クリニック開業時に効果的な3つの集患施策とは?|経営の立ち上がりを加速度的にアップさせる方法
掲載日:2025年4月1日
1. 開業時の認知拡大はクリニック経営成功の鍵
開業したばかりのクリニックは、地域の患者に知られていない存在のため、きるだけ早く認知してもらうことが経営の安定につながります。特に昨今、東京都内を中心にクリニックの競争が激化しているため、開業後にのんびり策をしても遅れをとっている状態になってしまうこともあります、そのため、開業前から積極的に認知の拡大施策をとっていくことが重要です。患者が体調不良を感じたときに、真っ先に思い浮かべるクリニックになっているか。その状態を作るための施策を着実に実行していく必要があります。
開業直後は、設備や内装が新しいため、患者に好印象を持っていただきやすい時期でもあります。このタイミングで多くの新しい患者に来院してもらうことで、リピーターの獲得に繋げやすいともいえます。ですから、患者の満足度を高めていき、口コミによる習慣効果で相乗効果を図るサイクルを作っていくことが必須になります。それだけに、来院していただくためのマーケティングの初動は重要と言えるでしょう。
しかし、マーケティングも一筋縄では行きません。美容整形やオンライン診療をメインとした、自由診療中心のクリニックでは、バックにマーケティング戦略に長けている企業がついている場合があり、インターネットでの強い広告戦略で患者を獲得しているところも増え始めています。そのクリニックとガチンコで戦うのは得策ではありません。体調が悪い患者は、近くのクリニックに行きたいと思っていることを利用して、より地域に密着したマーケティング戦略をとっていくことが必要です。近くの「頼れるかかりつけクリニック」として、開業時にしっかりとしたマーケティングの拡大、認知戦略を実行して、「来院→満足→再来院」のサイクルを生み出し、その後の経営の安定につなげていく必要があります。それでは、このようなサイクルを生み出す、開業時に実践すべき具体的な3つの習慣施策を下記に詳しく解説していきます。
2. 開業時の集患に効果的な3つの施策
開業時に行うべきマーケティング手法で、特に効果的なものは①Webマーケティング、②内覧会でのアプローチ、③口コミ戦略の3つになります。この3つの手法について詳しく述べていきます。
2-1. Webマーケティングを活用した集患戦略
クリニックのホームページ(オフィシャルサイト)を作り込む事は、集患において非常に重要です。
図1.外来・入院別にみた医療機関にかかる際の情報入手先

出典:令和5(2023)年受療行動調査 厚労省
上記は、令和5年度の受領行動調査の結果で、医療機関にかかる際に入手する情報源を調査したものです。この外来の部分を見ると、インターネット関連の項目を総計すると、50.82%と過半数を超えています。ですから、集患戦略を考える上でインターネットでの情報発信は重要と言えるでしょう。その中でも、自身で情報を発信できるクリニックのオフィシャルサイトがウェブマーケティングの核になりますので、ホームページ(オフィシャルサイト)を作り込む事が重要で効果も期待できると言えるのです。ただし、効果があると言っても、作成に数百万単位の高額な費用をかける必要はありません。基本的なクリニック情報(院長の紹介、クリニックの場所、診療内容)をわかりやすく掲載していることが必要条件になります。
2-1-1. ホームページの作成のポイント|患者が求める情報を網羅する
ホームページの内容については「患者目線」を意識することが成功の鍵となります。「クリニックが伝えたい情報」ではなく、「患者が求める情報」を掲載することを忘れてはなりません。患者が求めるホームページの情報については下記のようにまとめられます。
表1. ホームページに掲載すべき項目
項目 | 目的 | 掲載箇所例 |
---|---|---|
①クリニックの強み | 瞬間的にどのようなクリニックかをわかってもらう | トップページ |
②予約システム | わかりやすく予約ができる導線づくりで来院のハードルを下げる | トップページ |
③医師のプロフィール | どのような医師が担当するのかを明示、専門性のPR | トップページ |
④疾患・病気のページ | どんな病気を見てもらえるかを示、Googleの上位表示対策 | 1疾患につき1ページ作成 |
⑤採用ページ | よりクリニックに合った人材採用につなげる | 採用ページ作成 |
①クリニックの強み
初めてホームページを見た人が、どこのどんなクリニックで何が強みか」を一瞬で判断してもらうために、ホームページのトップには、そのような情報を列挙していくことが基本になります。院長のこだわりなどは、その次に見てもらえれば良いですから、患者が見たい情報にフォーカスしてトップページを構成してください。
②予約システム
トップページでは、予約への導線のわかりやすさも重要です。予約システムの導入により24時間365日予約が可能になり、来院のハードルを下げることができます。また、診療時間やアクセス情報(地図)も、患者が求める情報ですので、わかりやすい位置に配置し、初めての患者でも迷わず来院できるようにしましょう。
③医師のプロフィール
どんな医師が診察をするのかも、患者が気にするポイントのひとつです。院長や在籍医師のプロフィールを詳しく記載し、専門分野や経歴、診療に対する考え方を伝えることで、患者に安心感を与えることができます。写真や動画を活用し、医師の人柄が伝わるようなコンテンツを掲載すると、より親近感を持ってもらえるでしょう。
④疾患・病気のページ
専門性などを表すために、対応可能な疾患などを詳細に記載することも重要です。私は、1ページ1疾患の原則と呼んでいますが、1つの疾患や病気、症状については1つのページを割いて詳細に作成することをおススメしています。これは、患者に専門性をPRできるだけでなく、Googleの評価を上げることにも繋がります。例えば「〇〇市 皮膚科 湿疹」などの検索ワードで上位表示を狙うためには、 湿疹の詳細な文章を掲載し、患者の疑問や悩みに答えるような構成にすることが効果的です。
⑤採用ページ
伝えることが重要です。スタッフインタビューや職場の雰囲気が伝わる写真を掲載し、応募者が安心して応募できるページを作成しましょう。また、応募フォームを設置することで、ネットから簡単にエントリーできるようにし、応募のハードルが下がります。応募フォームによって24時間365日エントリーができますので電話や履歴書の郵送と比べてチャンスを逃さないと言えるでしょう。フォームはGoogle Formsなどの無料ツールを活用し、応募ボタンから直接リンクさせるとスムーズです。
このように、ホームページは単なる情報発信の場ではなく、患者との接点を作るための重要なツールです。適切なトップページの配置やコンテンツ作成を意識することで、開院直後から効果的に集患につなげることができます。
2-1-2. ホームページ活用のポイント |Google検索を意識する
ホームページは作成するだけでなく、より多くの方にホームページを見つけてもらう必要 があります。そのためには、Googleの検索上位に表示させるなどマーケティング活動が重要になります。 ホームページを作成して公開しても、Google検索に反映されるまでには時間がかかるため、開院の3ヶ月前にはプレサイト(ティザーサイト)をオープンし、徐々にコンテンツを追加して検索エンジンに馴染ませていくことが重要です。では、具体的に説明していきましょう。
①SEO対策
SEOとは、Googleの検索エンジン対策のことですが、開院当初は「地域名(市町村または駅名)+診療科目」で検索結果の10番以内、できれば3番以内に表示されることを目指してください。検索結果の上位に表示されるために、症状や疾患に関するページを充実させることも効果的になります。もし検索結果の上位に表示されないということでしたら、表示されるまでは、Googleの広告(リスティング広告)の活用も視野に入れます。さらに昨今ではYouTubeを活用した動画コンテンツをホームページに掲載することで、SEO対策になると言われていますので、合わせて活用することもお勧めします。
②Instagram・X・YouTubeの活用
開院前からInstagram・X・YouTubeを活用するのも有効です。SNS(Instagram・X)上で、できるだけ地域のアカウントと相互フォローして相互のつながりを作り、認知度を高めることも大事です。SNSを活性化させることで、良質なコンテンツからの被リンク獲得にもつながりますので、SEOの観点からも有利といえます。
SNS(Instagram・X)では、ホームページ同様に患者が知りたい情報を発信することが重要です。できれば動画も活用し、医師やスタッフの人となりが伝わるようなコンテンツを発信します。開院前でしたら、建築の様子などを発信するのも良いでしょう。さらに、開院前のSNS運用は、採用活動にも効果的です。SNSの特性として閲覧者の地域の情報がタイムラインに出てきやすいため、採用の情報を発信すると、地域の人の目に留まる確率も高まります。ですから、SNSで採用情報を発信し、オフィシャルサイトの採用ページへの誘導を行うことで、より多くの応募を集めることができます。
また、YouTube動画は集患ツールとしてだけでなく、患者への説明ツールとしても活用できます。たとえば、診療科目ごとの説明動画や、一般的な病気の予防策、治療の流れなどを動画で紹介することで、同じ説明を何度も繰り返すことが少なくなります。診療中に伝えたことも、患者は100%記憶しているわけでは有りませんので、繰り返し見ていただけるようにすることも大事です。せっかく動画を作ったのですから、ホームページの疾患説明のページにも利用してください。閲覧者の信頼感を高めるだけでなく、ホームページの滞在時間を増すことで、Googleからは重要なページとみなされSEOにも有効に働きます。
2-2. 内覧会は唯一の直接マーケティングの場
地域の患者に存在を知ってもらうための有効な手段の1つに内覧会があります。医療機関は医療法で定められた広告規制がありますので、チラシの配布などが制限されています。しかし、内覧会のポスティングについては、医療機関の直接的な宣伝ではなく、イベントの告知ということで、比較的自由に行うことが可能になっています。特に、内覧会のポスティングやビラ配りによるチラシ配布は、その後の経営の中でも唯一のポスティング機会となり、唯一の直接的なマーケティング手法と言えますのでこの機会を逃す手は有りません。
さて、内覧会の最大の目的は何でしょうか。内覧会は来場者数に目が行きがちですが、何人予約をいただくかを最大の目標に据えてください。来院予約をいただくために「来場者さんのロイヤリティー(信頼)を高め来院予約を取る」までの導線を作ることが重要です。
2-2-1. 来場者さんのロイヤリティー向上に向けた施策例
来場した患者のロイヤリティーを高めるための施策として、主に①ノベルティーの配布 ②同時開業クリニックとの内覧会協業 ③院内体験などが、挙げられます。下記で具体的な施策例と効果を見ていきましょう。
①ノベルティーの配布
クリニックのロゴが入ったエコバックや、ウェットティッシュ、ボールペンなど日常的に使えるアイテムなどを配ることで、内覧会後もクリニックの存在を思い出してもらいやすくなるでしょう。お子様向けに風船などを用意するのも効果的です。
②周辺クリニックや薬局との内覧会協業
同時開業のクリニックや調剤薬局などがあれば、一緒に内覧会を協力して作り上げ、共同のミニセミナーなどを開催するのも良いでしょう。
③院内体験
クリニックの診療方針や設備の特徴を認知していただき、ここに来たいと感じてもらい、予約までを作り上げることが大事です。また、来場者に簡単な健康相談などをして、予約に繋げやすい工夫をすることも効果的です。
上記施策により、来場者のロイヤリティーを高め、最大の目的である来院予約につなげることが重要です。スムーズに予約につなげるために、クリニックによっては、予約ブースを設けるところもあります。
補足:内覧会時の注意点
内覧会の時に気をつけたいのは、ご友人や医療関係者の来場です。新しいクリニックに、お祝いの意味を兼ねて来院する事はよくあります。特に先輩のドクターやお世話になった方が来場すると、その方を無下にすることもできませんので、その方に院長の時間が取られてしまいます。そうなってしまうと、本来のターゲットである患者への対応が手薄になってしまいます。そのため、医療関係者向けは別日に見学会を設けると言うのも1つの手だと考えられます。例えば、内覧会直前の平日に関係者向けのプレ内覧会を行うなどです。
内覧会は単なるクリニックのお披露目だけにとどまらず、地域の方に知っていただき、来院につなげるかを念頭に置きながら準備を進め、当日は、「来院予約数」を目標とし、院長だけでなく、スタッフなどにも周知徹底をして、目標達成に向けて一丸でイベントを実行していくことが大切です。
2-3. 口コミで評判を広げるサイクルをつくる
クリニックの開業時に口コミなどで来てもらう患者を増やすための導線を考えることは重要です。クリニック経営では初診の数より、再来の数の方が多いのが一般的です。そうすると、単に1度来院してもらうだけでなく、継続的に通院してもらうことを視野に入れた経営をしていく必要があります。来院から再来までのサイクルを作るために、診療の質はもちろん、スタッフの対応や、待合などの空間の快適さ、予約の取りやすさなど、患者の体験を良質なものにする取り組みをしていくことが基本になります。再度来院したいと思ってもらうことができれば、その周囲の方にもクリニックをお勧めできる状況が生まれます。このような取り組みによって自然と口コミが生まれ、既存患者の周囲の人も巻き込んだ来院導線が出来上がります。口コミの力を活用する事は、広告費の抑制にも効果があります。いくら広告によって患者を獲得しても、その歩留まりが悪ければ、ずっと広告費をかけ続けなければいけません。口コミからの新患獲得は余計なコストを抑えることにも繋がります。
2-3-1. 良い口コミを増やすためのポイント
開院直後のクリニックは良い口コミを生み出しやすい環境が整っているといえますので利用しない手は無いでしょう。内装が清潔で明るく、新しい医療機器を導入していることが多いため、患者にとって好印象になる場面を多く作れます。合わせて、開院直後の患者が少ない時期は比較的予約が取りやすく待ち時間も短い状態とも言えますので、患者が「快適だった」「丁寧に診療してもらえた」と感じやすい状況を作ることができます。また、院長先生もスタッフも若い方が多い場合は、フレッシュな印象で持っていただけるでしょう。こうした新しいクリニックならではの強みは、良い口コミを頂く機会を増やすことができるため 、開業の初期段階から積極的に活かしていくことが大事です。
2-3-2. 口コミの注意点
口コミを増やしたいからといって、患者に直接ネット上の口コミを書いてくださいと依頼することには注意が必要です。医療機関がこのような口コミの投稿を促す事は、医療広告ガイドラインに抵触する可能性があります。そのため、口コミについては、あくまでも自然な形が求められます。ネット上の口コミは大事な要素ですが、あくまでも自然に記載してもらうほかありませんので、上述の強みでしっかり気に入ってもらい、自然に書いていただく、または、フェイスtoフェイスで口コミしてもらうことが大事です。
3. 開業前からの戦略的なマーケティングが成功の鍵
開業前に知名度を高めるために実践できる施策は多く存在します。特に、Webマーケティングや内覧会、口コミ戦略などを活用することで、開業後のスタートダッシュを成功させることが可能です。これらの施策をどれだけ効果的に実践できるかで、クリニックの立ち上がりのスムーズさが変わってきます。実際に、開院前からしっかりとマーケティング施策を実施し、開院初日から予約が埋まっている医療機関は多くありました。その医療機関に共通していることは、濃淡の差はあれど、3つの施策を開業前から上手に実践されているという点でした。
しかし、多くの患者を集めることができても、診療の質が伴っていなければ意味がありません。クリニック経営は、新規患者の獲得だけでなく、リピーターの存在が不可欠です。初診の患者が満足し、再び来院したいと感じるような診療体験を提供することが、医療の基本であり、クリニックの長期的な経営安定につながります。せっかく開院時のマーケティングに成功しても、患者が定着しなければ、その効果は一時的なものとなってしまいます。継続的に患者に選ばれるクリニックとなるために、質の高い診療と良好な患者体験を同時に提供することが何よりも重要なのです。
筆者プロフィール

株式会社日本経営 河村伸哉
東北大学法学部卒業後、フリーランスの期間を経て、大手飲料メーカーや通信系システム会社等のウェブサイト作成を経験し、2005年より日本経営グループにて、医療機関のマーケティングを担当。2014年12月に、医療機関向けホームページ作成システム「Wevery!」を創業。これまで培った医院のウェブ作成のノウハウをすべての利用者が使用できるクラウド型のウェブサービスで展開中。現在2500件以上の医療機関が利用している。
日本でも数少ない医療機関のマーケティングに精通したメディカルWebプロデューサーとして、著書「クリニック広報戦略の教科書」「医院ホームページの教科書」があるほか、YouTube「Wevery!チャンネル」を主催。全国で講演活動などもおこなっている。
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