エネルギー効率の追求:
富士通とArmが目指すAIの未来

2024年7月12日

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私たちは、人工知能(AI)とハイパフォーマンスコンピューティング(HPC)が最大の実現要因となる、史上最速の産業革命を目の当たりにしています。AIとHPCが社会のあらゆる面に浸透していることは間違いありません。しかし、AIがかつてないペースで人間の生活のあらゆる面を変革しているにもかかわらず、持続可能なデジタルトランスフォーメーションへのアクセスは依然として大きな課題であり、AIシステムの環境やコストへの影響は無視されがちです。

AIを活用したこの新しい世界の需要に対応するには、多くの課題が伴います。例えば大規模言語モデル(LLM)は今日の業界で最も注目されていますが、同時にLLMはそのモデル内に多数のパラメータを抱えることから、データセンターの消費電力を押し上げ、結果的に炭素排出量の最大の原因にもなっているとスタンフォード大学のレポートは指摘しています。

デジタルサービスのグローバル企業である富士通と半導体設計・シリコンIP開発のグローバルリーダーであるArmは、人を中心とした技術開発のための国際社会とのオープンな協業に注力し、世界の多様な領域で導入しやすいソリューションの構築に取り組んでいます。

電力効率の高いシステムに対するニーズの高まりを受け、富士通とArmは協力して、ハイエンドのエネルギー効率の高いコンピューティングを通じて次世代のAIアプリケーション開発エコシステムを実現します。 FUJITSU-MONAKAの研究開発は、Armv9-AアーキテクチャとScalable Vector Extension 2(SVE2)プラットフォーム向けのさまざまなAI/機械学習(ML)およびディープラーニング(DL)フレームワークの強化に重点を置いています。SVE2による大幅な性能向上は、AIおよびHPCワークロードを処理するための強力なソリューションとして浮上しています。

広く普及しているArmv9-Aアーキテクチャを採用することで、富士通とArmは、開発者がアプリケーションを容易に移植および最適化してAIエコシステムを拡大し、さまざまなユーザーや業界にとってよりアクセスしやすく手頃な価格にすることを目指しています。

持続可能性を中核に据えた次世代データセンターの設計

AIモデルの学習は基盤となるハードウェアにかなりの負荷がかかるため、エネルギー消費量が増加します。非効率なハードウェアで複雑なAIワークロードを実行すると、エネルギー効率だけでなくパフォーマンスにも影響します。この課題に対する解決策の1つは、企業が、低いエネルギー消費で最高のパフォーマンスを達成できるように、基盤となるデータセンターのアーキテクチャとテクノロジースタックを構築することです。これにより企業はAIアプリケーションの現在および将来の需要を持続的に満たし、環境への負荷を軽減することができます。
データセンターはAIエコシステムを支える重要なインフラであるため、業界は電力効率の高いハードウェアとソフトウェアのエコシステムを融合することで、データセンターの効率を高める新しいアプローチを構築する必要があります。
富士通は、データセンターにおけるスーパーコンピュータのカーボンニュートラル実現に向けた省エネルギーソリューションとして、2 nm Armv9-Aアーキテクチャを採用したCPU「FUJITSU-MONAKA」を開発し、2027年度に発売する予定です。 FUJITSU-MONAKAプロセッサーは、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)プログラムの省エネソリューションとして採用されます。NEDOプログラムは、2030年までに国内のデータセンターで40%以上の省エネを達成するという野心的な目標を掲げています。

エネルギー効率とパフォーマンスの向上は、共同アプローチから始まる

Armと富士通は、「Arm v8-A」アーキテクチャ向けの「Scalable Vector Extensions(SVE)アーキテクチャ」の設計で長い間協力してきました。SVEはベクトル長非依存(VLA)プログラミングモデルをサポートしているため、プログラムはより広範、高速なマシンで再コンパイル不要で動作します。

富士通は、理化学研究所と富士通が共同開発したスーパーコンピュータ「富岳」のCPUであるA64FXにSVEアーキテクチャを採用した最初のシリコンパートナーです。 これはまたArmにとって、データセンターやエッジコンピューティングにおいてDemand-Side PlatformのようなワークロードやAI/MLのワークロードを高速化するSVE2アーキテクチャを開発するための基礎となりました。

富士通は独自のマイクロアーキテクチャーを設計しています。これがCPU性能と電力効率の大きな要因です。この技術により、A64FXを用いた「富岳」は、世界最高レベルの性能とエネルギー効率を実現しました。

Fujitsu Research of India Private Limited(FRIPL)のソフトウェア・エンジニアリング・ディレクターで、MONAKA Software R&D Unitを率いているプリヤンカ シャルマ博士は、富士通とArmチームとの緊密な協力関係についてこのように語っています。「富士通にはArmエコシステムへの貢献という強力な遺産があり、私たちはArmソフトウェアスタックの構築に幅広く貢献してきました。FUJITSU-MONAKAを通じて、ハイパフォーマンスコンピューティング領域での開発をオープンソースコミュニティに公開し、クロスプラットフォームソフトウェアやアクセラレータの開発を推進する上で重要な役割を果たす統合開発エコシステムの構築に向けて、連携をさらに強化していきます。インドのMONAKA Software R&Dユニットは、Arm向けのさまざまなML/DLスタックを可能にするためのさまざまなソフトウェアレベルの有効化/チューニングの共同開発に向けて、Armチームと積極的に協力しています。Armチームとの共同開発は素晴らしい協力関係であり、AIの使用を民主化するためのオープンなエコシステムを構築するためにグローバルコミュニティで活動していることを実感させてくれます。」

「Software just works」の合言葉でより良い未来を構築

Armはテクノロジー企業と積極的に協力してさまざまなオープンシステム標準を開発し、システムソフトウェアが「Armで動作する」ことを保証しています。これにより、ソフトウェアの分断が回避され、システムIPの相互運用性が保証され、Armエコシステムの市場投入時間が短縮されます。

Armのエンジニアリング・アーキテクチャおよびテクノロジー担当シニア・ディレクターであるアパラージタ バッタチャーリャ氏は、「Armでの私の役割は、ソフトウェアが「ただ動く」ことを可能にするエンジニアリング&テクノロジー組織を率いることです。富士通と密接に協力して、ArmベースのFujitsu-A64FX CPUでこれを達成しました。このコラボレーションの間、Armチームは富士通のエンジニアリングおよびリーダーシップチームと手を携えて作業し、富士通の検証環境をよりよく理解し、彼らのシステムでの実現に協力しました。技術的な詳細と機能に対する要求を深く掘り下げたことが、Armの理念に沿った製品の強化につながりました。私たちのチームは、細部を重視し、品質を重視し、礼儀正しい日本の文化を直接経験してきました。」と述べています。

異業種間のコラボレーションがイノベーションの鍵

エネルギー効率の高い未来に向けて協力することで、企業はイノベーションと成長を促進することができます。ますますデジタル化が進むビジネス環境に向けて、オープンで柔軟性があり、相互運用可能なAIおよびHPCシステムという共通のビジョンを実現するために、富士通やArmなどのテクノロジーリーダーは、持続可能なデジタルトランスフォーメーションを実現するためのバックエンドコンピューティングの有用性を最大化することで、イノベーションを推進しています。 次世代データセンター CPU である FUJITSU-MONAKAは、多様で要求の厳しいワークロードを処理できるため、エネルギー使用量を削減しながら性能要件を満たすことができ、持続可能な未来の目標達成をサポートします。

また、エコシステム内でのコラボレーションが改善されています。業界を超えたコラボレーションを推進するため、Linux Foundationは2023年9月のOSS Summit期間中に、Unified Acceleration(UXL)Foundationの設立を発表しました。このグループは、パフォーマンスの高いクロスプラットフォームアプリケーションの開発を容易にするオープンスタンダードのアクセラレータプログラミングモデルの提供に取り組む、業界を超えたグループです。Armと富士通はいずれも、統一された開発エコシステムの構築に焦点を当て、クロスプラットフォームソフトウェアとアクセラレータの開発を推進する上で重要な役割を果たすUXL Foundationのメンバーです。
また、Armと富士通は、Armのオープンソースソフトウェアを活用してArmのエコシステムをさまざまな業界に普及させることを目的としたLinaroの主要メンバーでもあります。富士通とLinaroの協業はデバイスドライバに関して2019年頃に始まり、富士通がCI/CDパイプラインとコンパイラツールチェーンに貢献することで長年続いています。

謝辞

この成果は、NEDO(国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構)の助成事業の結果得られたものです。

研究チーム代表

プリヤンカ シャルマ博士 Priyanka Sharma, PhD
Fujitsu Research of India Private Limited(FRIPL)
MONAKAソフトウェアR&Dユニット長
LinkedInプロフィール

アパラージタ バッタチャーリャ Aparajita Bhattacharya
Arm Embedded Technologies Pvt. Ltd.
エンジニアリング・アーキテクチャ
テクノロジー担当シニア・ディレクター
LinkedInプロフィール

本件に関するお問い合わせ

contact-ccsoft-jp@cs.jp.fujitsu.com

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