あいおいニッセイ同和損害保険株式会社 様
テクノロジーで進化する自動車保険、安全・安心なクルマ社会の実現を目指して
社会情勢の変化によりドライバーが多様化したことで、安全運転をサポートする保険と、事故時のよりきめ細やかな対応へのニーズが高まっている。一方、事故時の状況把握や示談交渉では、ドライバーなどからヒアリングした事故場所・状況などの情報に基づいて処理を進めなければならず、時間がかかるという課題があった。
あいおいニッセイ同和損害保険と富士通は、これらの課題を改善するとともに、「モビリティ社会における事故を起こさない世界の実現」というビジョンのもと、テレマティクスを活用した新たな事故対応サービスの導入を進めている。
ビジョン
クルマ社会の変化や顧客ニーズに合わせた新たなモビリティサービスへ
車両の安全性向上などの交通安全対策の取り組みにより、交通事故の件数は減少。一方で、ドライバーが多様化したことにより事故発生時にはより細やかな対応が求められ、夜間や休日でも平日と同等の事故対応サービスを受けたいというニーズも高まり、損害保険会社に求められるサービスに変化が生じている。
このような状況下、あいおいニッセイ同和損害保険では、若い人からお年寄りまで、誰もが快適に自動車を運転できる「安全・安心なクルマ社会の実現」を目指し、「テレマティクス自動車保険」に付随するサービス内容の拡充を進めている。
テレマティクスとは、「テレコミュニケーション」と「インフォマティクス」を組み合わせた造語で、カーナビゲーションシステムやGPSなどの移動体通信システムを利用したサービスの総称だ。
「テレマティクス自動車保険では、テレマティクス情報を活用した社員による示談交渉サービスを24時間365日行い、高度な事故対応サービスの提供を目指しています」(取締役専務執行役員 樋口昌宏氏)
車両に取り付けられた専用のドライブレコーダーから得られるデジタルデータを活用するこのサービスには、富士通を始めとしたパートナーと共に開発した先進的な技術が採用されており、革新的かつ高度な事故対応サービスが可能となる。
課題
事故当事者からの主観的な情報による示談交渉の限界
交通事故を起こしてしまった場合、ドライバーは負傷者の救護措置、危険防止、警察への届出、事故相手の確認に加え、損害保険会社に連絡する必要がある。
この際、損害保険会社に伝えられる情報はドライバーの主観によるものとなっている。その様子を損害サービス業務部長の佐藤満氏は、「お客さまは事故を起こしてご連絡されていますので、動揺されていることもあり、事故の状況をご説明いただいても、私どもが同じように認識することが難しい場合があります」と語る。
「私どもも正しい情報を伺えないと、示談交渉や保険金のお支払いについて正しくお話をすることが難しくなります。これは我々だけではなく、お客さまにも相当なご負担をおかけしておりました」と佐藤氏は続ける。損害保険会社はドライバーが見たことや記憶しているだけの主観的な情報を元に事故の状況を把握するため、相手方との示談交渉に時間を要する場合があるという。
自動車のコネクテッド化や自動運転社会の到来など、自動車業界を取り巻く環境も変革期を迎えており、自動車保険も進化する必要があったのだ。
解決策・価値
テレマティクス技術で事故状況把握の自動化が可能に
あいおいニッセイ同和損害保険は、2004年に日本初の実走行距離連動型保険を発売するなど、日本国内でいち早くテレマティクス自動車保険の開発を進めているリーディングカンパニーだ。
テレマティクス技術の活用は進化を遂げ、同社は2019年4月から業界初となるテレマティクス技術を活用した事故対応システム「テレマティクス損害サービスシステム」の提供を開始した。「テレマティクス情報の可視化」や「事故検知の高度化」からサービス提供を順次開始し、今後は「相手車両・周辺環境を含む事故状況の把握」「過失割合の判定サポート」といったステップに進む予定だ。(2020年2月時点)
富士通はこのサービスの実現に向けて、デジタルデータを事故対応に活用する土壌や文化を醸成するという意識を共有し、共に取り組んでいる。
「テレマティクス自動車保険では、事故を自動検知し、ドライブレコーダーに録画された映像が当社に送られます。加えてGPS等の情報を利用してお客さまの場所を特定することができます」(IT統括部長 沼田俊彦氏)
ドライブレコーダーのデータなどのテレマティクスデータを活用すれば、交通事故発生から自動車保険における保険金支払いを決める過失割合判定サポートまでを自動化することが可能となる。
現在、事故担当者がドライバーなどからのヒアリングにより、事故状況図の作成や過失割合に関わる要素(車両の挙動、信号の状態、相手車両の挙動など)の特定を行っているものが、ドライブレコーダー映像を解析することでより客観的、かつ確実に行うことが可能となり、事故解決のスピードが大幅に向上する。
AI画像認識と車両の位置・速度推定技術で、迅速かつ正確な事故解決へ
この「テレマティクス損害サービスシステム」には、ドライブレコーダーの映像を解析して信号の色や道路状況などを正確に判別するAI画像認識技術が採用されている。また富士通が独自にカスタマイズしたVisual-SLAM技術により、画像データから車両の位置と速度を高精度に推定することができる。
「富士通の技術によって、信号が何色だったのか、相手の車が時速何kmで走ってきたかというような情報が正確に分かります。2つの技術から得られるデータを組み合わせることで、迅速な事故解決が可能となります」(沼田氏)
この結果、ドライバーでも気づけないような事故原因や事故発生時の状況も正確に再現できるようになり、事故処理や示談交渉に必要な事故状況図の作成や過失割合の判定サポートが迅速かつ正確に行えるようになる。
これらの技術によりドライバーなどと事故担当者の負担が大幅に軽減される。同社はこのシステム導入と24時間365日事故対応サービスI’mZIDANなどを合わせ、対物賠償保険金の支払いまでの日数を50%短縮することを目指している。
今後の展望
モビリティ社会における事故を起こさない世界の実現
今回のあいおいニッセイ同和損害保険と富士通の取り組みにより生み出された成果は、「単に技術面だけの協業によるものではありません」と沼田氏は言う。
「モビリティ社会における事故を起こさない世界の実現という富士通のビジョンは、私たちと一致するものです。パートナーシップを築くためには、ビジョンを共有することが極めて大事なことだと思っています」(沼田氏)
富士通は単なる技術提供者ではなく、一緒に切磋琢磨していくことのできるパートナーであり、今後もビジョンの実現に向けた取り組みを続けていきたいという意気込みが感じられる。
「業務効率化の実現だけにとどまらず、いかに社会貢献を果たしていけるかが、パートナーシップにおいて重要なポイントです。私たちは単なる損害保険の会社ではなく、社会に対してさまざまな役割を担っていると考えています。今後もより先進的な自動車保険をご提供するなど、快適で安全な自動車社会の実現に貢献していきます」(樋口氏)
「テレマティクス損害サービスシステム」の取り組みの先には、富士通が掲げるより高度なデジタル社会の進展により実現される「モビリティデジタルツイン」がある。これは大量の車両から集まる膨大なデータをリアルタイムで分析し、リアルな世界の交通状況をデジタルの世界でタイムリーに把握するものだ。
例えばデジタルの世界での事故予測をリアルな世界のドライバーに伝えることで危険を未然に防ぎ、より迅速できめ細かいモビリティサービスが実現されるのだ。事故を起こさない社会の実現には、この「モビリティデジタルツイン」の実現が鍵となる。
あいおいニッセイ同和損害保険と富士通は、社会の変化に伴った保険商品の進化、そして新たなサービス開発に共に取り組んでいく。
あいおいニッセイ同和損害保険株式会社 様
所在地 | 東京都渋谷区恵比寿1-28-1 |
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設立 | 1918年6月30日 |
代表者 | 代表取締役社長 金杉 恭三 |
ホームページ | https://www.aioinissaydowa.co.jp/ |
概要 | 損害保険業。国内最大の損保グループ「MS&ADインシュアランスグループ」の中核事業会社で、安全・安心なクルマ社会の実現に向けてさまざまな取り組みを進めている。テレマティクス自動車保険のパイオニアとして、契約者のニーズに応える数々の商品を販売している。 |
[2020年4月掲載]
※記事中の所属部署・役職は取材当時のものです
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