SPARC/Solaris 探検隊
第5回:サーバとパソコンは何が違うの?(後編)
2011年10月18日
前回は、サーバとパソコンの「性能」の違いを中心に、お話しました。しかし、サーバに要求されるのは性能だけではありません。
重要な情報システムのサーバの場合、基本的に24時間365日サービスを提供し続けなければならないため、長時間稼動できる能力、すなわち「信頼性」も必要とされます。
例えば、みなさんは夜遅い時間でもWebサイトを利用したり、電子メールで誰かと連絡をしたりすることができますね。これは、「信頼性」が備わったサーバがずーっと稼動して、サービスを提供し続けているお陰なのです。
なお、パソコンは1日8時間程度の使用を想定して作られているので、24時間の稼動には向いていません。(メーカやモデルによって多少異なります)
実際に、富士通のパソコンの取扱説明書では、
「本製品は、24時間以上の連続使用を前提とした設計にはなっておりません。」
などと書かれていることもあります。
それに対して、サーバは長時間の稼動に耐えられるように、様々な工夫を凝らして設計されています。今回は、その工夫の一部分をご紹介したいと思います。
信頼性もこんなに違う!
サーバ内部の温度をコントロール!
サーバもパソコンも、本体内部の温度が高すぎると、故障してしまうことがあります。
それは、CPUやHDDなどを構成する電子部品は熱に弱く、高温の状態が続くと寿命が短くなってしまうためです。
第4回でもお話しましたが、特にサーバは長時間稼動させるだけでなく、多くのCPUやメモリを搭載するので、パソコンよりも多量の熱を発します。そのため、サーバにおいて、熱の影響を小さくすることはとても大切なのです。
サーバは熱の影響を小さくするために、部品を冷やすための大きなファンを取り付けたり、空気の流れがスムーズになるように部品を配置して排熱の効率を良くしたりと、できるだけ本体内部の温度を上げない構造にすることで、部品の故障を防いでいます。
複数の部品で信頼性UP!
サーバの本体の温度をいくら下げても、部品の故障を完全に防ぐことはできません。壊れる時は壊れてしまうものです。
そこで、サーバは、「冗長化」という考え方を取り入れて設計されています。
サーバの設計における「冗長化」を簡単に説明すると、「同じ種類の部品を2個以上搭載して、部品が1個壊れても残りの部品を使ってサーバを稼動させ続ける」ということです。
サーバは、電源やファン・HDDなど、特に壊れやすい部品を冗長化することで、長時間稼動し続けることができます。
サーバの状態がいつでも分かる!
高い信頼性を要求されるサーバでは、主要な部品を見守るための専用のCPUが取り付けられていることがあります。このCPUを、「サービスプロセッサ」と呼びます。
サービスプロセッサは、サーバ本体のCPUやメモリ・HDD・電源・ファンなどの部品が正常に動作しているか、常にチェックしています。もし、これらの部品に異常が起きた場合は、サーバの管理者に電子メールなどで、そのことを知らせてくれます。
サーバ管理者は、サービスプロセッサからの情報をもとに、サーバの異常の原因を解析して、必要に応じて部品を交換します。そのため、サーバは安定して稼動し続けることができます。
部品をいつでも交換できる!
信頼性の高いサーバは、稼動させたまま部品を交換することができます。これを「活性交換」と呼びます。活性交換できる部品はサーバによって異なりますが、比較的故障しやすい電源やファン・HDDなどは、活性交換できる場合が多いです。
今回のまとめ
サーバは、サービスを安定して供給するため、長時間の稼動に耐えられる、「信頼性」を要求されます。
そのため、熱による故障を防ぐために本体を効率よく冷却したり、部品故障時にも継続して稼動させるために、冗長化・サービスプロセッサ・活性交換などの機能を採用したりしています。
サーバの信頼性のポイント
本体の内部を冷却して、部品の故障を極力防ぐ!(大きなファン・排熱効率の良い構造)
一部の部品が壊れても、サーバを稼動させ続ける!(冗長化)
壊れた部品の情報を、すぐにサーバ管理者に伝える!(サービスプロセッサ)
サーバを稼動させたまま、部品を交換する!(活性交換)
さて、前回から2回に渡ってサーバとパソコンの違いについてお話しましたが、いかがだったでしょうか?
冗長化や活性交換などの少し特殊な用語が出てきて難しく感じた方もいるかもしれません。
パソコンとサーバの違いを、より簡単にまとめると、
- サーバはたくさんの仕事を安定してこなすために、パソコンよりも高い性能と信頼性が必要
- サーバは性能と信頼性を高めるための多くの工夫が施されている
ということです。
次回はOSについて、お話したいと思います。
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