夜間などの鮮明でないカメラ映像でも、同一人物の特定を支援する技術を開発

2021年10月21日

人々の安全や安心のために、防犯カメラは商業施設や公共機関、街中で欠かせないものとなり、至るところに設置されています。
今や防犯カメラの映像は不審人物の検出や、迷子の捜索など広く活用されていますが、複数のカメラ映像や、夜間および照明などの影響により鮮明でない映像から、人物を特定するのは大変な作業です。このような背景から、防犯カメラの映像から人物を特定する作業は、これまで専門家が映像解析をしながら人手で行っていました。
今回、暗く映り込んでいるものが見えづらい映像や、照明によって異なる色に見えてしまうような映像でも、不変である人物の「身長」に着目し、長さの基準となるものが映り込んでいない場合でも、人物の身長を推定し、同一人物として特定することができるマーカレスなカメラ位置推定技術(以下、本技術)を開発しました。本技術を活用し、従来は判別ができなかった映像に対しても、同一人物を自動で高精度に特定することが可能となりました。

本技術は、2021年10月27日から開催される国際会議International Conference on Engineering and Emerging Technologies(ICEET 2021)で発表します。

着目したのは不変情報である「人物の身長」

例えば、逃走犯を映像から探索する場合、目撃証言を手掛かりに複数箇所に設置された防犯カメラの膨大な映像データから逃走犯の髪型や服装、持ち物などの見た目の特徴を抽出します。さらに、それらの特徴を映像と対応付けすることで、逃走犯の足取りを調べます。しかし、犯罪は夜間に発生することが多く、同じ服装でも照明により色が変化して見えてしまうことがあります。その結果、その映像を、映像解析の専門家が確認しながら特徴を対応付けする必要があり、膨大な映像データの一つひとつから逃走犯の行動を特定するにはかなりの工数を要していました。

そこで着目したのは「変化しない人物の身長」です。
既にカメラ映像に映る人物の身長を推定する技術はあります。しかし、カメラの位置や設置角度などを考慮に入れなければ正確な身長が推定できません。そこで、これまでは、事前に長さの基準となるような横断歩道やガードレールなどを意図的に映し込むことで、身長を導き出していました。これらの事前作業を簡易化するためには、特殊なカメラやセンサーの併用などもありますが、専門家によるカメラの位置合わせや設定が必要になってしまい、実用化において大きな障壁となっていました。

長さの基準となる対象物が映り込んでいない映像でも身長を推定できる!マーカレスなカメラ位置推定技術

今回、正確な身長を推定するために必要な、カメラの位置や設置角度を算出するにあたり、不変である身長の情報を活用できないかと考えました。実世界では、人間の身長は変わることはありませんが、カメラ映像では、カメラ位置によって、映り込む人物の大きさが変化します。この関係性に着目し、当社のAI技術である「行動分析技術 Actlyzer」で認識した人物の骨格情報を活用して、映像の中で常に同じ身長になるよう、幾何学的な関係からカメラの位置や設置角度を求める方法を開発しました。これにより、従来必要であった長さの基準となる対象物をカメラに映し込む作業が不要となり、人物が動いている映像からカメラ位置や設置角度を求めることができる、マーカレスなカメラ位置推定技術を実現しました。

本技術は、すでに取り付けられている防犯カメラでも、カメラの位置や設置角度を求めることができます。また、一度、カメラの位置や設置角度が算出された後は、設置環境が変化しても、カメラと人物の位置関係から高精度に人物の身長を推定できます。

これまで、同一人物が異なる時間帯に複数のカメラへ映り込んでいる場合などに、服装や照明に色の変化があると、既存技術では人物の見た目の特徴を比較するだけでは同一人物と判断できない問題がありました。本技術によって、推定した人物の身長と照合することで、服装や照明の変化が起きていても、複数のカメラに映っている人物に対して、高精度に同一人物であることを特定することが可能になりました。

開発した技術の概略図開発した技術の概略図

本技術を評価したところ、服装が変わっても同一人物と判定され、さらに、照合精度においても、服装が同じ時と同等の精度となることを確認しました。
本技術は、すでに設置済みの防犯カメラなどにも適用できるため、短期間での現場導入が期待できます。今後は、本技術を活用して安心・安全でレジリエントな社会づくりであるTrusted Societyの実現を目指します。

ICEET 2021の概要

本技術の詳細は、画像処理を含むエンジニアリング分野の国際会議ICEET 2021にて発表します。

・学会名:International Conference on Engineering and Emerging Technologies (ICEET )
・開催日:2021年10月27日~10月28日
・タイトル:Improving Person Re-Identification Based on Human Height Information
・著者:吉岡隆宏(富士通)、粟井修司(富士通)、紺野剛史(富士通)

■開発者コメント

・先端融合技術研究所 吉岡 隆宏 研究員

これまでもカメラ位置を特定する技術は多く提案されていますが、防犯カメラのように膨大な種類の映像に対してそれぞれのカメラ位置を特定することは容易ではありませんでした。本技術は、この問題を解決すると同時に、映像に映る人物の内在的な情報を活用可能にするきっかけとなると思っています。
この分野は実利用においてプライバシー面の課題など多くの壁がありますが、この技術をさらにチームで磨き上げて様々な用途に適用し、安心・安全な社会づくりに貢献できるように取り組んでいきます。

・先端融合技術研究所 紺野 剛史 プロジェクトマネージャ

安心・安全な社会づくりを早期に実現するには、既に設置されている一般的な防犯カメラでも使える技術開発が必要だと考えます。本技術は、一般的な防犯カメラで活用できますので、デパートでの迷子や不審者の検知など多くのシーンに適用することが可能です。今後も、AI映像解析技術の研究を通して、富士通が掲げるTrusted Societyの実現に貢献していきます。

今後について

今回開発した技術を、富士通株式会社のAI技術 「FUJITSU Human Centric AI Zinrai」 を支える人物探索技術として2022年度の実用化を目指します。

関連情報

商業施設・公共機関での人物探索に最適なロバスト人物探索技術を開発 (2020年10月16日プレスリリース)

映像から人の様々な行動を認識するAI技術「行動分析技術 Actlyzer」を開発 (2019年11月25日プレスリリース)

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