セミナーレポート

第5回大学IR実践セミナー「経営戦略データベース活用事例の紹介」 2021年9月28日開催

『Unified-One 統合データベース』を導入して、
学内情報の集約・可視化を実現、大学IRを強力に推進

~東北大学の経営戦略データベース活用事例の紹介

『Unified-One 統合データベース』を導入して、学内情報の集約・可視化を実現、大学IRを強力に推進

多くの大学が教育・研究・経営の強化に取り組む中、近年取り組みが進んでいるのが、エビデンスに基づく大学経営、大学IR(Institutional Research)です。富士通Japanは2021年9月28日、「第5回 大学IR実践セミナー」をオンラインで開催。多くの大学関係者にご参加いただいた当セミナーでは、国立大学法人 東北大学 総長・プロボスト室 経営企画スタッフの安孫子 寛樹氏により「経営戦略データベース活用事例の紹介」と題した講演が行われました。講演から「オンライン事務化宣言」に基づく改革の実施状況や、「経営戦略データベース」の構築、メリットなどについてご紹介します。

「オンライン事務化宣言」と
業務のDX推進プロジェクト・チーム

東北大学はデータとデジタル技術の活用により、ワークスタイルを変革するデジタルトランスフォーメーション(DX)による業務改革を推進しています。その一つに、2020年6月1日に発出したオンライン事務化宣言があります。オンライン事務化宣言では、3つのフリー(働き場所フリー、窓口フリー、印鑑フリー)を実現するために業務のDX推進プロジェクト・チームを設置し、学内公募でメンバーを募り、これまで推進してきた業務改革をさらに加速させ、従来は当たり前とされてきた業務も見直します。

安孫子氏は、3つのフリーが目指すものについて、「『働き場所フリー』では、テレワーク環境改善やテレビ会議の普及、教職員のBYOD対応など、ニューノーマルを見据えた働き方改革方針に基づく環境改善・業務改革を推進し、『窓口フリー』では、AIを用いた学生対応、多言語化対応、顔が見えるオンライン窓口など、最新技術を活用した窓口業務改革を推進します。『印鑑フリー』では、印鑑を廃止し、電子申請手続きの拡充、電子決裁システムの導入、文書管理の電子化(ペーパーレス)など業務運営のデジタル化を推進していきます」と説明します。

東北大学のDXによる業務改革は、マルチベンダーにより整備された情報基盤のもと、この3つのフリーに加え、学内情報の集約・可視化を4つの柱として、学内公募によるチームでプロジェクトを推進する「プロジェクト型の業務改革推進」や、オンラインを駆使した各種研修などによる「研修・教育」、成果に応じた「適正な人事評価」を行いながら推進していきます。

この学内情報の集約・可視化のために東北大学が2020年3月に導入したのが、富士通の『Unified-One 統合データベース』。安孫子氏は、『Unified-One 統合データベース』の導入によりデータを中心とした経営戦略の実現を強力に進めていくとし、次のように話します。

「本学では、これを『経営戦略データベース』と呼んでいます。オンライン事務化宣言の3つのフリーに対応したワーキンググループ(WG)と、経営戦略データベース構築プロジェクト・チームが相互に連携することで、DXにおける先導的な業務改革を短期的なスパンで集中的、かつ戦略的に実施します。ニューノーマル時代に相応しい教育・研究環境の実現と、魅力ある職場環境を目指しています」(安孫子氏)。

東北大学の業務のDX推進プロジェクト・チームは、オンライン事務化宣言にある『ニューノーマル時代でのワークスタイルの変革』を実現するために、全学から公募で参加した総勢約60名で構成。3つのフリーWGと、経営戦略データベース構築プロジェクト・チームの4チームが中心となってDXを推進していきます。

オンライン事務化宣言については、宣言下にある3つのフリーに関しては着実に実現しており、今回のセミナーの主題である経営戦略データベース構築プロジェクト・チームでは2020年度、中期目標・中期計画や指定国立大学申請の要件となっている53項目のKPI(Key Performance Indicators:重要業績評価指標)の全てを可視化しています。

学内情報の集約・
可視化に向けた経営戦略データベースを構築

中期目標・中期計画など大学を取り巻く数値指標やKPIの進捗管理にあたり、これまでは本部各部・課がそれぞれに各システムから抽出したデータやExcelなどをもとに手作業で集計を行っていました。東北大学の経営戦略データベースは、このようなアナログ作業を打破すべく、人事財務など学内のデータ、及び学外のデータを集約・統合し、経営戦略に資するIR情報基盤の整備を目的として導入されました。

経営戦略データベースは、データを集約・統合する富士通の統合データベース『Unified-One 統合データベース』と、これを可視化するBIツール『Tableau』で構成されています。『Unified-One 統合データベース』は、学内の教務部門や各学部、学内図書館などで別々に管理されている学生の学籍情報、志願者情報、履修情報、成績・課題情報、図書館利用情報などを抽出し、教育実習先情報などさまざまな外部データと合わせて、新規に大学経営戦略の立案を目的としたデータ分析用の統合データベースです。『Tableau』は、各種の分析に役立つグラフを自動作成、可視化する機能を提供します。

経営戦略データベースの概要

データベースの構築にあたっては、本部各部・課から構成されるプロジェクト・チームを結成。学内においてシステムの操作や調書対応を行う若手実務担当者がメンバーとして参加しました。「プロジェクト・チームの結成が2019年12月27日で、2020年4月1日に運用開始ですので、わずか3カ月という驚異的なスピードで構築を完了しました」(安孫子氏)。

プロジェクト・チームの活動内容である可視化までのプロセスは、①KPI管理表を作成、②現状を見直し、経営戦略データベースを利用した効率的な運用の検討、③検討結果に沿って経営戦略データベースにデータを投入、Tableauによる可視化、となっています。

データ分析や可視化の経験のないメンバーのスキル獲得も課題でした。安孫子氏は、「メンバー向けに学内Webサイトを作成し、経営戦略データベース、Tableauの操作方法を音声付きの動画で解説することで、メンバーが都合のよい時に繰り返し学習できる環境を整備しました。これにより、2020年度中に全メンバーが経営戦略データベースによるデータの可視化スキルを獲得できました」と振り返ります。

経営戦略データベースを導入して課題を明確化

経営戦略データベースは学内情報の集約・可視化という役割を充分に果たし、現在、学内で積極的に活用されています。その例を安孫子氏は2つ挙げました。一つは部局とのディスカッションペーパーへの活用です。経営戦略データベースに投入した学内、学外データを統合・連携することで、各種教員比率や外部資金、研究力指標など、さまざまなデータを部局別で可視化したものをディスカッションペーパーに利用。Tableauのダッシュボード、ソート機能を使い、単なる経年推移ではなく、全学平均との比較や全学の中で見た時の自部局の立ち位置が分かるように整理できるため、本ペーパーに基づき今後の部局の在り方について円滑に議論できるようになっています。

もう一つが東北大学ダッシュボードや部局評価への活用です。Tableau Serverの可視化データを学内Webサイト(東北大学ダッシュボード)に埋め込むことで、全学(学内)からの閲覧を可能にし、自部局の現状の把握や評価、今後の運営方針の検討に寄与することができています。

経営戦略データベースを導入して良かったこととして、「課題が明確化したこと」を安孫子氏はまず挙げます。Excelなどを担当者が独自に管理、必要情報を部局へ確認といった手作業が行われていたことなど、学内で抱えるデータ運用に関する多くの課題に気づくことができたと安孫子氏。これを経営戦略データベースにより、KPI管理表で一元管理することで業務システムによる管理へシフトするなど、今後効率的な可視化を検討するきっかけができました。

また可視化ツールとしてのTableauの優秀さも評価します。「直感的な操作で、一度覚えてしまえばグラフなどの作成が誰でも容易にできます。さらにTableau Serverを活用することで、全学への情報の展開も可能です」(安孫子氏)。

最後に安孫子氏はこれからのDX推進について、展望を示しました。すでに昨年のWG構成から、立候補制による各種検討項目別のチーム構成に刷新しており(昨年の検討状況や規模・影響範囲に応じて各検討項目を3つに分類)、各検討項目の課題をメインで取りまとめるチームを設置して、検討や実施の進捗状況に応じて流動的にメンバーをアサインすることで、アジャイルかつスピーディーにプロジェクトを推進することを目指しています。

業務のDXプロジェクト・チーム2.0

経営戦略データベースに関連する検討内容としては、「経営戦略データベースによる見える化拡大」ではさらなる可視化を推進し、「教学IR」では可視化データを活用して東北大学独自のエンロールメント・マネジメントを行います。さらに「プロモーション」については、学内にとどまっている経営戦略データベースの活用を、学外にも広げていき、予算獲得、本学への入学・就職希望者の増加等、中長期的にさまざまなチャンスを呼び込みたいとしています。

「今後も経営戦略データベースをはじめとして、本学の業務DXの取り組みに是非注目していただければ幸いです」と安孫子氏は述べ、講演を締めくくりました。

Profile

国立大学法人 東北大学
総長・プロボスト室
経営企画スタッフ
安孫子 寛樹氏

安孫子 寛樹氏

[ 2021年11月 掲載 ]

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