温室効果ガス観測技術衛星「いぶき」(GOSAT)観測データ処理運用システムの開発

世界の二酸化炭素(CO2)、メタンなどの温室効果ガスの大気中濃度は、1750年以降の人間活動の結果大きく増加し、地球温暖化が進み、集中豪雨、干ばつなどの異常気象や、氷床減少による海面水位の上昇、生物の生息地、生息数の変化などがIPCC(Intergovernmental Panel on Climate Change)第4次評価報告書で報告されています。地球温暖化の原因である二酸化炭素(CO2)やメタンなどの温室効果ガスの監視、削減施策が世界的な課題となっており、日本ではGOSAT(注)プロジェクトを進めています。

  • (注)
    GOSAT:Greenhouse Gases Observing Satellite
温室効果ガス観測技術衛星「いぶき」(GOSAT)
温室効果ガス観測技術衛星「いぶき」(GOSAT)

導入の背景

温室効果ガス観測技術衛星「いぶき」(GOSAT)は、気候変動枠組条約への貢献などを目的とした衛星で、2009年1月23日、種子島宇宙センターから打ち上げられ順調に飛行を続けています。主要な温室効果ガスである二酸化炭素(CO2)やメタンの濃度分布を宇宙から地球全体に亘って高精度、高頻度で観測する世界初の衛星です。

本プロジェクトは、宇宙航空研究開発機構(JAXA)様、国立環境研究所様、及び環境省様が共同で推進しており、地球温暖化に温室効果ガスなどの原因物質がどう影響するかの科学的な理解を深めるのに役立てられるとともに、将来の気候変化予測や炭素排出削減施策などの温暖化対策のための基礎情報としても活用される予定です。

当社は、本プロジェクトにおいて、国立環境研究所様と一体となり、温室効果ガスの濃度を求めるデータ処理・運用システムの開発、温室効果ガス導出アルゴリズム(計算手法)の開発等を行っております。また、温室効果ガスの全球分布や排出・吸収収支の分布、変動を推定するシステムの構築を国立環境研究所様と協力して進めています。

システム概要

システム概要図

GOSATは、Thermal And Near-infrared Sensor for carbon Observation(TANSO)と呼ばれる観測装置を搭載していします。TANSOは、「Fourier Transform Spectrometer:FTS」と、「Cloud Aerosol Imager:CAI」の2センサーから構成されています。FTSは、地表面により反射された太陽光と、地球大気や地表面から放射される光のスペクトルを観測する光の干渉を利用したセンサーで、CAIは、大気と地表面の状態を昼間に画像として観測するセンサーです。FTSで観測された光の干渉信号は、フーリエ変換と呼ばれる数学的な変換によりスペクトルに変換され、CAIからは、雲やエアロゾル関するデータが作成されます。このFTSとCAIのデータを用い、雲やエアロゾルの少ない観測点において、二酸化炭素(CO2)とメタンのカラム量(地表面の単位面積上の大気中に含まれる気体分子の総数または乾燥空気の分子総数に対する比)を算出し、次に大気輸送モデルを利用した解析により、全球における二酸化炭素(CO2)の吸収・排出量の分布と二酸化炭素(CO2)の三次元分布を推定します。

国立環境研究所様は、GOSATデータを定常的処理するGOSAT DHF(GOSAT Data Handling Facility)の施設を研究所内に整備しました。GOSATで観測されたデータは、JAXAで受信・一次処理が施された後、つくば地区の高速ネットワーク(つくばWAN)を通じてGOSAT DHFに配信されます。GOSAT DHFでは、配信されたGOSATデータと国内外の関係機関から収集した参照データを使い、二酸化炭素(CO2)とメタンのカラム量の算出および全球における二酸化炭素(CO2)の吸収・排出量と三次元分布の推定を外部の計算機センターとも連携しながら行います。富士通エフ・アイ・ピーは、GOSAT DHFで稼動するデータ処理運用システムの開発と温室効果ガス濃度導出手法の開発を担当しています。富士通エフ・アイ・ピーは、これまでにも衛星搭載オゾン層観測センサーである、ILAS、ILAS-IIのデータ処理運用システムの開発、導出手法の開発、その他各種研究支援を行っており、GOSAT DHFの整備にも、これら環境・大気分野ノウハウと経験を活用しています。

貢献分野

本システムにより、二酸化炭素(CO2)とメタンの全球分布、排出・吸収の収支、地理的分布とその季節・年々変動等を知ることができ、その基礎情報は、将来の気候変化予測の高度化や炭素排出削減施策等への温暖化対策に貢献するものと期待されています。

データ処理の手順
[出展元:独立行政法人 国立環境研究所]

[データ処理の手順]

  1. FTSの観測干渉光をFFTによりスペクトルデータへ変換し、視野内に雲がないものをCAI画像等を用いて選びます。
  2. 次に、選んだスペクトルデータに逆推定と呼ばれる数値計算手法を用いCO2、CH4のカラム量を算出します。
  3. CO2、CH4のカラム量を週、月毎に平均し、全球のCO2、CH4のカラム量のマッピングを行います。
  4. 全球を亜大陸スケールの多数の領域に分割し、全球にマッピングされたCO2、CH4のカラム量等のデータを用い、大気輸送モデルに基づいて逆推定を行い、各領域のCO2、CH4の収支(吸収・排出量)を推定します。
  5. CO2、CH4の収支分布と大気輸送モデルを用いて、全球におけるCO2、CH4の三次元分布を推定します。

お客様

機関名独立行政法人 国立環境研究所 様
所在地つくば市小野川16-2
事業内容地球環境保全、公害防止、自然環境保護などに関する調査、研究および環境保全に関する知識の普及など
お客様ホームページhttp://www.nies.go.jp/
GOSATホームページhttp://www.gosat.nies.go.jp/
環境配慮ソリューション

富士通グループは、グリーンITによりお客様・社会の環境負荷低減に貢献します。

温室効果ガス観測技術衛星「いぶき」(GOSAT)プロジェクトデータ処理運用システムは、富士通の「環境配慮ソリューション」登録事例です。

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