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Japan

マイナンバー制度を考える(2) ─ 「現場での課題と将来像」

2015年9月15日掲載

10月の付番まであとわずかとなったマイナンバー。一方で、個人情報を守るセキュリティ対策や事務処理要領の詳細未確定部分など、自治体の現場では、不安の声も聞かれます。 そこで、自治体をはじめとする行政機関において、長年、各種業務システムの企画・開発に携わってきた 当社)八木橋に、その課題と解決策について聞きました。

マイナンバー制度では個人情報の適正な取り扱いが課題

前回の対談から数ヶ月たち、いよいよマイナンバーの付番が目前となっています。前回は、マイナンバーを使うことで自治体の職員と住民の両方がメリットを享受する実例をあげましたが、公営住宅管理の現場で新たに見えてきた課題や意見にはどのようなものがあるでしょうか

八木橋: やはり個人情報を適正に管理し取扱うことが大きなテーマとして挙げられます。日々のニュースでも、個人情報の流出が話題になっているように、当社のお客様からも個人情報が悪用されることへの不安の声が多く聞かれています。

マイナンバーを取り扱う自治体や国などの行政機関では、個人情報保護のために利用の際には提供・開示先を明示し、限定した上で住民本人に確認を行い、慎重に取り扱うべく、法・条例や制度の整備をしています。

富士通株式会社 行政ビジネス推進統括部 担当部長 八木橋 亮雄の写真

富士通株式会社
行政ビジネス推進統括部
担当部長
八木橋 亮雄

住民からのマイナンバー制度に対する反対意見などは問題になっていないのでしょうか

八木橋: 今回のマイナンバー制度の導入にあたり、住民一人ひとりに番号をつけることへの反発の声はほとんど聞かれず、むしろ個人情報のセキュリティ(情報の保護)を観点とした課題が主ですね。

現在の、マイナンバー制度の仕組みでは、番号と個人情報の中身は切り離されていますから番号自体が他人に知られても、即時に個人情報が特定されるわけではありません。このあたりの仕組みがまだまだ理解されていないので、住民が不安を感じるところになっているのではないでしょうか。自治体など行政機関が住民に対して今後も継続的に説明を行い、正しく理解してもらうことで不安も解消されていくと思います。

業務面からの課題には何があるのでしょうか

八木橋: 個人情報を守るために条例や制度を厳しくすることは必要なのですが、一方では、個人情報を業務で扱うためのハードルが高くなるという側面も出てきます。

たとえば、行政のスリム化に伴い、業務の外部委託が増加し、公営住宅管理業務においても、入居受付などの窓口業務は、住宅供給公社などの外部機関に委託される傾向にあります。

この状況において、今回のマイナンバー対応で入居者の現住所や収入情報などの個人情報を自治体職員以外の第三者が扱うことをNGとすると、入居受付や収入申告書の受付もまた自治体職員でなければ扱えず、外部機関への委託ができないことになります。

それでは、業務の外部委託ができなくなり、自治体職員の業務が繁忙になってしまいますね

八木橋: そういうことも考えられますね。これまで、外部に委託してきた業務範囲までを全て自治体の窓口で職員が対応することになれば、業務繁忙により、入居者や入居希望者が窓口や電話口で長時間待たされることになるかもしれません。また、委託業者である外部機関が自治体庁舎とは別の建物で受付処理をしている場合、窓口で情報を参照できず、自治体職員に依頼して情報を参照してもらう必要があり、結果として即時に対応ができないため、従来と同じように、入居希望者や入居者が収入証明や住民票を持参する手続きを継続せざるを得なくなります。

それではマイナンバー制度のメリットを住民に享受いただくことができませんね。何か解決方法はないものでしょうか。

八木橋: 公営住宅管理業務のマイナンバー制度に係る事務運用には裁量の余地があると思います。福祉分野の事務運用について厚生労働省からの提示があるように、公営住宅の場合においても、今後、国土交通省から事務運用のルールが提示されることを期待しています。

現に、内閣官房のホームページ「地方公共団体向けFAQコーナーQ1-7では、「指定管理者制度の『指定管理者』は、番号法第9条第1項の『当該事務の全部又は一部の委託を受けたもの』に該当し、個人番号を利用できる」との回答があります。ただ、実際の事務運用を確定していく上では、たとえば、個人番号を含む情報を利用する場合の業務遂行は、庁舎内に限定すべきかどうか等など、より細かい事項が不明点としてあがってくるかと思われます。

そういった細かい質問への回答として、「指定管理者は、自治体と同等のセキュリティを確保することを前提とした秘密保持契約を締結することで、収入情報などの公営住宅管理業務に限定したデータ収集・確認することを認める」といった運用ルールが提示されるとします。そうなれば、指定管理者が個人情報を扱えるようになり、外部委託が継続できるようになりますし、住民の皆さんにもマイナンバー制度のメリットを享受してもらえることになりますね。事務運用のルールについては自治体側から国側に要請するといったことも考えられますね。

仕組み作り次第でマイナンバー制度のメリットはもっと大きくなる

前回のおさらいになりますが、富士通として、自治体分野のマイナンバー制度対応はどのような方針で実施していくのでしょうか

八木橋: 住宅管理に限らず富士通が提供している自治体業務システムにおいて、下記2点を実施する予定です。

【富士通の自治体分野におけるマイナンバー制度への基本方針】

◆ 法改正・法解釈の整理
実際の業務とシステムにおける具体的な影響範囲と内容を整理します。

◆ 機能追加、機能変更の検討と決定とお客様へのアナウンス
具体的な機能追加・機能変更を検討・決定し、お客様へのアナウンスを実施します。

公営住宅管理の話に戻りますが、今度のマイナンバー法の改正で、「特定優良賃貸住宅(特優賃)」もマイナンバーの対象業務に追加になりました。

こうした改正内容にもきちんと対応していきます。

ご参考:公営住宅管理システムでの主な改修点 (2015年8月1日現在)
項目 対象機能 改修の概要
1 名義人検索
宛名検索
募集名義人検索
個人番号による検索機能を画面に追加
2 入居サマリ
世帯員変更
募集情報登録
募集世帯員登録
世帯員の個人番号照会機能の追加
3 収入申告
減額申請書
申請書への個人番号欄の追加

マイナンバーを利用することで、住民と自治体職員が共にメリットを享受できるようになるとよいですね

八木橋: 住民サービスという点で考えると、民間の賃貸アパートなどではすでに行われているようにWeb上で空き部屋検索から申込みまでができるようになればさらにメリットが大きいですよね。

申請を受ける行政側としては、申込み時に収入情報を参照できれば一連で入居資格の有無も判断できるようになり、将来的にはその場で入居可否の表示もできるまで発展させることもできるのではないかと思います。このように、制度や仕組み次第で、もっともっとマイナンバーを活かせるようになると思います。

住民がマイナンバーに対して感じている不安を払拭し、メリットをできるだけ享受しようというプラスの方向に空気が変わっていくことが大事だと思います。

将来の公営住宅像とは? ~地域づくり・活性化の拠点へ~

新しい仕組みのメリットを生かしていく視点が必要ということですね。では、将来的なことで言うと、「公営住宅の役割」はどのように変化するのでしょうか

八木橋: 「地域の拠点」に変化していくのではないでしょうか。地域により、駅周辺の市街地が空洞化しているケースがありますが、そこに公営住宅があれば、ひとつのコミュニティとなります。

近年、顕著になっている少子高齢化の波を受け、今後、公営住宅の入居者は高齢者が大半を占めるようになるでしょう。高齢になると必須となるのが医療と介護です。その公営住宅が市街地にあれば、近隣に自治体の施設・庁舎や病院があることが考えられます。この状況に加えて、多くの高齢者が利用される介護サービスの施設などを公営住宅に併設することで、高齢者が安心して暮らせる場所(=コミュニティ)ができあがると思います。

このように、福祉の視点も含めて公営住宅の将来を考えていくことが大切ですね。

前回の特集では、高齢者の「見守り」が話題になったのですが、最近、富士通のCMでもICTによる高齢の一人親家庭の「見守り」がテーマになっていますね

八木橋: 「見守り」についても、公営住宅なら電気・ガス・水道といったライフラインのインフラ周りから仕組み作りを考えることができます。

たとえば、公営住宅の上下水道の使用状況は自治体や自治会などが検針しています。この頻度を数時間単位にすることで「安否確認」ができるようになります。ただ、その仕組みを人手とするのは現実的ではないですから、ICTの活用が不可欠となります。

すでに建設済の建物を改修することが難しければ、日本郵便などと連携して、高齢単身住居者への配達の際に、本人の安否確認をしてもらうようにするとよいのではないでしょうか。

それには、高齢単身住居者であることを配達者に知らせる方法や、安否確認の結果を通知する方法を考える必要がありますが、たとえば、最短で実施する方法としては、行政から送られる通知書の宛先の横に何かしらのマークを印刷しておくなど、少しの工夫で実現できることは多いのではないかと思います。もちろん、これらを考える上でも、セキュリティ上の配慮についての検討は必須となりますね。

公営住宅を拠点にした地域や街づくりが観点になるということですね。それでは富士通としては、そこにどのような貢献ができるのでしょうか。

八木橋: 富士通では、自治体業務向けのトータルパッケージシステムとして、MICJET住宅管理だけではなく、介護・福祉システム(MCWELシリーズ/MICJET MISALIO子育てソリューション)で多くの導入実績があります。さらに、自治体と地域をつなげる地域包括ケアシステムや地域医療連携などのヘルスケアの分野にも積極的に取り組んでいます。もちろんマイナンバー制度を利用したデータ連携や今後の利活用の拡大にも対応していきます。

今後も広い分野での地域のサポートの視点に立ってマイナンバー制度の対応を考えていく必要があります。公営住宅管理部門は、「マイナンバー参照・利用可能部門」と定義されており、直接的に他部門と連携しながら利活用を広げていくのは難しいかもしれませんが、この制度が住民や職員にとって有益な制度となるために、我々ベンダーも「全ての住民が幸せになる街づくり」についてのご提案を継続的に実施してまいりたいと思います。

マイナンバー制度の利活用については、工夫次第で夢が広がりますね。今後そのような展開を広げていければと思います。本日はお忙しい中ありがとうございました。

ご紹介した製品

MICJET 住宅管理(公営住宅管理システム)

富士通が提供するMICJET 住宅管理(公営住宅管理システム)は、豊富な実績に培われたノウハウにより開発された、公営住宅にかかわる管理業務を網羅したWEB方式の公営住宅管理システムです。

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