量子コンピューティング技術の活用

不確実性の時代、企業が直面する課題は
実用化段階に入ったデジタルアニーラで解決

  • 2021年3月22日

世界情勢の変化、自然災害の発生、新型コロナウイルス感染症の感染拡大など不確実性がますます高まる中、企業が直面する課題はより複雑に、より深刻になりつつあります。製造、物流、金融、創薬など、さまざまな業種における課題は一見すると業種特有ですが、じつは、その多くが「組合せ最適化問題」への取り組みで解決できます。富士通が開発した「組合せ最適化問題」に特化したデジタルアニーラは「第三世代」へと進化し、すでに実用化段階。多くの企業の課題解決に活用されています。その事例をご紹介します。

実用化段階に進化したデジタルアニーラ

不確実性の時代、企業は予期せぬリスクへの迅速かつ柔軟な対応が求められています。例えば「自然災害で物流拠点が機能不全」、「世界情勢の急激な変化で投資市場が乱高下」など、変化に迅速かつ柔軟に対応するためには、組合せ最適化問題への取り組みが有効です。これは、災害復旧で代替配送手順の決定や、金融資産ポートフォリオの最適化など、さまざまな要素の組み合わせの中から最適解を導き出すアプローチで、要素が多くなればなるほど組み合わせが膨大となり、高性能なコンピュータでも現実的な時間内で最適解を算出するのが難しくなります。そこで、富士通が開発したのが組合せ最適化問題に特化したデジタルアニーラです。

デジタルアニーラは、2018年の商用化以降、より規模の大きな組合せ最適化問題に対応できるようにビット数の拡大、演算スピードの向上に取り組んできました。現在、第三世代に進化したデジタルアニーラは、これまで以上に大規模な組合せ最適化問題にも対応できるようになり、さまざまな社会課題の解決にデジタルアニーラの能力が発揮できるようになりました。

進化するデジタルアニーラ

さらに、企業においても、デジタルアニーラを活用した課題解決への取り組みが進められています。いくつかの事例をご紹介します。

【金融】
数百銘柄の金融資産ポートフォリオを約10分で作成
~メルコインベストメンツ様

金融資産ポートフォリオの最適化では実業務でデジタルアニーラを活用

投資、資産運用で重要なのはリターンとリスクのバランスです。投資先を選ぶときには、大きなリターンを求める一方で、万が一の急激な価格変動にも備えておくことが大切。その対策のひとつが、金融資産ポートフォリオによる分散投資です。

最適な金融商品を組み合わせてポートフォリオを選定するには、時々刻々と変わる企業の財務状況や市場動向を迅速に分析、判断して、金融商品の構成比率を検討しなくてはなりません。しかし、金融資産ポートフォリオは扱う銘柄の数だけ組み合わせも膨大になります。

その金融資産ポートフォリオの最適化にデジタルアニーラを活用したのが、メルコインベストメンツ様です。従来、金融資産ポートフォリオの最適化には売買単位や目標銘柄数に詳細に対応できる「整数計画法」という手法が適しているとされていましたが、100銘柄から50銘柄を選ぶだけでも「10の29乗」という天文学的な数の組み合わせが生じます。従来のコンピュータでは手に負えず、「実質的に不可能」とされていました。

その突破口を開いたのが、デジタルアニーラです。デジタルアニーラを活用すれば、数百にも上る銘柄から最適な組み合わせを選ぶのにかかる時間はわずか10分程度。不可能と思われていた整数計画法による金融資産ポートフォリオの生成が可能となったのです。

これは、金融分野での実務における初めてのデジタルアニーラの適用ケースとなりました。そして、デジタルアニーラは現在、日々の業務において活用され、投資、資産運用に生かされています。

【物流】
大規模な物流ネットワークにおける最適ルートを30分で探索
~トヨタシステムズ様

物流ルート最適化で2~5%のコスト削減

デジタルアニーラを活用した実証実験も進められています。物流分野で実証実験を行っているのが、トヨタシステムズ様です。

トヨタシステムズ様では、ある地域の数百か所を超える部品メーカーから自動車の部品を仕入れ、点在する複数の中継倉庫で集積・管理、さらに数十か所の組立工場へと配送しています。ときには、部品メーカーから工場への直送や、中継倉庫から別の倉庫に運ぶこともありました。

この巨大な物流ネットワークにおいて、部品を仕入先から中継倉庫を経由して組立工場まで運ぶのに最適な物流ルートをどう決定するか。実際には数百を超える仕入先から部品を仕入れ、数カ所の中継倉庫を経由して数十の工場に配送しています。仮に部品の仕入先が20カか所だったとしても、物流ルートは「243京」通りにもという天文学的な数に達します。最も物流コストが小さくなるルートを算出するには、トラックの台数、総走行距離、荷物仕分けの作業量も考慮しなくてはなりません。そのため、専門の担当者でも最適ルートを作成するのに、数か月もの時間がかかっていたのです。

ところが、デジタルアニーラを活用したところ、わずか30分で最適な物流ルートの計算を終えることができました。

その効果は、単に物流ルート選定にかかる時間を短縮したことにとどまりません。物流ルートを最適化することで、ドライバーの人数、トラックの台数、走行距離、仕分け作業を含めた物流コストが2~5%削減できるという効果も見込まれています。

さらに、同社では今後、実際の物流業務に適用することを目指し、さらなる検証と実用化を進めていきます。

【製薬】
中分子分野でのIT創薬が現実味
高速かつ高精度に中分子医薬品候補化合物の探索を実現
~ペプチドリーム様

新薬の開発スピードアップにデジタルアニーラが貢献

デジタルアニーラをIT創薬の分野で活用したのがペプチドリーム様です。一般的に新薬の開発では、薬として利用できそうな化合物の候補が膨大にあるため、実験を通して効果や安全性を確かめ、医薬品として利用できる候補を絞り込まなくてはなりません。そのため、ひとつの医薬品を生み出すまでに十年以上の開発期間、1000億円以上のコストがかかるとされています。

特に、候補を絞り込む段階では、化合物の安定構造を探索する必要があり、研究や実験を通して探索するのに多くの時間を費やしていました。そこで、効率化のために、コンピュータによるシミュレーションで化合物の安定構造を見つけるIT創薬が進められ、近年では副作用リスクが低いとされる中分子を用いた創薬が注目されています。しかし、低分子では配列種類が4200であるのに対し、中分子の配列は1600京と桁違いに多く、あまりの計算量に、中分子でのIT創薬には時間がかかってしまうことが課題となっていました。

不可能とされていた中分子化合物の安定構造をデジタルアニーラで探索

こうした状況の中ペプチドリーム様では、中分子のアミノ酸間の相互モデルを作り、その安定構造をデジタルアニーラで探索。その結果、わずか一晩で安定構造を見つけ出すことに成功しました。従来、数週間から数か月に及ぶような実験を必要としていた作業を大幅に効率化し、時間短縮したのです。

これにより、中分子におけるIT創薬がさらに進展していくといえるでしょう。現在(2021年)、新型コロナウイルス感染症の感染拡大を抑えるための治療薬が求められていますが、新しい次元に進んだIT創薬により、新薬開発がさらに加速すると期待されています。

デジタルアニーラは進化を続け、ビジネス適用範囲のさらなる拡大へ

組合せ最適化問題への取り組みは、ここで紹介した金融、物流、製薬以外にも、医療やヘルスケア、製造、送電、自動運転、マーケティングなど、多種多様な業種、さまざまなビジネス、業務が抱えている課題を解決できる可能性を秘めています。しかし、それらの課題は、従来のコンピュータには解決が困難なものでした。

デジタルアニーラの活用が期待される分野

こうした課題に対し、実用レベルで答えを導き出せるのがデジタルアニーラといえます。2018年に商用サービスを開始して、すでに3年が経過しています。かつて、不可能といわれていた組合せ最適化問題の解決は、決して未来の話ではありません。
そして、今後もより大規模な組合せ最適化問題が解けるようデジタルアニーラは進化を続けます。

進化を続けるデジタルアニーラで社会課題を解決

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