ローカル5Gを活用しデータセンターの無人運用と安定稼働を目指す
- 富士通が描くデータセンターの未来像 -

今やデータセンターは社会を支える重要なインフラとなっている。安定稼働して当たり前の施設と思われており、その運用にはスキルを持った人材が必要だ。しかしながら、特に地方のデータセンターでは人材の確保が難しい状況にあり、運用の自動化・省人化が求められている。5G/ローカル5Gをはじめとするテクノロジーを活用して社会課題解決に取り組む富士通は、総務省が実施する「令和4年度 課題解決型ローカル5G等の実現に向けた開発実証」に応募し、「データセンターにおけるローカル5Gを活用した運用省人化及び安定運営の実現」に取り組む。「自動監視」「緊急時作業の遠隔支援」などの実証実験を行い、デジタル田園都市国家構想を支えるレジリエントな社会インフラ実現に貢献することを目指す。

社会インフラであるデータセンターの人材不足を
テクノロジーで解決

富士通のデータセンター事業では、主要拠点である館林、横浜、明石、大阪千里のほか、北海道から九州まで多様なニーズに対応する施設・設備を有している。データセンター運営では、顧客のIT資産であるサーバなどの機器に電力を供給し、センター内に生じる熱を冷却するため空調をコントロールするなどして安定稼働を維持しなければならない。設備を動かすだけでなく、正しく動作をしているかどうか構内を巡回したり、機器のメンテナンスをしたりする業務が必須となるため、センターごとに適切な人員の配置が必要となる。

データセンターの集中管理室では、電力の供給や各機器の動作状況などをモニターで監視できるが、設備の異常音や匂い、振動などは現場を巡回しなければ分からない。そのため広大なセンターを効率的に巡回することが求められる。富士通株式会社 DC・クラウドサービス事業本部 DCファシリティサービス事業部 ファシリティ運用部 部長の園田義信は、データセンター運用の自動化や省力化が大きな課題となっていると語る。

「各拠点に人を配置していますが、今まで大きな障害は経験していないものの、データセンターに機器障害はつきものです。1人が故障の現場にいくと、全体の監視ができなくなるため、夜間は最低でも2人は必要になります。特に一番大きな館林のセンターには、多くのラックがあり、巡回にも時間がかかります。機器の操作を誤ってサーバを止めてしまうことは許されませんので、訓練された人員が昼夜問わず対応しなければならないのですが、人員の確保が難しい状況にあります」(園田)

  • 富士通株式会社
    DC・クラウドサービス事業本部
    DCファシリティサービス事業部
    ファシリティ運用部 部長
    園田 義信

富士通はローカル5Gなどのテクノロジーを活用した社会課題の解決に積極的に取り組んでいる。富士通株式会社 ネットワーク&セキュリティサービス事業本部 5G Vertical Service事業部 マネージャーの三木敏司は、開発・提供している映像系やコミュニケーションのソリューションが、データセンター運用の課題解決にも有効と考え、今年度の総務省の開発実証に応募したと話す。

「ローカル5Gのユースケースを考えるなかで、園田部長率いるデータセンターのメンバーと話をする機会があり、データセンターにおける省人化という課題解決ができるのではないかと考えました。そして、データセンターだけではなく、他の産業へも応用ができることも考慮して応募することを決めました」(三木)

  • 富士通株式会社
    ネットワーク&セキュリティサービス事業本部
    5G Vertical Service事業部 マネージャー
    三木 敏司

今回、富士通とともに参加している株式会社富士通総研 公共デジタル戦略グループ マネジングコンサルタント 長谷川誠は「課題の抽出や計画の具体性は十分と思っていましたが、データセンターへの活用というテーマで選ばれるかどうかが一番のポイントでした。ちょうどデジタル田園都市国家構想に掲げられた、地方のデータセンター拠点の整備と関連付けることで、意義を訴求できたと思います」と振り返る。

  • 株式会社富士通総研
    公共デジタル戦略グループ マネジングコンサルタント
    長谷川 誠

自動巡回ロボットによる監視と
オンラインでの遠隔支援を実証

今回実証する、データセンター運用におけるローカル5Gを活用したソリューションはどのようなものか? 三木は大きく2つあると説明した。1つは、人による巡回監視作業を、カメラと映像伝送機能を持ったロボットによって代替するものだ。機器のメーターが異常値を示していないか、サーバのランプの点灯状態はどうかなど、集中管理室では分からないような異常をロボットが検知してアラームとして伝えるという仕組みである。

ロボットによる自動巡回監視では、データセンター特有の環境に対応しなければならない。金属製のサーバを搭載するラックが林立している状況では、無線電波が正しく届くかどうか、干渉がないかの懸念があった。

三木は、「実際にWi-Fiでうまくいかない事例も聞いていましたので、ローカル5GのDAS型(分散型)アンテナを使うことで、1つのセルで広く、また様々な方向からエリアをカバーし、干渉や不感地帯をなくした上で取り組もうとしています。自走ロボットの高精細映像を5Gの電波を使ってアップロードし、エッジ側で分析してアラームを出すといった伝送経路にローカル5Gを使います」と説明した。
なお、自走ロボットには、高さのあるラック全域を捉えられるようカメラが複数台装備される予定だ。

もう1つは遠隔サポートだ。データセンターは社会インフラとして安定稼働が求められ、たとえ災害が起きたとしても早期の復旧が求められる。そこで、現地に専門の人員がすぐに入れないという状況でも、リモートから現場に残った人をサポートする用途を考えた。現地のメンバーのスマートグラスや自動巡回監視のロボットからの映像を転送し、リモートから有識者がサポートする仕組みを実証する。

「データセンター内のオペレーターの方にスマートグラスをつけていただいて、ローカル5Gの無線区間を通じてインターネットに繋ぎ、オンライン会議ツールを使った上で、遠隔地から管理できるかを実証します。有識者が機器の操作などの作業指示を出したり、異常に対して誰にエスカレーションするか判断したりする情報把握に活用できると考えています。また映像だけでなく、マニュアルをスマートグラスに投影するといった取り組みも考えています」(三木)

データセンターの統合運用は省人化だけでなく
品質の均一化につながる

実証への期待について園田は「人による巡回は手間も時間もかかりますので、ロボットによる巡回は省人化にかなり貢献すると思っています。映像が残るので確認ミスも防げるでしょう。また停電時の非常用電源の切り替えなど、重要な操作を行う際は、現場に駆けつけて状況判断するために時間を要します。ロボットによる即時確認ができればこの段階を省くことができます。遠隔サポートについては、現場に最低限のメンバーしかいないときに、電気主任技術者が遠隔で指示できる点に期待しています。今も万一に備えて手順書は用意していますが、いざ作業を実行する際、有識者のサポートがあるのとないのでは全然安心感が違うでしょう」と語った。

富士通のデータセンターは、今後複数のセンターの運用統合を目指しており、専門家が1つの拠点から複数のセンターを見られるようにする構想がある。今回の実証はその体制に近づく第一歩となるものだ。

「現在は、いざというときのためだけに人員が配備されている面もありますので、将来的には可能な限りの無人運用を実現することが、我々が望むデータセンターの姿です。リモートで映像だけでなく、音や匂い、振動も検知できるようになると、本当に無人化に近づくことができます。省人化によって高度な運用統合を実現するだけではなく、それによってお客様へ提供するサービス品質を均一化できることが最終的なゴールです」(園田)

無人監視ならではの人間を超えた保全レベルの実現へ

園田は、データセンター運用のメンバーをできる限り今回の実証プロジェクトに参加させようと考えている。実証によって新たな仕事のやり方についての気づきを得られると期待しているのだ。園田は、今回の実証には、単に人間の作業の置き換えだけではなく、無人監視ならではの「新たな可能性」もあるという。

「人による巡回にはその回数に限度がありますが、ロボットなら極端な話、24時間巡回を続けることができます。それにより、異常のさらなる早期発見が可能になるでしょう。また、人間では確認しにくい高所の装置でも、ロボットのカメラを高位置から撮影できるように設計することで、ばらつきのない確実な監視も可能になります。こうした、無人監視ならではの人間を超えた保全レベルの実現にも期待したいですね」(園田)

富士通は、今回の実証から生まれるソリューションによって、デジタル田園都市国家構想のもと、地方にデータセンターを展開する際のデータ保全にも貢献したいと考えている。三木は「地方にデータセンターを誘致・設立するとなると、スキルを持った人材の採用が課題となります。無人監視や遠隔支援の仕組みがあれば、人材採用の幅も大きく広がります。そこで新たな雇用やワークスタイルも生み出せると考えています」と説明した。

また、今回実証するソリューションは製造現場の工場などにも応用できると考えている。ローカル5Gなどのテクノロジーの活用について長谷川は「誰でも使えるようになることがポイントだと考えます。例えば、コンピュータは、かつては大変高価で政府や大企業しか使えませんでしたが、今では多くの人が高性能なコンピュータであるスマートフォンを使っています。AIもそうなりつつあります。ローカル5Gも今後、より使いやすくなれば、提供者側が考えもしなかった“より良い使い方”がどんどん生まれる世界が訪れるでしょう」と語った。

映像伝送だけでなく、多くのデバイスを接続したデータ収集、自動運転、スマートシティなどの未来の社会基盤を実現するであろうローカル5G。三木は最後に「5Gから6Gの世界に向けての橋渡しとなる第一歩と意識し、今回の実証に取り組んでいきます」と意気込みを述べた。

より安全で品質の高いデータセンターの実現に向けて富士通は全力を挙げて実証に取り組む。

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