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八木橋ゼミナール 第18回「在外邦人・平成最後の法改正」

今回のテーマは、第16回「在留外国人」の逆のパターンである「在外邦人」を巡る話題について、自治体からの視点での動向を解説しましょう。終段で、本件も含めたマイナンバー制度の利用拡大を図る法改正も紹介します。

2019年4月16日掲載

自治体から見た在外邦人(海外在留者)

「在外邦人」についての自治体とのかかわりを見ていきましょう。
市区町村は「地域における行政を自主的かつ総合的に実施する役割を広く担う」(地方自治法第1条の2)もので、「在外」にかかわる事項については、国が「全国的な視点に立って行わなければならない施策及び事業の実施その他の国が本来果たすべき役割を重点的に担う」(同第1条の2第2項)ことになります。

地域の住民が、海外に在留するには、国内での届出(国外転出)と、出国に必須なものは旅券です。
一般旅券の発給は、都道府県知事経由で外務大臣(旅券法第3条)とされた法定受託事務です。
地方分権の権限移譲の流れで、申請窓口が都道府県から市町村へ、移されたり追加されたりしてきています。

海外に在留した時の「住所」について、「外国に住所又は居所を定めて三月以上滞在するものは、当該地域に係る領事館の領事官に届け出なければならない」(旅券法第16条)とされています。
この届出を受けるのは、管轄する日本の大使館又は総領事館(在外公館)で、所管は外務省領事局です。
届出は、外務省「在留届電子届出システム(ORRnet)」サイト、または郵送や持参で「在留届」を提出します。
この在留届の情報は、次のように使われます。「在留外国人」の逆ケースと想像ください。(注1)

  • 在留邦人が事件や事故、災害に遭ったのではないかと思われるとき、安否の確認、緊急連絡、救援活動、留守宅への連絡等が迅速に行えます
  • 「海外で事故にあったのでは」といった留守宅からの安否問い合わせに対しても、早く確認できます
  • 在外公館で在外選挙人登録などの領事窓口サービスを受ける際にも、「在留届」は利用されています
  • 海外にいる在留邦人のための長期的な教育・医療等の施策を政府が検討する際の基礎的資料

(注1)外務省HP海外渡航・滞在「「在留届」をご存知ですか?」Open a new window

海外での出生、婚姻、死亡など身分関係の変動や、外国への帰化などによる国籍の変動は、戸籍法に基づいて届出が義務付けられ、在外公館経由の届出か届書の直接郵送によって、本籍地の戸籍に記載されます。
また、年金の任意加入や受給、国内で生じた所得の税申告(非居住者に対する課税)などの手続きも必要です。(注2)

(注2)法務省HP戸籍「国際結婚,海外での出生等に関する戸籍Q&A」Open a new window日本年金機能HP申請・手続「海外に居住する方」Open a new window国税庁HPタックスアンサー「非居住者に対する課税」Open a new window

在外邦人の統計情報

現状、どれほどの件数か、数字を見てみましょう。(注3)

  • 海外在留者(長期滞在者+永住者):約1,351,970人(2017/10/1時点,この5年で約7.4%増)
  • 海外との転出入者数(2017年度) 転出者:約172,500人、転入者:約171,000人
  • 旅券発行数(2018年度):約433万冊(前年比5%増)
  • 有効旅券数(2018年度末現在):約2,998万冊(およそ国民の4人に1人が所持)
  • 在留届出件数(2016年度):約20万8千件
  • 海外において生じた戸籍法に基づく届出(2016年度):約3万8千件
  • 在外選挙人名簿登録者数(2018年9月登録日現在):98,589人(前年比‐1.9%)

(注3)「海外在留邦人」とは、「海外に3か月以上在留している日本国籍を有するもの」とされています。
外務省領事局「海外在留邦人数調査統計」Open a new window外務省領事局「旅券統計」Open a new window、総務省「住民基本台帳に基づく人口、人口動態及び世帯数」、総務省「選挙人名簿及び在外選挙人名簿登録者数」、その他による

在外選挙制度

市町村(選管ほか)が関連する、在外選挙制度について、解説しておきましょう。
海外に住んでいる人が、外国にいながら国政選挙に投票できる制度が「在外選挙制度」、投票が「在外投票」です。
在外投票ができるのは、日本国籍を持つ18歳以上の有権者で、在外選挙人名簿に登録され、在外選挙人証を持っている人です。
在外選挙人名簿への登録の申請は、出国前、国外転出届を提出する市区町村の窓口で申請する方法(出国時申請)、出国後、居住している地域を管轄する日本大使館・総領事館に申請する方法(在外公館申請)があります。 在外選挙人名簿の登録申請先となる市区町村選管は、最終住所地市区町村です。(注4)
また、外国で生まれ、日本国内に一度も居住したことがない方の選管は、本籍地市区町村になります。
在外投票の方法には、海外での「在外公館投票」、郵便等で日本国内の選管に投票用紙を送付する「郵便等投票」、一時帰国や帰国後間もなく「在外選挙人証」を提示する「日本国内における投票」があります。

在外選挙制度の経緯を振り返っておきましょう。
1998年5月 公職選挙法の一部を改正する法律を公布(在外選挙の導入)(平成10年法律第47号)
1999年5月 在外選挙人名簿の登録の施行(注4)、2000年5月在外投票の施行
2003年6月 制度改正(在外公館投票と郵便等投票の選択制導入など)、2004年4月施行
*2005年9月 最高裁大法廷判決(注5)(衆・参選挙区選出議員の選挙も在外選挙の対象とすべき)
2006年6月 制度改正(在外選挙の対象選挙の拡大,登録申請手続きの改善など)
2007年1月 在留届提出時に名簿登録申請可の施行、2007年6月対象選挙の拡大の施行
2010年5月 憲法改正国民投票法公布(在外選挙人証による投票権の確保)
2016年6月 制度改正(選挙権年齢の満18歳以上への引き下げ)
2018年6月 制度改正(出国時申請の開始)

(注4)在外選挙人名簿の整備にともない、在外者の最終住所地を把握するため、「国内における住所の記載をしていない者(「在外者等」)に関する記載をした戸籍の附票」は、消除した日から80年間保存(通常は5年間)と延長をしました。(1999年施行の住民基本台帳法施行令の改正。80年は当時の除籍簿の保存期間。)
なお、現在の保存期間は150年間に延長されています。(2015年番号制度導入時の改正。150年とは、2010年戸籍法施行規則の改正による、除籍簿の保存期間の150年への延長にあわせたもの。)

(注5)最高裁大法廷判決(2005年9月14日)より 「1996年10月20日に施行された衆議院議員の総選挙当時、公職選挙法(平成10年法律第47号による改正前のもの)が、国外に居住していて国内の市町村の区域内に住所を有していない日本国民が国政選挙において投票をするのを全く認めていなかったことは、憲法に違反する」 「公職選挙法附則8項の規定(平成10年法律第47号による追加)のうち、国外に居住していて国内の市町村の区域内に住所を有していない日本国民に国政選挙における選挙権の行使を認める制度の対象となる選挙を当分の間両議院の比例代表選出議員の選挙に限定する部分は、憲法に違反する」(最大判平17.9.14一部抜粋)

これまでの「在外邦人」に係る話題

これまでの「在外邦人」に係る話題について、振り返ってみます。

第2回「自治体でのマイナンバーの利用拡大」(2016年8月)、「「利用拡大」検討の経緯」
IT戦略本部「マイナンバー等分科会」の「中間取りまとめ」(2014年5月)のマイナンバーの利用範囲の拡大について、「在外邦人によるマイナンバー関連サービス利用や、有事の際の国内情報の活用等に関連する、旅券や邦人保護等に係る事務」があげられています。

第7回「マイナンバー制度の情報連携」(2017年6月)、「情報連携の運用・事務の習熟について」
(7)国外の居住者の課題:マイナンバーの利用拡大の項目として「在外邦人の情報管理業務」、マイナンバーカードの公的個人認証機能の「海外における継続利用」など対応案の提示がされています。利用拡大での検討事項になっています。(注6)

(注6)総務省 「海外に在留する者への行政サービスの提供のあり方」 個人番号を活用した今後の行政サービスのあり方に関する研究会 第5回Open a new window(2014年12月26日)

「海外転出者にかかる基礎」について

在外邦人への対応課題も含め、総務省が「住民生活のグローバル化や家族形態の変化に対応する住民基本台帳制度等のあり方に関する研究会」を開催しました。研究会の趣旨を紹介します。(注7)
「住民生活のグローバル化や家族形態の変化に対応し、「在外邦人のアイデンティティの公証」(より広範な空間軸における居住関係の公証)や「個人の生涯にわたるアイデンティティの公証」(より長期の時間軸における居住関係の公証)を可能とする住民基本台帳制度・公的個人認証サービスのあり方について、検討を行う」としています。
そして、「中間報告」として、「グローバル化社会」「インターネット社会」への対応(新たな認証基盤、マイナンバーの継続利用、電子証明書の海外利用など)、「ライフスタイルや家族形態への変化への対応」(除票の保存期間など)をまとめ、公開しました。(注8)
公開後、地方公共団体へのヒアリングなどの意見の反映を行い、「最終報告」をまとめ、「海外転出者にかかるマイナンバー制度及び公的個人認証制度の基礎となる認証基盤」として、「附票を活用することが適当」としました。(注9)

政府の未来投資会議で、この住民基本台帳法、公的個人認証法、マイナンバー法の改正に関して、「デジタル手続法案」の「行政のデジタル化を推進するための個別施策」として報告(注10)されました。

(注7)総務省「住民生活のグローバル化や家族形態の変化に対応する住民基本台帳制度等のあり方に関する研究会」の開催Open a new window(2017年11月8日)
総務省「住民生活のグローバル化や家族形態の変化に対応する住民基本台帳制度等のあり方に関する研究会」Open a new window

(注8)総務省「住民生活のグローバル化や家族形態の変化に対応する住民基本台帳制度等のあり方に関する研究会」において取りまとめられた中間報告の公表Open a new window(2018年5月25日)

(注9)「住民生活のグローバル化や家族形態の変化に対応する住民基本台帳制度等のあり方に関する研究会」において取りまとめられた最終報告の公表Open a new window(2018年8月22日)

(注10)内閣官房IT総合戦略室「デジタル⼿続法案について」第4回新戦略推進専門調査会デジタル・ガバメント分科会 第25回各府省情報化専任審議官等連絡会議 合同会議Open a new window(2019年2月20日)

平成最後の法改正

法改正が具体化しました。
第198回国会(2019年1月召集)にマイナンバー制度やデジタル・ガバメント等にかかわる法改正が提出されました。
以下の4法案(5項目)を簡潔に紹介しておきます。(注11)

(1)行政のデジタル化を推進する個別施策(住⺠基本台帳法、公的個⼈認証法、マイナンバー法)(注12)

  • 国外転出者の本⼈確認情報の公証(⼾籍の附票の記載事項の追加、附票ネットワークの構築)
  • 国外転出者への電⼦証明書の発行、失効事由の整備、マイナンバーカードの発行(オンライン⼿続、本⼈確認)
  • 本⼈確認情報の⻑期かつ確実な保存及び公証(住⺠票等の除票を除票簿として保存、安全確保措置等)
  • 個⼈番号カードへの移⾏の拡⼤(通知カードの廃⽌、市区町村窓口の負担軽減)
  • 利⽤者証明⽤電⼦証明書の利⽤⽅法の拡⼤(暗証番号⼊⼒を要しない⽅式、医療機関窓口での下記(3)項)

(2)デジタル手続法案「情報通信技術を活用し、行政手続等の利便性の向上や行政運営の簡素化・効率化を図るため、行政のデジタル化に関する基本原則及び行政手続の原則オンライン化のために必要な事項を定める」(注12)

  • 「行政手続オンライン化法」を改正、「情報通信技術を活用した行政の推進等に関する法律」に改める
  • 行政のデジタル化に関する基本原則(デジタルファースト、ワンスオンリー、コネクテッド・ワンストップ)
  • オンライン原則や添付書類の撤廃を実現するための情報システム整備計画、デジタル・デバイドの是正
  • 行政手続のオンライン実施の原則化、共通事項(電子署名・電子納付、添付書面等の省略など)
  • 民間手続における情報通信技術の活用の促進(手続等密接関連業務を行う民間事業者、民間手続) ほか

(3)健康保険法等(保険者間で被保険者資格の情報を一元的に管理する仕組みの創設 ほか)(注13)

  • オンライン資格確認、資格確認方法を法定化、被保険者番号を個人単位化(健保法、国保法など) ほか

(4)戸籍法等(法務大臣がマイナンバー法により戸籍関係情報を提供すること ほか)(注14)

  • 磁気ディスクで調製された戸籍(除籍含む)の副本は、法務大臣が保存
  • 戸籍関係情報は、情報提供用個人識別符号を利用し、法務大臣が作成、提供
  • 戸籍事務内での情報利用(届書等情報、戸籍証明書の広域交付、戸籍電子証明情報の発行 など)
  • 情報連携の対象に戸籍関係情報を追加(別表第二の健保被扶養者認定、児扶手支給などの事務)

(5)所得税法等(国税通則法等の改正)(注15)

  • 証券保管振替機構(ほふり)をマイナンバー法の別表事務に追加
    「加入者情報の管理又は加入者の個人番号等の提供に関する事務」
  • 金融機関等が番号未告知者の個人番号を振替機関から提供受けた場合は告知があったとみなす ほか

(注11)資料2-2-1内閣官房・内閣府「マイナンバー制度について」 内閣府 経済財政諮問会議 経済・財政一体改革推進委員会 第17回 国と地方のシステムWGOpen a new window(2019年3月15日)

(注12)「情報通信技術の活用による行政手続等に係る関係者の利便性の向上並びに行政運営の簡素化及び効率化を図るための行政手続等における情報通信の技術の利用に関する法律等の一部を改正する法律案」Open a new window 内閣官房 国会提出法案(第198回 通常国会)Open a new window(2019年3月15日)

(注13)「医療保険制度の適正かつ効率的な運営を図るための健康保険法等の一部を改正する法律案の概要」Open a new window 厚生労働省 第198回国会提出法律案Open a new window(2019年2月15日提出)

(注14)法制審議会に諮問された法改正(ゼミナール第9回「新たな電子行政の方針」(デジタルガバメント編) 「アクションプランの個別項目第5」 参照 2017年9月)
法制審議会 戸籍法部会「戸籍法の改正に関する要綱案」Open a new window(2019年2月1日決定)
法務省 国会提出主要法案 第198回国会 戸籍法の一部を改正する法律案Open a new window(2019年3月15日)

(注15)財務省 第198回国会における財務省関連法律 所得税法等の一部を改正する法律案Open a new window(2019年2月5日)

富士通の取組

マイナンバー制度の施行後3年、利用拡大のフェーズになってきています。
デジタル・ガバメントを促進する基本原則を示すデジタル手続法案も具現化してきました。
デジタル・ガバメントのインフラでもある、住民基本台帳ネットワークや総合行政ネットワーク(LGWAN)の4度目の更改も併行して進んでいます。

富士通は、「グローバル化社会」「インターネット社会」を超え、未来に向けて、さまざまな取り組みを進めています。
AIの安心・安全な利用に向けた「富士通グループAIコミットメント」を策定Open a new window[富士通株式会社]
富士通グループAIコミットメントOpen a new window(富士通株式会社2019年3月)
世界初!韓国の全国内線空港にて手のひら静脈認証による搭乗者確認の運用開始Open a new window[Fujitsu Korea / 富士通]

Human Centric Innovation Driving a Trusted Future
デジタル社会の変革が進んでいきます。ひきつづき、注視していきましょう。

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