学校法人神奈川大学 様
スマートフォンアプリによる図書の貸出サービスを導入
大学図書館の貸出業務を大幅に軽減して、サービスを拡充
神奈川大学では、新設の「みなとみらいキャンパス」の開校にあわせ、館内に「みなとみらい図書館」を開設。ビル型キャンパスの収容能力の低さをカバーするため、図書館外のソーシャルコモンズやラーニングコモンズなどの共有部にも図書・資料を配架している。利用者の利便性向上のため、OPAC機能を提供する「Ufinityスマートフォンアプリ」に貸出機能を追加し、貸出業務を大幅に軽減するとともに、余剰リソースをさらなるサービス拡充に活用している。
課題と効果
- 課題図書・資料の図書館外配架による貸出手続きの不便さを解消したい
- 効果スマートフォンアプリに貸出機能を追加し、キャンパス内での貸出が可能に
- 課題貸出作業を軽減し、そのリソースを対面サービスの強化に充てたい
- 効果余剰リソースを活用し、学部担当であるリエゾン・ライブラリアンを設置し相談業務を強化
- 課題図書館の利便性を向上し、利用者や図書・資料の貸出数を増やしたい
- 効果貸出の利便性が高まり、図書館の利用者数・貸出数ともに好調なスタート
導入の背景
みなとみらい地区初の総合大学
神奈川大学は横浜、湘南ひらつか、みなとみらいにキャンパスを置き、8学部8研究科10研究機関を擁する、私立の総合大学だ。3キャンパスそれぞれに図書館を設置し、蔵書数はあわせて約145万点。歴史都市横浜にふさわしい日本研究の貴重書も所蔵している。
神奈川大学では近年、3キャンパスの図書館が共通で業務効率化と電子化の取り組みを進めている。神奈川大学 図書館 みなとみらい図書課長補佐の小池 孝昌氏は、「新設のみなとみらい図書館では、すべての図書・資料をICタグで管理しており、改修中の横浜図書館でも今後はICタグ管理にしていく予定です。さらに、電子資料も積極的に購入していく方針で、当図書館が所有する貴重書などの電子化も以前から進めています」と紹介する。
みなとみらいキャンパスは2021年4月に開設。みなとみらい地区では初めての総合大学として、経営学部、外国語学部、国際日本学部のグローバル系3学部が集結。21階建のビル型都心キャンパスで、3学部約5000名が学んでいる。
今回、みなとみらいキャンパスのみなとみらい図書館ではスマートフォンアプリによる図書の貸出サービスを導入した。
課題と採用の経緯
スマートフォンアプリで貸出手続きの利便性を向上
神奈川大学の図書館には従来、いくつかの課題があった。まず1つがカウンター業務の効率化だ。特に貸出業務はカウンター作業の中で割合を多く占めるものの、ピークにばらつきがあり、業務の割り振りが難しい。もう1つが入館者数と貸出冊数の低迷だ。コロナ禍以前はどちらも減少傾向が続いており、これも改善したい課題だった。
そしてみなとみらい図書館の新設にあたっては、図書・資料の収容力が大きな問題となった。同キャンパスはビル型で、図書館に割ける床面積は小さく、設計段階での収容可能見積冊数の約16万冊に対して、移転してくる人文・社会科学系の学部は、紙の資料に対するニーズが高いこともあり、必要見積冊数は約30万冊にも上った。収容可能見積数と必要見積冊数があまりに乖離があるため、「図書館スペースだけでなく、キャンパス各所の共有部に配架することで、収容能力を高めようとしました。この方法をとれば、約3万6千冊の図書・資料を増やせることがわかりました」と小池氏は語る。
しかしこの方法は、ある課題が生じてしまうものだった。同キャンパスの図書館はビルの2、3階に位置しており、貸出手続きのために図書館に立ち寄るのは、利用意欲の減退を招きかねない。自動貸出機を各フロアに設置すればその問題は解決できるが、今度はコストが跳ね上がってしまう。
そこで、低コストで利便性の高い貸出システムを検討した結果、スマートフォンアプリを活用する結論に至ったと小池氏は話す。
「既存のスマートフォンアプリを活用した貸出システムならば、自動貸出機を複数設置するよりも低コストですし、ユーザーである学生も自分のスマートフォンを使えるのでとても便利です。図書館の閉館時も貸出が可能ですし、スタッフと利用者の接触機会を削減もできます。さらに新キャンパスのアピールポイントにもなると考えました」(小池氏)
導入サービスの概要
「Ufinityスマートフォンアプリ」に貸出機能を追加開発
みなとみらい図書館が導入したスマートフォンアプリによる図書の貸出サービスは、すでに導入済みの「Ufinityスマートフォンアプリ」に貸出機能を追加開発することで実現している。Ufinityスマートフォンアプリは、大学図書館パッケージのFUJITSU 文教ソリューション「iLiswave-J」のOPAC機能をスマートフォンで利用するサービス。iLiswave-Jを導入している任意の図書館を選択し、接続先の目録データベースを検索できるほか、新着資料や貸出ランキングなども見ることができる。
みなとみらい図書館の要望により富士通が開発を行い、バーコード読み取りの機能を利用した貸出機能を追加。アプリにログインして、図書・資料に貼付された管理用バーコードをスマートフォンのカメラで読み取ると、図書館システム「iLiswave-J」から所蔵データと利用者情報を参照し、貸出処理が実施される。これにより自動貸出機と同等の規則設定が可能となる。
アプリ利用の条件を、学内アカウントへのログインと学内無線Wi-Fiへの接続、定められたバーコードの読み取り、みなとみらいキャンパスの資料であること、としているため、学校関係者がみなとみらいキャンパスでのみ利用できる。
セキュリティ対策としては、同キャンパスの出入口にセキュリティゲート(BDS)を設置。図書のICタグの情報をもとにシステムから貸出情報を参照し、貸出処理がされていない場合はゲート通過時に鳴動する仕組みとなっている。「図書や資料は大学の大切な資産なので、セキュリティは非常に気を配りました。悪用されないように、みなとみらいキャンパス以外で動作しない設計としています」と小池氏は話す。
管理用バーコードをスマートフォンのカメラで読み取る 図書に貼付された管理用バーコードをスマートフォンのカメラで読み取り、システムと通信することで所蔵データと利用者情報を参照し、貸出処理を可能とする。
効果と今後の展望
貸出業務を効率化し、サービスを拡充
今回の導入で貸出業務の効率化が実現したが、それで終わりではないと小池氏は強調する。「貸出業務の効率化で生まれた余剰リソースを、図書館サービスの拡充に活用しています。例をあげると、各学部と図書館をつなぐリエゾン・ライブラリアンを6名配置できました。これにより、各学部の教員・学生からのさまざまな問い合わせに、よりワンストップで対応できるようになります」(小池氏)。
貸出業務の効率化には、今回初めて導入した自動貸出機も貢献していると話すのは、神奈川大学 図書館 みなとみらい図書課の永沼 知之氏だ。
「図書館カウンターのフロアに自動貸出機がありますので、学生をそちらに誘導するだけで良くなったというのも利用の多さにつながっているかもしれません。実際、みなとみらい図書館の入館者数は、規模の大きい横浜キャンパスの図書館よりも多く、図書・資料の貸出冊数も同程度と、好調に推移しています」(永沼氏)。
加えて、書架を図書館にまとめて設置するという常識を打破したこと、スマートフォンを最大限に活用して、ハードではなくシステムの構築で対応したことなども効果としてあげた。「他大学の図書館関係者からも多くの問い合わせをいただいています。広報的にもある程度成功したと言えます」と小池氏は付け加えた。
今回の図書貸出サービスの開発を担った富士通への評価について小池氏は、「同キャンパスの開校にあわせたいという事情があり、短い開発期間での依頼となりましたが、その短期間でも十分なテストを行えるよう進めていただけました」と評価する。
この図書貸出サービスは、みなとみらい図書館に続き、改装中の横浜図書館にも導入を予定している。今後は貸出冊数への影響など効果測定を実施するとともに、教員への周知を高めて、講義やゼミナール活動での積極的な活用も図っていく。
最後に今後の展望について永沼氏は、「受け身ではなく、自分たちから進んでサービスを提供していくことが重要です。図書館にある信頼できる図書・資料を有効活用してもらうために積極的なアプローチを続けていきます」と語る。
続けて小池氏は、「図書館は学習や研究のサポートを行うサービスを提供する場です。積極的に教育や研究の場に出ていかなければならないと思います。また、コロナ禍で中断している一般の方への図書館公開や、貸出業務以外の業務機械化なども検討していきます。今後も富士通と協力して、セキュリティも考慮した安定・安全に稼働するシステムを提供していきます」と締め括った。
学校法人神奈川大学 様
所在地 | 神奈川県横浜市神奈川区六角橋3-27-1 |
---|---|
代表者 | 学長 兼子 良夫 |
創立 | 1928年 |
概要 | 横浜、湘南ひらつか、みなとみらいにキャンパスを構え、8学部および大学院8研究科を有する総合大学。成長支援第一主義をかかげ、学生の成長を全力で支援する。 |
左から 富士通Japan株式会社 文教・地域ソリューション開発本部 安藤 健一、
神奈川大学 図書館 みなとみらい図書課長補佐 小池 孝昌氏、
神奈川大学 図書館 みなとみらい図書課 永沼 知之氏
[ 2022年2月 掲載 ]
本事例中に記載の肩書きや数値、固有名詞等は取材日のものであり、このページの閲覧時には変更されている可能性があることをご了承ください。
本事例に関するお問い合わせ
-
お問い合わせ
当社はセキュリティ保護の観点からSSL技術を使用しております。
-
0120-835-554(通話無料)
富士通Japan株式会社(お客様総合センター)
受付時間 9時~12時、13時~17時30分(土曜・日曜・祝日・当社指定の休業日を除く)