ローカル5Gの特徴と最新動向
- Wi-Fiとの違いや業種別ユースケース例などを徹底解説 -

ローカル5Gとは、企業や自治体等が自らの建物や敷地内で専用の5G環境を柔軟に構築・運用できる無線ネットワークである。2019年に制度化が行われ、実証のみならず商用利用も増えてきている状況だ。Wi-Fiや4Gといった他の無線ネットワークとの違いや具体的な利用シーン、最新動向などについて富士通の担当者が語る。

ローカル5GとWi-Fiやキャリア5Gの違いは?

第5世代移動通信システム(5G)の特徴は、高速大容量・低遅延・多数同時接続だ。前世代の4Gでは、スマートフォンなどのデバイスで動画や音楽のストリーミングができるようになったが、5Gでは高精細映像の解析や多数のセンサーが接続されるIoT基盤構築など、より高度な産業利用が期待されている。

これまでモバイル通信のネットワークは、通信キャリアが公共に提供するものを利用することが一般的であったが、ローカル5Gは自社の敷地や建物内で独占して利用できる点が異なる。プライベートな無線ネットワークとして広く普及しているWi-Fiも高速化の取り組みが進んでいるが、ローカル5GとWi-Fi の根本的な違いは、利用にあたり免許が必要かどうかだ。ローカル5Gの利用にあたっては免許取得が必須である。その意義はどこにあるのか。

免許を取得することで、電波を強くして1台のアンテナで広い範囲をカバーすることができる。しかも自分たちの専用ネットワークを構築することが可能だ。免許が不要な場合、誰もが電波を使えてしまうため、電波干渉などの懸念がある。ローカル5Gは、高速通信が途切れにくい「安定性」がWi-Fiとの最大の違いだ。よって、高精細映像をAIがリアルタイム解析するようなタスクでは5Gが向いている。一方、シビアなリアルタイム性が求められないファイル転送などであればWi-Fiでも十分である。

  • ローカル5GとWi-Fi6の比較検証。高精細(4K)映像伝送においてローカル5Gは帯域変動が少なく映像が乱れないのに対し、Wi-Fi6は帯域変動が大きく伝送速度が低下した際に映像が乱れることが確認された。

  • ローカル5GとWi-Fiの特性の比較。利用用途やエリアの広さ・状況に応じた選択が必要。

ローカル5Gの周波数特性と
導入にあたって必要な検討事項

ローカル5Gで利用できる周波数帯は、当初はミリ波(28GHz帯)のみであったが、2020年12月の制度改正によって6GHz未満を指すSub6(4.7GHz帯)にも拡張されている。周波数が低いと障害物の影響を受けにくく、電波が回り込むことができ、広範囲をカバーできる。高い周波数の場合は遮蔽物に弱くなるが、単位時間あたりの転送量は多くなる。

  • 周波数帯の割り当て状況。Sub6(4.7GHz帯)がローカル5Gで利用できるようになってから急速に免許取得数が伸びている。

総務省の発表では、2023年1月15日現在のローカル5G無線局数は1,410局であり、周波数帯別ではミリ波145局に対して、Sub6が1,265局となっている。富士通のようにミリ波・Sub6の両方に対応している者もあれば、いずれか1つの場合もあるが、より低コストで導入できるSub6の利用が急増している状況だ。

ローカル5Gの導入にあたっては、前述のとおり免許が必要となる。免許の申請から交付・運用開始までは数ヶ月かかるが、富士通では導入後の運用保守も含めて代行が可能だ。

導入前には、まず目的を明確にすることが必要だ。どんな用途で使うかが決まれば、そのエリアにどのような電波が必要かを設計する。設計したエリアにおける免許を取得するために、隣接した土地での電波干渉の調整や申請書類の作成、工事、サイバーセキュリティ対策、専任の無線従事者といった準備も必要となる。モバイルネットワークで動作する機器にはSIMが必要となり、そのための番号の登録も行う。そして、免許の交付から6ヶ月以内に運用を開始する。

「まずは、お客様のビジネスにおけるありたい姿やビジョンを描く必要があります。我々は、それらをお客様と一緒に考えることから始めており、実現に向けては、通信インフラを含めさまざまソリューションを組み合わせてご提案をしています」と担当者は語る。

製造・流通・インフラ・建設・農業・医療・教育など続々と生まれる
ローカル5Gのユースケース

富士通では実証から商用利用まで、さまざまな業界に対してローカル5Gの導入・運用支援を行っている。「安定した通信ができるローカル5Gの特性を活かして、現場からの高精細映像をエッジコンピューティングでリアルタイムにAI分析するといった事例が多くなっています」(担当者)

ローカル5Gのユースケース例については、たとえば製造業であれば、高精細映像を活用した遠隔作業支援や工場内の状態把握に活用することが可能だ。同じ製造業でも組立系では、工場で作業する人の稼働状況や導線、製品滞留などの監視や工場内での自動搬送に活用することができる。また、倉庫内における高精度での自動搬送車両の操作や作業者の安全確保のための監視にも活用できる。

現場作業の労力がかかるエネルギー系企業の施設や鉄道では、設備の保安や遠隔監視に、危険な作業が多い建設業においては、建設機械の遠隔操作、カメラやセンサーを使った作業者の安全確保のための監視などに活用できる。

就労者の高齢化が深刻化している農業の現場では、農業機械の遠隔制御やドローンによる作物の状態確認に活用することで生産性向上と省人化、軽労化を目指す動きもある。さらに医療や介護の現場でもローカル5Gの活用が期待されている。遠隔診療や遠隔医療支援、介護施設における介護ロボットの遠隔操作やカメラとセンサーによる被介護者の見守りなどに活用すれば、現場の人材不足解消につながると考えられる。

このほか、スポーツにおける遠隔指導や、教育現場でVR技術とともに活用することで遠隔体験型学習を実現するなど、さまざまな業界での活用が可能だ。

あらゆる業界においてローカル5Gのユースケースが生まれつつある。
業種 ローカル5Gユースケース例
製造(プロセス系) 遠隔作業支援、工場内の状態把握、設備のスマート保安
製造(組立系) 作業者の稼働・導線や製品の滞留監視、組立作業の順序監視、搬送自動化
流通(倉庫等) 自動搬送車両の高精度誘導、作業者の安全確保
エネルギー ロボットによる巡回監視、設備の異常検知、遠隔監視、遠隔作業支援
社会インフラ(鉄道系) 線路および沿線の異常検知、駅ホームにおける確認業務の高度化
データセンター ロボットによる巡回監視、異常検知、緊急時の現場確認・遠隔支援
建設 建設機械の遠隔操作、作業者の稼働監視および安全確保
農業 農業機械の遠隔操作、ドローンによる監視
医療・介護 遠隔診療、遠隔医療支援、介護ロボットの遠隔操作、被介護者の見守り
スポーツ 遠隔指導、高精細映像を活用した戦略分析
教育 遠隔授業、VR遠隔体験型学習
観光 観光スポットでのARや映像を活用した情報配信
エンターテイメント 臨場感ある映像のリアルタイム配信、xRを活用した体験イベント
港湾・洋上 湾港設備管理、養殖IoT、洋上風力発電スマート保安

ローカル5Gの活用方法は、高精細映像の伝送とエッジコンピューティングによる解析、クラウドでの状態管理が中心となっているが、省人化や保安への注力など、労働人口の減少や技術伝承といった社会課題の解決に活用しているところが多い。今後、ローカル5Gの制度改正が進めば、地上だけではなく、港湾設備、海産物の養殖、洋上風力発電施設などでの活用も期待できる。

「今までネットワークを張りめぐらそうとしても難しかった場所や、より安全にしたいと思っていても情報が取れなかったところに対する革新が起きています。ローカル5Gなら世界標準規格で、独自の無線を用意する必要もなく、通信インフラそのものを高度化できることがメリットです。5Gが普及することで、人が使う端末だけでなく、機器同士もつながる世界になりますので、さまざまな業界でこれまでにない新しいユースケースが出てくると期待しています」(担当者)

ローカル5Gエリアのシェアリングや
設備・データの共用によってさらに広がる可能性

自社専用で使えるのがローカル5Gの利点の1つだが、単一の事業者だけでなく、商店街や鉄道、工業団地など、関連する団体や企業同士で共用する動きもある。コストの分担やデータの相互利用で、さまざまな事業者が持続可能性を高めていくという狙いに合致しているからだ。他者との協働も新たな社会のトレンドとなりつつある。

富士通では、2020年10月からローカル5G パートナーシッププログラムを開始し、先端技術を持ったパートナー企業とソリューションを共創しながら、お客様の課題や社会課題を解決するべくローカル5G市場を牽引してきた。当初と比較すると、業種ノウハウの蓄積や機器の低価格化、さらには総務省による5G投資促進税制の創設や免許の手続きの簡素化も進んでおり、導入ハードルは確実に下がっていると言える。

「ローカル5Gの導入時に必要なものに対する備えが整っている状況にあります。お客様からローカル5Gの活用方法に関する相談を頂いた際には、FUJITSUコラボレーションラボや屋外検証サイトで、5G対応のカメラやデバイス、AIや仮想空間との連携を活用した実証(PoC)を行うことで有用性を実感頂くことが可能になっています。5G/ローカル5Gをはじめとするソリューションを活用してイノベーションに取り組まれる際にはぜひご相談下さい」(担当者)


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