プレスリリース (サービス)
2021年6月22日
富士通Japan株式会社


新型コロナウイルス治療薬開発に繋がる感染阻害分子機構の解明へ

東大先端研山下特任准教授と共同でスーパーコンピュータ「富岳」を活用したIT創薬の研究を本格的に開始

富士通Japan株式会社(本社:東京都港区、代表取締役社長:砂田 敬之、以下、当社)は、東京大学先端科学技術研究センター(所在地:東京都目黒区、所長:神崎 亮平、以下、東大先端研)山下 雄史特任准教授(以下、山下特任准教授)と、新型コロナウイルスの感染を阻害する分子機構を解明するとともに、それらを用いた新型コロナウイルス治療薬の候補となる低分子阻害化合物(以下、阻害化合物)を獲得し、低分子治療薬の開発に繋がるスーパーコンピュータ「富岳」を活用した共同研究を2021年6月22日から本格的に開始します。

本共同研究では、阻害化合物の創出技術と分子の状態を精緻に表す分子シミュレーション技術を中核とするIT創薬技術を用いて、ウイルスタンパク質の動的挙動に基づく阻害化合物の獲得や将来の変異株の性質予測に向けた計算を「富岳」で行います。「富岳」を活用することで、分子シミュレーションによるウイルスタンパク質の解析や阻害化合物の設計を加速し、これまで困難とされていたウイルスタンパク質と阻害化合物の結合状態や相互作用を解き明かすとともに、早期に治療薬に繋がる阻害化合物の獲得を目指します。

当社は、東大先端研山下特任准教授との共同研究を通じて、分子シミュレーション技術とスーパーコンピュータの相乗効果を高め、新型コロナウイルス治療薬の早期開発を支援するとともに、全ての人が安心して暮らせる社会の実現に貢献していきます。

背景

当社は、2011年から東大先端研と共同で、抗がん剤などの候補となる低分子化合物を創出するIT創薬技術の研究に取り組んでいます。新型コロナウイルス感染症の感染拡大を受けて、感染予防、まん延防止に向けた新型コロナワクチン接種が進められる一方で、有効な治療薬も待ち望まれており、両者がこれまで共同で取り組んできた研究の成果として得られたIT創薬技術をもとに、新型コロナウイルス治療薬の開発に繋がる阻害化合物の獲得に向けた共同研究を、2021年6月22日から「富岳」を活用して本格的に開始します。

共同研究について

1. 共同研究の内容

両者は2011年から、ペプチド(中分子)医薬、抗体医薬、核酸医薬、細胞医薬などに比べ、飲み薬として服用できる可能性が高く、化学合成が可能で製造コストが低い、低分子医薬の共同研究を行っています。その研究成果である阻害化合物を獲得するための分子シミュレーション技術を活用し、少量の服用で効能が得られ副作用のリスクを軽減できる新型コロナウイルス治療薬の開発に繋がる阻害化合物の獲得を目指します。
阻害化合物においては、ウイルスタンパク質に強く結合し、その状態を維持できる分子構造を創出することが大変重要となるため、三次元構造モデルの構築から感染阻害の分子機構の解明、さらには変異株の性質予測まで幅広く、分子シミュレーション技術と「富岳」を活用した共同研究を行います。

(1)治療薬の開発に繋がる感染阻害の分子機構を解明

  1. 感染阻害の分子機構の手掛かりとなるウイルスタンパク質と阻害化合物が結合した三次元構造モデルを生成
    新型コロナウイルス由来のウイルスタンパク質のどこに分子が結合できうるか候補となる領域を探索したうえで、各候補領域に対して、阻害化合物がどの位置にどのような向きで結合できるかをドッキングシミュレーション注1により探索し、ウイルスタンパク質と阻害化合物が結合する状態の候補を導き出し、その三次元構造モデルを生成します。

    図1 ウイルスタンパク質と阻害化合物のドッキングシミュレーション図1 ウイルスタンパク質と阻害化合物のドッキングシミュレーション
  2. ウイルスタンパク質と阻害化合物の三次元構造モデルの動的な振る舞いを追跡し、体内での効果を検証
    体内の生理的な条件に近い環境下においても、ウイルスタンパク質と阻害化合物の結合した状態が安定的に存在できるかを確認するため、分子動力学シミュレーション注2を用いて三次元構造モデルの動的な振る舞いを追跡し、効果を検証します。これらのシミュレーションから得られる分子レベルでのミクロな描像より、東大先端研山下特任准教授からの学術的アドバイスのもとで感染阻害の分子機構を明らかにし、さらにウイルスタンパク質と阻害化合物の相互作用に関する知見を得ます。
    当社は、ここで得られた知見に基づき、薬としての分子の改良につながる情報を抽出するとともに、それらの分子構造を最適化することで低分子治療薬の早期獲得を目指します。

    図2 ウイルスタンパク質と阻害化合物の分子動力学シミュレーション図2 ウイルスタンパク質と阻害化合物の分子動力学シミュレーション

(2)将来の変異株にも有効な治療薬を目指し、変異株の性質予測を可能にするシミュレーションを実施

  • 新型コロナウイルスのように変異株が発生してもその性質をシミュレーションで予測し、すぐに変異株の特効薬の開発に繋げられるプロセス確立を目指し、変異株の性質予測を実施します。ウイルスタンパク質のアミノ酸配列に変異を加えて、その振る舞いを「富岳」でシミュレーションすることにより、アミノ酸の変異がウイルスタンパク質の構造や働きにどのような影響を及ぼしうるか、阻害化合物との結合にどのような影響を与えるかを解析します。
図3 変異株の性質予測図3 変異株の性質予測

2. 期間:2021年6月22日から2022年3月まで

3. 場所:東京大学先端科学技術研究センター内富士通分室

商標について

記載されている製品名などの固有名詞は、各社の商標または登録商標です。

注釈

  • 注1
    ドッキングシミュレーション:
    タンパク質とそれに結合する可能性のある化合物の複合体構造を予測する技術。
  • 注2
    分子動力学シミュレーション:
    分子を構成する原子同士の間に働く力を、時間を追って計算することで、物質の形状変化や、エネルギー量などを計算する技術。タンパク質などの分子量の大きい物質を生体の環境を考慮して厳密に扱うには、大規模なスーパーコンピュータが必要となる。

関連リンク

当社のSDGsへの貢献について

2015年に国連で採択された持続可能な開発目標(Sustainable Development Goals:SDGs)は、世界全体が2030年までに達成すべき共通の目標です。当社のパーパス(存在意義)である「イノベーションによって社会に信頼をもたらし、世界をより持続可能にしていくこと」は、SDGsへの貢献を約束するものです。

本件が貢献を目指す主なSDGs

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