株式会社富士通ゼネラル

保守部品のピッキングから出荷までの
一連の作業をシステム化
属人化を排除し、作業効率を2.5倍に

富士通ゼネラルは、修理部品の出荷作業の効率化とミスの撲滅を目指してピッキング業務のシステム化を推進。従来紙と手作業に頼っていた業務プロセスを大幅に革新し、作業効率を約2.5倍向上することができた。ミスもほぼなくなり、業務の属人化も排除。従来1週間程度かかっていた新人教育を1日に短縮できた。今後、出荷や在庫管理にもシステムを適用し倉庫業務全体の効率化を図るとともに、全国の修理拠点、さらには海外にも展開することを計画している。

課題
効果
課題保守部品出荷業務のさらなる効率化が必要だった
効果導入前に比べ2.5倍の作業効率向上を実現
課題業務の標準化ができておらず属人化していた
効果誰にでも使える仕組みを構築し、新人教育も1日で可能に
課題目視と手作業によりミスが発生していた
効果バーコードのスキャンとシステムによる照合でミスを撲滅

背景

保守部品出荷業務の効率化と
ミスの撲滅を目指しICT化に着手

空調機を中心にグローバルに事業を展開する富士通ゼネラルは、優れた製品を提供するだけでなく、保守サービスにも注力している。経営執行役 GDM推進本部長代理 内藤真彦氏は、「夏の暑い日にエアコンが故障してしまったら、命にもかかわります。そこで、できるだけ早く修理できる体制を整えています」と説明する。同社は当日出荷依頼を受けた保守部品は翌日出荷するなど、高レベルなサービスを実現していたものの、倉庫業務の多くは紙と人手に頼っており、ICT化が急務だった。内藤氏は、「当社の業務プロセスは、全体的にICT化が遅れていました。サプライチェーン全体を効率化するにはICT化が必須と考え、現在いろいろな取り組みを進めています。その1つとして、倉庫からの保守部品出荷プロセスの見直しに着手しました」と語っている。GDM推進統括部 サービス部品部 担当部長 石井浩氏も、「部品をピッキングする効率を上げるために、作業手順や棚の配置、動線など細かい改善を続けてきました。しかし、業務プロセスに目視や手作業が多く、劇的な改善は難しくなっていました」と説明する。

同社の従来の出荷業務フローは、次の通り。まず、ピッキング伝票、売上伝票、納品書、送り状の4種類の伝票を出力し、それらを付け合わせてセット。送付先の販売店によっては別途書類が必要な場合もあり、それらも付加したうえで、ピッキング伝票を見ながら部品のピッキングを行う。検品プロセスに送られた伝票と部品を再度目視で確認し、問題がなければ梱包プロセスへ。そこでも念のため伝票と部品が合致しているかを確認したうえで梱包し、発送されていた。石井氏は、「複数回の目視確認という作業効率の問題に加えて、どうしても人的ミスが起こるという課題がありました。さらに、顧客ごとの個別対応などは個人のノウハウに頼っており、作業が属人化していました。手順が複雑なため、教育にも時間がかかっていました」と語っている。

株式会社富士通ゼネラル
経営執行役
GDM推進本部長代理
内藤 真彦 氏
株式会社富士通ゼネラル
GDM推進本部
GDM推進統括部
サービス部品部 担当部長
石井 浩 氏
株式会社富士通ゼネラル
GDM推進本部
GDM推進統括部
サービス部品部
中島 崇裕 氏

経緯

画面が大きく視認性の高い
タブレットの活用を評価

保守部品出荷プロセスのICT化を模索していた同社は、ノートPCを生産する島根富士通で先進的な取り組みをしていると聞き、工場を見学した。そこでは、タブレットの画面を見ながら必要な部品をピッキングし、間違いがあるとアラートがあがるシステムで、効率よくミスのないピッキングを実現していた。その様子を目の当たりにし、同様の仕組みを導入したいと考えた。

特に気に入ったのは、タブレットを使っていた点である。「もともと、倉庫業務はハンディターミナルを使うものというイメージがありました。しかし、タブレットを使っている様子を見て、圧倒的に画面が大きくて見やすく、作業性が優れていると感じました」と石井氏は語る。

システムのメニュー画面

ポイント

業務効率化の大幅な向上と
属人化の排除を実現

同社が具体的に導入の検討を開始したのは2015年10月。11月には導入を決定し、12月から開発を開始した。空調機のビジネスは繁閑差が激しく、6~8月の繁忙期には業務量が一気に増える。その前には新システムを稼働させ、運用を軌道に乗せてから繁忙期を迎えたいと考えた。そこで、限られた期間で効果を最大化するため、まず第1次としてピッキングのみをシステム化し、2016年4月から稼働を開始。翌2017年4月には、第2次として検品と梱包までのICT化に取り組み、出荷業務全体をシステム化した。

新たな出荷業務のプロセスは次のように変化した。まず、作業者がタブレットにログインすると、棚を指定する画面が表示される。棚番号を指定すると、その棚でピッキングすべき案件のみが表示される。なお、1人が指定した棚は他の人は選べないため、同じ棚の前で複数人が作業をするといったことは起こらない。部品をピッキングしバーコードリーダーで読み取るが、万一間違った部品を選択するとエラー音が鳴り、画面でアラートが表示される。検品時には各部品に必要な伝票類が自動出力され、特殊な付属品や注意事項も画面に表示。何度も確認する必要がなくなり、誰でも間違いなく出荷できるようになった。
GDM推進統括部 サービス部品部 中島崇裕氏は、「以前はピッキングの前に伝票を出力して仕分ける必要があり、毎日30分から1時間かかっていました。それがなくなり、今はすぐにピッキングに取り掛かれます。やらなければならないことが画面に表示されるので作業の属人化もなくなり、新人でも1日程度で仕事がこなせるようになりました」と効果を語っている。

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効果と今後の展望

ミスも問い合わせもなくなり、
平均で作業効率が2.5倍アップ

保守部品出荷プロセスのシステム化により、川崎倉庫では1時間当たりのピッキング件数が従来の3.1倍に、大きいパーツが多くどうしても運搬に時間がかかってしまう大阪倉庫ですら1.7倍に向上し、平均で作業効率が2.5倍向上した。

また、従来は天候などの理由で配送が遅れると、配送先である顧客や同社の各拠点から問い合わせが入り、その度に伝票をめくって調べていたが、それがなくなったという。石井氏は、「出荷状況をコールセンターと拠点からWebで閲覧できるようにしました。その結果、倉庫への問い合わせがなくなりました」と語っている。

現場の作業者からは、「10桁の品番を伝票の細かい字で読むのはつらかったが、バーコードで読み取れば済み、負担が軽減した。画面も大きいので見やすく作業がしやすい」と好評だ。さらに、内藤氏は、「現場の人から業務が楽になったと喜ばれています。何より、現場の改善意欲が高まっているのを感じています」と語っている。

現在同社は、第3次の開発に取り組んでおり、2017年度中には、入荷と在庫管理を含む倉庫業務全体のシステム化が完了する予定だ。さらに内藤氏は、「国内33箇所のサービス拠点には、規模は小さいながら同様の倉庫があります。そこに対して、同じようなシステムを入れていきたい。また、具体的な計画はこれからですが、海外展開も考えたいですね」と抱負を語った。

株式会社富士通ゼネラル

本社所在地 神奈川県川崎市高津区末長3-3-17
代表取締役会長 村嶋 純一
代表取締役社長
経営執行役社長
斎藤 悦郎
ホームページ http://www.fujitsu-general.com/jp/新しいウィンドウで表示
事業概要 1936年創業。空調機事業を中心に、情報通信システム事業、電子デバイス事業などを手掛けている。なかでも主力となる空調機事業では、日本のみならずヨーロッパ、オセアニア、中東アフリカ、北米・中国など、世界規模で高いシェアを確立している。空気清浄機や脱臭機にも力を入れており、快適な室内環境のトータルな提供を目指している。

[2018年2月掲載]

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