株式会社 北海道日本ハムファイターズ 様

ファンとのつながりを強くするチケッティングサービスで、スポーツをより身近に、より楽しく。

株式会社北海道日本ハムファイターズ(以下、ファイターズ)は、「スポーツと生活が近くにある社会=Sports Community」の実現を理念とし、さまざまな活動を行っている。
中でもファイターズのコア業務である主催試合のチケット販売においては、この球団理念を達成するため、顧客のニーズを捉えた時流に沿ったチケッティングサービスの提供が求められていた。そこでファイターズと富士通は、新しいサービスの共創を始めることになった。

ビジョン

世界初のチケッティングサービスを目指してプロジェクトを始動

現在、ファイターズは札幌ドームを中心とした主催試合において、多くのファンの来場を得ている。しかしながら、新規顧客層へのアプローチを中心としたファンの裾野拡大には課題を抱えている状態であった。
すなわち、既存のチケット販売スキームでアプローチができていない新規顧客層に対して、販路の多様化も含めて魅力的なサービスを提供すること、さらに今後急速に発展するデジタル社会に向けての対応も求められていたのだ。
そのためには柔軟かつ拡張性の高いアーキテクチャーで支えられたシステム基盤が不可欠で、ファイターズの「More Service, More Sales, Less Operation」の基本方針にも則った新しいチケッティングサービスの定義と創造が必要となった。

バリュー

多様な観戦スタイルを実現し、新たな観客層を呼び込む魅力づくり

株式会社 ファイターズ スポーツ&エンターテイメント 
                        事業統括本部 ファシリティ・リレーション部 ボールパークデザイングループ ICTシニアアドバイザー 森岡裕史 氏 株式会社 ファイターズ スポーツ&エンターテイメント 事業統括本部 ファシリティ・リレーション部
ボールパークデザイングループ ICTシニアアドバイザー 森岡裕史 氏

ファイターズが2004年に北海道に誕生して以来、集客状況は順調に見える。しかし同社の事業統括本部 ファシリティ・リレーション部 ボールパークデザイングループ ICTシニアアドバイザーの森岡裕史氏は、「スポーツ観戦が多様化し、野球ファンの人口が減ってきたと実感しています。ファイターズは年間約200万人に来場していただいていますが、年齢層が高くなってきていることも問題視しています」と課題を率直に語る。

新しいチケッティングサービスは従来の野球ファンに加え、まだ野球観戦に来たことのない若い世代にもフォーカスを当てるもの。このチケットを買うという、観戦における最初の行動においてファイターズは新たな取り組みを進めた。

若い世代にフォーカスし、スマートフォンベースの新たなチケット購入体験を

従来のプロ野球を始めとするスポーツ業界のチケット販売は、球団の直販あるいはプレイガイド販売が主で、顧客の購入場所が限られ、チケットの選び方も難しいものだったという。購入方法も店頭やパソコンが中心で認証方法や購入プロセスも長く、実際にチケット購入までたどり着かないことも多いという現実もあったようだ。

加えて近年では、若年層の購入環境がスマートフォン中心に変化してきている。この世代に興味を持たせるために、ファイターズは野球観戦のチケットにおいて「新しい購入体験」を採り入れようと考えた。

「自分が望む座席のチケットを簡単に買える、ということが非常に重要なポイントです。チケットを入手してスタジアムに足を運んで観戦し、野球だけではなくグルメやイベントなどの体験をし、家に帰っていただく。これを全体的な購入体験と捉え、その顧客が何度も訪れてくれることでもたらされる生涯価値を最大化することを狙っています」(森岡氏)

この施策を実現するため、ファイターズと富士通は今までにない新しいチケッティングサービスの開発に取り組んだ。

チャレンジ

チケット購入が楽しいと思えるサービスを共に創り上げていく

スポーツ業界でのチケット購入環境を、もっと時流に合わせたサービスに変えるという課題を解決するため、ファイターズと富士通が目指したチケッティングサービスは、購入者の買いやすさを最優先に考え、大胆に購入ステップをシンプルにしたものだ。

富士通の流通ビジネス本部 情報・コンテンツ統括部 第一ビジネス部 マネージャーの中川絢太は、「新しいチケッティングサービスは、初めてのお客様でも簡単に買えるように、購入プロセスを最大限にシンプルにしました。そして席種を選ぶ際にも、席からの観戦イメージを提示することで、席を選ぶ楽しさを提供しています」と話す。

富士通株式会社 流通ビジネス本部 情報・コンテンツ統括部 第一ビジネス部 マネージャー 中川絢太 富士通株式会社 流通ビジネス本部 情報・コンテンツ統括部 第一ビジネス部 マネージャー 中川絢太

初めて買う人には易しく、既存のファンの多彩なニーズにも応える、究極の便利さ

プロ野球のチケットを買う際には、対象試合の選択、席種の選択、そして決済という最低でも3つのステップが必要だが、初めて買う人にとっては難しいものだという。

中川は「この3ステップをどうすれば初めて買うお客様にも使い心地の良い、ユーザビリティーのあるシステムが実現されるかを、ファイターズ様と一緒に考えて、システム設計を行いました」と開発の経緯を語る。

また、野球ファンの多彩なニーズに応えるため、チケット購入後の隣席追加購入や変更、公式リセール、シーズンチケット電子販売、予約販売といった機能を段階的に持たせて、より多くの人に簡単かつ便利にチケットが買える機会が設けられていく。

球団に新たな販売機会の創出と、業務の大幅な効率化を実現

このシステムはチケットを販売する球団にとっても、チケット購買率の向上と空席の販売機会創出、席の自動割り当てによる配席業務の大幅な効率化といったメリットがある。

「配席業務の負荷が軽減され、さまざまなリクエストに対する最適な席の配置が自動的に行われるので、販売機会を損失することなく、効率的なチケット販売を実現することができます」(中川)

これらの機能に関しては、ファイターズと富士通は約半年にわたって「あるべきチケッティングシステム」の議論を重ねた。さまざまな課題や要望に対し、「例えばホテル業界、航空業界ならどうなのかということをベンチマークしたうえで、配席業務はこうあるべきだと考え、このシステムの自動配席機能にたどり着きました」と中川は続ける。

ファイターズと共に目指した姿は、「今までにないサービスを一緒に作ろう」ということ。従来のシステム開発では、顧客の要件に従って受託開発をするスタイルが主流だが、今回の取り組みにおいては顧客も確固たる要件を持っていなかったのも特徴的だ。

新たなファンとのつながりや街づくり構想を共に目指して

「今回、富士通はファイターズ様が目指す新たなファンとのつながりや、『新たな街づくり構想』に共感し、『世界に類をみない新たなサービス』に挑戦しました。一緒に要件を考え、あるべきものを同じベクトルで見ながら、時流に沿ったサービスを提供し続けるということを目指しました」(中川)

ファイターズは2020年のシーズンよりこのシステムを「Fチケ」と呼称(富士通サービス名称は「チケットレボリューション」)してサービスを開始。今後も新たな機能の追加が予定され、スマートフォンを手にして購入体験を楽しむ新たなファン層の開拓が期待されている。

今後の展望

共創ビジネスで、「世界がまだ見ぬスポーツ観戦の形」を実現していきたい

今回のチケッティングサービス開発は、従来のようなシステムの受託開発ではなく「レベニューシェア」という、富士通にとっても新たな取り組みでもある。

「顧客の要件に従って開発をするだけでは、スピード感や求められる品質に追いついていくのが難しいという課題がありました。顧客が何を求めているのかを一緒に考え、率先してサービス機能を提供していくためには、自分たちで考えてサービスを提供していく必要がありました」(中川)

「レベニューシェア」とは成功報酬型の契約形態で、顧客と受託側がリスクを共有し、利益をあらかじめ決められた配分率で分け合うことだ。

森岡氏は、「売り上げをシェアするということは、良い物を作っていくことにつながります。そこで初めて本当の意味での共創ビジネスとして、スポーツ業界のチケッティングサービスの変革に本気で取り組めると考えました」と取り組みの意義を語る。

ファイターズと富士通は、ビジネスとテクノロジーの両面で、これからも既成概念や固定概念にとらわれない、「世界がまだ見ぬ新しいスポーツ観戦の形」を作っていく。

株式会社 北海道日本ハムファイターズ 様

所在地 北海道札幌市豊平区羊ヶ丘1番地
設立 2003年8月8日
代表者 代表取締役社長 川村浩二
ホームページ https://fighters.co.jp/新しいウィンドウで表示
概要 プロ野球パシフィック・リーグに所属する球団。2003年8月に旧日本ハム球団から球団経営権を引き継ぎ、本拠地を東京から北海道に移す。企業理念に「Sports Community」を掲げ、地域社会の一員として共生を進め、スポーツと生活が近くにある社会の実現を目指している。

[2020年11月掲載]
※記事中の所属部署・役職は2020年4月現在のものです

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