持続可能な社会に求められるサービス・ソリューション創出の場へ
- FUJITSUコラボレーションラボが目指すもの -

富士通では2020年3月に国内初のローカル5G商用免許を取得。同時に、ローカル5Gの実証環境を整えた「FUJITSUコラボレーションラボ」を富士通新川崎テクノロジースクエア内に開設した。施設内の最新のローカル5G環境を活用して、様々な実証データの取得・分析が可能だ。これまでに50を超える企業がパートナーシッププログラムに参加し、続々とソリューションが生まれているという。FUJITSUコラボレーションラボのミッションとは何か、社会の中でどのような役割を担っていくのか、担当者にビジョンを聞いた。

5G/IoT時代のVertical Serviceの共創を

富士通のパーパスは「イノベーションによって社会に信頼をもたらし、 世界をより持続可能にしていくこと」。FUJITSUコラボレーションラボでは、その実現のために、テクノロジー、サービス、業種ナレッジを垂直統合したサービスを創造するべく、2種類の「ローカル5Gパートナーシッププログラム」を展開している。1つは、各種センサーやカメラ、IoTゲートウェイ等のネットワークにつながるデバイス・製品の「接続検証プログラム」。もう1つは、富士通の技術やノウハウをベースに、パートナー企業の製品やサービスを統合してビジネスや社会の課題解決を図る「ソリューション共創プログラム」だ。

FUJITSUコラボレーションラボの立ち上げに関わった、富士通株式会社 5G Vertical Service事業部 シニアディレクターの上野知行は「5G活用においては、人と人とのコミュニケーションだけでなく、モノとモノとのコミュニケーションにまで視野を広げなければなりません。それを企業や社会で実践的に使っていくためには、各業種における垂直統合型のサービス、つまり“Vertical Service”として世に出していく必要があります。そのためには、富士通だけではなく各業種のパートナー企業との共創が不可欠です」と語る。
パートナー企業は、ラボを利用することで、ローカル5Gを使った様々なサービスのPoC(概念実証)が可能だ。具体的なメリットはどこにあるのか?

富士通株式会社
5G Vertical Service事業部
シニアディレクター 上野知行

  • ラボにはローカル5Gの最新システムやエッジコンピューティング用サーバ(右)が設置され、クラウド連携も可能な状態になっている。

  • 4Kカメラやネットワークカメラ、各種5Gモバイル端末・エッジ端末もPoCに利用できる。

最先端のローカル5G設備利用に加え
富士通エキスパートのサポートが得られる

FUJITSUコラボレーションラボでは、5Gシステムにエッジコンピューティング、クラウド連携など、常に最先端の設備が整ったローカル5G環境での実証が行える。またキャリア5G環境も活用することができ、各業種における現場状況を再現しながら、利用周波数帯や映像分析技術などを自在に組み合わせ、実用化に向けた検証がスピーディーに、かつ繰り返し行えるのが最大の利点だ。
さらにパートナーシッププログラム参加企業にとっては、5G実証環境に必要な初期投資がカットできるだけでなく、5Gに精通した富士通エンジニアのサポートも受けられるため、自社で専門家を探したり雇ったりするコスト負担も軽減できる。Vertical Serviceの共創に向け、最大限に注力できるわけだ。
2022年からは実証できる区画が増設されたため、同時に2社のPoC実施が可能になった。これにより、ラボでパートナー企業同士が出会い、新たなコラボレーションが生まれる可能性も高まったと言える。

  • 拡張された区画。奥に見えるのは「FUJITSU Network PW300」スターターキット(右)を収容したサーバーラック。

上野の後を継いで、2022年4月からFUJITSUコラボレーションラボを統括する富士通株式会社 5G Vertical Service事業部 シニアディレクターの永井一嘉は「こうしたリアルな共創の場があればこそ、新しいモノやアイデアがより生まれやすい。FUJITSUコラボレーションラボでは常に最新の環境を整え、パートナー企業とともに新しい価値を生み出していくサイクルを加速していきます」と決意を述べた。

FUJITSUコラボレーションラボの設立以降、2022年5月現在では50社以上の企業がパートナーシッププログラムに参加している。当初は富士通のビジネスパートナー企業に声をかけていったが、現在は幅広くプログラムへの参加を受け付けている状況だ。参画しているパートナー企業の傾向について永井は「このソリューション共創プログラムは、最終的には市場投入を目指しています。ですので、そういった強い意思があり、かつ共創に生かせる独自のテクノロジーをお持ちの、各産業におけるスペシャリストの企業様が多くなっています」と説明した。

富士通株式会社
5G Vertical Service事業部
シニアディレクター 永井一嘉

エッジ-クラウド連携などの
ローカル5Gソリューションが続々と実用化

FUJITSUコラボレーションラボが開設された2020年3月以降、すでにいくつもの共創が実現している。その1つが2021年12月に提供を開始した「プライベートワイヤレスマネージドサービス エッジ&クラウドモデル」だ。
日本マイクロソフトとの共創で実現したこのソリューションは、ローカル5Gを用いて現場で収集したデータをエッジコンピューティングで分析し、現場のデバイス制御に用いると同時に、クラウド上にも共有できる仕組みである。
「例えば製造業において、工場に設置したカメラの映像を取り込んでエッジで分析をし、その結果を基にデバイスを制御、同時に経営判断のためのデータ可視化をクラウド側で行うことができます。市場投入第1号のソリューションとなりました」(上野)
他にも、トレンドマイクロとともにIoTデバイスとネットワークにおけるセキュリティ運用の効率化を実証。ローカル5Gコアシステムにトレンドマイクロのセキュリティソリューション(Trend Micro Mobile Network Security™)を実装し、システム内で起こり得るサイバー攻撃に対処する「ローカル5Gセキュリティシステム」も実用化した。

  • 「ローカル5Gセキュリティシステム」では、接続中のすべてのデバイスの状況を把握できる。

2021年度から映像分析のスペシャリストがラボに合流

FUJITSUコラボレーションラボでは、新たなメンバーも加わり現在約10名体制でパートナー企業との共創に取り組んでいる。
永井は「現在特に力を入れているのがローカル5Gの特性を生かせる映像分析の分野です。そこで、これまで富士通で映像の研究を行ってきたメンバーにも、昨年度からラボのチームに参加してもらっています」と話す。
現在ラボでは、構内に設置したカメラの映像を取得・分析し、ローカル5Gネットワークを用いてセンチメートルレベルの精度で無人搬送車を制御する実証実験をアキュイティーとともに行っている。これは高精度GPSが使えない屋内では実現できなかった精度だ。
上野は、「あらゆる自動化が進むスマートファクトリーでは、これまでとは次元が異なる緻密な制御が必要になってくるでしょう。このようにラボでは、パートナーが自社や顧客の工場で行っている作業を模擬的に再現してみて、それをセンシングして、作業の効率化や機械の自律運転などに応用する検証が実践的に行えるのです」と説明した。
映像分析によって、人の動線を追跡・分析するPoCも可能だ。その仕組みを工場の作業工程に応用すれば、無駄な動線の発見・排除や、人の作業を代替するロボットの開発につなげていくことができる。社会課題となっている技能継承や労働人口不足に対しても有効なソリューションとなりうるだろう。

  • カメラの俯瞰映像を分析することで、無人搬送車の高精度な制御を実現。

5Gソリューションによって持続可能な社会に貢献

FUJITSUコラボレーションラボの現在進行中の取り組みのひとつが、2022年3月に発表した、富士通、NTTドコモと、パソコンなどの開発・販売を行う富士通クライアントコンピューティング(FCCL)の3社による共創プロジェクトだ。富士通とFCCLはローカル5G対応のノートPCを提供しているが、ローカル5Gのエリア内でしか活用することができないという課題があった。そこで、製造現場の多拠点化対応や製造業サプライチェーンの全体最適化のために、ローカル5Gとパブリック5Gの両方にシームレスに接続できる5Gネットワークとデバイス開発(ノートPC)を行っている。
「アプリケーションがいつでも継続して使えるのは重要ですので、個別のサイトではローカル5Gを使いながら、そこを離れたらパブリック5Gと、どこに行っても5Gが使える環境を示していきたいと思っています。例えば、工場の敷地内ではローカル5Gで精密なトラックの自動運転を行い、公道に出た後はパブリック5Gを用いて制御する、といったユースケースも想定されます。テクノロジーは高度であっても、それを使う皆様にはシンプルに提供して喜ばれることが我々の価値であり、ミッションです。Vertical Service が最終的に目指すものは、新たなスタンダードの構築とも言えるでしょう」(上野)
コロナ禍によって、オンラインサービスにつながるネットワークの重要さが浸透した。新しい日常において人々の生活を便利に、豊かにするためにも、5Gやその先の6Gのネットワークが与える影響は大きくなる。FUJITSUコラボレーションラボのこれからの取り組みについて永井は「ネットワークの高度化は、ビジネスやライフスタイルに大きな影響を与えます。しかしながら、5Gを使った新たな市場の創造は簡単ではありません。そのためにも我々はこのラボの“開かれた運営”を目指し、先端のPoC環境とスペシャリストによる開発サポートを提供し続けていきます。何かアイデアがひらめいたという方は、ぜひ私たちにお声がけください」と締めくくった。

  • 新たなイノベーション創出に向け、FUJITSUコラボレーションラボはパートナー企業と共創を続けていく。


5Gに関するお問い合わせ

「5G」に関するお問い合わせ・ご相談

Webでのお問い合わせ

お電話でのお問い合わせ

ページの先頭へ