処理能力に応じて接続数を増減できます。
例えば、2台が連結している状態を2BB構成と呼びます。
SPARCサーバでは、なんと16台まで増やすことができます(16BB構成)。
2BB構成
16BB構成
SPARCサーバは、元々高性能なサーバですが、ビルディングブロック構成を構築することで、さらに性能を向上させることができます。
ワンポイント
ビルディングブロック構成では、使用中のサーバを稼動させたままで接続数を増減できます。つまり、システムを止めずに性能強化できるのです!
次に、サーバを増設して、ビルディングブロック構成を構築する様子を見てみましょう。
ビルディングブロック構成を構築する前に
今回は、ビルディングブロック構成に対応した最新のハイエンドSPARCサーバであるSPARC M12-2Sを使用して、ビルディングブロック構成を構築していきます。
その前に、SPARC M12-2Sの設置イメージを確認しましょう。
SPARCサーバには、ビルディングブロック構成に対応した専用のラックが用意されており、SPARC M12-2S間を専用ケーブルを使って接続します。
ここでは、すでに一番下の段に1台のSPARC M12-2Sが設置されている状態から、上の段に1台増設します。
ちなみに、最大数の16台を接続するときは、ラックを2台並べます。
- 設置済みのSPARC M12-2S
- 増設するSPARC M12-2S
ワンポイント
SPARC M12-2Sのフロントパネルで、ビルディングブロックを構成する複数のSPARC M12-2Sを識別するためのID「BB-ID」を設定します。1BB構成でSPARC M12-2Sを使う場合はBB-IDに「00」、増設する2台目のSPARC M12-2SにはBB-IDに「01」を設定します。
ビルディングブロック構成を構築してみよう!
以下のながれで、SPARC M12-2Sを増設していきます。
Step 1:増設の準備(既存サーバ)
- 追加分のCPUリソースを有効にする
- 増設するSPARC M12-2Sを選択する
Step 2:ハードウェアの設置(追加サーバ)
- SPARC M12-2Sを設置する
- 専用ケーブルを接続する
- 電源ケーブルを接続する
Step 3:ソフトウェアの設定(既存サーバ)
- 増設したSPARC M12-2Sを組み込む
- OSにSPARC M12-2Sを認識させる
なお、ここではビルディングブロック構成構築の大まかなイメージをお伝えするため、一部の設定や確認手順を省略しています。
実際に実施する際は、マニュアルをご参照ください。
Step 1:増設の準備(既存サーバ)
- 追加分のCPUリソースを有効にする
増設するSPARC M12-2SのCPUを使用するには、事前にCPUコア アクティベーション(ライセンス)を購入して、発行されたキーをサーバに登録する必要があります。
ここでは、5つのCPUコア アクティベーションキーを登録します。
ワンポイント
今回使用するSPARC M12-2Sでは、12コアを搭載したCPUを1台あたり2つ搭載できます。このため、1台増設することで最大24コアのCPUを増設できます。SPARC M12シリーズでは、1つのCPUコア アクティベーションキーで、1つのコアを有効化(アクティベート)できます。
CPUコア アクティベーションキーを登録するには、既存のSPARC M12-2SのXSCF上でaddcodactivationコマンドを実行します。
addcodactivationコマンドのあとに、CPUコア アクティベーションのキーを入力します。
ワンポイント
SPARC M12-2Sには、ハードウェアの監視機構(サービスプロセッサ)であるXSCFが搭載されています。
ビルディングブロック構成にする場合、各筐体のXSCF間で専用のネットワークを構成して、お互いの状態監視などを行います。
通常はデフォルトの設定で問題ないため、設定方法についてはここでは省略します。
設定を変更する必要がある場合は、『インストレーションガイド』をご覧ください。
- 増設するSPARC M12-2Sを選択する
SPARC M12-2Sを増設する前に、既存のSPARC M12-2SのXSCF上でaddfruコマンドを実行し、増設するSPARC M12-2Sを選択します。
今回は2台目のSPARC M12-2Sなので、No.2の「BB#1」を選択します。
Step3で画面操作を行うので、コンソールは閉じずに残しておいてください。
Step 2:ハードウェアの設置(追加サーバ)
- SPARC M12-2Sを設置する
増設するSPARC M12-2Sを設置する場所に、ラックレールを取り付けます。
SPARC M12-2Sのフロントパネルを外します。
それでは搭載してみましょう。
ラックレールに合わせてSPARC M12-2Sを設置します。
ネジを使用して、SPARC M12-2Sをラックに固定します。
フロントパネルを取り付けて、設置完了です。
- 専用ケーブルで接続する
ラックの後ろ側から見てみましょう。
上段が増設するSPARC M12-2Sです。
搭載されていたSPARC M12-2Sと増設するSPARC M12-2Sを専用ケーブル(XSCF BB制御ケーブル、クロスバーケーブル)で接続します。
- 電源ケーブルを接続する
増設するSPARC M12-2Sに4本の電源ケーブルを接続します。
これで、ハードウェアとしての接続は完了しました。
Step 3:ソフトウェアの設定(既存サーバ)
- 増設するSPARC M12-2Sを組み込む
既存のSPARC M12-2SのXSCFに戻って「f」を入力すると、増設したSPARC M12-2Sの組み込みが開始されます。
増設するSPARC M12-2Sを組み込む際に、ハードウェアの診断を実行するかどうかを選択します。
今回は、「s」を入力して診断を実行してみましょう。
問題がなければ、診断結果として、FRUのStatusに「Normal」と表示されます。
確認できたら、「f」を入力して終了します。
診断が無事終了しました。
- OSにSPARC M12-2Sを認識させる
showboardsコマンドを使用して、現在のシステムボードの情報を確認します。
増設したSPARC M12-2Sは、XSCFで以下のように認識されています。「SP」は、物理パーティションに属していないことを表します。
setpclコマンドを使用して、現在稼動しているOSに対して、増設したSPARC M12-2Sを認識させます。
これで、SPARC M12-2Sの増設が完了しました。
OS上でも追加されたCPUリソースやメモリリソースを確認できます。
今回は、追加したCPUコア5つ分のライセンスにより、29コアのCPUを使用できるようになりました。
ビルディングブロック構成を構築することで、1台のSPARC M12-2Sの上限である24コアを超えたCPUリソースを搭載できます。
拡張性のほかにもこんなメリットが!
ビルディングブロック構成では、サーバを稼動させたままで接続数を増減できることをお話しました。この仕組みは、サーバをメンテナンスする際にも役に立ちます。
サーバの稼動中に、一部の部品に故障や異常が発生した場合、活性交換できる部品を除いて、通常はサーバを停止させて部品を交換する必要があります。
ワンポイント
サーバを停止することなく部品を交換することを「活性交換」と呼びます。
ビルディングブロック構成では、ビルディングブロックの設定を解除して、故障した部品を交換できます。このため、異常がないサーバを停止させる必要がありません。
このようにして、サーバを稼動させたままで、さまざまなメンテナンスができるのです。
ビルディングブロック構成を構築することで、サーバの拡張性を高めるだけでなく、可用性も高めることができます。ぜひ活用してくださいね!
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