ドローンをはじめとした屋外でのローカル5G検証ニーズに応える!
-準同期や高度なセキュリティも検証可能な富士通那須工場-
富士通では、屋外で利用するローカル5Gのソリューション検証ができる場として、通信機器の製造拠点の一つである那須工場敷地内に広大な検証エリアを用意している。ここではドローン飛行や広範囲での無人搬送車(AGV 注1)の運行試験、ローカル5Gシステムを不正接続などから防御するセキュリティソリューションなどの検証が可能だ。国内でも類を見ないローカル5G屋外検証環境の特徴と最新の機能について担当者に聞いた。
- (注1)Automated Guided Vehicle
広大な屋外エリアでローカル5Gを活用した検証が可能
さまざまな産業においてデジタルテクノロジーの活用や働き方改革が加速するなか、ロボットやAIを活用した点検作業の自動化および遠隔化や保安対策などに必要なネットワークインフラとして注目されているローカル5G。富士通は2022年6月に同社の那須工場(栃木県大田原市)に、屋外におけるローカル5G検証環境を構築した。
基地局にはローカル5G スタンドアロンシステム「Fujitsu Network PW300」を使用し、ローカル5Gネットワークを常設。実験試験局として運用する検証可能なエリアは約1万5,000平方メートル、高度20メートルとなっており、利用者はドローンやAGVなどの検証器材や作業端末を持ち込んでさまざまな検証を行うことができる。
たとえば、住宅地などでは飛行が制限されるドローンを活用した実証実験や、工場や物流施設において屋外でAGVを稼働させるための事前検証が可能だ。また、屋外施設の設備点検や侵入者検知、河川や山斜面の監視を模した検証など、屋外の現場にローカル5G環境を構築する前に、制御の妥当性やシステムの安全性などを検証することができる。
「準同期」機能の追加によりさらに魅力的な検証エリアに
2023年2月には、「準同期」の機能をローカル5Gシステムに追加した。これは上りの通信帯域の比率を増やすことができる機能で、ローカル5Gだけに許されたものだ。(キャリア5Gと同じ通信帯域の比率での運用方式を「同期」と呼ぶ。)
ローカル5Gは現状、4Kカメラで現場状況を撮影した高精細映像を伝送し、それをリアルタイムにエッジサーバでAI分析するといった場面で活用されることが多い。その際、より多くの高精細映像を伝送するためには、4Kカメラからエッジサーバへ映像を送信する上りの通信帯域の比率を高めることが有効となる。
那須工場のローカル5G環境の構築や検証に携わってきた富士通株式会社 ナショナルセキュリティ事業本部 インフラサービス事業部 エキスパートの内山 拓哉は、「HD映像よりも4K映像のほうが、映像分析の精度が高くなることがわかっています。4K映像なら解像度が高いゆえに被写体までの距離が遠くてもそれが何であるのかを判断できるので、多くの産業において高精細映像を活用することは、さまざまな可能性があると期待されています。そのため、映像伝送において上りの通信帯域の比率を高めることができる準同期を試したい、というお客様からの要望も多く、準同期機能を実装することにしました。屋外で準同期機能が使える施設は国内でも珍しいのではないでしょうか」と語る。
警備や医療への貢献が期待できるドローンの活用
これまで那須工場で行ってきた検証のなかにドローンを活用した検証がある。ドローンに高精細映像を撮影できるカメラを搭載し、撮影した映像をローカル5Gネットワークで伝送、コントロールセンターで映像を見ながら警備員に指示を出すというものだ。これにドローンを活用した侵入者検知や対象物の自動追尾などを加えれば、さらにセキュリティを高めることができるので、警備の省人化にも役立つ。
また医療においては、たとえば、施設などで事故や災害が起きた際にドローンで現場の様子を撮影し、その映像を遠隔地にいる医師に伝送、医師は映像を見ながら遠隔地からケガ人を診察するといった用途も想定できる。
「那須工場でのローカル5Gを活用した検証は、お客様が自社の施設に導入するシステムを事前確認したい場合に行われることが多いです。那須工場でさまざまな検証を事前に実施することで、現場へのシステム導入をスムーズに行うことができます。屋外での試験は、雨や雪などの悪天候や強い日差しが、撮影する映像にどのように影響するかも検証できます。現在、ドローンの飛行実験には機体の持ち込みが必要ですが、今後は貸し出しできるドローンも用意する予定です」(内山)
強固なセキュリティソリューションを
わかりやすいインターフェースで
那須工場のローカル5G検証環境では、トレンドマイクロが提供するローカル5G向けセキュリティソリューション「Trend Micro Mobile Network Security™」(以下、TMMNS)を導入している。これは、モバイルデバイスに紐づくSIMを個別に監視し、ネットワーク全体の状況を可視化、不正利用などのリスクからローカル5Gシステムを保護するものだ。
「お客様にとってセキュリティは重要課題です。ローカル5G環境下において、簡単かつ便利にサイバー攻撃などへの対策を強化できるソリューションとして、TMMNSは有効だと考えます」(内山)
ローカル5Gネットワークは自前で用意するものだけに、部外者に勝手に利用されては困る。TMMNSは、ローカル5Gシステムに接続するデバイスをSIM単位で管理でき、管理画面ではデバイスの接続状況や稼働状況の確認に加え、動作の開始・停止の制御もできる。不正にネットワークに接続しようとするデバイスや、制限を超えた利用も検知できるようになっている。また従来のネットワーク環境でのデバイス接続確認は、人が現場でデバイスを動作させたあと、報告・確認するアナログな手法で行われていたが、TMMNS を活用すればSIMの状況把握によって接続確認ができるため、工数を削減できるメリットもある。
内山とともに那須工場のローカル5G検証環境をサポートするナショナルセキュリティ事業本部 インフラサービス事業部の三浦 幸子は、TMMNSについて次のようにコメントする。
「アンテナと、それに接続されているノードを管理画面でリアルタイムに確認しながら運用できます。各ノードの名称なども編集可能ですので、視覚的にわかりやすくなっています。加入者識別番号(IMSI)と端末識別番号(IMEI)、稼働履歴も把握でき、不正にアクセスされている場合はすぐに警告が表示され、通信を遮断できます。管理画面の操作は簡単で、那須工場でTMMNSをご覧いただいたお客様からは『わかりやすくて良いですね』との感想を多くいただいています。また、『アンテナにつながっているノードを可視化できるものはないので便利ですね』とのお声もいただいています」
ローカル5G環境下では、今後さまざまなOSの機器・デバイスが接続されることが想定される。そのような現場でシステムを運用する担当者すべてがセキュリティの専門性を持つわけではない。TMMNSは、セキュリティの専門家でなくても確実な運用・管理が行えるよう、さまざまな配慮がされている。那須工場へのTMMNS導入実績をもとに、今後も富士通ではセキュリティを担保したローカル5Gシステムの提案を進めていく。
屋内検証環境との連携など
顧客のニーズにあわせたアップデートを
那須工場では今後、ドローンなどの貸し出し機器の充実に加え、電波状況が良くない場所の改善に利用する電波の反射板導入などを予定している。さらにローカル5Gだけでなく、たとえば「屋内のネットワーク環境はWi-Fiを活用することでコスト削減を図りつつ、屋外の広大なエリアではローカル5G環境を構築」といったように、 Wi-Fiや有線ネットワークと組み合わせた提案も行っていく。顧客の目的はローカル5Gの導入ではなく、ドローンやAGVなどを活用して業務の効率化や自動化、省人化を進め、DXを推進することだからだ。
「広大なエリアでの業務を改善したいというお客様のニーズはさまざまです。業務の自動化や省人化を実現し、お客様のDXに貢献する基盤としてローカル5Gなどのテクノロジーを提供しながら、今後どのような拡充をしていけば良いかを模索していきます」(内山)
また、屋内のローカル5G検証環境である「FUJITSUコラボレーションラボ」との連携も予定している。FUJITSUコラボレーションラボから那須工場での屋外検証を見ることができる、那須工場のノードやAGVなどを遠隔操作することができるといったことをイメージしている。内山は最後に次のように語った。
「お客様が便利になることが一番です。那須工場も、インフラを提供するだけではなく、お客様の課題を解決するソリューションを提供できるような場にしていきたいと考えています。屋外でのローカル5G活用を検討されていらっしゃる方は、ぜひお気軽にご相談ください」
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